贈り物

「アレン君…」

廊下を歩いていたアレンを背後から呼び止めるか細い声…
その声の持ち主をアレンはよく知っていたので、呼ばれたと同時にその人物を頭に思い浮かべ、振り向くと同時にその人物の名を口にしていた

「ミランダさん」

振り向いたアレンが見た人物…そこには手を後ろに俯いて顔を赤くしているミランダがいた

「あ、あのねアレン君…その…」

「? どうしたんです?」

「あの……」

手を後ろにしたミランダは中々アレンの方を直視できないままもじもじとしている、そしてその顔に段々と赤みが増していくのがアレンには見て取れた
様子がいつもとは違うように見えたアレンはミランダに歩み寄り-

「失礼しますミランダさん」

「…え?」

そして、こつんっと何かがぶつかり合う音が廊下に響いた
その音が聞こえた後に「あわわわ…」っとミランダの慌てる声が響く

「う~ん、熱はないみたいですね…」

「ああああの、アレン君…!」

顔の赤いミランダを心配したアレンがミランダの額に自分の額をくっつけながら呟いた
そこにはアレンの行為で更に顔を赤くしてしまうミランダがいた
ミランダが慌ててアレンから離れようとした次の瞬間-

カサッ!

ミランダが後ろ手に隠していた物体が音を立てて床に落ちた

「ミランダさん、何か落ちましたよ?」

「へ…?ああああ!?」

ミランダが慌てて落ちた物体を拾い上げる
アレンが見たものは可愛くリボンでラッピングされた小さな袋であった

「何です、それ?」

「あの、その……」

ミランダの持っている物を不思議がっているアレンの前に…

「…え?」

スッとミランダはアレンにその袋を差しだしたのだ
急な出来事にアレンが戸惑っていると、顔を真っ赤にしたミランダがアレンの目を見ながら言葉を呟いた

「あのコレ、いつもの感謝の気持ちで…美味しくないかもしれないけど…!」

「へ? あ!ミランダさん!」

アレンに袋を渡し終えるともの凄い早さでミランダは廊下を駆け出していた
ミランダの逃げ足の早さは巻き戻しの街で証明済みである、イノセンスを発動したのではないかと思われるほどの早さでミランダの影はすぐに廊下から消えてしまった

「…御礼ぐらい聞いて欲しかったのに」

苦笑しながらアレンはミランダに手渡された袋を開ける
すると中から香ばしいバターの香りが現れた

「…ビスケットだ」

中に入っていたビスケットは少し、焦げ混じりで形も歪んでいる物もあった(先程落としたからなのか、割れている物もあった)
しかし-

「ミランダさんが僕の為に焼いてくれたのか…」

アレンは一つのビスケットを袋の中から取りだして口に含む
その焦げ混じりで形の悪いビスケットはアレンが今までの人生の中で食べたビスケットの中で一番美味しかった

END
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