【小さくて大きな事】



何故か向き合ったミランダの顔は非常に申し訳ないとでも言いたげな顔をしていた

「どうしたんですかミランダさん…?」

「えっ!?あ、あの…怒らない…?」

「? どうしたんです?」

「………」

アレンの問いに言葉を吐こうか飲み込もうかを数回繰り返した後に、顔を真っ赤にしながらミランダはこう言った


「……何だか凄くいけない事をしてる気分になっちゃって…」

「……へ?」

ミランダの答えにアレンは首を傾げた、そんなアレンに更にミランダの説明が続く

「だ、だって今のアレン君の姿は…どう見ても子供だから…その…」

顔を真っ赤にしながら申し訳なさそうに答えるミランダ
今のこの二人の姿を知らない人間がみたらどう見ても『恋人同士』というキーワードは出てこないだろう
アレンもミランダの言いたいことが解り苦笑してしまった、そしてすぐにミランダを安心させる言葉を投げかけた

「…大丈夫ですよミランダさん」

言うなりアレンがミランダを自分の方に身体全体を使って引き寄せた

「ア、アレンく…!」

そして今度はアレンがミランダの唇を塞いだ
ただ先程とは違ったのは今度は唇を合わせるだけキスではなく…今度のキスはいわゆる大人のキスと呼ばれるものであった
アレンの小さな舌がミランダの口内に入り、ミランダの舌と絡み合う…
深く重ねられた唇からは吐息すら漏れる事はなかった…

「ん…」

そして、触れあう唇を先に離したのはアレンからだった
突然の深いキスに先程よりも顔を赤らめているミランダにアレンが目を細めて優しく呟いた


「ミランダさん…愛し合う者同士がキスするのはいけない事じゃないですよ?」

「アレン君…」

アレンの言葉にミランダも笑顔を浮かべる
今この場にいるのはただの愛し合う男女だ、その間には10や9の数字などどこにも見あたらない…
二人顔を見合って微笑みを交わしながら幸せを感じていた、今のこの二人の姿を見たら神の結晶のイノセンスが嫉妬してしまうのは無理もなかった事と言えるだろう…
そしてミランダが何かを思い出したようにアレンに声を掛ける

「…それじゃあアレン君、外は寒いから中に戻りましょうか?」

「はい、ジェリーさんの美味しいご飯を待たせるわけにはいかないですから♪」

「そうね、ふふふ…」

まるで憑きものが取れたかのように晴れやかな顔をミランダに見せるアレン
その表情がとても子供のような表情に見えたのはミランダの中だけの秘密だ…
そしてその表情を見たとき、とても大事なことをミランダは思い出した

「そうだアレン君、本当は一番に言いたかったのだけど…」

ミランダの言葉に不思議そうな顔を見せるアレン
そんなアレンに、今日アレンが一番欲しかった言葉が贈られた

「…誕生日おめでとう、これからも傍にいてね?」

「!………はい!」

これから何度もミランダはアレンにこの言葉を贈るだろう
そしてアレンもミランダにこの言葉を贈るのだろう
たまたま愛した人との間に10の年齢差があっただけの事…
それが小さな事なのか大きな事なのかは当人達だけの問題…
二人はこれからも一緒に過ごす事だろう…10という数字と共に…

END
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