【小さくて大きな事】



「…アレン君」

中庭で一人で佇んでいるのを見付けたミランダがアレンに話しかけた
子供の姿をしているアレンの雰囲気は寂しさに拍車をかけている様に見えた

「…すいませんミランダさん…勝手に居なくなったりして…」

ミランダに声を掛けられたアレンが振り返りながら申し訳なさそうにそう言った。
アレンがイノセンスの間から立ち去ってからミランダが探しに来るまでそう長い時間はかかっていなかったが冬の寒さは容赦なくアレンの体温を奪っていたのか、アレンの身体は小刻みに震えていた

「アレン君…そんな姿をしていたら寒いでしょう?早く中に-」

「…やっぱりこんな姿じゃミランダさんは嫌ですか?」

「え…?」

突然アレンがミランダの言葉を遮った

「こんな姿じゃ…!僕は…貴女の隣に居たいのに…こんな姿じゃ…何もできない…」

「アレン君…どうしたの?私はそんな意味で言ったんじゃ-」

「…七日しかないんです」

「え?」

「…七日後にはミランダさんが誕生日ですから…また10歳差に戻っちゃいます」

「私の…誕生日…?」

アレンの口から出た単語にミランダが反応を見せる
アレンとミランダの年の差は10ある、しかし本日12月25日のアレンの誕生日から一週間だけ…
ミランダの誕生日である1月1日迄の間だけは二人の年の差は9になる
10と9、近いようでとても大きな差があるこの数値をアレンはとても気にしていたようだ
そして、それを気にしているのが自分だけではないと言うことにアレンは今から痛感することになる…




「……じゃあアレン君は七日しか私の隣にいてくれないの?」

「……ミ、ミランダさん?」

突然聞こえてきたミランダの声にアレンはビクリと身体を震わせた
それは冬の寒さのせいではなく、ミランダの声がそれ以上の冷たさを含んでいたからであった
向きあったミランダの顔はどこか怒っているようにも見えた…いや、完全にアレンの言葉に怒っているようだった

「い、いえ!そんな事は!」

慌てて何かを弁解するように大声でミランダに言葉を返すアレン
そんなアレンの言葉を聞いたミランダの顔にふっと笑顔が戻る

「…大丈夫よ」

「え…?」

「…大丈夫よ私の隣はもうアレン君の指定席だから」

そう言うとミランダはアレンと目線が合う高さまで腰を降ろした、そして…

「ミ、ミランダさ…!?」

そこでアレンの言葉は途切れた
何故ならそこで目の前のミランダに抱きしめられ唇を塞がれてしまったからだった…

「ん…っ」

寒い冬に感じた暖かい温もりにアレンは身体だけではなく心までもが暖かくなるのを感じた
そしてゆっくりと二人の唇が離れ恥ずかしそうに向きあう二人…
向きあった時にアレンが見たミランダの顔は…

「……ミランダさん?」

「…………」
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