【小さくて大きな事】
「ヘブラスカ、出て来てくれる?」
イノセンスの間に付いた一行がヘブラスカを呼ぶ
一瞬、部屋の中の空気が震えたような様な気がした…次の瞬間
ズズズ…!
「…どうし…た…?」
一行の前にヘブラスカが現れた
「実はヘブラスカに診てもらいたい人がいるの」
「…誰…だ…?」
アレン君、とリナリーがアレンの名を呼んだ
すると、クロウリーの背後から申し訳ない様な顔をしたアレンが一歩ヘブラスカの前に出た
その姿を見て(表情は変わらないが)驚きの声を上げるヘブラスカ…
「ア…アレン…一体…どうした…んだ…その姿は…?」
「わからないんです…朝起きたらこんな姿になってたんです、ヘブラスカ…何か解りませんか?」
子供の姿で不安そうにヘブラスカに自分の現状を聞くアレンの姿は見た目以上に弱々しく見える
「兄さんにも何が起きてるか解らないって言うの、見てあげてくれないかしらヘブラスカ?」
「わかっ…た…アレン…こちらに…」
ヘブラスカの前に一歩アレンが歩み出る、途端にヘブラスカの触手のような腕がアレンを包み込みイノセンスとシンクロを始めた…
周りの皆は心配そうにそれを眺めている
「こ…れは……ふふふ…」
アレンを診ていたヘブラスカが何かに気付き小さく微笑んだでから、ゆっくりとアレンから手を離した
「ど、どうしたんですか、何か解りましたか?」
自分に何が起きているのか心配してヘブラスカに結果を聞いたアレンだったが
当のヘブラスカはその場にいた意外な人物の名を呼んだ
「ふふふ……ミランダ…」
「は、はい!?」
突然名前を呼ばれて驚くミランダであったが、更に驚く言葉をヘブラスカが呟いた
「これは…君の…イノセンスが…やっている…ぞ?」
「………へ!?」
ヘブラスカの言葉を聞いて思わず素っ頓狂な声を出してしまうミランダ
「ミランダ…イノセンスは…どこに?」
「えぇと…談話室の時計の中に…」
「…何でそんなところに置いてんのさ?」
「だ、だって聖なる夜ぐらいは元の場所で休ませてあげようかと思って…」
「ふふふ…それで解っ…た…」
「どうしたのヘブラスカ?」
「アレンは…ミランダのイノセンスに…嫉妬されたん…だ」
「し、嫉妬!?」
「時計の中にいたことで…ミランダへの気持ちを…思いだしたのだ…ろう…」
思い当たる節があるだろう?呆気にとられているアレンに向けたヘブラスカの言葉にアレンは困ってしまった
まさか談話室での独り言をイノセンスに聞かれ、更にこんな目に遭わされるなんて思いもよらなかった事だろう
「それで僕はいつ元に戻れるんですか!?」
「大丈夫だ…イノセンスに悪意は…ない…一週間も…したら……元に戻る…さ」
「一週間後って…ミランダの誕生日?」
「!!?」
「だとさ、良かったなアレン」
ヘブラスカの言葉を聞いたラビがへらへらとアレンに声を掛けたが…
ヘブラスカとラビの言葉を聞いたアレンは下を向いて黙り込んでしまった
「モヤシ…どうした?」
「一週間後じゃ…」
「あ?」
「っ…一週間後じゃ駄目なんです!」
突然そう叫ぶと、アレンは走ってイノセンスの間を後にして行ってしまった
「ど、どうしたんだ…アレンは……?」
「さ、さぁ……?」
突然走り出してしまったアレンの後ろ姿をその場にいた全員はただ眺めているだけしかできなかった
そして直ぐさまその後を追ったミランダを見て全員は『余計なことはしない方がいい』と同時に思ったのだった…
………
……
…