【小さくて大きな事】

「ちょ、ちょっと!降ろしてくださいよ!」

「あはは~うろたえてるアレン君は可愛いね~♪」

せっかく機嫌の直ってきたアレンだったが、コムイのこの行為に再び悲しい気分になってしまった
そこに…

「兄さんっ!」

ドゴッ!

「がっ!?」

アレンを掲げ上げていたコムイに愛妹のローキックが炸裂した
痛みのあまりよろよろとアレンを降ろすコムイ

「兄さんっ、アレン君は本気で悩んでるんだから、からかったりしたら駄目じゃない!」

つい数分前までの自分がしていた事を無かった事にでもしたのか、自分のことを棚に上げてコムイに説教をするリナリー
そしてよほどリナリーに蹴られたことがショックだったのかすっかり怯えきった顔でリナリーに『ごめんなさい』と震えながら呟くコムイ…

「…それで室長、アレンに何が起きてるか解らないんですか?」

「あ、ああリーバー君、そうだったね…」

リーバーに話しかけられて平静を取り戻したコムイが真剣な顔付きになる

「アレン君に何が起きているのか率直に言うとね…」

「……………」

その場にいた全員が息を飲みコムイの言葉を待っていた
そんなコムイの口から出た言葉は…




「ゴメンね、さっぱり解らない♪」

「「「は?」」」

コムイの言葉を聞いた全員の目が点になった

「いやぁ本当にどうして子供になっちゃったんだい?」

目が点になって固まっているアレンの頭を撫でながらそんな言葉を呟くコムイ

「ちょっと解らないってどういう事なのよ兄さん!」

「だ、だって今までの教団のイノセンスの記録を見たってこんな事例報告されてないし、医療班に聞いたってそんな病気聞いた事も無いって言うんだもん!」

リナリーの怒声に必死で説明するコムイ、すっかり怯えきった教団科学班室長の姿を見て皆は少し同情した

「た、確かに僕じゃどうにも出来ないかもしれないけど、きっとヘブ君なら何か解ると思うんだ!」

「「ヘブラスカなら…」」

コムイの口から出てきた人物を皆頭に思い浮かべた
ここにいる大半のイノセンスの所有者は皆彼にイノセンスを査定してもらうのだ、イノセンスのことなら教団にいる誰よりも詳しいだろう

「そうね、兄さんが役に立たないのならヘブラスカに相談しに行くのが一番ね」

「!!!!?」

リナリーの一言に石化してしまうコムイだったが、皆それを無視してヘブラスカの元に行く準備を始めた

「じゃあジェリー、私達はちょっとヘブラスカの所に行ってくるわね」

「わかったわ、アレンちゃん、今日の主役なんだから早く帰ってくるのよ」

「…わかりました」

そう言ってぞろぞろとエクソシスト組はヘブラスカの元に歩き始めた…

「……役に立たない………」

石化してぶつぶつと何かを呟いているコムイの肩をリーバーが優しく叩いて首を横に振っていた……
………
……
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