【小さくて大きな事】
(アレン君…大丈夫かしら…?)
アレンの事が気になったミランダが遅れてパーティー会場の食堂に向かうと…
『あはははははははは!!!!!』
廊下にまで聞こえる大声で笑い声が聞こえてきた
食堂に入ったミランダが見た物は…大きな人だかりで、その中心部分からよく知った声が聞こえる
ミランダが人だかりを掻き分けて進んでいくと円の中心にいたのは…
「あはははは!!可愛いさアレン!!」
「も~アレン君、可愛い~!!」
「もう!やっぱりアタシの目に狂いはなかったわ!!」
「…や、やめてくださいよっ!」
いったい誰が持っていたのだろうか?
先程までぶかぶかのパジャマを着ていたはずのアレンが子供服に着替えさせられていて(しかもパーティー用で首元には小さな蝶ネクタイが付けられている)
その周りをラビとリナリーと、料理長であるジェリーが囲っていた
(更にその周りを囲っている団員は、もれなく全員笑っている)
「まさか花嫁修業用(?)に作ってた子供服がこんな形で役に立つだなんて思わなかったわ~」
サングラスの下で目を輝かせているジェリーが自分の作った服を着ているアレンを見てうっとりとしたように言った
「いやぁアレン~、厄介なプレゼント貰っちまったなあ?くくく…」
「何言ってるのよラビ、素敵なプレゼントじゃない!」
「ううう……皆ヒドイですよ…他人事だと思って…!」
子供服を着せられたアレンも、もう泣き笑いの声しか出せなくなっている
「ううぅ…こんな姿ミランダさんに見せられない…」
「……アレン君?」
「ミ、ミランダさん!?」
「大丈夫、アレン君?」
「はい…一応は…」
何故か気まずそうに返事を返すアレン、余程今の格好を見られたくはなかったのだろうか?
アレンが傷心している間にも周りから『可愛いぞ~アレン!』と、からかいの声が聞こえる度にアレンの顔が暗くなる
そこに…
「……どうなってんだ?」
「一体何が起きたのであるか?」
神田とクロウリーが興味津々で近づいてきた
「そんなの僕にも解りませんよ!こっちが聞きたいぐらいです!」
また自分をからかう人間が増えたような気分がしてアレンが大声を出すが
子供の状態で大声を出している姿がまた可愛く見え、再び周りから『可愛いぞ~』との声があがってしまう結果となった
「はぁ…もう…いいですよ…」
すっかりいじけてしまったアレンの姿を見て周りの人間はようやく「もしかしてやりすぎた?」と感じた
「ご、ごめんな~アレン、そうだよな、朝起きていきなり子供に戻ってたら驚くよな…」
「ごめんねアレン君…反省してるわ…」
ラビとリナリーの謝罪にも…
「いいですよ~どうせ僕なんて皆のおもちゃなんですよ~…」
皆に背を向け座り込み地面にのの字を書いているアレンの姿を見た皆は…
(((か、可愛い…!!)))
と、口には出さないが一人以外同じ事を考えてしまった…
「…しかし何が起きてこうなったんだ?」
そしてその一人…神田がアレンを見て率直な感想を言った
「だから…僕にも何が起きてるか解らないんです、朝起きたらこうなってたんです…」
「普通の人間が一夜にして子供に戻るなんて聞いた事ないわよ?」
「でも…アレン君は珍しい寄生型イノセンスの持ち主だから…そのせいだったりしないかしら?」
「え!?じゃあ我が輩も子供に戻るのであるか!?」
「でも寄生型イノセンスの持ち主にこんな異常起きたなんて俺聞いたこと無いぜ?」
「じゃあ……」
先程まで自分をからかっていた皆が自分の為に真剣に話し合ってくれる姿を見て
アレンは心が温まるのを感じた…そこに…
「ようアレン、大変な事になってるな?」
「リーバーさん?」
口元に手をやり笑いを抑えながらリーバーが食堂に現れた
「もうすぐ室長が来てくれるからな、あの人なら何とかしてくれるだろう?」
リーバーがそう言うのと同時に、食堂にコムイがやってきた
「やあやあアレン君!誕生日だって言うのに災難だったねえ!」
何やら嬉々とした顔でアレンの前にやってくるコムイ
そしてやってくるなり…
ぐいっ
「…え?」
「ほ~ら、高い高~い♪」
長身のコムイが急にアレンを掲げ上げたのだ
相当に高い位置に掲げられてアレンはあたふたとしている