【小さくて大きな事】
「う、ん…」
ベッドで目を覚ましたミランダは自分の瞼に何か冷たいものが置かれているのに気付いた、手を伸ばしてそれを触ってみるとどうやら濡れタオルのようであった
「あ、気がつきましたか?」
タオルで目を覆われた暗闇の中、誰かの声が聞こえた
「…アレン君?」
ミランダがゆっくり上半身を起こそうとした時、その声の主がミランダを押さえた
「まだ起き上がらない方がいいですよ、ミランダさんは気を失って倒れたんです…」
「……え?」
気を失って倒れた…?
頭の中でここに来るまでの出来事を思い出す…
「…ふふふ」
「どうしたんです、ミランダさん?」
「…何だかおかしな夢を見たような気がするわ」
「…ど、どんなです?」
ミランダの言葉を聞いたアレンの声は何故か震えていた
「ふふふ、それがね…私がアレン君に会いに部屋に行ったの…」
「………はい」
ミランダの言葉を聞いて、何故か申し訳なさそうに返事を返すアレン…
「それでね、可笑しいのよ…私がアレン君の部屋のドアを開けたらね…アレン君が子供になってたのよ、ふふふ…可笑しいでしょう?」
「…え~と…その……」
「どうしたのアレン君?」
ミランダの言葉を聞いて口ごもってしまったアレン…
「…ミランダさん、驚かないでくださいね?」
「どうしたのアレン君?」
「…僕にも何が起きてるのか解らないんです」
そう言ってアレンがミランダの手を握った、その手の感覚に何か違和感を感じたミランダ
どうしたのかしらアレン君…?
そう言えば声もいつもと少し違う気がするわ…
「…ミランダさん、タオルを取ってください」
「……?」
ミランダは言われたままにタオルを取り、上半身を起こしてアレンを見た…
「………え!?」
「…………」
ミランダが見たアレンの姿は先程見た夢と同じ子供の姿…
いや、ベッドに腰掛けて申し訳なさそうに自分の手を握るこの小さな手の感触…これは明らかに現実に起きている出来事であった
「ア、アレン君なの!?」
「……はい」
どうなってるんでしょう?
そう言ってどこか諦めにも似たため息を吐くアレンの姿を見たミランダは…
なでなで…
「……え!?」
「アレン君…可愛い…」
いつもとは違うアレンの姿に戸惑いつつも、その悩んでいる姿が余りにも可愛くて、思わず頭を撫でていたミランダだったが…
「ミ、ミランダさん…」
「あ!ご、ごめんなさい…つい…」
ミランダが頭を撫でる度にアレンの顔が暗くなっていくのを見て慌ててミランダは自分の手を引っ込めた
「…ヒドいですよ」
「か……ごめんねアレン君…」
涙目で訴えかけてくるアレンの姿を見て危うく『可愛い』と言葉を漏らしてしまいそうだったミランダだったが寸出の所でその言葉を飲み込んだ
「…本当に一体どうしちゃったの?」
「解りません…本当に何が起きてるのか解ら…」
その時、アレンが言葉を言い終える前に本日二度目の音を響かせて部屋のドアが開かれた…
ガチャッ!
「アレン君!誕生日……え?」
部屋に入るなりリナリーの動きが止まった
ドアノブを握りながら部屋の中にいたミランダとアレンを交互に黙って見ている(その目は点の様でもあった)
「リ、リナリーちゃん…?」
恐る恐る、ミランダが動きの止まったリナリーに声をかけた
すると、動きの止まっていたリナリーが小刻みにふるふると震え出した
「……かっ……」
「「……かっ…?」」
不意にリナリーの口から出た言葉をそのまま口に出すアレンとミランダだったが…
突然震えていたリナリーが動き出した
ダッ!
「……え!?」
それは一瞬の出来事だった、突然動き出したリナリーがアレンとの間合いを一気に詰め、そのままアレンを抱き抱えたのだ
そして…
「可愛い~!もうミランダっ!いつの間にアレン君と子供作ったの!?」
「「……えぇっ!?」」