『ずっと傍に居るから。』



(やっと終わった……!)

時刻が夕方にさしかかった頃、やっとコムイから解放されたアレンは急いでミランダの部屋に向かう
そして早くミランダに会いたいと気持ちが急くあまり、ノックもせずにいきなりミランダの部屋のドアを開けてしまった

「ミランダさん!遅くなりました!」
「きゃあ!!」

アレンが部屋のドアを開けるなりミランダの絶叫が聞こえてきた

「ああ!ミランダさんごめんなさいノックもしないで…」

「あ、あぁ…何だアレン君か…お、驚かせないで…」

「ご、ごめんなさい…?」

確かにノックもせずに急に扉を開けてしまったのは悪かったが、それとは別にミランダは何かに怯えているような声を出していることをアレンは不思議に思った
それからもミランダはどこかおかしかった、戻ってきたアレンと再び談笑を始めたのだがアレンの話半分しか聴いていないような態度で
会話中にどこからか物音が聞こえてきてはビクリと身体を震わせ、ベッドの下やクローゼットの隙間などを異常に気にしているようだった

(……今日のミランダさんはどうしたんだろう?)

会話をしていてもしきりに何かを気にしているミランダを不思議には思っていたが、アレンにはその訳がさっぱり解らなかった
そしてアレンが部屋にやってきてからだいぶ時間が経ったのか、窓の外が暗くなってきた
そろそろいい時間だと思いアレンはミランダに部屋に戻ることを伝えようとしたのだが、今日は普段のミランダなら絶対に返ってこないであろう返事が返ってきた

「それじゃあミランダさん、僕はそろそろ戻りますね?」

「……え!?」

「今日はスイマセン、僕ばっかり喋っちゃって…」

「あ、あのアレン君…」

「それじゃあ…」

アレンが席を立ち、部屋から出て行こうとしたその時であった-


「あ、あのアレン君!きょ、今日は私と一緒に寝てくれないかしら…?」


「………はい!?」

アレンはたった今自分の耳に入ってきた言葉が信じられなかった

「あ、あのミランダさん!僕の耳が確かなら今『一緒に寝て欲しい』って言いました!?」

驚いているアレンの言葉にミランダは顔を真っ赤にしながらコクリと、アレンが聞いた言葉は間違いではないと言う意味で首を縦に振った

「あの…駄目かしら…?」

「いいいいえ!ぜ、全然駄目じゃないんですけど一体どうしたんですか!?」

「だ、だって…」

アレンの言葉を聞いたミランダはそっとある方向を指さした
アレンがミランダの指の先を追うと…

「……ラビのおみやげ?」

「だ、だってあんな怖い本だなんて思わなかったんですもの…」

本の内容を思い出したのか、涙目になってしまうミランダ、そんな涙目のミランダのお願いをアレンが断るはず無かった
二人でミランダの部屋の小さなベッドに寄り添うようにして横になる(ミランダはアレンに抱きつくように)
部屋が暗くなりふるふると震えているミランダにアレンが声を掛ける

「大丈夫ですよミランダさん…今夜は僕がずっと傍にいますから、安心して眠ってください」

「…うん、ありがとうアレン君」

アレンの言葉を聞いたミランダは、ぎゅうっとアレンを抱きしめながらゆっくりと目を瞑った
そして数分もしないうちにアレンの耳にミランダの寝息が聞こえてきた
そこでアレンは今日ミランダのお願いを聞いたことを少し後悔していた

(怪談が怖いなんて…ああもう可愛いなあ!!)

(あ~でもこんなに安心して眠ってる!)

(ミランダさん…僕はそんなに安心出来る男でいる気はないんですよ?)

自分を抱きしめながら眠るミランダの温もりに心臓が尋常じゃないくらいに高鳴っているアレン
自分を信じて、安心しきった顔で眠るミランダの顔を見て嬉しさと悲しさが同時に湧いてしまいその日は一日眠ることが出来なかった
そしてその翌日…何故か寝不足で目を真っ赤にしたアレンがラビに抱きついて感謝の言葉を何度も言うという異様な光景が教団内で見られたという…

END
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