ずっと傍に居るから。



真夜中に、誰かが部屋のドアをノックする音で目が覚めた

(…こんな時間に誰かしら?)

眠たい目を擦りながらベッドから降りてドアを開けた

「誰-」

しかし扉を開けたミランダが訪問者を尋ね終える前に…


がばっ!


「-えっ?」

真夜中の訪問者に突然身体を抱きしめられた
部屋の中から洩れる薄明かりを反射する銀色の髪を持つ人物に…

「ア、アレン君……?」

恐る恐る、自分を抱きしめているアレンに声を掛けたミランダだったが
アレンは何も答えずにただミランダを抱きしめるだけで、ミランダが感じ取れた物と言えば自分を抱きしめているアレンの鼓動ぐらいであった

「………よかった…」

「…え?」

ミランダの耳元でアレンがポツリと言葉を囁いた
その声がとても弱々しく感じられたミランダはアレンと身体を離しアレンと向き合った
そこでミランダが見た物は…

「ど、どうしたのアレン君?」

「…………」

思わずアレンに質問してしまったミランダ
何故なら向き合ったアレンの表情が涙に潤んで真っ直ぐに自分を見ていたからだった

「ねぇアレン君、何があったの…?」

「…………」

ただ黙ってミランダを見ていたアレンだったが、ミランダの姿を見ているうちにどんどんと表情が和らいでいった

「…スイマセン、実は凄く怖い夢を見たんです」

「…どんな夢なの?」

ミランダの問いに少し顔を曇らせたアレンがゆっくりと口を開いた



「…ミランダさんが死んでしまう夢を見たんです」



「…え?」

『私』が死んでしまう夢…?

ミランダはアレンの夢の内容を黙って聞いた

「AKUMAに殺されたのか事故なのかもう思い出せないんですけど、ただミランダさんが死んでしまった事だけは覚えてるんです」
「本当に怖くて…気付いたら目が覚めてて、『あぁ、さっき見たのは夢だったんだ』って思ったんですけど…」
「もしかしたら今僕はミランダさんが居ない世界に目を覚ましたんじゃないかって思ってしまったんです」
「それが本当に怖くなって…何だかこの冬の真夜中の寒さが永遠に続くような気分になって怖くて涙が止まらなくなって…どうしても今夜ミランダさんに逢いたくなったんです」

夢の内容と真夜中にここまでやってきた経緯を説明し終えたアレンが再びミランダを抱きしめた

「ア、アレン君…」

「よかった…ミランダさんが居てくれて…本当に…」

先程よりも強く、何かを確かめるように自分を抱きしめているアレンをミランダは優しく抱きしめ返した
するとアレンが再びミランダの耳元で言葉を囁いた、ただ今度囁かれた言葉はミランダに対するお願いであった



「ミランダさん…お願いがあります、今晩ミランダさんと一緒に寝させてください」

「……え!?」

突然のアレンのお願いにびくりと身体を震わせたミランダであったが

「神に誓って何もしません、今夜だけでも…お願いします…」

耳元から聞こえてくるアレンの声が弱々しくなっていくのを感じたミランダは…

「わかったわ、今夜だけ…ね?」

「…ありがとうございます」

ミランダは部屋にアレンを招き入れた…

そしてミランダの部屋にある小さなベッドに二人で寄り添うようにして横になる

「…わがままを言ってすいません…ミランダさん」

目の前で向かい合っているミランダに申し訳なさそうな顔で詫びの言葉を言ったアレンだったが
それを聞いたミランダは、ふふふっと笑みを零した

「アレン君ならいいわ、…気にしないでね?」

「ミランダさん……」

ミランダの言葉を聞いたアレンは一瞬笑みを浮かべた後に

「…ありがとうございます」

と言って瞳を閉じた
そして数分もしないうちにミランダの耳にアレンの寝息が聞こえてきた
(アレン君?寝ちゃった…?)
(私に逢えて安心してくれたんだ…)
(嬉しい…)
(今夜は私がずっと傍にいるから…安心してねアレン君)
心の中でそう呟いてからミランダは眠っているアレンの手をぎゅっと握りしめた。
そして安らかな顔をして眠る少年の額に一つ安らぎの意味のキスを落としてから自分も瞳を閉じたのだった…

END
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