二人の夏の日




「……それじゃあマナさんは本当に星を取ってくれたの?」

アレンの話を聞いていたミランダは驚いて言った
そしてミランダの言葉を聞いたアレンは笑いながら

「まさか、人は星なんて取れませんよ」

「じゃあ何だったの?」

「あれは…ホタルだったんです」

「ホタル?」

「ええ、野営した場所の近くに川が流れていたのでそこで捕まえたんだと思います」

幼少の頃の思い出話のからくりを面白そうに話したアレン

「ふふふ、でもその時はアレン君本気で信じてたんでしょう?」

「それは……」

恥ずかしそうにポリポリと頬をかいているアレンの姿を見てミランダは子供の頃のアレンが嬉しそうに義父が星を取ってくれた事を人に話している姿が頭に浮かんだ

「でも羨ましいわね…」

「…え?」

「私は…今日アレン君と夏の夜を散歩した事は忘れられない思い出になるわ」

「ミ、ミランダさん?」

ミランダの言葉に恥ずかしさと喜びを同時に感じたアレンだったが、更にミランダの言葉は続いた

「でも…アレン君にはもう夏の夜に忘れられない思い出があるんですもの、少し…マナさんが羨ましいわ」

微笑みながらアレンに言うミランダ、その顔は確かに微笑んでいるのだが何故かアレンの目には寂しげなものに見えた

「ミランダさん…僕だってミランダさんとの夜の散歩は忘れられない思い出ですよ?」

そんなミランダを安心させる為に、とびきりの笑顔を見せるアレン
その言葉と笑顔を見たミランダは

「…ありがとう、アレン君」

そう言ってアレンに微笑んでみせるミランダ…
しかしアレンは気付いていた
その笑顔にまだ寂しさが残っていたのを…









二人の夜空の散歩から数日後…


「…最近アレン君がおかしいんだよねぇ~」

科学室でコムイが誰に言うという訳でもなく呟いた

「…え?」

その誰に言うでもない台詞の中に『アレン』と言うキーワードが聞こえたミランダ(たまたまリナリーと一緒に科学室で資料整理を手伝っていた)が思わず反応する

「ああ…この間の事スか?」

誰に言うとでもない言葉に反応した人物がもう一人…
リーバーが心当たりがある様にコムイに話しかけた

「そうなんだよ、急に科学室に来たと思ったら『使ってないゴーレムあるだけ貸してください!』だって…しかも飛べるけど通信装置が壊れてるやつも…何に使うかも教えてくれないし…」

不思議そうに首を傾げているコムイ…
しかしコムイの言葉を聞いて反応を見せる人物が更に現れた

「アレン君、兄さんの所にも来たの?」

ミランダの目の前で一緒に資料整理をしていたリナリーがコムイに声をかけた

「リナリー?どういう事だい?」

「この間アレン君が『リナリー,ここ数日の間に何か任務が無いんだったらスイマセンがリナリーのゴーレム貸してくれませんか』って言って…ゴーレム借りに来たのよ」

「まったく…何にそんなにゴーレム使うんだ?」

リナリーの言葉を聞いたリーバーは不思議そうに呟いた
しかしリナリーの言葉を聞いたコムイはワナワナと震えている

「な、何て事だ…」

「ん?室長、どうしたんスか?」

「わかったんだよ!アレン君がゴーレムをどうするのか!」

「…どう使うんですか?」
リーバーは何となくこんな時のコムイがどんな事を言うのか予想がついた

「わからないのかい!?アレン君はゴーレムを使ってきっとリナリーを盗聴…!」

(あ~やっぱり…)

こんな時コムイが声を荒げるのはリナリー関連の事ばかりなのだ

「室長、それは無いですよ」

「え?何でだい?」

「だって貸したゴーレムは殆ど通信装置使えないやつじゃないですか」

「あ…そう言えば……じゃあ一体何に…」

「はいはい、くだらない事考えてないで仕事してください」

「…は~い」

そう言ってまたコムイは仕事に戻った
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