K×M短編集



とある冬の日、昨夜に降り始めた雪は今日の朝になってもやむことはなく尚も降り続き、窓の外では厳しい寒さを含んだ風が雪を絡め吹雪となって走り回っている
そんな冬の氷の世界を、室内から苦々しく見つめている一人の男――

「ちっ…いつまで降るんだこの雪は…」

カーテンをほんの少しだけ開け、窓の外の光景に目を向ける神田。外の寒さを想像してぶるりと身体を震わせた

「本当に…いつまで降るのかしらね?」

窓の外を眺めていた神田の背後からポツリと声が聞こえてきた
振り返るとミランダも窓の方を見て外の雪の凄さに驚いている様だったが、何処かしら落ち着いているようにも見えた

「…お前は寒くないのか?」

「私?寒いけど、私の住んでた所は毎年これぐらい雪が降ってたから寒いのには慣れてるの」

微笑みながらそう言うミランダの言葉を聞いた神田は再び身体を震わせた

(この女…どんなところに住んでたんだ…?)

信じられないような物を見る目でミランダを見つめる神田であったが、更にミランダの口から言葉が続く

「ふふふ、それに私は冬や雪が好きなの」

「…俺は夏の方が良い、お前が何で寒いのが好きなのか俺には理解できねぇな」

「あら?分からない?」

神田の言葉を聞いたミランダは嬉しそうに声をあげた
何の事だ?と、神田の頭の上にハテナマークが浮かんだとき、つかつかとミランダが神田の元へ歩いてきて、ぎゅっと神田にしがみついた
突然の出来事に神田の体温が上がっていくが、自分にしがみついているミランダは涼しい顔をして神田を眺めている

「だって…寒かったらこうして神田君に暖めてもらえるわ」

「っ…!?」

ミランダの言葉に面食らってしまう神田であったが、ミランダの熱を至近距離で感じどんどんと体温が上がっていくのが自分でも分かった

「…そうだな、だけどまだ足りないな」

「え……!?」

突然の浮遊感―

気付いた時にはミランダは神田に抱き上げられ、再び浮遊感を感じた時には神田に部屋のベッドへと落とされていた

「きゃっ…!」

ボスンと音を立てて落ちたミランダが驚いて神田を見ると神田の顔には妖しげな微笑みが浮かんでいた

「かかか神田君…!?」

その表情に冬の寒さではない別の寒さがミランダの身体に走る

「ミランダ…寒かったら『俺に暖めてもらえばいい』って言ったな…」

「いいい言ったけど…!」

「俺は寒いのが嫌いなんだ…」

じりじりと自分の方へ近づいてくる神田を見ながらベッドの上で後ずさりするミランダであったが、狭いベッドの上ではすぐに逃げ場が無くなってしまった

「だから雪が降ってる間は俺もお前に暖めてもらおうか」

「か、神田くっ…ンっ」

ミランダの唇に熱い、吐息混じりの神田の唇が押し当てられたかと思うとその身体を抱きしめられる
外では吹雪があらゆる熱を奪おうと駆け回っているが、二人に部屋には入って来れなかった
そして、この吹雪は一週間はやむことはなかったのだ…

END
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