L×M短編集
ミランダがシャワーを終えバスローブに着替え部屋へ戻ったとき、突然背後から抱きしめられた。
「ら、ラビ君!」
驚いて振り向こうとしたが、抱きしめてくる腕に自由を奪われそれは叶わなかった。
「ミランダ…」
耳元で囁かれる声に、身体から力が抜けそうになるのをこらえ、回された腕からの脱出を計った。
「ラビ君、離して」
「嫌」
短く答えると、ラビはミランダに回した腕の力を強めた。
「まだ…駄目なんさ?」
「だって…そんな急には…」
耳元から聞こえる少し寂しそうな声。
「…もう三ヶ月も経つんさ」
「ら、ラビ君は『待つ』って言ってくれたじゃない」
「待ったさ、三ヶ月」
「ラビ君…だって…」
「もう…いいじゃん…」
ラビの腕がミランダを束縛するのを止めたかと思うと、ラビはミランダを振り向かせた。
ミランダとラビは見つめ合う形となる。
ラビの腕がミランダの肩へと置かれ、ゆっくりと引き寄せられる。
「ミランダ…」
ラビの顔がゆっくりとミランダに近づいてくる。
ミランダはそっと目を閉じた。
あと数cmで唇が重なるという時…
「ラビ…くん…」
ミランダは小さくラビの名を呟いた。すると-
「だあぁぁもう!何でいつまでも『君』をつけるんさ!」
ミランダを引き寄せていた腕をピンと伸ばし、ラビはミランダと向かい合う。
「付き合い始めて三ヶ月も経つんだからいい加減『君』付けは止めてほしいさ!」
「だって!まだ慣れないんですもの!」
ラビの言葉に真っ赤になって言葉を返すミランダ。
ラビはその言葉に納得がいかないようだ。
「三ヶ月も毎日一緒にいればいい加減慣れてくるもんさ!」
「でも、でもぉ~」
もじもじと恥ずかしそうにしているミランダを見てラビは思う。
(ラビは俺の本当の名前じゃないけれど、ミランダにとっては恋人の名前)
(敬称が無くなった時が、ミランダが全部俺を受け入れてくれた時だと思うんだよなぁ)
(今は、しょうがないからこれで我慢しようかな…)
「ミランダ」
ラビはミランダの名前を呼ぶと、ミランダの返答もお構いなしに自分の唇を押し当てた。
ミランダの言葉、吐息、全てを奪うかのように…
【恋の悩みほど甘いものはない】