K×L短編集

「あ、今日はエイプリルフールだ」

ふと、部屋のカレンダーを見て今日が何の日か思い出す
折角気付いたのだから一つ、誰かをからかってやろうと思い、部屋を出て教団をぶらついてみる
すると、廊下の角を曲がったところでからかうには丁度良い顔を見つけたので声をかけた

「神田~」

「…リナリーか、何か用か?」

いつもと変わらない仏頂面の神田を見た瞬間に、私はある言葉が浮かんだ
この言葉を神田に伝えたら神田はどんな反応をするのだろうかとワクワクした

「うん、あのね…ちょっと耳貸して」

「? なんだ…」

面倒くさそうに、リナリーの方へ耳を差し出す神田
待ってましたと言わんばかりにリナリーは神田の耳に言葉を囁く


「大好き…」


「!?」


リナリーが言葉を囁いた瞬間に、ビクリと神田の身体が震えるのがわかった

『ビックリした?』

リナリーは次にそう言うつもりであったが…

「神田……?」

「………」

向き合った神田の顔は先程と変わらない無表情であった
流石に神田をこの言葉でからかうのは無理があったかとリナリーは思った、が

「リナリー、耳貸せ」

「へ?」

今度は神田がリナリーに耳を寄せるように言った
何かと思って素直に神田の方へ耳を差すリナリー


「…俺もお前が好きだ」


「へ…!?」


「じゃあな…」


それだけ言って背を向けて歩いて行ってしまう神田
去っていく神田の顔が耳まで真っ赤だったのは自分のからかいが成功したからなのか、それとも失敗したからなのか、リナリーが知る術は無かった




『嘘が本当に』





(この胸のドキドキは、一体どうすればいいのだろう?)

END
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