K×L短編集



ヒュッ!

夜中…
教団の外の森でいつもの様に神田が六幻の素振りをしていると…

ヒュンっ

「…(!)」

鍛錬中の神田に向かって何かが飛んできた

カンッ!

そして難無くそれを六幻で払う
地面に落ちた物体を見てみると…

(…何だ?小石?)

不思議がっている神田だったが直ぐに小石が飛んできた方向から声が聞こえて来た

「か~ん~だ~?」

「ん?」

声のした方を振り向くとリナリーが立っていた…
見るからに不機嫌そうである

「何だよ、どうしたんだ?」

「……約束……」

「あ?」

「…今日晩御飯一緒に食べる約束したじゃない!」

顔を赤くしたリナリーが責める様に神田に言う

「いくら食堂で待ってても来ないし、部屋に行ってもいないし、ラビに聞いたら『外に行くの見た』って言うから!」

「あぁ…悪ぃ…」

「何よ!私との約束よりも鍛錬の方が大事なの!?」
素っ気ない神田の返し方が更にリナリーを苛立たせる
しかし次の神田のリナリーへの返答を聞いてリナリーは青ざめた

「…あぁ、そうだな」

「なっ…!?」

自分よりも鍛錬の方が大事…

神田の口から出た言葉を聞いて信じられないといった顔をするリナリー
そして先ほどまでの怒りが引き…

「わかったわよ!もう神田なんて知らない!」

引いた怒りが一気に爆発した…

そしてリナリーが走り去ろうと後を振り向いた瞬間―

ぐいっ

「…え?」

神田がリナリーの腕を掴み自分へと引き寄せた
不意をつかれたリナリーは神田の胸の中へすっぽりと納まった
鍛錬中だった神田は上半身にさらしを巻き、素振りの途中だったのかうっすらと汗をかいていて心臓の鼓動も少し早いようだった
そしてそれを全て感じているリナリーは先程の怒りとは別に赤くなり、今の神田以上に心臓の鼓動を早めたのだった

「っ急に何するのよ!」

「約束を破ったのは悪かった」

リナリーを抱きしめながら神田が耳元で囁く
その行為に更にリナリーの鼓動が早まる

「なっ何よ!私よりも鍛錬の方が好きなんでしょ!」

今自分が置かれている現状が少々悔しくて神田の胸の中で大きな声を出すリナリー…
しかし神田はそのリナリーの質問にまたも素っ気ない返事を返した、しかし今度はリナリーが望んでいた答えだった


「いや、お前の方が好きだ」


「…へ?」

神田の返事にリナリーがキョトンとしてしまう
そんなリナリーに再び神田は耳元で囁く

「俺は強くなりたい、お前を守りたいんだ…」

そう言ってリナリーを抱きしめる力を強める神田…
そして不器用な恋人が自分を大切にしてくれていると解ったリナリーは

許すという意味を込めて

神田を抱きしめ返したのだった

END
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