A×M短編集
「ふぅ、終わったわ……」
昼間コムイに無理やり押し付けられた書類を自室に持ち帰り、深夜までかけてようやくそれを片付けたミランダ。
後は朝にでもこの書類をコムイに提出すればいい。
一仕事を終えたミランダは眠りにつこうとしたが目が冴えてしまったのか、眠れない。
久しぶりに寝酒でも飲もうと、気分転換も兼ねてワイン片手に談話室へと向かった。
するとそこには既に先客がいた、ランプの明かりで本を読む、闇に映える銀髪の持ち主がそこにいた。
「こんばんはアレン君、まだ起きてたの?」
「何だか目が覚めて眠れなくて、ミランダさんも?」
「ええ、何だか眠れなくて。少し話し相手になってくれないかしら」
「僕でよかったら」
そのまま二人は他愛のない会話に興じる。アレンと会話をしながらミランダはゆっくりとだが杯を重ねていった。
そして徐々に酔が回ってきたのか、ぼんやりとした瞳でじっとアレンを見つめるミランダ。
アレンはいつもとは違った、ほんのりと大人の雰囲気を醸し出すミランダに胸の鼓動が早くなっていくのを感じていた。
ミランダも普段は大人びた雰囲気を見せるアレンが少し戸惑っているのが目に見えて不思議とわくわくしている自分がいることに気づく。
「ふふ…アレン君も、一杯どうかしら?」
「え、でも僕はお酒なんて…」
「一杯ぐらい、良いじゃ無い」
戸惑うアレンに笑顔でグラスを差し出すミランダ。
ミランダの中では悪い大人の女を演出しているつもりなのだろうか。
酒を使って大人の女性の余裕を見せようとしている自分にミランダは内心苦笑していた。
未成年に無理にお酒を勧めるなんて自分らしくない、差し出した手を下げようとしたその時であった。
「もう、一杯だけですからね」
「あら?」
「…二人だけの秘密ですよ」
アレンの口から出た言葉がミランダにはとても甘美な言葉に聞こえた。
イケナイとは思いつつ、ミランダはアレンにグラスを渡すとワインを注いでいく。
注がれたワインを一口、くいっと飲んで見せるアレン。
「あ、美味しい…」
「ワインの味がわかるの?」
「実は師匠と修行の旅に出ていた時に師匠の愛人さんに飲まされたりしたんです」
これも、秘密にしてくださいね?
そう言ってまた一口ワインを含むアレン。
それから互いに杯を交わしながら他愛もない会話に花を咲かせる。
しばらくして酔いが回ったのか、アレンの口数は極端に少なくっていった。
(少し、飲ませすぎちゃったかしら)
心配そうにアレンを見つめるミランダに、つい、と視線を向けるアレン。
かすかに開かれた口元からは熱い息を吐き出し、蕩ける様な笑顔をミランダに見せる。
瞳は艶っぽく潤み、頬はほんのりと赤みがかっている。
アルコールによって火照る身体を醒まそうと、アレンはシャツのボタンを1つ、2つと外し始める。
その表情や仕草に普段のアレンからは決して見られない色気を魅せつけられミランダはアルコールとは違う熱が湧き上がるのを感じていた。
「ミランダ……さん」
「は、はい!」
背筋を撫でるようなアレンの甘い声にミランダはゾクリと体を震わせる。
「もう、遅いですから、そろそろ、寝ましょうか…」
「…え、え、え!?」
たどたどしくも力強いアレンの言葉でミランダの中にかろうじて残っていた大人の余裕はすっかり吹っ飛んでしまった。
ただただ狼狽えるしか無いミランダの姿を見て酔ったアレンはなにやら思考を巡らせる。
「…ミランダさん、もしかして、酔っ払って、動けないんですか、しょうが無いですね…」
ミランダの返答も聞かないまま、アレンはおもむろにミランダに近づくといわゆる【お姫様抱っこ】でミランダを抱き上げた。
「ちょ、ちょ、ちょっとアレンく……あっ」
「危ないですから、じっとしててください」
先程の背筋を撫でるような甘い声を今度は耳元で囁かれた。
アレンの声に動きを封じられたミランダはそのまま抵抗する間もなく部屋まで運ばれることとなる。
アレンはミランダをベッドに運び終えるととびきりの甘い声で「おやすみなさい」と囁いて部屋を出て行った。
その甘い声に因われてしまったミランダはその日結局一睡も出来なかったという…
END
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