A×M短編集
初めは単なる思いつきだった。
「ミランダさん、カードゲームでもしませんか?」
振り向いたミランダが見たのは、トランプを片手にニコニコとしているアレンの姿…
「急にどうしたの?」
「いえ、ただの暇つぶしですよ?」
「…面白そうね、やりましょうか?」
ミランダが了承した瞬間にアレンが小さくガッツポーズをした様に見えた。
「じゃあ、スタンダートにポーカーでもしましょうか?」
慣れた手つきでカードを切るアレンであったが、ミランダはアレンの言葉に考え込んでしまう。
「ポーカー…」
「どうしたんですかミランダさん?」
「あのねアレン君、私ポーカーって賭け事みたいであまり好きじゃないの」
「へ…?」
今まさにミランダに対しての罰ゲームの内容(しかも少々妖しい)を考えていたアレンは一瞬動きが止まる。
しかし、あきらめずに別のゲームを申し出た。
「そ、そうですか…それならピケなんてどうです?」
「ごめんなさい、ルールがわからないわ」
「じゃあ…ページワンはどうです?」
「…ごめんなさい」
「インペリアルは……」
「………」
イカサマをして、罰ゲームと称してミランダに悪戯をしようとしていたアレンの目論見は脆くも崩れ去った…
ならば、とアレンはミランダにカードを差し出す。
「じゃあミランダさんがやりたいカードゲームをしましょう」
自分は大抵のカードゲームなら出来る。
どんなゲームが来たって負けはしないだろう。
アレンから差し出されたカードを見てミランダが慌てる。
「私カードゲームに詳しくないから……あ、」
何かを思い出だしたような声を出すミランダ。
「アレン君、『ババヌキ』なんてどうかしら?」
「ば、『ババヌキ』?」
聞いたことのないカードゲーム。
一体どんなゲームなのかとアレンは首を傾げる。
「うん、神田君が教えてくれたんだけど…」
「…神田が?」
ミランダの口から出た人物に難色を示したアレンだったがミランダはそれに気付かない。
「ええ、とても簡単なゲームなの、あのね…」
そして『ババヌキ』の説明をアレンに始めるミランダ…
……
…
「……なるほど、つまりジョーカーを最後まで持っていた方が負けなんですね?」
「そう、簡単でしょ?」
ニコニコとババヌキの説明を終えたミランダがアレンに言った、しかし…ババヌキの説明を聞き終えたアレンは何やら神妙な顔をしている。
「いえ、このゲームって凄い心理戦だと思うんです」
「そうかしら…?」
「そうですよ…コレは…う~ん…」
何やら考え込んでしまったアレンを横目にミランダはカードを切った。
「はい、アレン君」
「…え?」
カードを切り終えたミランダがアレンの分のカードをアレンに手渡した。
アレンは真剣にババヌキについて何かを考えていたいたのか急にカードを差し出され驚いたような顔をした。
「アレン君…ゲームなんだから楽しみましょうね?」
「……はい」
そう言って差し出されたカードを受け取るアレン、ミランダも手持ちのカードの中から揃ったカードを切り出していった。
残ったカードを見るとどうやらジョーカーは入っていないようだった…つまりは…
「…………」
ミランダの目に映ったのは手持ちのカードを見て苦い顔をしているアレンの姿であった。
「じゃあ、はじめましょうか?」
そう言ってミランダがアレンからカードを引き抜こうとした時…
「ミランダさん、このカード…取ってみませんか?」
「え?」
見ればアレンは自分の手持ちのカードから一枚だけヒョコっと頭を出しているカードをミランダに勧めている、コレは明らかに…
「………」
「あ!」
ミランダはアレンの言葉を無視して端のカードを取った。
アレンから引き抜いたカードが一組揃い、ミランダのカードから一組が消えた。
「やったわ♪」
「……ミランダさん、僕このカードを勧めたんですけど」
嬉しそうなミランダとは対照的にアレンは悔しそうな声を上げる。
アレンがまだ初めてのババヌキになれていないせいもあったのか、ミランダに負け続けた。
『もう一度お願いします!』と勇んでミランダに挑んでは、それが顔に出るのかあっさりとミランダにババを見抜かれ黒星を重ねる。
自分がカードゲームでここまで負けるのが信じられないアレンは、しばらく唖然とした表情をミランダに見せ続ける事となるのであった。
END
