A×M短編集
「どうしましょう…」
ミランダが森を散歩していた時に、ぴぃぴぃと何かの鳴き声のようなものが聞こえてきた。
声にする方へと足を向かわせてみると、一本の木の下で小鳥が鳴いていた。
視線を上に向けてみると、枝の中腹に巣のようなものが見える、察するに小鳥は巣から落ちてしまったのだろう。
ミランダは小鳥を優しく拾い上げると小鳥を巣に戻そうと木にしがみついた、そこではたとある事に気付く。
片手が塞がったままでは木に登れない。
困り果てているミランダの手の中で、小鳥はぴぃぴぃと鳴いている。
「小鳥をポケットに入れて登れば…あぁ…でも、もし登っている途中で落としちゃったら…」
ミランダの頭の中を不安な想像がぐるぐると駆け回る、その時-
「何してるんですか、ミランダさん?」
「あ、アレン君?」
声のする方を振り向けば、そこにはアレンが立っていた。
聞けばミランダが散歩に出かけたと聞いて後を追いかけてきたという。
「良ければ散歩をご一緒させて貰おうと思ったんですけど…どうしたんです?」
アレンの質問にミランダは簡単に言葉を返す。
ミランダの言葉を聞いてアレンは小鳥と巣を交互に見た後、
「ミランダさん、小鳥を僕に」
「アレン君、木登りは得意なの?」
ミランダは心配そうに聞くがアレンは笑顔でミランダに言葉を返す。
「これぐらいなら大丈夫ですよ」
そう言うとアレンは、イノセンスを発動させた。
“道化ノ帯”
瞬間にアレンの左手の指が鞭のように伸び、アレンは木の幹にそれを巻き付けた。
そして、するするとその指を使い木の幹まで上がっていくアレン。
あっという間に巣までたどり着くと右手に抱えていた小鳥を優しく巣へと戻した。
「もう落ちないように気をつけるんだよ」
そう言うと、再びイノセンスを使って木を降りるアレン。
「お待たせしました…ミランダさん?」
一連の行動をぽかーんとした顔で眺めていたミランダ。
その顔には驚きと…喜びが混じったような顔であった。
「やっぱりアレン君は凄いわ」
「へ……?」
「私もアレン君みたいな腕があれば良かったのに」
アレンはミランダの一言に目を丸くした。
「そんな…こんな腕持ってたって良い事なんてありませんよ…」
今ではアレンの腕は身体と一体化して目立たないが、掌は以前のように赤く奇怪さを保ったままだ。
この腕を持っていたせいで自分が幼少時代どれほど苦しんだか、一度は切り落としてしまう事も考えた腕だという事を、ミランダは知らない。
「どうして?アレン君はその腕で小鳥を助けてくれたわ。素敵な腕じゃない」
「そうでしょうか…?」
「そうよ、素敵な腕だわ」
断言するように、ミランダは言った。
「アレン君、小鳥を助けてくれてありがとう」
柔らかい笑顔と共に、アレンに礼を言うミランダ。
「そうだアレン君、私もう少し散歩をしようと思うんだけど付き合ってくれるかしら」
「勿論、喜んで」
そう言ってアレンはミランダの横に並んで、二人は歩き出した。
しかし、数歩進んだ所でアレンはミランダに言葉を掛ける。
「ミランダさん、一つお願いがあるんですけどいいですか?」
「お願い?何かしら?」
「散歩の間…手を繋いでいていいですか?」
「手を…?ええ、いいわよ」
「じゃあ…失礼します」
ミランダの了承を得るとアレンは左手でミランダの右手を握る。
アレンの手の平に暖かな温もりが伝わってくる。
(この腕が素敵な腕だなんて…でも…)
(貴女の傍にいると、僕はこの腕を持っていて本当に良かったって思えるから…不思議だな)
自分と手を繋ぐアレンがどうして笑顔なのか、ミランダには解らなかったが
アレンの笑顔を見て、ミランダも幸せな気分になった。
END
