神田君の憂鬱

『全部リナリーのせいだ』


俺は今日、黒の教団で一人の女と知り合った
名前はリナリーと言うらしい
その日の夜
夢の中にリナリーが出てきた
そして俺に笑いかける
それはもうとびきりの笑顔で
その夢を見た時
心臓が尋常じゃないほど高なり
思わず飛び起きていた
最悪な事に
その日からしばらくリナリーが夢にでてきて
その度に胸の高なりで飛び起きる羽目になって…
寝不足な日々が続いた

『全部リナリーのせいだ』


しばらくしたら夢にリナリーは出てこなくなった
ようやく安眠の日々が来たと思ったのもつかの間
今度は逆に起きている時にリナリーの事を考えるようになった
修練場で六幻の素振りをしていても
頭からリナリーが離れない
勝手に俺の頭に出てくるくせに俺を惑わしやがる
だからなんでリナリーの事ばかり考えるのか考えていたら
回りに注意がいかなくなっていて
階段を踏み外して足を捻挫する羽目になった
(傷はすぐに治ったが…)

『全部リナリーのせいだ』


しかし俺はいつの間にか
リナリーの事を考えても
夢の中にリナリーが出てきても
心臓が高まらなくなる術を編み出していた
流石俺だ
もうリナリーが頭の中や夢に出てきても

心が安らぐだけだ

もう俺に死角はない

『全部リナリーのせいだ』


と、思ったのもつかの間
食堂でリナリー本人に会ってしまった
今まではリナリー本人に会う度に胸が高なって息苦しくなるから避けていたが
食堂で俺の目の前に座られた
畜生…何見てるんだ…
何で笑ってるんだ…
俺が食べる姿がそんなに可笑しいか…
駄目だ…
リナリーが側にいると…
蕎麦も喉を通らなくなる…
この後しばらく食堂でリナリーを見かける度に
飯が喉を通らなくなる現象が起きた…
おかげで食欲不振になっちまった

『全部リナリーのせいだ』


一体あの女は何なんだ
あいつが俺を狂わせる
このままじゃあ俺は変になってしまいそうだ
だからその事をリナリーに言いに行く事にした

『全部リナリーのせいだ』


おかしい
俺はおかしい
どうしてなんだ
あの女の前に行くと
言いたかった事が何も言えなくなる
…ズルイ
俺がこんなに苦しんでるのに
食事も喉を通らないのに
そんな笑顔で俺を笑うなんて
それもこれも全部……



『リナリーのせいだ!』

END
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