朝の風景

朝になり目覚めるとベッドに彼女の姿はなかった
パジャマのままリビングへ向かうと彼女が朝食を作っている最中だった
リビングに来た僕を見付けるとやわらかい笑顔で朝の挨拶をくれる彼女…

「おはよう、アレン」
「おはよう、ミランダ」

僕も彼女の笑顔を見て
半分にやけの入った笑顔で挨拶を返す

「もうすぐ出来るからその間に顔でも洗ってきたら?」

「うん、そうするよ」
そう言って洗面所へ向かった
顔を洗ってサッパリとした気分でリビングに戻り椅子に腰掛ける
やがてキッチンから皿を持った彼女が僕の前のテーブルに朝食を置いていく
目の前の皿には…

少し焦げたトースト

形の悪い目玉焼き

硬くなっているベーコン

そしてコーヒー

朝食を並べ終えると彼女はエプロンを外し僕の向かいに座った
目の前に並んだ朝食を見た僕は

「ふふ…いただきます」
と笑みを浮かべてから目の前のトーストを囓った(少しコゲの味がする)

「…どうしたの?」
ニヤニヤとしながらトーストをかじる僕を見た彼女が不思議そうに聞いてきた

「ん…少し昔を思い出したんだ♪」

「昔…?……あっ…!」
僕の言葉に少し首を傾げた彼女だったが僕の言う昔が何の事かを思い出し赤面しだした
そんな彼女がたまらなく可愛く見えた僕は少し昔の出来事を懐かしむように話す…

「ふふ♪昔のミランダのトーストは炭みたいだったよね?」

「うっ…」

「それから目玉焼きも作れなくて全部スクランブルエッグにしてたよね?」

「ううっ…」

「ベーコンは…昔から変わってないよね?」

「うううっ…」

ニコニコと笑顔でミランダの心の傷をつっつくアレン
アレンが一つ思い出を語る度にミランダが小さくなっていくようだった

「何よ…昔の話じゃない…」

「うん、昔に比べたら大分上達しました,後はベーコンをもう少し頑張りましょう♪」
トーストを半分食べ終えたアレンがからかうようにミランダに言う

「うぅ…アレンの意地悪……」
恨めしそうにアレンを見るミランダ
そんなミランダの目もアレンには可愛く映る(実際可愛いのだからコレは仕方ない)

「うん、僕は意地悪だよ?君が可愛いからついついイジメたくなっちゃうんだ♪」

「もう……早く食べちゃってよ」
アレンのセリフを聞いたミランダは呆れた様な声を出す
トーストを食べ終えたアレンはコーヒーに手を伸ばす
くいっとマグカップを傾けて、一口コーヒーを飲む

「…うん、これも変わらない」

「もうっ!今度は何?」
アレンのしつこいからかいにミランダは少し怒ったような声をだした、が
アレンはミランダの顔を見て

「…昔からミランダの煎れたコーヒーが1番美味しい」
とゆっくり言った

「へ?」
「いつも美味しいコーヒーをありがとう」
それからアレンは満面の笑みでそう言った
その笑顔にミランダは

「ど、どういたしまして…」

と、照れながら答えた
昔からミランダはアレンに勝てないままでいる



その後ベーコンを口にしたアレンはベーコンの焦げた部分を思いきりかじり苦い顔をした
その顔を見たミランダは

「ふふふ、私をからかった罰よ♪」

と楽しそうに言った
勝てはしないが負けもしていないのがこの二人の日常
こうして笑いながら一日が始まった…

END
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