口付け

-え?-

『私は君のイノセンスだ』

-え?だって…アレン君?-

『…この姿は君の記憶の中から君が大事に想っている人間の姿を借りたものだ…』

-そんな…どうして?-

『…君を慰めたかった』

-慰める?-

『ここは君の夢の中だ』

-夢の中?-

『現実の君は……とても嫌な事があり疲れて眠っている……だから私は…君が一番逢いたい人物の姿を借りてせめて夢の中で君を癒したかった』

-イノセンス…-

『しかし所詮は仮初めの姿だったからか…』

-え?-

『やはり君を癒したのは私ではなかった…』

-そんな事…!-

『いや…いいんだ…ミランダ…』

-はい?-

『……君は私を本当に慈しんでくれていた大切な友人だ…だから悲しんでいる君をどうしても私が癒したかった…君が悲しんでいる姿は見たくないから』

-…はい-

『まあ……この姿のお陰でも君が笑ってくれたからよしとしよう…』

そう言ってアレン-いやイノセンスがミランダの元へ歩み寄る

『今から君は目覚める』

-え?-

そう言ってイノセンスが指を鳴らすと…その瞬間世界が暗闇に包まれていく

-待って!イノセンス!-

『ミランダ…』

暗闇の中イノセンスの声が聞こえた

『…私はいつもそばにいるぞ…』
………
……




…………パチ!

ミランダが目覚めると
どこかの宿の寝室だった…
「そうか…ここは……」
ミランダは今まで起きた出来事…そして何故自分がここで寝ているのかを思い出し…ふと涙を流した

そしてそのあと燈籠の横に置いていた小さなネジ巻きにそっと口付けて…
「ありがとう…」
と呟いた…









ほのかに薔薇の香りがした…

END
6/6ページ
スキ