口付け

どんな無理難題が出されるのかと思っていたミランダは

-その薔薇を取ればいいのね?-


笑いながらピエロに近づいた

がしかし-

ミランダがピエロに近づき薔薇を持ったピエロの腕に手を近づけると-

    ひらり

とまるで蝶が舞うかの如くピエロはミランダの腕をかわし
今度はステージの中央へと文字通り飛んだのだった

-……何よ…それ-

とても簡単な事だと思っていたミランダはピエロの人並み外れた……しかしどこか美しい跳躍に少し愕然としてしまった
そんなミランダの姿を見たピエロは

『私も一応プロでございますから、そう簡単に取らせる訳にはいきません』と

大袈裟なお辞儀をしてミランダを戸惑わせたのだった

-あんなジャンプができるんじゃ私には到底捕まえる事なんてできないわよ-

『いやいやお客様…これはある種の予定調和…でございます、そんないきなり薔薇を取られてはショーが盛り上がりを見せないではございませんか』

-そういうものなの?-

『そうでございます……ささ、今度は私めはこの場から動く事はございませんので…』

-本当?-

『本当でございます…この道化…生来嘘を申したことがないのが自慢でして…』

-じゃあ…もう一度-

そう言ってステージ中央へと歩むミランダ

『さてさて…今度はどうですかな』
ミランダの前に薔薇を差し出してみるピエロ

-…えい!-

『おっと!』

伸ばしたミランダの腕を簡単に避けるピエロ

『うん、今のは中々の早さで私も危うく薔薇を…』

-えい!-

ピエロの話の途中だったが構わずに薔薇を取りにかかるミランダ……
ミランダの奇襲に危うく薔薇を取られそうになるピエロ

『おっと!』

-う~ん、惜しかった-

『やれやれ、人の話は最後まで聞くものですよ』

-ふふふ、スキがあったから…つい-

『まったく…これが背後からだったらどうなっていた事か…』

-背後?-

『あいや!しまった!私はこの場から動けないのだった!』
わざとらしいピエロの会話を聞いたミランダはゆっくり背後へと回った…
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