口付け

-酷く悲しい事があった気がする…でも今は何か暖かいものに包まれる感じがする-

ミランダが気が付くと大きな大きなサーカスのテントの中にいた
ただおかしい事が二つあった
一つは…こんな所にいつ来たのか記憶が無いこと
もう一つは…サーカスのテントだというのに客席に自分一人しかいないという事だった

-私は気がついたらここにいた-

-でもここが何処かは知らない-

-どうしてテントの中にいるのかしら-

-私はどうしてここにいるのかしら-

知らない間に知らない場所にいるというのに
何故か恐怖や不安という感情はなかった
そして何故かここから出て行こうとは思わなかった
何故なら-

『いらっしゃいませ!』

いつの間にかステージの中心にピエロがいて
サーカスが始まったからだった

『ようこそおいでくださいました、一時の間ではございますがその間、時を忘れてごゆるりとお楽しみください』

顔は白塗りと滑稽なメイクと大きな付け鼻がされていて分からなかったが、声から察するに少年のピエロがミランダに丁寧なお辞儀をして
サーカスの幕が開けた

-一体何を見せてくれるのかしら-

知らないうちに座っていたというのに
ミランダはワクワクしながら劇の始まりを見ていた
そして奇妙なサーカスが始まった……
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