すてきな夜空

どんどんと歩いて行く神田…
いつしか教団の門へと歩いていた

「外へ出るの?」

「あぁ」

「……私コレじゃ寒いんだけど…」

そう言ったリナリーは自分の格好を指差す…
二月の寒空にショートパンツ姿のリナリー…
その姿を見た神田は

「あぁ…だったらこれを羽織れ」

そう言って自分の着ていたコートを差し出す神田

「え?」

「早くしろ…時間が無い…」

慌ててコートを羽織るリナリー

(暖かい…神田の温もりだ…)

「おい…どうした?」

「なっなんでもない!」

「…行くぞ」

門をくぐりまたスタスタと歩いて行く神田
それについていくリナリー

二人は教団側の森の道を歩き続ける



30分程歩き続けた神田

「ねぇ…どこまで行くの?」

「…着いた」

「え?」

着いたと場所を見渡してみてもその場はただの広い草原だった

「この場所で何を見せるの?」

振り返ったリナリーが見たものはゴーレムと話す神田だった

「おい…着いたぞ」

『ん~やっと来たぁ?待ちくたびれたよ~』

「悪い…」

『んじゃあ始めていい?』

「ああ…ちょうどいい時間だ…始めてくれ」

『アイサー!』


そう言ってゴーレムとの会話を切る神田…

「誰と会話してたの?」

「いや……それよりも空を見てろ」

「空?」
言われて顔を上げるリナリー…その目に映るのは生憎と雲ばかりの夜空である…

「曇り空なんか見せてどうするの?」

「……いいから見てろ」

「?」

不思議に思ったリナリーだったが顔を上に戻した時に一筋の光が雲へと伸びた…

「え?」

その光が雲へと到達したその時…音を立てて雲が消えた…

バシュウウ!

そして雲が消えた空には…
星がちりばめられた冬の星空が広がっていた…

「うわぁ……」

その光景に目を奪われるリナリー…

「神田……」
神田に礼を言おうとしたリナリーだったが

「違う…」

「え?」

「俺が見せたいのは次だ…」

「次?」

ひゅ~う…

次と言われて空を見上げるとまた一筋の光が…ただ次の光は先程と違いジグザグに天を目差していた…その光が天高く舞い上がった次の瞬間


ドーン!!!

光が破裂し色とりどりの小さな光となって、ほんの一瞬ではあったが夜を照らした…
その光景に目を奪われるリナリー

「………」
目の前で起きた光景に言葉も失くす…
ただ空を見上げている事しか出来なくなっていたリナリーに神田が言葉をかける

「……リナリー」

「……?」

「……誕生日おめでとう」

「…………え?」

「今は…二月二十日だ…だから誕生日おめでとう」

「神田…」

「…生憎花火が一発しか手に入らなかったんだ…でも綺麗だったろ?」

「…うん!神田…」

「ん?」

「…ありがとう」

「……ん」

花火が終わり静寂が戻った夜…
月明かりの下で抱き合う恋人達の鼓動だけが聞こえた…
そして…






「ねぇユウ~何で出ないの~?」
草原から遠く離れた場所でススだらけのラビがゴーレムにぼやく…

「なんで?用がすんだらポイってか?木判まで使わせておいて……花火を上げたのも俺なのに…酷い…」


愚痴るラビとその後合流し、リナリーの

ありがとうラビ!すっごく綺麗だった!

の一言でラビの機嫌を直し三人温かい気持ちで帰路を歩く…


そしてまだ彼等は知らなかった…
花火の轟音を千年伯爵の兵器か何かと勘違いし…
教団が大混乱になっているのを…

END
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