第2章
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「着いてきてください」
頭の中で男か女かわからない声がする。霧の中に居る様で、私はこの声に従わないといけない。遠くでぽろろんと落ち着いたハープの音がする。
moonというレトロゲームがあった、2000年よりもちょっと前に発売されたプレステの伝説のゲーム、switchでリメイク版があったから大人になって初めて遊んだ。
――もう、勇者しない。伝説のアンチRPG。
勇者に殺されたモンスターの魂を回収するのだけど、そのうちの一匹でハープの音を奏でるモンスターが居て、BGMに耳を澄ませながら一生懸命ハープの音を追いかけたけど、結局見つけられなかった。『ラブ……』とmoonに出てくる顔のデカいピエロみたいなキャラクターが画面の中で囁く。『…それもラブ…これもラブ』その顔がだんだん女性から男性になって、立派な白いひげが生えて、ダンブルドアの顔になって、『愛じゃ』とほほ笑む。意味の分からない。変な夢、笑っちゃう。ファンタジーはこれだから――
「ぁ、ひぃっ、いやっ、……いやぁぁぁぁああああああああああ!」
可愛そうな女の人の大絶叫。それが自分の声で、自分の喉から出ていると理解した瞬間、私は全身を強く石の階段に打ち付けた。
「いつまで寝ているつもりだ!早く、石の、石の取り出し方を!」
知らないはず、だけど知ってる。私はもう、思い出している。
「ハリー、ハリー・ポッターが来る!彼じゃないと取り出せない、彼のための物語、彼のためにダンブルドアがそう設定した!これは彼が強くなるための布石だから、成長するための!」
どうして忘れていたのだろう、急に霧が晴れたように頭がはっきりする、大事なことを思い出した。ここは小説の中の世界、物語があった。ハリー・ポッターと賢者の石。まだ序章に過ぎない、長い長い物語の記念すべき第一巻。
つかみ損ねた生卵を落としたように、思考がぐちゃりとつぶれて中身が出てきたような感覚だった。
「ヴォルデモート……!」
痛む全身を抑えて立ち上がり、その名前を呟く。クィレル先生……いや、クィレルはぎょっとした顔で私を見た。
まだターバンを巻いている。“みぞの鏡”の前でわなないている。今日は試験最終日、深夜に賢者の石を取りに来た。ハリーはまだ来ていない。きっと今頃、大きな盤上で魔法のチェスをやっている。
割れた卵の殻をパキパキと踏み抜きながら“知っていること”が外に出てくる。その度にまるで神経をハサミで切断しているような取り返しのつかない痛みを覚え、それが冷や汗に変わり頬を伝った。
「……あなた……あと数時間で死にますよ、クィレル先生。この計画は上手くいかない……」
「なぜそれを……?思い出したのか、すべて?思い出したのか!」
大の大人が絶叫する、血走った目で骨を浮かせて、よく見たら大分やつれている。かわいそうに、ここまできたらもう手遅れだ。衰弱による死の恐怖を間近に感じている頃だろう。
は、は、と短い呼吸を繰り返しながら自分の服の胸元をちぎれそうなほどきつく握った。どうしよう、落ち着け、落ち着かなきゃ。
ガタガタと膝も震え、立っていられなくてずるずると壁に縋りついた。羽虫を払うように頭を左右に振う。
何度も見たあの悪夢の中で、苦痛に叫んでいた女性は私だったんだろうと、なんの根拠もなく思った。なんの記憶も無いのに、体に刻み込まれた恐怖心だけが蘇って手が震えるのだ。考えることをやめて早く記憶に蓋をしないと、きっと大変なことになる。
胃から内容物がせり上がってきて、それを床に吐き出した。何かおぞましいものを口に入れたような気がする、生きた虫を丸呑みするよりおぞましい何かを。強迫観念に引き寄られる気がして、踏みとどまる為に自分の体をかき抱いた。
恐怖に飲まれてうまく思考が働かない。舌がもつれてヘドロのようにのどに詰まる。クィレルは引き攣った顔でゆっくり杖を取り出した。その先端をこちらに向け何か言ってるけど、私の脳はまだ正常ではなかった。
その瞬間、広間の階段の奥から少年が現れた。物語の主人公、ハリー・ポッターが。
一瞬ほっとして、そんな自分にハッとした。
ああ――私はこんな小さな、リリーが残した可愛い男の子に縋るのか。彼が選ばれた“主人公”だから。
「あなたが!」
ハリーは息を飲んで、クィレルと、クィレルに杖を突きつけられる私を見た。
「私だ。ポッター、君にここで会えるかもしれないと思っていたよ」
「でも、僕は……スネイプだとばかり……」
「セブルスか?」
クィレルがハリーに事の経緯を説明する、セブルスのを育ちすぎたコウモリと呼び、クィディッチの試合のホウキのことを話す。その間に、私は左手の人差し指の指輪を触りながら必死で頭を動かした。
どうする、この先でどうしたらいい?このまま原作通り進むなら、賢者の石は守られるけどヴォルデモートは逃げおおせてしまう。私はまだその先の展開をちゃんと思い出せていない、ただもっと長くて暗い話が続いた気がする。
でもきっと、最善なのはここにクィレルをとどめておくことだ。そうしてダンブルドアが来て、クィレルに取りついたヴォルデモートと今対面したら、間違いなくダンブルドアが勝利する。確実にヴォルデモートの息の根を止められる。
そう、それがいいはずなのに、何か重要なことを忘れてる気もする。この物語はもっと複雑だった——。
「ハリー、もういい。いいの、ここに居て」
ハリーは必死に声をかけてクィレルの気を逸らしていた。クィレルは鏡を入念に調べ続けて、うわの空でハリーに返事をしている。
とにかくこの場をどうにかしなくてはと、私はその隙にゆっくりハリーに近づいて手を握った。
「……なまえさん」
「大丈夫、大丈夫味方だから、私もセブルスと同じだから。君を死なせはしないから」
ハリーが鏡の前に行かなければ、石は取り出せないはずだ。この部屋の中で、今石を取り出す条件を満たしている者はハリーだけだ。それだけは確かなはず。
ああ、思い出したと思った内容もまだ曖昧ではっきりしない。
「でもなまえさん、石を守らないといけないんだ、石が……!」
「大丈夫ハリー、石は守られてる。ダンブルドアの仕掛けが効いてる。もう直にダンブルドアが来る、それまでここにいて、動かないで」
そう言いながらきつくハリーを抱きしめる、細くて小さい子供の体。「大丈夫、大丈夫だから、私が君を守るから」と同じ言葉を繰り返して、私はじっとクィレルの一挙手一投足を見続けた。
守るものがあるってこういうことなのかもしれない。一人だったら無理と思っていたことも、この子を守らないといけないんだと思えば急に力が湧いてくる。
今ならそう、この子のために自分が死んでも良いとすら思える。リリーの意思を継ぎたいと。
「この鏡はどういう仕掛けなんだ、どういう使い方をする?ご主人様、お助けを……!」
「無駄だよクィレル、例え石が手に入ろうがあなたは死ぬ。」
「このマグル風情が……!」
クィレルが鏡から目を離し私を見たとき、もう一つの声がした。ターバンの奥から聞こえる、くぐもった弱弱しい声。
「子供を使うんだ……子供を使え」
私は絶対に離すまいとハリーを抱きしめる腕に力を込めた。
クィレルが「わかりました……ポッター、ここへ来い」と言いながらハリーに腕を伸ばし、私は「ダメだよハリー、行っちゃダメ」と囁きながら引き留めた。
ハリーは困惑しながら、「なまえさん……」と私の名前を呼ぶ。
「お前は邪魔だ無能なマグルめっ」
クィレルがハエでも払うかのように杖を横に振れば、見えない何かが勢いよく私を吹き飛ばした。まるで交通事故にでもあったかのような衝撃で体が吹っ飛んでいく。
「なまえさん!」
ハリーの声が響くと同時に、私の体は石の床にドンっと強く叩きつけられた。クィレルがパンと手を叩くとその場にハリーを縛っていたロープが落ちる。
「ここへ来るんだ!」
「行かないでハリー!」
「この……!」クィレルが目に濁った光を宿らせながら杖を振ろうとする。
死ぬかもしれない——。反射的にそう思って、恐怖で目を閉じた。
「だめだ!!!」
ハリーの叫びが響く。ハリーがクィレルの腕を掴んで止ようとして、必然的に鏡の前に立った。
「そうだ、それでいい……。鏡を見て何が見えるかを言え」
ハリーは好奇心で鏡を見てしまうだろう、まだほんの11歳だもの。日本なら小学生よ?ランドセル背負ってるくらいなの。
ハリーの方を見なくても何が起きるかわかる。ハリーは石を手に入れてしまうだろう、それはポケットに急にねじ込まれるように、魔法のように突然現れるだろう。私はよろよろと立ち上がって落ちていたロープを拾った。クィレルさえ止められればいい、ヴォルデモートは虫の息だ。クィレルの両手さえ塞ぐことができれば、それで時間を稼げるはずだ。
「俺様が話す……直に話す……」
「ご主人様……!あなた様にはまだ十分に力がついていません!」
「このためなら、使う力がある……」
クィレルがゆっくりとターバンを外していく。長い長い5秒のあと、クィレルが後ろを向いた。そこにはもう一つの顔があった、ヴォルデモートの顔が。
わかっていても、おぞましい。およそ人とは思えない、何かが腐った匂い。芋虫の死骸をかき集めたような不完全な顔の形。未成熟な臓器の内側をひっくり返したかのようなぬるりとした皮膚。
「ハリー・ポッター……このありさまを見ろ。ただの影と霞に過ぎない――誰かの体を借りて初めて形になることができる……しかし常にだれかが、喜んでその心に入り込ませてくれる……この数週間は、ユニコーンの血が私を強くしてくれた……」
ヴォルデモートの長い自分語りが始まる。そう、それでいい。なるべく時間を稼げれば何でもいい。喋っているその顔から目を逸らして、ハリーを守るために彼にこっそりとにじり寄る。
「さて……ポケットにある石をいただこうか」
ヴォルデモートの言葉にハリーは呻きながら後ずさりをする。私はとっさに駆け寄ってその背中を支えた。
「馬鹿な真似はよせ、命を粗末にするな。私の側につけ……さもないとお前も両親と同じ目にあうぞ……二人とも命乞いしながら死んでいった……」
ヴォルデモートがリリーとジェームズを侮辱すると、それまで恐怖で固くなっていたハリーが力強く反論した。
「嘘だ!」
「胸を打たれることよ……私はいつも勇気をたたえる……そうだ、小僧。お前の両親は勇敢だった……私はまず父親を殺した。勇敢に戦ったがね……しかしお前の母親は死ぬ必要が無かった……母親はお前を守ろうとしたんだ……母親の死を無駄にしたく無かったら、さぁ石を寄こせ」
「やるもんか!」
ハリーはそういって、ばっと私の腕を振り払って炎の燃え盛る出口に向かって走った。待って、と手を伸ばしながら頭で違うことを考えた。
あれ……?そうだ、母親は死ぬ必要が無かった、そうだ、そう。だってセブルスがそう懇願したから……。
――なんで忘れてたんだろう、セブルス・スネイプは死食い人だと。
「捕まえろ!」
ヴォルデモートの怒鳴り声とハリーの叫び声で思考を中断させる。私はとにかくあれを止めなくてはとロープをひっつかんでクィレルに飛びついた。ハリーがクィレルに触る、クィレルは痛みでもがく。知っている、これはリリーの愛。我が子を守るための、リリーの優しい愛。
リリーは決して、人を傷つける子じゃなかった。賢者の石を初めて読んだ時、私は思ったんだ。え、ハリー、クィレルのこと殺したの?って。正確にはちょっと違っていて、クィレルがもう持たないと察したヴォルデモートがその体を離れる際、クィレルは命を失ったのだとそんな風にダンブルドアが言っていたけど、方便だよねと思った。
リリーの息子を、たった11歳で殺人に片足突っ込ませるようなことしたくないんだ。それが例え正当防衛で、ハリーの心にはなんの影を落とさないものだとしても。
クィレルが自分の焼けただれた腕を見る、その隙に後ろから首にさっと縄を回して思いっきり締め上げた。至近距離にヴォルデモートの顔がある、恋人みたいな距離に吐き気がする。
「ただのっ、魂のっ、欠片が……!」
腕を力の限り左右に引っ張って、私は唸るようにそう捨て台詞を吐いた。ヴォルデモートは心底憎々しいという顔をして「殺せ!殺せ!」と叫んだがクィレルはもう杖も持てない。魔法を使えないクィレル先生は、もうただの衰弱した一人の男性だ。私でも——殺せる。
おぞましいヴォルデモートの顔が、まるでキスをするように私に迫ってくる。もうすぐ死ぬ男の体を捨てて、私の口を目掛けて、体内に入ろうとしているのだと気づいた。
怖い、今すぐ逃げたい、でもこのロープを離せない、せめてクィレルは私が殺さないといけない。自分の意思と反するように、固く閉じていた口が開いていく。
「ひ、ぁ……ぅ……」
それはまっすぐ私の喉の奥を目がけて、ひんやりとした何かを空気と一緒に吸い込んだ感覚があった。
「やだ……やだ、セブ、ルスっ……」
体の内側が形容しがたい悪寒で満たされた瞬間、左手の指輪が温かい光を放った。その瞬間、音のない絶叫が聞こえて、何かが私の中から出ていった。
助かった——?
握りしめたままだったロープがずんと重くなっていたことに気付き、足元を見るとクィレルがもう死んでいた。体の一部が焼けこげた炭のように黒くひび割れ、全身が壊死しているように見える。その奥で、ハリーもまた床に倒れている。
「ハリー、ハリー……っ」
慌てて小さな体に駆け寄って、石の上に倒れる体に触れた。肌が柔らかく、呼吸が続いていることにほっとして、そのおでこの傷跡を撫でる。間に合わなかった、変えられなかった。物語は続いていく、ヴォルデモートは取り逃がした。
割れそうな頭を押さえて、必死に本の内容を思い出す。断片的に、それも大したことは思い出せないけど、その小説が存在して私はそれを確かに愛していたことを、今ははっきりと思い出せる。
数十秒か数分か、音のない静寂が続いた。ハリーを引っ張って外に出る元気は無かったし、待っていればダンブルドアが来るのはわかっていた。ばたばたと足音が聞こえて、姿を現したのはセブルスだった。
「なまえ……!」
顔を見た瞬間、忘れていた涙がぽろぽろと溢れてくる。
「だから、一人で居るなと、あれほど……!」
「セブルス、セブルス……!」
セブルス……死食い人のセブルス・スネイプ。私の愛しい人。
彼と同時にダンブルドアも姿を現した。私はセブルスに抱きしめられながら、ダンブルドアと目が合った。その射抜くような鋭い眼差しが怖くなり、セブルスの肩に顔を埋める。
どうしよう。私は今、人を殺した。
無言のままセブルスに支えられ、ゆっくりと道を戻っていく。小瓶が並んだ机、倒れているトロール、ボロボロの大きなチェス盤、飛んでいる沢山の鍵、そして悪魔の罠を通り抜けハープの音に酔いしれるフラッフィーの元まで帰ってくる。
全部そう、本で読んだ通り。
保健室まで辿り着き、マダム・ポンフリーには先にハリーをお願いした。私はセブルスの隣で綺麗なベッドに腰をかける。
——あなたは死喰い人なの?ダンブルドアに話さなきゃいけないことがある。私、今人を殺したの、さっきまで同僚だった人。私、知らないうちに拷問受けてたみたい、拷問っていうのかわからないけど。そのクィレル先生は私が殺したけど。ねぇところで、ここ小説の中なんだって。なんか疲れちゃった。
「指輪……」
ごちゃごちゃになった思考の中から、ひとつだけ言葉を拾い上げ、セブルスが真剣な顔で私を見ていた。
「役に立ったの、ありがとう」
全てが小説の内容をなぞっていたこの1年の中で、これだけは違う。
セブルスが何かを言いかけた時、サッと勢いよくベッドのカーテンが開いた。
「遅くなってすみません、ミス・みょうじ」
「……大丈夫です」
マダム・ポンフリーは治療のためと一旦セブルスとダンブルドアを外に出し、私に服を脱ぐように言った。大人しくそれに従い、ベッドの上でうつ伏せになる。
「……大変だったでしょう」
マダム・ポンフリーの杖が体をなぞると、まるで極上のマッサージでも受けているかのように心地よかった。
「傷跡はほとんど残りませんから、安心してください。後遺症も無いでしょう、ゆっくり休んで……。もう安全です、大丈夫ですから……」
少しだけ硬いマダム・ポンフリーの口調に、じっと目を閉じる。
「あんまり……確かな記憶は無いんです。怖かったことは、覚えてるけど……」
「そのままが良いでしょう、無理に思い出す必要はありません。まずは心と体の回復が優先です」
マダム・ポンフリーが言うならそうなんだろう。ああ、そういえば別に先週、生理じゃなかったなぁとどうでもいいことを思い出して、ゆっくり眠りに落ちた。
翌朝、起きたら体の傷はすっかり無くなり、清潔な水色のパジャマを着ていた。保健室でコーヒーとトーストを食べながらまだ眠っているハリーのベッドを見つめる。
「大丈夫でしょうか、彼」
「ええ、寝てるだけですよ。むしろあなたより元気です」
マダム・ポンフリーが優しく微笑み、私がちゃんと食事を取れていることを確認していた。食後にはまた心身を回復させるためと魔法薬を渡され、ハーブの香りが気持ちいい何かを飲んだ。
「マダム・ポンフリー、私、自分が何をされていたか、はっきりとは思い出していないんです」
「ええ、そうでしょう。問題ありませんよ」
「これが忘却呪文なんですか?」
マダム・ポンフリーは少し手を止めて、ゆっくりと本を読み聞かせるように私に説明した。
「はい、あなたには忘却呪文の痕跡がありました。本来ならその忘却呪文の記憶が断片的にも戻ったり、その痕跡が残ることすら稀です。ただ——同時に、あなたには“Legilimens”の痕跡がありました。“Legilimens”は分かりますか?」
「……あんまり」
「“Legilimens”とは、心を直接開き、その本来であれば閉ざされている物を暴く……無理に行えば、心にとても負担のかかる行為です」
私は黙ったまま深く頷いた。
「思い出そうとする行為が、あなたの心に再び負担をかけることに繋がります。とはいえ、思い出そうとしない、という制限は苦しいものだと思いますが……なるべく美味しい物を食べ、ゆっくりと休み、楽しいこと幸せなことで心を満たしてください。それがあなたに最も必要な治療です」
マダム・ポンフリーは母のような優しい顔で微笑み、チョコレートと、“綺麗なカケラの集まり”を私に渡した。私はチョコレートを一旦サイドテーブルに置き、そのバラバラな立体パズルのような物を受け取った。
「結構難しいですよ、それ」マダム・ポンフリーは悪戯っぽく微笑んだ。
「ふふふ……やってみます」
ほのかに光るそれは、小さい頃に大切にしていた綺麗なビーズのブレスレットを思い出させた。
しばらくそれに夢中になっていたら、白が基調の保健室に似合わない真っ黒な彼が見舞いに来た。私はようやく完成しそうなパズルにワクワクしていたところだったので、セブルスのあまりに深刻そうな顔にかえって笑ってしまった。
「見て、蝶々」
最後の1ピースをはめると、綺麗に光を放つ蝶がパタパタと辺りを飛び回りどこかに消える。手元を見れば、折角作ったパズルはまたバラバラになり、先ほどとは違う形になっている気がした。
「うわ、1回きりなの?」
「そういう玩具だ」
「無限に遊べるね」
でもちょっと虚しいなと思いながら、バラバラのパズルを机の端に寄せる。
「服、ありがとう」
セブルスが手に持っている黒い布に手を伸ばした。
「ああ。着替えたら校長室でダンブルドアが話しがあると。……行けるか」
「うん、もうすっかり良くなったからね。ふふ、また一晩」
「……軽く見るな」
心配されるのは苦手。困ったまま肩を竦めて、着替えるために外で待ってもらった。いつも着ている黒いワンピースに袖を通し、少し汚れてしまった靴を履いて立ち上がる。マダム・ポンフリーに退出許可を貰って、ドアの外で待つセブルスと一緒に城の中を歩いた。
いつもより歩幅が狭いし、ちらちらとこちらを見る彼に調子が狂う。大丈夫だよと言っても意味は無いだろう。
「セブルスには私がどう見えてるの?歩き始めた1歳児?」
セブルスは苦々しい顔で言葉に迷い、何も言わずに前を向いた。君が心配なんだ、とか冗談でも言えないの、君らしいね。
私は軽く笑いながらセブルスを追い越して振り返った。
「置いてくよ」
「……どうせ階段で転ぶだろう」
仕方なくセブルスはそう言って、ため息混じりにいつもの皮肉った笑みを浮かべた。
それからまたぽつりぽつりとくだらない話をして、校長室までたどり着く。「カエルチョコレート」とセブルスが言った、それが合言葉なのだろう。ガーゴイルの像は横にずれた。
「懐かしいね、カエルチョコレート」
私はほんの少し、リリーの代わりに息子を守ることが出来ただろうか。
「よくきたの」
部屋の扉を開ければダンブルドアがそう微笑んで、やわらかい手つきで杖を振り紅茶を3つ用意した。ダンブルドア自身も執務机から降りて、暖炉の前のソファに腰を掛ける。さして大きくない机を3人で囲みながら、まずダンブルドアが口を開いた。
「さてと……まずはミス・みょうじ。具合はいかがかね?無理をされていないかのう」
「はい、もうすっかり元気で。魔法はすごいですね」
笑いながら、促されるままに紅茶に口をつけた。少し雑談をしたあと、ダンブルドアは真剣な顔で紅茶を置いた。
「もし……可能であればあなたの知っていることを教えてくれるかの」
私も同じように、真剣な顔で紅茶を置いた。
「うまく説明できるかわかりませんが……。あの……全てお話しても良いのでしょうか」
隣にセブルスも居る状態で。ダンブルドアは全てを理解しているという顔で頷いた。
「……話したくないことであればそのままでももちろん構わん」
「いえ、お話します。信じて頂けるか……これが真実か、私にもわからないのですが……」
誰の顔も見れなくて、またダンブルドアのペット……不死鳥のフォークスの目を見たまま言葉を選ぶ。あれが不死鳥でフォークスという名前だと、今はわかる。“わかる”こと“わからない”ことの基準が今はまだ曖昧で、全体も見えないからとても不確かだ。
「ハリー・ポッターと賢者の石、そういうタイトルの小説でした。この世界の、この1年の出来事が書かれていました。私は今、その物語の内容を断片的に覚えています、思い出しています。タイトルの通り、ハリーが主人公で11歳の誕生日の少し前にホグワーツへの入学を知らせる手紙を受け取る、そんな場面で始まった気がします。そこから先は、おおむねこの1年起きたことと一致していると……多分。この本は、シリーズ作品です、まだ序章に過ぎなくて、これからどんどん面白くなる……。ごめんなさい、面白いなんて言い方をして。でも、あくまでそうなんです、エンターテイメントなんです、小説ですから。正直、この先のことはひとつもハッキリとは思い出せません、そうしようとすると酷く頭が痛くて、誰かに責められているような気分になる」
——これを話すことすら何かに止められている。
この頭痛は、思い出すなという警鐘だったのだとようやく理解した。だからあのスピナーズ・エンドの家で初めてハリーを見た時、あんなに頭が痛かった。無意識のうちに、思い出そうとしてしまったんだ。
「きっと、クィレルは私にこの本の内容を思い出させようとしていたんだと思います。……マダム・ポンフリーが、えっと……レジ……」
なんだっけ。言葉に詰まっていたら、セブルスが隣でポツリと「“Legilimens”」と言った。
「そう、それを受けていたと。でも私にその記憶は無くて、忘却術だって。両方かけられてたから、頭が混乱してるんだって」
困っちゃうよね、なんてノリでセブルスを見たら、相変わらず深刻な顔をして膝の上で手を握り締めていたから茶化すのはやめた。
「多分、私は大したことは思い出せずに、クィレルの体力の方が先に消耗し、焦って石を取りに行った。そしてこうなった……決められたとおりになった。この物語の主人公は、ハリーだから」
ハリー・ポッターと……次の本のタイトルはなんだろう。
「……もしこれが物語なら、例のあの人は再び戻ってきて、主人公のハリーと対立するのでしょう。そしてきっと、最後はハリーが勝つのか……物語はさらに次の世代に引き継がれるのか。……私が言えるのはそんなところです」
私はようやく長い説明を終え、ダンブルドアは「ありがとう」と労わるように紅茶を勧めた。私は軽く頭を下げ、その紅茶に口をつけた。
「……事実、なのですか」
セブルスが私とダンブルドアを交互にみて、不安気に聞いた。
「……おそらくのう」
ダンブルドアはゆっくりと頷き、空中に杖を振った。そこには惑星の動きを表すような図形が現れたが、まるで不規則でだまし絵のような錯覚を起こす、摩訶不思議な天体図だった。
「わしもこれは詳しくはないうえに……もっとも研究が進まない分野であるとも聞いている。……つまり世界の存在そのものじゃ。古の時代に盛んに研究され、ある時を境にぴったりとその研究は失われたそうじゃ。なぜその研究が失われたのか、それは世界の意志と呼ばれている」
「世界の意志……?」
私はダンブルドアの言葉を繰り返す。
「いかにも。超人的な力じゃ、理、心理……そういったものとしばし混同される。誰にも自由にはできん、何人たりとも。世界を存続させるための意思……。ミス・みょうじ、あなたがその小説の内容を思い出せないのはおそらくその影響なのじゃろうと私は思っておる」
「じゃぁ――」「それなら――」
私とセブルスの言葉が重なって、思わず互いに口を閉じる。目で促されて、私は自分の質問を優先した。
「なぜ……私の元の世界で、この世界のことが小説になっているんですか?」
「うむ、観測者という存在……概念がある。あまたある世界はそのどれもが干渉しないまま、必ず影響し合っているのじゃ。世界は一つだけで存在することは無く、誰かに見られることで存在する。わかるかね?事象は、事象だけでは存在できないのじゃ。それは世界とて同じこと」
「……シュレーディンガーの猫、みたいなことですか?」
「難しい言葉を知っておるのう」
「いえ、ごめんなさい、私も良く理解してないです」
よく分からない言葉をよく分からないまま使ったことに少し恥ずかしくなる。
「えっと、つまり、この小説の作者はこの世界の観測者だったってことですか?その人本人が頭の中で作り出した創作ではなく?」
「彼女、または彼の頭の中で起こったことが、創作でもありまた世界の定義でもあったのじゃ、どちらが先かを決める術をわしは持っておらぬ」
わかるような、わからないような。そうですか、と呟いてダンブルドアの言葉を頭で繰り返した。
「なぜ、クィレルはそれを知っていたのですか」
今度はセブルスがダンブルドアに尋ねる。確かにそう、それも気になっていた。
「知っていたのはクィレルではない、ヴォルデモートじゃ」
その名前の響きに、セブルスはぴくりと指の先を揺らす。ダンブルドアはそれに気づかないフリをしているように見えた。
「クィレルはおそらくアルバニアの森でゴースト以下の微かな存在になったヴォルデモートに出会ってしまったのじゃろう。そしてその心を明け渡してしもうた……そうじゃのう、ミス・みょうじ」
「おそらく……。心を明け渡すというのはわかりませんが、寄生されてるみたいに頭の後ろに顔があって……クィレル先生はそれをご主人様と呼んでました、指示に従っているような様子で。えっと……グリンゴッツ銀行の襲撃を失敗してから監視のためにそうしたみたいなこと言ってました」
ダンブルドアとセブルスには私のその拙い説明で十分だった。
「そしてなぜヴォルデモートがミス・みょうじのことを、この物語の存在を知っていたのか。おそらく、サマンサ・クラウチじゃろう」
久しぶりに聞いたその名前にはっと息を呑み、「サマンサ……」と呟いた。
「あの……貴方は私の入れ替わりを、知って……?」
ダンブルドアは顔を青くさせた私にそっと微笑む。
「聞いておるよ、セブルスからの」
「そう……なんですか」
——いつ?どんな風に?なぜ?
その疑問を口にする前に、ダンブルドアが杖を振った。私たちが囲むテーブルの上に、見覚えのある少し古ぼけたスケッチブックが現れる。思わず、あ、と小さく声をあげた。
「開けても良いかの?」
「はい」
それは私がサマンサの体に居た時、こっそり使っていたスケッチブック。真っ黒な硬い表紙、B5に近いサイズ、25枚入り。ダンブルドアが手を止めたのは見覚えのないイラストだった。
そこに描かれているのは、どう見ても今のハリー・ポッター、ロナウド・ウィーズリー、そしてハーマイオニー・グレンジャーの3人組だった。知るはずがない、まだ生まれてすらいないはずの3人の絵。特徴はなぞっているけど、どこか別人と思わせる容姿。丁度そう、特徴を文字で伝えて、それを再び絵に描いたような。
ただこれは間違いなく私の絵だった。
ああ、嫌な汗が背中を伝う。昨日の夜から、一人保健室のベッドでずっと考えていたのだ。私はサマンサ・クラウチにいた時、この本の内容を覚えていたのだろうかと。もし覚えていたのだとしたら……なぜ何もしなかったのかと。
おそるおそる手を伸ばせば、ダンブルドアがスケッチブックを手渡してくれた。それをセブルスと私の間に置いて、震える手でページを捲る。ハリーたち3人組の他に、大人になったセブルスの絵も多かった。それも、目の前の彼とはどこか違う、別人のような違和感のある絵。でも髪型や顔立ちの雰囲気は似ている、そして何よりホグワーツの教室で魔法薬学の教師をしている。
——だから私はセブルスに“魔法薬学の教授”になることを勧めたのだ。そうなることを知っていたから。
それは強烈に後ろめたい感情だった。『私はあの時、純粋に彼のために将来を案じたのではない。ただ自分が知る未来を偉そうに教えただけだ』——と。
やっぱりそう、私にとってこれは最悪の事実だ。罪悪感、罪の意識というのは、突き抜けると人を笑わせるらしい。クィレルのように震える引き笑いが出そうになって、私は咄嗟に口元を抑えた。
食い入るようにスケッチブックを見る私とセブルスに、ダンブルドアがゆっくりとまた声をかけた。
「……この素晴らしい絵を見る限り、おそらくサマンサ・クラウチとあなたが精神のみ入れ替わった14年前、物語の記憶は“あなた”にそのまま残されていたのじゃろう」
ダンブルドアの言葉に、私は小さく頷いた。俯いたまま、顔を上げられなかった。 受け入れ難い愚かさだと思う。
——私はリリーが、ジェームズが、きっとその他多くの人が死ぬ未来を、やはり知りながら黙っていたのだ。
「……そうだと思います」
自分の負い目を、今は吐き出す場所では無いと深呼吸をした。
「あの、何でですか?なんで、前回は私はストーリーを覚えていたのに、今回は忘れてしまったんですか」
「……これもまた、わしの予測に過ぎないが、前回あなたがミス・クラウチと精神が入れ替わったその現象は、世界の目をも欺いたのじゃろう。……つまり見逃してもうたのじゃ。今回、あなたは正式な魔法の手段を用いて肉体ごと召喚されておる、ゆえにこの世界の免疫反応に感知された、そのように考えておる」
「召喚……」
ダンブルドアの言葉に、そういえばと隣をみる。ただ、彼は別のことを考えていたようだった。
「お前は……お前は知っていたのか、あの学生の時にすでに、リリーがポッターと結婚することを、ハリー・ポッターという息子を産むことを……彼女が殺されることを」
怒りと驚愕。そんな顔。
「……多分ね、知ってたよ」
リリー、リリーと。私が今ここで死にかけたのに、癪に障った。彼がリリーと口にする時、私もいつも冷静ではいられない。
「……なぜ言わなかった?」
「知らない」
はっきりと、セブルスの目を見ながら短く言った。
「物語のキャラクターだからか?私はただの登場人物の一人か?お前にとっては人ですらなかったのか、リリーも……だから……見殺しにしたのか」
知らないって言ったのに、私を責める言葉に思わず反論しそうになる。君が私の罪を暴くのかと、それほど聖人なのかと、そんな反論をしたくなってしまった。
「……多分ね」
ふいっと視線を逸らして、ぶっきらぼうにそう言った。
「貴様……!」
それでも、私も悪いけど、今の私にその怒りをぶつけるのは、流石に理不尽じゃないだろうか?
「セブルスも一緒でしょ?」
「……何がだ」
「私を召喚?したの、セブルスでしょう?」
セブルスがピタリと口を閉じるのを見て、私はほらみろと口角を上げた。
「ね、ほら。さすがにずっとおかしいと思ってたの。ねぇ、でも本当は、私なんて現れないと思ったんでしょ。私なんていないと思ったんでしょう?ただのサマンサ・クラウチの多重人格か何かの、妄想の人格だとそう思ってたんでしょう?」
セブルスは喉の奥から「だったらどうする」と言葉を絞り出した。
「どうもしないよ。ただあれから何年?13年くらい?そんなに時間たって私のこと呼ぶなんてさ……セブルスも案外ロマンチストなんだなって思っただけ」
「……は?」
セブルスの面食らった様子に満足して、ふっと軽く笑いながら話を元に戻す。
「……リリーのこと、私も後悔してる。本当に心から。伝わるかわからないけど……。それに……ねぇセブルス。あなたは……死食い人だよね」
言う必要はなかったのかも知れない。まるで脅すように、お前の罪を知っているぞと。案の定、セブルスは私を警戒するように口を閉じて、感情を殺す冷たい銀の仮面で私を睨んだ。
それを見て力無く視線を落とす。違う、そんな顔をさせたかったわけじゃない。ただ知っていることを黙っていられなかっただけ。知っていることを黙ったままでいるのは、もう耐えられないと思っただけ。
「……後悔してるよ、死ぬほど、本当に。あの時、全部わかってたならきっと防げることたくさんあったと思う。私がなんでそういうことに奔走しなかったのか、正確には思い出せないけど……そういう性格じゃなかったとしか思えないの……」
リリーは死んで、セブルスは人殺しになって、リリーの息子は危険に晒され、稀代の大悪党は野放しに。これ以上の最悪のストーリーがあっただろうか、私はどうして何もしなかったのだろう。
「……そうだな。お前はそういう人間だったな」
僅かな沈黙の空気のあと、ダンブルドアが口を開いた。
「この先……もしこの世界がミス・みょうじの知る物語通りに進むのであれば、それはそのように進んだ方が良いじゃろうとわしは思うておる」
ダンブルドアは場の空気に似合わない、明るい声で続けた。私を責める空気を、それで払ってくれた。
「なにせタイトルがハリー・ポッターじゃからのう?」
ダンブルドアが下手くそなウィンクをし、私は曖昧に微笑んだ。
「じゃがこの先、ヴォルデモートが窮地に陥るほど――恐らくそうなるのじゃろうが――彼はあなたの知識を求めるじゃろう。その手段をいとわないはずじゃ……。十分に用心なされよ、セブルス」
「……言われずとも」
話はそれで終わりだった。ダンブルドアがもう一杯紅茶を飲まないかと誘ってくれたけど、さすがに首を横に振った。
無言のままセブルスの後ろを歩いて地下牢への階段を降りる。そのまま自室に戻るつもりだったが、セブルスがぐっと私の腕を引いて、自分の研究室に入れた。
体の後ろでバタンとドアがとじて、セブルスが痛いほど私を抱き寄せる。なんでそんなことをするのか、全然わからない。
「……セブルス?」
「目の届かない所へ行くな、頼むから」
その声は先ほど校長室で聞いていたのとは違う、感情に揺れる、一人の男性の声だった。
「……でも、聞いてたでしょう。私は何もしなかった、あの時、リリーも、君のことも見捨てたの。その結果がこれ」
「馬鹿馬鹿しい。選んだのは我々だ。私が死食い人になると決めた。リリーが……ポッターを選んだ、リリーが子供のために命を投げることを決めた。……お前が決めたなど、思いあがるな」
「でもっ!」
だから私のせいじゃありませんって、そんな顔は出来ない。
そう言って反論したかったのに、セブルスが泣きそうな顔をしてるから、何も言えなかった。
「……なまえ」
「……なに?」
「…………愛してる」
「なんで、今言うの……」
ずっと好きだった、多分きっと、本を読んだ時から。その好きと今の好きは確実に違うものだし、サマンサの時の好きと今の好きがどれほど差があるのかもわからない。
でも私が、君の告白を拒絶出来るわけがないじゃないか。
「好きだよ私も……愛してる」
今がまだ日も沈みきっていない夕方であるとか、廊下で響く生徒の声だとか、その全てがいっそ別の世界で、ここだけ切り離されているようだった。
「私さ、多分、小説のセブルス・スネイプが好きだったんだと思う。だから学生の時、セブルスに付き纏ってたんだと思う……」
ごめん。と小さく口だけを動かした。そんなことが、自分の罪を許す免罪符になると思っていないけど。
「……ならこれでようやく対等だな」
「いや……セブルスのが上だよ」
私はマグルで、無力で、11歳のハリーを守ることも出来なかった。顔を上げられない私の顎をセブルスの指が掴んで、少し強引にキスをした。