アメリカ人、女性
A Short Memory
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目を覚ますと、見慣れない白い天井が見えた。一瞬あの世か何かかと思ったが私にはまだ体があったし、ぼんやりと動く頭でここが病院だとわかった。
「あああ!目を覚まされました!スネイプ校長、わかりますか?聞こえますか?!誰か先生を呼んで!セブルス・スネイプが目を覚ましたわ!」
ばたばたと騒がしいナースが部屋を出て、入れ替わりにまた違う女性が目を丸くして入ってきた。
「お目覚めになられて良かったです」
「ああ……」
そう言って曖昧に自分の体を見て、まだ四肢が着いていることに少し感動した。良くあの場から生きてこれたものだと。女性は慣れた手つきでベッドサイドの花瓶の水を変えていた。
先程のナースとは制服が違うようだったが、病院のスタッフだろう。
「今日は何日だ?」
「今日は7月12日です。あなたは3ヶ月と10日、眠って居たんです、それでも目を覚ますかはわかりませんでした。本当に、お目覚めになられて良かった……。」
彼女が心から嬉しそうにそう言って私に微笑んだ。
「君は……私の知り合いか?」
彼女があまりに感極まっているように見えてそう聞いた。顔をじっと見たが見覚えはない。
「いいえ」
短くそう答えて首を振った。
「あなたが怪我をされた後、例のあの人は死亡しました。ハリー・ポッターの手によって。」
「なんだと……?」
彼女は杖を降っていくつかの新聞と雑誌を私の前に出した。
「詳しくはこちらをお読みになるとわかると思います。ミスター・スネイプ、あなたの功績は今やイギリス魔法界全ての人が知っています。」
私は眉をひそめて彼女の表情を伺いながら無言で新聞を手に取った。
「ふふふ、私がこれを出したと言わないでくださいね、まだ安静にしないといけないのにって、ドクターに怒られてしまいますから。」
くすくすと楽しそうに笑う彼女を見ていると何故か胸がざわついた。
「……失礼だが、君の」
名前を聞こうとした所でばたばたと別の人間が入ってきた。
「ああ本当だ!目を覚まされたんですね、ああ本当に良かった!」
恐らく主治医だろう、ナース達とはまた服装が違った。ドクターが私の状態を診ているうちに、先程の金髪の女性は居なくなっていた。
それから私は1週間の経過観察を経てようやく退院が許可された。あの女性が言った通り、私の行いはほとんど全て世間に知れ渡っていた。ポッターのせいで。
まさか人の記憶を堂々と公表するとは思っておらず心底腹が立ったが、もう今更どうすることもできない。知らない人間から連日感謝の手紙が届きうんざりしたし、面会もやまないので病院側で拒絶してもらった。サンドウィッチ1つ買いに行くだけでサインや握手を求められるのを無言で睨みつけた。
ようやく家に帰り、私はまた1年ぶりに自宅の扉を開けた。その時ふと、また何かが物足りないような気がした。思えばずっとこの違和感があった。まぁ気のせいかと思い直し、カバンを雑に投げて紅茶をいれた。
さらに1週間ほどが経ち、私も徐々に日常を取り戻し始めた。私は引き続きホグワーツの校長職に留まることになり、その連絡の手紙を自室の書斎机で見ていた。返事を書き終えて封をして、なんとなしに一番上の引き出しを引っ張った。ここには何を入れていただろうか。指がひっかかって、引き出しに鍵がかかっていることに気付いた。
わざわざ鍵をかけて保管するようなものがあっただろうか?そうだとしたら、私は何故覚えていないのだろうか?不審に思いながら杖で慎重に中身を探ったが怪しいものはなさそうだった。開錠呪文を唱えて、そっと引き出しを引っ張った。中に入っていたのは黒いハンカチのようなものと小さな黒い箱だった。
――なんだこれは。
ハンカチを広げると、隅に小さな刺繍が施されていた。これはラベンダーだろうか?ハンカチからもうっすらその香りがする。もう1つの小さな箱を開ければ、中には指輪が入っていた。シンプルなシルバーのリングに、ダイヤが3つ埋め込まれている。そっとそれを掴めば明らかに女性もののサイズで、どうみても婚約指輪のように見えた。
「……なぜ」
何故、私は今泣いているのだろうか。何も思い出せないのに胸が苦しい。思い出せないことが悲しくて、私は唇を震わせて静かに涙を流した。
大切な人だった気がする。これは、私にとって大切な記憶だった気がする。
黙って椅子から立ち上がり、キッチンの戸棚を開けた。去年この家を空けるとき、ここにあったラベンダーティーの紅茶の缶を捨てたのを覚えている。それをなぜか今、強烈に後悔した。私は一心不乱で家の中を歩いて回った。見慣れないものは他には1つもなかったが、すべてにおいて何かが足りない気がした。
全ての引き出しと戸棚をひっくり返し、しばらく開けてもいないはずだったゲストルームまで見て回り、だんだんとイライラして本棚の本をすべて床にぶちまけた。
なんだ、私は何を忘れている?何を失ってしまった?
「っ……!」
涙が止まらなくて、先程からずっと握りしめていた黒いハンカチを額に押し当てた。
「君は誰だ」
紫色の影の奥に、誰かの影が見えた気がした。
それから少し落ち着いていったん散らかしたものを片付け、改めて指輪を見た。箱に書いてある店の名前を見つけて、まっすぐそこへ向かった。
「いらっしゃいませ。……おや、スネイプ様これはこれは、お久しぶりです。ご退院おめでとうございます、いえ本当に。」
店主は軽く涙ぐみながら深く頷いた。
「ずっと心配しておりました。今日はどういったご用件でしょうか。もしや、ご結婚指輪のご相談でしょうか?」
「……いや。これについて聞きに来た。」
私はローブの内ポケットから、家で見つけた指輪を取り出した。店主はそれを見て少し動揺してから、私を店の奥の商談部屋に案内した。
「プライベートなお話かと思いますので……。それであの、こちらの指輪の何をお知りになりたいのでしょうか?」
「これを買いに来たのは誰だ?」
「え……?あなた様、ご本人だったかと思いますが……」
店主はとても驚いた顔でまじまじと私を見た。
「どなたか、変身術で化けていらしたのでしょうか……。いやでも、今目の前にいらっしゃるお客様と同じ立ち居振る舞いのように感じましたが……」
ああやはりそうなのだろうと思った。私の失った記憶の一部がここにあるのだと。
「いつだ?」
「ちょうど一年前でございます。」
そう言って店主は帳簿のようなものを持ち出しぱらぱらとめくった。
「はい、そうです。去年の8月20日にご来店されてご注文し、30日にお受け取りに来ておられます。」
「その時、私はこの指輪を誰に渡すと言っていた?」
「申し訳ございません、お相手のお名前はお伺いしていなかったかと思います。ただそう、とても悩まれていたので、会話は少し覚えております。」
店主は私の顔色を伺いながら、言ってもいいものかと迷いながらおそるおそる口を開いた。
「まずお相手の方は料理を良くされるので立て爪の装飾は避けたいと、パンを良くお作りになるとおっしゃっていました。それからそう、アメリカからお越しになった方だからあちらの流行も知りたいと……。金髪で琥珀色の瞳だとおっしゃっていました。それでギリギリまでリングのお色をシルバーにするかゴールドにするか迷っておられました。それとラベンダーがお好きだと、石の種類も大変お悩みになっておりました。最終的には石言葉の意味でお決めになっていたように思います。」
話しながらだんだん当時の様子を思い出すかのように、店主は饒舌にしゃべり始めた。
「石言葉?」
「はい。紫色の石、アメシストの石言葉は『誠実』『心の平和』などです。心身を癒し、冷静な判断力や直感力を高めると言われています。
一方でお客様がお選びになったダイヤモンドの主な石言葉は『永遠の愛』『純血』『不屈』などです。地球上で最も硬く傷つきにくい性質から、変わらない愛や固い絆の象徴とされています。また、持ち主に自信や勇気を与え、困難を乗り越える力を持つとも言われています。 」
どちらも似たような意味に感じながら黙って店主の話を聞いた。
「特に、ダイヤモンドの語源に興味を示されていました。ギリシャ語で『征服できない』『何よりも強い』という意味の『adamas(アダマス)』に由来しますが、それを聞いてこの石を決断されていたように思います。」
「……そうか」
店主の話しを一通り聞いても、やはり記憶は思い出せなかった。それでも、そんな石言葉ひとつに何かを左右されるほど、私は相手のことを真剣に考えていたのだと客観的なその事実を知れただけで収穫があった。
「邪魔をした、今日はこれで失礼する。」
「はい、かしこまりました。……あの、このようなことを一介の宝石屋の店主が言うのも差し出がましいことかと思いますが――」
「……何だ?」
「当時、お相手の方のことをお話しされる時、お客様は大変お優しいお顔をされておりました。……ご記憶を失われているのかと推察致します。何かご事情があっての事なのでしょう。ただそれでも出来ることなら、スネイプ様の大切な記憶が戻りますよう、お祈りいたします。」
「ああ……。貴殿の心遣いに感謝しよう。」
確かにそうだ、この記憶が無いということは、もしかしたらその相手の女性は何か悲劇的な死を迎え、あまりにも辛くて記憶を消したのかも知れない。
もしそうだとしても、幸せな記憶と共にまた身を裂かれる思いをしたとしても私はこの記憶を取り戻したい。記憶を失ったまま生きるのは自分が自分では無いような気がすると誰かが言っていた。
翌日、私は再び聖マンゴ魔法疾患傷害病院を訪れた。
「どうされましたか?スネイプ様。どこか体にご不調でも?」
「いや、体に不備はない。記憶に一部欠損が見られる、恐らく忘却呪文かと推察しているが、そういった検査を受けることは出来るだろうか。」
外来患者の受付でそう伝えれば、事務員は直ぐに頷いて番号札を出した。
「こちらでお待ちください、順番がきたらお呼び致します。」
しばらく待って呼び出され、老齢の穏やかな雰囲気の男性癒師が私を診察した。
「ふむ……確かにそうですな、一部忘却呪文の跡が診られます。」
「やはりそうですか。復元は可能ですかな?」
「はい、恐らくは。ただ忘却呪文を使われたと言うことはそれなりの理由があっての事と思います、思い出す事があなたにとって良いかどうかはわかりません。それでもなさいますか?」
「必ず頼みたい。」
「失礼いたしました、不要なご説明でしたね。」
癒師はそう言って頷き、傍に控えるナースに声をかけた。
「レアくんを呼んでくれるかな?忘却呪文なら彼女の方が良かろう。」
癒師はまた私に向き直り声をかけた。
「なに、アメリカの魔法省で忘却術師をやっていたその道のプロですよ。今日は彼女がいる日で良かった。まぁ彼女ならきっと完璧に記憶を取り戻せると思います。本当、天性の才能というものですあれは。ご安心ください。」
アメリカ、そういえば昨日宝石屋の店主も言っていた。相手の女性はアメリカ出身だと。
「はい、お呼びでしょう……か……」
奥のドアから顔を出したのは、先週ここで目を覚ました時に顔を見せた金髪の女性だった。
「ああ、君が……」
そう言って、私は曖昧に言葉を切って口を閉じた。彼女を見ていると今度は何かを思い出せそうな気がする。
「すまないねレアくん、ミスター・スネイプに忘却呪文の痕跡があってね、反対呪文を唱えて欲しいんだ。これは君の方が上手いからね、上手く記憶を解けるだろうか?まぁ、まずは診てから……」
「はい、出来ます。出来ます……完璧に。」
彼女はそう断言して嬉しそうに笑った。
「そうかい?さすがだね、よろしく頼むよ。」
癒師は少し不思議そうに首をかしげつつもまぁいいかと流した様だった。レアと呼ばれた女性は私の近くに来て、正面に丸椅子を呼び出して座った。
「こんにちは、ミスター・スネイプ。私はレア・ヘイゼルと申します。お久しぶりですね、お体はいかがですか?」
彼女はにこにこと人当たりの良い笑顔を浮かべた。
「ああ、ミス・ヘイゼル。入院中は世話になったようだ。お加減様で生活に支障は無い。」
「そうでしたか、それは良かったです。記憶を戻す前に1つだけ聞いてもよろしいですか?何故、記憶を取り戻そうと思われたのですか?」
彼女はなんてことのないように装いながら、明らかにそわそわと落ち着かない様子で私を見た。きっと何か私の記憶に関係しているんだろうと、そんな気がする。
「記憶が無いまま生きるのは自分が自分で無くなる気がすると、昔誰かに言われたのでね」
「ふふふ、本当、変わりませんね。素直じゃない所が。」
彼女はそう言って杖先を私の額に当てた。不思議と抵抗は無かった。
「目を閉じて、私に委ねてください。頭を空にして」
一呼吸置いてから、彼女が呪文を唱えた。
「メモリア・レディ 記憶よ戻れ」
ふ。――と。
夢の内容を朝起きて急に全て鮮明に思い出すような不思議な感覚だった。長い物語を見ていたのに、瞬きの間に終わっている。
ゆっくりと目を開けて、目の前の琥珀色の瞳を見た。ああ、最後に見た時より随分元気そうだ。あれから1年、彼女はゆっくり休めたのだろう。顔色も随分良くなって、表情も穏やかに見える。
「……ずいぶん勝手なことをしてくれたな、レア」
「ふふ、ごめんなさい。でもほら、やっぱりあなたはイギリスの魔法界に必要なヒーローだったわ」
レアは少し震える声でそう言って、俯いて笑った。
「ごめんなさいセブルス、怒ってる?」
「ああ、心底な」
「あの……もしセブルスが良かったら今度食事に行きませんか?もちろんその、邪魔じゃ無ければ……お詫びも兼ねて、ね?」
自信なさそうに彼女はそう言って笑った。ああ、今日たまたまこれを持っていて良かった。直ぐに渡したかったから。
「先に言いたいことがある」
「……そうよね」
私はその場で床に片膝をついて、レアに婚約指輪を差し出した。
「私と結婚してくれ」
レアは目を丸くしてゆっくりと両手を顔に当てた。みるみるうちに頬に赤みが差し、ポロポロと涙を零して笑った。
「……はい、喜んで」
その瞬間、近くに居た老齢の癒者が小さく「おやまぁ……」と呟き、私の診察を覗きに来ていた数人のナースがきゃぁと騒々しく叫んだ。
「――君に触れても?」
「ええ……ええ、もちろん。セブルス」
私は指輪をそっととって、レアの左手の薬指にはめた。それはぴったりと彼女のサイズに合っていた。
レアは幸せそうにそれを眺めて、私にそっと抱きついた。
「愛してるわ、セブルス」
「私も愛している、レア」
ああ、ようやく欠けていたピースが揃った。
――「嘘でしょう!素敵すぎる!」
――「レア!もう貴方ったら!ちょっと!誰か!」
――「もう無理、私心臓がドキドキしてる、飛び出そう」
――「映画よ映画のワンシーンだわ、泣きそう、、、」
――「おめでとうレア、おめでとう、本当におめでとう!!!」
「まぁまぁちょっと君たち落ち着かないか、ここは一応病院なんだがね、、、」
騒ぐナースや職員を癒師が諌めたがあまり効果はなく、レアはそれに照れくさそうに笑った。
「随分と愛されてるようだな、お前は」
「ええ、みんな優しいの。おかげでちゃんと働けてるし、気分も本当に良くなったのよ。」
まだ会話をしたかったがもうナースをせきとめる老齢の癒師が限界だった。どっと彼女の周りに友人と思しきナース達が集まり、彼女を質問攻めにした。私はそれに巻き込まれないように一歩引いた。
「あなたの事は、彼女から聞いていました。もちろん、あのホグワーツの戦いが全て終わった後ですけどね。」
そう言って、老齢の癒師が私に話しかけた。先ほどのとぼけた顔は演技だったのかと思うと少し驚いた。
「ミス・ヘイゼルは元々私の患者としてここに来ました。ええはい、PTSDと診断しました。彼女が背負っている傷は深いものでしたが、彼女の持ち前の前向きさと、あなたへの愛がきっと心の支えになっていたのでしょう。初めて彼女を診察したのはおよそ1年前でしたが、その頃より随分良くなりました。今はリハビリも兼ねて、ここで働いて貰っているのです。彼女の忘却術師としての才能は素晴らしいですからね、そうでしょう?」
「左様ですな。身をもって体感いたしました。」
皮肉を込めてそう答えれば、癒師ははっはっはと愉快そうに笑った。
「どうか彼女をお願いします。うちにとっても欠かせないメンバーです。お二人の末永いご多幸をお祈りいたします。」
「祝福の言葉に感謝申し上げましょう。そしてこの1年、彼女を支えてくれたことに、重ねて感謝申し上げる。」
癒師は優しい顔で頷き、私と握手した。
――
「セブルス、まだ寝ないの?」
「先に寝てていい」
「セブルスが一緒じゃないと寂しいわ、1年の中で2ヶ月しか一緒に居れないんだから」
あの後、またレアと一緒にスピナーズ・エンドのこの家に住んでいる。ここは治安も悪いし彼女が好きそうな雰囲気でも無いし、そのうち引っ越そうとは思っているがまぁそのうちで良いだろう。
一緒に住み始めてすぐ、夜は一緒に寝たいと言い出した。彼女の事を思えば精神的にあまり良くないのでは無いかと思ったが、またそれが夢だったのと言われて仕方なく折れた。
レアは今、パジャマ姿のまま枕を抱えてベッドの上で転がっている。
「次のお家は寝室が広いところにしましょう。リビングは南向きの日当たりがいい所が良いわ。あとお庭が広いところ。セブルスは?条件ある?」
「お前が気に入る場所ならどこでもいい」
「もう、セブルスも一緒に住む家なのよ?」
「どうせ私はほとんど家に居ないだろ、お前の意見を優先した方が合理的だ」
「……ふーん、じゃあ屋根から壁まで全部ピンク色の家にしちゃうんだから。壁紙も全部花柄よ?」
私の返答にへそを曲げた彼女がそう言ってぶすっとした顔で私を見た。意地っ張りで頑固なレアならやりかねないなと思い、少し笑いながら羽根ペンをしまいインク壺に蓋をした。
「それは困る」
「そうでしょう?ほらこっちこっち」
レアがベッドの隣を叩き、杖を降って何枚かの紙を持ち出した。
「これは?」
「不動産屋にいったの、昨日」
「いつの間に?聞いてないが?」
「だから今から話そうとしてるんじゃない。仕事帰りにちょっと寄っただけよ」
当たり前のようにいう彼女の行動力には素直に尊敬する。それなりに毎日忙しそうに見えるが彼女がのんびりしている所はほとんど見ない。そもそも体力が無尽蔵すぎる。
「このお家どうする?リリーさんとの思い出の場所でしょ?売却しないで置いとくのも手よね、喧嘩したらセブルスはこっちにきても良いわよ」
「……この家を置いておけばまた雑誌に余計なことを書かれるだけだがいいのか?」
ポッターが本当に余計なことを喋ったせいで、今や世間で私はリリーに生涯を捧げたと言われている。レアはそれが嫌ではないのだろうか。
「え?全然いいわ、セブルスが今愛してるのは私だもの、そうでしょう?あのね、開心術のいい所よ。迷う必要が無いもの。」
「まぁ、お前がそう言うなら構わないが。」
「それにね、セブルスが目を覚まさなかった時、私もうどうしたらいいか分からなくて毎日お祈りしたの。でも当然、信仰してる神様なんて居ないから、リリーさんに祈ったのよ。まだ連れていかないでください、セブルスがちゃんと戻ってこれるように案内してくださいって。そしたらセブルスが目を覚ましたから、なんかちょっと運命感じちゃって。凄くない?あ、だから今度お墓参り行きましょう。ね?」
レアの終わらないお喋りを黙って聞きながら、まぁ確かに墓参り位は行こうかと考えた。
すると突然、レアがくっついて私にキスをした。少し驚いて目を見れば、レアは私に覆い被さるように乗っかってもう一度ゆっくりキスをした。
「……急にどうした」
「……やっぱりちょっと妬けるわ。リリーさんのこと。」
「手のひらを返すのが早すぎるだろう、お前の思考は本当にどうかしている」
「しょうがないじゃない、女の人ってそんなものよ?だってリリーさんのこと考えるセブルスがとっても優しい顔してるんだもの。」
レアは私の頬に手を添えて、もう一度キスをしてから額をくっつけて話した。
「そういう顔見せるのは私のことだけにして欲しいわ。今のセブルスは私のものだもの。」
レアが口を動かすたびに、唇が触れてもう正直会話どころでは無い。体に乗る彼女の重みが心地よくその体温を伝える。彼女が足を広げて私の腰の上に跨っているのだとその姿勢を鮮明に想像してしまって、私は両手を上にあげたまま微動だに出来なかった。
「……レア、私も性欲が無い訳では無い。そんなに煽るな。」
「セブルスが一生懸命我慢してくれてるの、なんか嬉しくなっちゃって。大切にされてるなぁって思うと、つい触れたくなっちゃうの。」
まったく小悪魔的とはまさに彼女の事だろう。最近の彼女はとても積極的で自由奔放で、去年この家で過ごした2ヶ月間のレアはあれでもまだ十分大人しかったのだと思い知った。
「そう試してくれるな……。止まらなくなったらどうする。」
「私が嫌だって言ったらセブルスは止めてくれるわ、絶対に。だってセブルスは優しいもの。」
レアはそう言いながら再びキスをして、ゆっくりと舌を絡めた。いつかのように震えることはなく、彼女は落ち着いていた。
私はそっと手を動かして、ゆっくりと抱きしめた。
「……無理はするな」
「ええ、セブルス……。愛してるわ。」
レアは嬉しそうに、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「ああ、私も愛してる。レア。」
Happily Ever After
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