アメリカ人、女性
A Short Memory
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レアが放心した後、私はそっと彼女をベッドに運んだ。彼女に与えていたゲストムームをあけると、そこは色とりどりの花で飾られていた。いつだったか、邪魔だからリビングに置くなと言ったあの時の花瓶もそこにあった。
青白い顔のまま目を閉じている彼女が死んでいるようで、この部屋がひとつの棺桶のようだと思った。それならいっそ私もずっとこの中に居たい。
彼女にそっと布団を掛けて部屋の隅にあった椅子を引っ張り、じっと顔を見たままそこに座った。せめて目を覚ますまでここに居ようと、私は彼女の頬を撫でてそっと唇にキスをした。
愛のキスひとつで目が覚めるそんな魔法があればいいのにと、自分のそんな思考を自嘲気味に笑った。
しばらくそのまま時間を過ごし、途中で軽く寝てしまったのだろう。ピチピチと鳥のさえずりが聞こえて明かりが差し込み、私はふっと目を開けた。
ベッドを見れば、寝ている時と全く変わらない体制のままでレアが目を開けて静かに窓の外を見ていた。
「……レア」
驚かせないように、なるべく小さな声で彼女を呼んだ。
「……おはよう、セブルス」
レアはもう笑うこともなく、振り返りもせずに声だけで返事をした。
「少し、1人にしてもらえるかしら。ごめんなさい。」
「……ああ。何かあれば何時でも呼んでくれ。」
「ええ……。ごめんなさい。」
謝罪は嫌いではなかったのかと、そんな言葉で喉が詰まった。なるべくゆっくり動いて、そっとドアを閉じた。それからたまに部屋から物音は聞こえたが、レアは1歩も部屋を出てこなかった。
1日目。私はただ彼女のいるドアを見つめながら、無気力にリビングに居た。食事と飲み物だけをドアの前に置けば、私が自室にものを取りに行ったらその僅かな時間に受け取った様だった。
レアがリビングに居ない虚しさと後悔に苛まれながら、レアがまだ生きている事に安堵した。食べ物に味がしなかった。気丈に振舞いつつもまだ不安定だと分かっていたレアを食事会に連れていったことをひたすら後悔した。
2日目。彼女はまだ部屋を出てこなかった。昨日と同じように、食事をドアの前に置いて声をかけた。返事はなかったが、少し布が擦れるような音がして、生きているとわかるそれだけでほっとした。
連れていったことを悔やんでも時間は戻らないのだから、この先で彼女をどうやって守れるかを考えた。もう失いたくない、何も、二度と。彼女はまだ生きている、リリーの時とは違う。まだ間に合う。
3日目。レアがリビングに飾っている花瓶の水を変えた。この花が枯れる前に彼女は部屋から出てこれるようになるだろうかと、そんなことを考えた。
「ここを離れよう、レア。ヨーロッパを出て、暖かい地域に行こう。どこでもいい、君の好きな所に。」
ドアに向かってそう声をかけると、小さく「ごめんなさい」と声が聞こえた。私はやはり、彼女が生きていることに安堵した。レアを生かすことが私の使命だと、そう強く思った。
4日目。昼頃にレアがそっと部屋から出てきた。やつれて疲れた顔をしていたが、彼女は以前のように笑っていた。
「迷惑かけてごめんなさい、セブルス」
「……構わない、迷惑などと思っていない。」
あんな場所に連れて行って悪かった、守ってやれなくて悪かった。そう言いたかったが言葉を飲み込んだ。謝罪は嫌いだと彼女は言っていたから、きっと困らせるだけだろうと思った。
「食事はとれていたか?」
「ええ、ありがとう。セブルスって料理上手いのね。」
レアが少しだけ口角を上げてそう言った。
「お前ほどではないさ」
「そんなことないわ」
ようやく交わすことが出来た簡単な会話に、私は心から安堵した。レアはリビングの椅子に座ってじっと私を見ていた。
「どうした?」
「ダメよ、セブルス……」
「……何が?」
「あなたはまだ、戦わなきゃ。こんな私に付き合っていてはいけないわ。」
「レア……」
そんなことを言わないでくれ。私に君を守らせてくれ、レアだけなんだもう、私に残されたものは。レアだけなんだ。
「愛してる、レア。傍に居たいんだ、君の傍に。」
「ううん、ダメ。ダメよ、セブルス。」
疲れた顔でレアがそれを繰り返すから、私は拳を握りしめた。じゃあどうすればいいんだ、傍に居ないでどうやって今の君を守ればいい?
もう3日後には9月1日を迎え、ホグワーツの新学期が始まってしまう。その日私がそこに居なければ必ず闇の帝王に追われる。その前に2人で遠くに行かないといけない。さもなくば、この状態のレアをこの家に1人残すことになる。他の死喰い人にも知られているこの家に。考えるだけでゾッとした。
「大丈夫よ、セブルス。私ちゃんと、この家で待てるわ。」
私の思考を見透かすように、レアがそう言った。ああそうだろうな、意思の強い君ならそう言うだろうなと思った。
「ね、それでね、いくつかお願いがあるの。私がちゃんとここで待てるように、おまじないよ。」
彼女をここに置いていく気などさらさら無かったが、私は「なんだ?」と聞いた。
「まずね、一緒に写真を取りに行きたいの。2人の写真よ。それとね、あなたが学校に戻る前に、一通だけ手紙を残して欲しいの。短くていいわ、一文でもいい。あ、でもちゃんと名前は入れてね?あなたから私に宛てたんだってわかるように。」
「ああ、わかった。全てやろう。」
「じゃあ早速写真を取りに行かなくちゃね。今から行きましょう?まだ間に合うかしら。」
そう言ってレアは時計を見た。時刻は昼の2時で、写真館は開いているだろう。このご時世で閉業していなければ。
「……大丈夫か?無理をしてないか?」
「大丈夫よ、セブルス。私、着替えてくるからちょっと待っててね。」
そう言ってレアはまたゲストルームに戻り、私は簡単に身だしなみを整えたあとまだ営業している写真館を調べた。ほとんどが閉じていたがいくつかはまだ開いていた。同じように、家族や恋人に何かある前に形に残る思い出をと、そう思う人が多いのだろう。
しばらくして、部屋からレアが出てきた。4日前の葬式の様に重苦しいドレスではない、繊細な刺繍を纏い透明感のある淡い紫色の生地が、僅かな日差しに解けるように舞う、気品ある華やかなドレスだった。
「似合っている、とても。君らしいドレスだ。」
ああ、きっと本来はこういう服装が好きなんだろうと思った。本当にとてもよく似合っていて、彼女の魅力を引き立てていた。細くやせ細った腕が少し痛々しくも感じたが、そんなことは気にならないくらい幸せそうな雰囲気を演出していた。あの黒く重苦しいドレスは、彼女がひたすら自分の体を隠すための鎧だったんだろう。
「ありがとう。私の一番のお気に入りなの。」
レアは嬉しそうに笑って、私は涙が出そうだった。
それから彼女の手を引いて姿くらましで移動し、要望通り写真を撮った。
「旦那様ー!表情が硬いです、もう少し奥様を見習って優しいお顔をしてください!」
「ふふふ、言われてるわよ、セブルス?」
「そう言われて急に笑えるものでも無いだろう、君のようにな」
そう言いつつ、楽しそうに笑うレアの顔見ればつられてこちらも少し笑った。
「あ~~そうですそうです!素敵ですおふたりとも!そのまま見つめ合ってー!んー素敵!」
随分癖の強いカメラマンの掛け声に呆れながらシャッターの光を浴びた。レアはその場で受け取った写真を嬉しそうにずっと眺めながら写真館を出た。
「ふふふ、いい写真がとれたわ。上手だったわね、あのカメラマン。」
「そうか?うるさいだけだっただろう」
「でもほら、セブルスちゃんと笑ってるわ」
そう言ってレアが見せてきた写真で、確かに私は自然に微笑んで写真の中で隣に座るレアだけをじっと見ていた。
「でもセブルス、写真を撮る時はカメラも見るのよ?私ばかり見ていたら、セブルスの顔がわからないわ。ほら、こっち向いて?」
レアはくすくすと笑いながら写真の中の私に声をかけた。私はやや不機嫌な顔で振り返り、呼んだのがレアだと気づき少し笑った。
「ふふふ、セブルスって本当に私のことが好きね?」
「……勘弁してくれ」
流石に少し恥ずかしくなって、私は視線を逸らした。ああもう、これだから写真は苦手だ。
少し歩くと道の角にジェラート屋があり、数人の客が入っていた。特に子供が外出を控えているからだろう、いつもならもっと混雑しているその店もがらんとしていた。
レアはそれをじっと見て足を止めた。
「セブルス」
「食べたいのか?」
「見るだけよ、ね?」
私は小さく笑いながら足をジェラート屋に向けた。ケースに並ぶ色とりどりのジェラートを見て、レアはひとつ指さした。
「レモンならそんなに甘くなくて食べやすいんじゃないかしら?」
「お前が食べるんだろ?好きなものを選べばいい」
「一緒に食べるから美味しいのよ」
私はいいと断る前に、レアは店員に声をかけてレモンのジェラートをシングルカップで買った。店前のテラス席に座って、パラソルの影の下でレアは楽しそうにそれを食べた。
「美味しいわ。アメリカにもジェラートはあるけど、やっぱりアイスクリームの方が人気だから新鮮だわ。ジェラートってとってもさっぱりしてるのね。ね、ほら。セブルスも一口食べて?」
そう言いながらレアはジェラートを掬って私の前に差し出し、仕方なく私はそれを口で迎えた。少し甘いがさっぱりしたそれは舌の上で直ぐにとけて、暑い日差しに火照った体にはちょうど良かった。
「美味しい?」
「ああ、まぁ悪くない」
「ね、今日は暑いからちょうどいいわ」
レアは手をかざして雲ひとつない空を見上げた。眩しそうに細める目と陽の光が1枚の絵のようで、どうせ写真を撮るならこんな瞬間をとれたらいいのにと思った。
「お前は夏が良く似合うな」
「そう?夏生まれだからかしら。夏は好きよ、何かが始まるような気がして。わくわくするわ。」
あれだけの事がありながら当然のように前を向くその強さを私も見習わないといけないのかも知れない。レアは溶けかけたジェラートをまたひと掬い私に食べさせて、喋りながらゆっくりと食べた。
「帰りましょうか」
食べ終わったカップを魔法で消滅させて、レアはそう言った。
「ああ、行こうか」
家に着いて、レアは少し疲れたと言って部屋に戻った。私はその背中を見送って自分も自室に戻り、服を着替えてから机に向かった。
レアが欲しいと言っていた手紙を書こうと思った。滅多に使わない便箋を袖机から引っ張り出し、羽根ペンを持ったがなかなか書き出せない。しばらく迷ってからようやく短い手紙を書きあげて封をした。
その日の夜、レアはまた部屋から出てこなかった。ゲストルームをノックして名前を呼べば「ごめんなさい」とだけ小さく返事が聞こえた。私は「構わない」と声をかけて、1人で夕食をとった。
無理をして写真など撮りに行くからだろう、まだ気分も落ち込んでいる中で。やはりホグワーツに戻るのはやめよう、そう心の中で決意した。
翌朝、8月30日。午前中、レアはまた部屋から出てこなかった。呼びかけても返事はなく、ただ寝ているだけなのかどうかも分からない。たまらなく不安になって朝食などとる気にならなかった。
また食事と飲み物を部屋の前に起き、私は自室に戻った。私がリビングに居れば、彼女はドアの前のそれを受け取ることすらしないだろう。
夕方4時頃、少し日が陰り始めてきた頃にようやくレアは部屋を出てきた。
「……ごめんなさい」
「いや、構わない」
レアは小さく微笑んで、そのままキッチンに向かった。
「何か食べるのか?私がやろう」
「ううん、良いの。久しぶりにね、スコーンを焼こうかなと思って。だからセブルスは座ってて?」
そう言われて私は大人しくまた食卓に座り直した。それでも彼女が気になってそわそわと振り返ればレアは呆れたように笑った。
「そんなに見られてるとやりにくいわ。どこか出かけたら?ずっと家に居たでしょう、付き合わせちゃってごめんね。少しくらい目を離しても大丈夫よ」
そう言われて、私は曖昧に笑って誤魔化した。目を離した一瞬の間に彼女に何かあったらとずっと不安に思っている。だが少し取りに行きたい物があるのも確かだった。
スコーンを焼いている間に戻ってくるくらいなら大丈夫だろうかと、私は席を立った。
「なら少し出かけてくる。直ぐに戻るから必ずここに居ろ、誰が来てもドアを開けなくて良い。」
「ええもちろん、大丈夫よ。いってらっしゃい。」
私はさっと用意をして、玄関を出てすぐ姿くらましした。向かった先は、ダイアゴン横丁に古くからある宝石屋だった。店に入り、真っ直ぐカウンターへ向かう。
「これはこれはスネイプ様。お待ちしておりました。」
店主が仰々しく私を迎え、奥に下がってトレーを持って再び出てきた。
「お待たせいたしました。こちらご注文のお品でございます。ご確認くださいませ。」
そこにはダイヤが埋め込まれたシンプルなシルバーの指輪が輝いていた。全体を見て要望通りの仕上がりになっている事を確認した。
「問題ない。箱に入れてくれ。」
「はい、かしこまりました。素敵なご婚約指輪でございますね。末永いご多幸をお祈りいたします。」
先週、まだあの食事会に行く前この指輪は注文した。ホグワーツに戻る前に、これをレアに渡そうと思っていた。ギリギリ間に合って良かった、これを持って今日か明日にはイギリスを出よう。
またすぐに家に帰ると、レアがスコーンを食卓に並べたままリビングに居た。これまでに自分が作った刺繍を眺めて、何もせずに座っていた。私の姿を見て、ふわっと優しく笑った。
「おかえりセブルス、待ってたわ。スコーン焼けたの、食べる?」
「ああ、頂こう」
少し良くなってきたのかと、私はほっと息を着いた。とりあえず部屋に戻り、指輪を袖机の1番上の段にしまった。鍵のかけられる場所がそこしか無かったからだ。以前レアから貰った刺繍の入ったハンカチの隣にしまって、また鍵をかけた。
リビングに顔を出せば、レアが紅茶を注いでいた。それをテーブルに並べながらレアは言った。
「ね、お手紙書いた?今欲しいわ。」
「……ああ、少し待ってろ。」
椅子に座ろうと伸ばした手を下ろして、また部屋に戻り手紙をとった。歩きながらこれを渡す必要はあるのだろうかと思った。私はもうホグワーツに戻るつもりは無いし、今からレアとどこに逃げるか話そうと思っているのに。
ほら、と手紙を渡せばレアは嬉しそうにそれを受け取って、大切そうに撫でた。
「後でゆっくり読むわ。先に食べましょう。」
そう言って、スコーンと紅茶を私に差し出した。ラベンダーの良い香りがした。
「ああ、落ち着くな」
「うん、落ち着くわ」
席について紅茶を一口飲んで、スコーンを齧った。レアがにこにこと笑っていて、紅茶の温かさもあり少し眠いような気がした。ここ数日は、夜も不安でよく眠れていなかったからだろう。
「ね、セブルス。1つだけ約束してね、これだけはずっと忘れないで。」
「……なんだ?」
「絶対に死なないで、生きることを諦めないで。あなたが死んだら私も死ぬわ。……だから生きて、セブルス。」
当たり前だと言ってレアの頭を撫でたかったが、耐えきれない程に瞼が重かった。このまま目を閉じたらきっといい夢が見れそうだと、そんな気がした。レアが少し近づいて、唇に柔らかい何かが触れた。
――8月31日。
朝、目を覚まして、自分が服も着替えずに寝ていたことに気付いた。そんなに疲れていただろうかと眉をひそめて、まぁたまにある事なのであまり気にしなかった。どうせ酒を飲んでそのまま寝たんだろう。
自室をでて、いつも通り何も無い殺風景なリビングにでた。何十年も見ているはずの自宅なのに、何故か何かが足りないような気がした。少し考えて、思い過ごしかと首を振った。今日からホグワーツに戻るからきっと敏感になっているだけだろう。
面倒だから朝食は取らずに紅茶だけいれた。朝から食事をとる気にはなれない。深くため息をついて、重くのしかかる気だるさを振り払う事も出来ずに乱暴に椅子を引いた。一口飲んだ紅茶はまだ熱くて、顔を顰めてテーブルに置いた。
ダンブルドアを殺した私を、マクゴナガル達はどう歓迎するのだろうか。カロー兄弟は私の手におえるだろうか。生徒は大人しく授業をうけるだろうか。私に校長は努まるだろうか。
「……リリー」
君の息子は今どうしているだろうか。君の息子を、いつか私が死に導くことを、君が知ったらどんな顔をするだろうか。怒るだろうか、悲しむだろうか、仕方がないと慰めるだろうか。毎日思い出しているはずなのに、もう顔がぼんやりとしか浮かばないんだ、何度も聞いたはずの君の声も思い出せないんだ。
リリー、リリー。間違っていたのはこの世界だろうか。君のことを想っていた、あの頃にはもう戻れない。
朝からくだらない感傷に浸っている場合ではないと乾いた笑いを浮かべ、少しぬるくなった紅茶を一気に飲んだ。どうせあの日から味も分からないのだ、時間をかけて飲む必要も無い。いつものようにフクロウが投げ入れていた朝刊を広げて目を通した。毎日の習慣だ。
その後、家をまた長期間空けることになるからとざっと全体を片付けた。紅茶の茶葉を置いている棚を開けて、見慣れない金色の缶に首をかしげた。ラベルを見れば、ラベンダーティーと書いてある。そんなものは買った覚えも飲んだ覚えもない。どうせいつかの貰い物を適当にここに置いていただけだろうと思い、真っ直ぐゴミ袋に入れた。
ホグワーツは思った通り混乱を極めて、私は生徒が死なないようにするだけで精一杯だった。カロー兄弟は体罰を好み、生徒に闇の魔術を教えた。
「そういえばあの女はどうした?レディ・レアは」
学校が始まってしばらくしたころ、アミカスがわざとらしくそう声をかけてきた。
ああ、そう言えばそんな奴が居たなと私は顔を顰めた。褒美だと闇の帝王に押し付けられた傲慢な女。ぎゃーぎゃーとうるさいから受け取って直ぐに別の家をあてがい、闇の帝王や他の死喰い人の手前だけ良好な関係を装った。
今はどこでどうしているのかも知らない。必要になればまた呼び出せばいい。校長としての職務が優先だ、声がかかることはしばらくないだろう。
「家に置いてきたが?それがどうした」
「いい女だったからな、連れてきて夜な夜な楽しんでいるのかと思った」
「そんなくだらない事に割く時間は無い」
「おうおう、仕事熱心だな。流石あの方の右腕だ」
アミカスはそう揶揄するように言って去っていった。私は眉を寄せたまま、また仕事に戻った。レア・ヘイゼル。顔も覚えていないそんな女どうでもいいはずなのに、何故か頭に引っかかった。
季節が巡り、秋、冬、そして春を迎えようとしていた。ポッターは逃げ続けながらもまだこのイギリスで何かをやっているようだった。それがいつ終わるのか、終わりが来るものなのかはわからない。
ポッターを死に導く、その時がいつになるのかと杖を握りしめた。
4月1日、突然ポッターがホグワーツ城に現れた。闇の帝王はダンブルドアの言葉通りナギニを守り始めて、全てが一気に動いた。
戦いの最中、私は闇の帝王に呼び出され、ナギニ噛まれた。もう死ぬんだろう、生きることに疲れていたしここらが私の人生の幕引きだと思った。最後にポッターに私の記憶を預け、私の役目は終えた。ここで死ねば、きっとリリーも私を受け入れてくれるだろう。やれるだけの事は全てやった。
なのに何故だろう、どうしても死にたくない。死んではいけないと、昔誰かと約束をした気がする。――とても大切な人だった。絶対に死なないとその人に誓った。誓ったんだ。今度こそと。