Let's go カラスバ!
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ミアレシティにきて3ヶ月が経った。
「カラスバさん、メガ結晶の研究データが欲しかったんですね」
「よお気づいたな、一生気づかんかと思ったわ」
「はい、カラスバさんずっと研究の事しか聞かないので昨日気づきました」
「誇らしげな顔すんな、皮肉には一生気づかんつもりやな」
カラスバさんはいつも一言多い。ちらっと顔を見れば機嫌は良さそうだったので少しほっとした。とりあえず相手が怒ってないならそれでいい、ということにしている。
「でもさすがに研究データは渡せませんよ。それをやったらクビになります、私研究以外できないんです。」
「まぁそうやろな、そんな感じするわ」
「ありがとうございます」
「褒めてへん」
今週も土曜日は相変わらず地下水道で、湿った汚い地面に胡坐をかいて私はメガ結晶を掘り出した跡を眺めていた。
「結晶よりこっちの方が気になるんか?」
「結晶を分析するには専門の機械が必要で、手持ちでは限界があります。それより、この場所のほうが情報をたくさん持っています。なぜこの場所にたくさんメガ結晶ができるのか、その視点で調べることにしました。」
「真面目に取り組んでくれて助かるわ」
「はい、給料をもらっているので」
あのレストランで食事をとった後、カラスバさんはなんとまともに給与を出してくれた。それも悪くない金額で。なので私はこの土曜日の作業を自分の中で仕事と位置付けて、真面目に取り組むことにした。
「そんなに金がないんか?」
「お金の問題ではありません、決めごとです」
「自分ルールやな」
「違います、社会のルールです」
「はいはい」
カラスバさんはどこかめんどくさそうにそう言った。
「あの、いつまでここに居るんですか?」
「ここ、人が来んくてええねん。気使わん変な女がおるだけやし。」
「カラスバさんもそんなこと思うんですか。部下に囲まれるのが好きなのかと思ってました。」
「あれは仕事や」
私は少し驚いて道具を置いた。
「人に囲まれるのが仕事。アイドルみたいですね。」
「はは、半分そんなもんや。ただの偶像や。」
なんだかちょっと元気が無くていつものカラスバさんらしくないな、と思った。いつもだったら、「アイドルちゃうわボケ、きしょく悪い」くらい言うはずだ。
「風邪でも引いたんですか」
「なんや、馬鹿にしとるんか」
「らしくないなと思っただけです」
そう言って、私は広げていた道具をてきぱきと片付けた。
「外に出ましょう、カラスバさん」
「はぁ?」
「窓のない建物で長時間過ごすことがメンタルヘルスに悪影響を及ぼすというデータは、心理学や睡眠科学の分野で数多く存在します。私はこういう閉鎖空間好きですが、同僚の中にはやはり苦手な人も多いです。」
「いや別に、そういうんとちゃうからええんやけど、、、」
「そうなんですか?じゃぁやっぱり無しで」
まぁ、カラスバさんがいいっていうならここでいいか。
「いやもうちょっと食い下がれや、ボケと突っ込みちゃうでほんまに」
「カラスバさんが別にいいって言ったんじゃないですか」
「ほんっまにお前はもう、、、」
首をかしげて見て居たら、カラスバさんが私に手を差し伸べた。
「どうせまだメシ食うてへんのやろ、あんたに仕事押し付けたんは俺やけど流石に飯くらい食えや」
「食べてます、携帯食」
「ここはパルデアの大穴とちゃうねん、1歩出れば美味しいレストランも洒落たカフェもいくらでもある。きちっとミアレを堪能しいや」
「なんだかあれですね、観光大使みたいですね」
「俺にそんなこと言うんはお前だけや、アホ」
そうだろうか。正直、ミアレのお洒落な雰囲気は苦手だけどカラスバさんを見ているとそれも悪くないなと思う。カラスバさんに似合ってるし。そういうの、観光大使って言うんじゃないかな。
「日陰モンが観光大使はないやろ」
「そうですか?いけると思ったんですが」
ちょっと悪そうな雰囲気が、男性にも女性にも受けそうだ。ほらさっさと片付けぇやと急かされて、とりあえず私は道具をしまった。
「ほんとに外で食べるんですか?」
「あたりまえや。俺はこんなトイレみたいなとこで飯食いたない。」
「じゃぁ一人で行ったらいいじゃないですか」
ぶつぶつと文句を言いながら、私は仕方なく外に出た。
「人が多い店は嫌です」
「わあってるわ、やかましいな」
「麺類は嫌いです、パスタはやめてください」
「うるせぇ」
「あと生魚も嫌いです、お寿司とか無理です」
「昼から食うかんなもん」
「カラスバさんなら食べそうですよ」
不安に思いながらそわそわと隣をついていけば、ついたのは意外にもキッチンカーのお店だった。
「カラスバさんはもっと重苦しい高級店にしか行かないのかと思ってました」
「そういう店行くときは隣にもうちょっとマシな女連れてくわ」
「そうですね、それがいいと思います」
「嫌味や、嫌味」
でも事実だと思う。とにもかくにも堅苦しい店でなかったことにほっとして、無難そうなコーヒーとサンドウィッチを頼んだ。
「払いますよ、自分の分」
「ええよ別に」
「いえ、こういうのはっきりしたいタイプなんで」
「ああうんもうわかった、そんな感じする」
絶対に払うという強い意思で目を見ればカラスバさんは呆れたように折れた。会計を終えて、キッチンカーから少しだけ離れたところにある、人気の少ない木陰の席に座った。ちょうど他の人から死角で、落ち着けるスペースだった。
「なんでそんな人前で飯食うの嫌なん?」
「特に理由ないですよ、なんかこう、口にもの入れて食べるのってセックスみたいじゃないですか?」
その瞬間、カラスバさんが飲みかけのコーヒーを吹いてせき込んだ。
「汚いです」
「お前のせいやろがい!」
そんなに慌てるとは思ってなかったので、少し笑ってしまった。
「ごめんなさい、カラスバさんってなんか話しやすくて」
流石に私だって、そんなに親しくない人の前でセックスだなんて普段は言わないのだけど、カラスバさんならまぁ良いかなと思ってしまった。
「お前の感性どうなっとんねん。変人ですまされるレベルちゃうぞ」
「そうですかね、カラスバさんははっきりものを言うので私は楽ですよ」
「そりゃお前がズバズバいうからやろ」
「いいですね、ズバットみたいで」
「急にボケるなや、拾いきれんわ」
ヤヤコマがぴちぴちと鳴きながら足元に来て、落ちているパンくずを食べていた。
「ヤクザって普段何するんですか?」
「お前ほんとに直球やな」
「そう言えばよく知らないなって思って」
そう言いながらカラスバさんを見れば少し気まずそうに目線を逸らした。
「ビジネスや」
「そうですか、すごいですね」
「馬鹿にしとんか?」
「本心ですよ?わたし嘘もお世辞もわからないので、商売ごとはいちばん苦手です」
「まぁ、うん、そやろな、、、」
やっぱり今日のカラスバさんはいつもよりキレが悪い気がした。カラスバさんとはまだ知り合って3ヶ月だし、週に1回少し話す程度だから気のせいかもしれないけど。
カラスバさんが何かを言いかけているような気がしたのでじっと待った。
「普通に、学校行ってお勉強してまっとうに評価されとる人間の方が、すごいやろ」
カラスバさんは私を見ないまま、ヤヤコマにサンドウィッチのかけらをあげながらそう言った。
「私は、、、昔からあまり器用なタイプではなくで、空気も読めないので」
「せやろな」
「でも器用じゃなくて良かったのかもなって思うことも最近は多いです。カラスバさんはとても器用そうなので、大変そうですね」
「、、、せやな」
カラスバさんはいつもより無口だったけど、どこか満足そうだった。私の知らない何かがあるんだろうと思うだけだった。
「ブラウニーってあるじゃないですか、あれ生地に死ぬほど砂糖を入れるんですが、ベタに塩と砂糖を間違えて、初恋の男の子にバレンタインあげたことがあります。」
「、、、おん?」
「初めて出来た彼氏とカフェに行った時、緊張しすぎてコーヒーの距離を間違えて膝に全部ぶちまけました」
「、、、悲惨やな」
「そのままお会計の時、財布に死ぬほどレシートが詰まっててお札を取り出せなくて、無理やり引っ張ったら紙ふぶきみたいに全部ぶちまけました」
「ふはっ!お前それやばいやろ!」
カラスバさんが笑いながらコーヒーを飲んでこちらを見た。さっきより明るくなった気がする。
「何お前、俺のこと元気づけようとしてくれとるん?」
「はい、だいたいこの話しで皆笑うので」
カラスバさんはまたコーヒーを置いて、やっぱり笑いながら私を見た。
「そら嬉しいけど、そんなせんでええで」
「そうですか?」
「おん、そのままでもお前十分おもろいわ」
「ならまぁ、はい。そのままでいます。」
そう言われるとちょっと気まずい。足もとのヤヤコマはもう居なくなっていた。
それからカラスバさんは、私を服屋に引っ張った。いい加減見た目をもう少しどうにかしろというのだ。
「やです!服を買うのは苦手なんです、店員さんに話しかけられるのが怖いんです!」
「どう考えても俺より怖ないわ、お前のその図太さでいけるやろ!」
「いいえ、カラスバさんより服屋のお姉さんの方が数倍怖いです!」
「どつき回したろか!」
ミアレに来てから服なんて一着も買ってない。別に手元にあるもので事足りていたし、おしゃれするつもりもなかった。
ファッションアバターの初期装備のようなシンプルなTシャツにジーパン。もうちょっとちゃんとした服をと考えないことも無いが、正直白衣を着てしまえば誤魔化せると思っている。
カラスバさんが連れてきたのはモード・マチュアという大人っぽいテイストの落ち着いた服屋だった。
「スカートは絶対に嫌です、動きにくいので」
「わかったわかった」
「ひらひらしたフリルも嫌です、邪魔なので」
「はいはい」
「手入れが大変な服も無理です、そんな時間ないので」
「だから俺やのうて店員に言えや」
店員さんはカラスバさんの後ろで苦笑いしながらそれを聞いていた。提案されたサロペットは思ったより着心地も悪くなくて、何より上下の組み合わせに悩む必要が無いのが良かった。
色違いでそれを3着買って、他にもシンプルなブラウスとパンツを買った。ほとんど全部店員さんとカラスバさんが決めた。
「ありがとうございます、助かりました!正直、カラスバさんの事だからすっごい奇抜な服勧められたらどうしようかと思ってました!」
「おん、もう今日何回言うたかわからんが、殺すで?」
行きは非常にナーバスな気持ちだったが、最終的に満足のいく買い物が出来たので私はご満悦だった。
「クエーサー社の人って、研究職の人でもちゃんとした服着てるので正直ちょっとやだなって思ってたんですよね。これで堂々と白衣を脱げます。」
「あんな初期装備でどこまでも行こう思うのは、お前くらいや」
「でもやっぱりちょっと着にくいですね、この服」
「はあ?!なんでや、散々細かい注文に答えて選んでやったろうが」
「だってせっかく気に入った服、汚したくないじゃないですか」
「ああそういう、、、。汚す前提でおるなや」
「地下水道送りにしてる張本人なのに」
「じゃあもうええよ、地下水道行かなくても」
カラスバさんがサラッとそう言うので、私は立ち止まった。
「それは、、、嫌です」
「なんでや?」
「、、、給料良いので」
だってそうしたら、カラスバさんとこうやって喋る接点も無くなってしまうから。
ああ流石に常識のない私だって、ただの一般人がヤクザに恋するなんて絶対やめた方が良いってわかってるのにな。
「ほんまにそれだけか?」
見透かしたようににやにやと笑うカラスバさんから目を逸らした。
「今日、色々買い物しましたし」
「ま、せやな」
そういえばこの人、今日落ち込んでいたのでは無かったのかと言いたくなるくらい機嫌が良さそうだった。
「カラスバさん、メガ結晶の研究データが欲しかったんですね」
「よお気づいたな、一生気づかんかと思ったわ」
「はい、カラスバさんずっと研究の事しか聞かないので昨日気づきました」
「誇らしげな顔すんな、皮肉には一生気づかんつもりやな」
カラスバさんはいつも一言多い。ちらっと顔を見れば機嫌は良さそうだったので少しほっとした。とりあえず相手が怒ってないならそれでいい、ということにしている。
「でもさすがに研究データは渡せませんよ。それをやったらクビになります、私研究以外できないんです。」
「まぁそうやろな、そんな感じするわ」
「ありがとうございます」
「褒めてへん」
今週も土曜日は相変わらず地下水道で、湿った汚い地面に胡坐をかいて私はメガ結晶を掘り出した跡を眺めていた。
「結晶よりこっちの方が気になるんか?」
「結晶を分析するには専門の機械が必要で、手持ちでは限界があります。それより、この場所のほうが情報をたくさん持っています。なぜこの場所にたくさんメガ結晶ができるのか、その視点で調べることにしました。」
「真面目に取り組んでくれて助かるわ」
「はい、給料をもらっているので」
あのレストランで食事をとった後、カラスバさんはなんとまともに給与を出してくれた。それも悪くない金額で。なので私はこの土曜日の作業を自分の中で仕事と位置付けて、真面目に取り組むことにした。
「そんなに金がないんか?」
「お金の問題ではありません、決めごとです」
「自分ルールやな」
「違います、社会のルールです」
「はいはい」
カラスバさんはどこかめんどくさそうにそう言った。
「あの、いつまでここに居るんですか?」
「ここ、人が来んくてええねん。気使わん変な女がおるだけやし。」
「カラスバさんもそんなこと思うんですか。部下に囲まれるのが好きなのかと思ってました。」
「あれは仕事や」
私は少し驚いて道具を置いた。
「人に囲まれるのが仕事。アイドルみたいですね。」
「はは、半分そんなもんや。ただの偶像や。」
なんだかちょっと元気が無くていつものカラスバさんらしくないな、と思った。いつもだったら、「アイドルちゃうわボケ、きしょく悪い」くらい言うはずだ。
「風邪でも引いたんですか」
「なんや、馬鹿にしとるんか」
「らしくないなと思っただけです」
そう言って、私は広げていた道具をてきぱきと片付けた。
「外に出ましょう、カラスバさん」
「はぁ?」
「窓のない建物で長時間過ごすことがメンタルヘルスに悪影響を及ぼすというデータは、心理学や睡眠科学の分野で数多く存在します。私はこういう閉鎖空間好きですが、同僚の中にはやはり苦手な人も多いです。」
「いや別に、そういうんとちゃうからええんやけど、、、」
「そうなんですか?じゃぁやっぱり無しで」
まぁ、カラスバさんがいいっていうならここでいいか。
「いやもうちょっと食い下がれや、ボケと突っ込みちゃうでほんまに」
「カラスバさんが別にいいって言ったんじゃないですか」
「ほんっまにお前はもう、、、」
首をかしげて見て居たら、カラスバさんが私に手を差し伸べた。
「どうせまだメシ食うてへんのやろ、あんたに仕事押し付けたんは俺やけど流石に飯くらい食えや」
「食べてます、携帯食」
「ここはパルデアの大穴とちゃうねん、1歩出れば美味しいレストランも洒落たカフェもいくらでもある。きちっとミアレを堪能しいや」
「なんだかあれですね、観光大使みたいですね」
「俺にそんなこと言うんはお前だけや、アホ」
そうだろうか。正直、ミアレのお洒落な雰囲気は苦手だけどカラスバさんを見ているとそれも悪くないなと思う。カラスバさんに似合ってるし。そういうの、観光大使って言うんじゃないかな。
「日陰モンが観光大使はないやろ」
「そうですか?いけると思ったんですが」
ちょっと悪そうな雰囲気が、男性にも女性にも受けそうだ。ほらさっさと片付けぇやと急かされて、とりあえず私は道具をしまった。
「ほんとに外で食べるんですか?」
「あたりまえや。俺はこんなトイレみたいなとこで飯食いたない。」
「じゃぁ一人で行ったらいいじゃないですか」
ぶつぶつと文句を言いながら、私は仕方なく外に出た。
「人が多い店は嫌です」
「わあってるわ、やかましいな」
「麺類は嫌いです、パスタはやめてください」
「うるせぇ」
「あと生魚も嫌いです、お寿司とか無理です」
「昼から食うかんなもん」
「カラスバさんなら食べそうですよ」
不安に思いながらそわそわと隣をついていけば、ついたのは意外にもキッチンカーのお店だった。
「カラスバさんはもっと重苦しい高級店にしか行かないのかと思ってました」
「そういう店行くときは隣にもうちょっとマシな女連れてくわ」
「そうですね、それがいいと思います」
「嫌味や、嫌味」
でも事実だと思う。とにもかくにも堅苦しい店でなかったことにほっとして、無難そうなコーヒーとサンドウィッチを頼んだ。
「払いますよ、自分の分」
「ええよ別に」
「いえ、こういうのはっきりしたいタイプなんで」
「ああうんもうわかった、そんな感じする」
絶対に払うという強い意思で目を見ればカラスバさんは呆れたように折れた。会計を終えて、キッチンカーから少しだけ離れたところにある、人気の少ない木陰の席に座った。ちょうど他の人から死角で、落ち着けるスペースだった。
「なんでそんな人前で飯食うの嫌なん?」
「特に理由ないですよ、なんかこう、口にもの入れて食べるのってセックスみたいじゃないですか?」
その瞬間、カラスバさんが飲みかけのコーヒーを吹いてせき込んだ。
「汚いです」
「お前のせいやろがい!」
そんなに慌てるとは思ってなかったので、少し笑ってしまった。
「ごめんなさい、カラスバさんってなんか話しやすくて」
流石に私だって、そんなに親しくない人の前でセックスだなんて普段は言わないのだけど、カラスバさんならまぁ良いかなと思ってしまった。
「お前の感性どうなっとんねん。変人ですまされるレベルちゃうぞ」
「そうですかね、カラスバさんははっきりものを言うので私は楽ですよ」
「そりゃお前がズバズバいうからやろ」
「いいですね、ズバットみたいで」
「急にボケるなや、拾いきれんわ」
ヤヤコマがぴちぴちと鳴きながら足元に来て、落ちているパンくずを食べていた。
「ヤクザって普段何するんですか?」
「お前ほんとに直球やな」
「そう言えばよく知らないなって思って」
そう言いながらカラスバさんを見れば少し気まずそうに目線を逸らした。
「ビジネスや」
「そうですか、すごいですね」
「馬鹿にしとんか?」
「本心ですよ?わたし嘘もお世辞もわからないので、商売ごとはいちばん苦手です」
「まぁ、うん、そやろな、、、」
やっぱり今日のカラスバさんはいつもよりキレが悪い気がした。カラスバさんとはまだ知り合って3ヶ月だし、週に1回少し話す程度だから気のせいかもしれないけど。
カラスバさんが何かを言いかけているような気がしたのでじっと待った。
「普通に、学校行ってお勉強してまっとうに評価されとる人間の方が、すごいやろ」
カラスバさんは私を見ないまま、ヤヤコマにサンドウィッチのかけらをあげながらそう言った。
「私は、、、昔からあまり器用なタイプではなくで、空気も読めないので」
「せやろな」
「でも器用じゃなくて良かったのかもなって思うことも最近は多いです。カラスバさんはとても器用そうなので、大変そうですね」
「、、、せやな」
カラスバさんはいつもより無口だったけど、どこか満足そうだった。私の知らない何かがあるんだろうと思うだけだった。
「ブラウニーってあるじゃないですか、あれ生地に死ぬほど砂糖を入れるんですが、ベタに塩と砂糖を間違えて、初恋の男の子にバレンタインあげたことがあります。」
「、、、おん?」
「初めて出来た彼氏とカフェに行った時、緊張しすぎてコーヒーの距離を間違えて膝に全部ぶちまけました」
「、、、悲惨やな」
「そのままお会計の時、財布に死ぬほどレシートが詰まっててお札を取り出せなくて、無理やり引っ張ったら紙ふぶきみたいに全部ぶちまけました」
「ふはっ!お前それやばいやろ!」
カラスバさんが笑いながらコーヒーを飲んでこちらを見た。さっきより明るくなった気がする。
「何お前、俺のこと元気づけようとしてくれとるん?」
「はい、だいたいこの話しで皆笑うので」
カラスバさんはまたコーヒーを置いて、やっぱり笑いながら私を見た。
「そら嬉しいけど、そんなせんでええで」
「そうですか?」
「おん、そのままでもお前十分おもろいわ」
「ならまぁ、はい。そのままでいます。」
そう言われるとちょっと気まずい。足もとのヤヤコマはもう居なくなっていた。
それからカラスバさんは、私を服屋に引っ張った。いい加減見た目をもう少しどうにかしろというのだ。
「やです!服を買うのは苦手なんです、店員さんに話しかけられるのが怖いんです!」
「どう考えても俺より怖ないわ、お前のその図太さでいけるやろ!」
「いいえ、カラスバさんより服屋のお姉さんの方が数倍怖いです!」
「どつき回したろか!」
ミアレに来てから服なんて一着も買ってない。別に手元にあるもので事足りていたし、おしゃれするつもりもなかった。
ファッションアバターの初期装備のようなシンプルなTシャツにジーパン。もうちょっとちゃんとした服をと考えないことも無いが、正直白衣を着てしまえば誤魔化せると思っている。
カラスバさんが連れてきたのはモード・マチュアという大人っぽいテイストの落ち着いた服屋だった。
「スカートは絶対に嫌です、動きにくいので」
「わかったわかった」
「ひらひらしたフリルも嫌です、邪魔なので」
「はいはい」
「手入れが大変な服も無理です、そんな時間ないので」
「だから俺やのうて店員に言えや」
店員さんはカラスバさんの後ろで苦笑いしながらそれを聞いていた。提案されたサロペットは思ったより着心地も悪くなくて、何より上下の組み合わせに悩む必要が無いのが良かった。
色違いでそれを3着買って、他にもシンプルなブラウスとパンツを買った。ほとんど全部店員さんとカラスバさんが決めた。
「ありがとうございます、助かりました!正直、カラスバさんの事だからすっごい奇抜な服勧められたらどうしようかと思ってました!」
「おん、もう今日何回言うたかわからんが、殺すで?」
行きは非常にナーバスな気持ちだったが、最終的に満足のいく買い物が出来たので私はご満悦だった。
「クエーサー社の人って、研究職の人でもちゃんとした服着てるので正直ちょっとやだなって思ってたんですよね。これで堂々と白衣を脱げます。」
「あんな初期装備でどこまでも行こう思うのは、お前くらいや」
「でもやっぱりちょっと着にくいですね、この服」
「はあ?!なんでや、散々細かい注文に答えて選んでやったろうが」
「だってせっかく気に入った服、汚したくないじゃないですか」
「ああそういう、、、。汚す前提でおるなや」
「地下水道送りにしてる張本人なのに」
「じゃあもうええよ、地下水道行かなくても」
カラスバさんがサラッとそう言うので、私は立ち止まった。
「それは、、、嫌です」
「なんでや?」
「、、、給料良いので」
だってそうしたら、カラスバさんとこうやって喋る接点も無くなってしまうから。
ああ流石に常識のない私だって、ただの一般人がヤクザに恋するなんて絶対やめた方が良いってわかってるのにな。
「ほんまにそれだけか?」
見透かしたようににやにやと笑うカラスバさんから目を逸らした。
「今日、色々買い物しましたし」
「ま、せやな」
そういえばこの人、今日落ち込んでいたのでは無かったのかと言いたくなるくらい機嫌が良さそうだった。