日本人、女性
原作前
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学年が上がるにつれて、誰が誰に告白したとか、付き合ったとか、キスをしたとか、セックスをしたとか、そういう話が多くなった。
例に漏れず私もそういうものに興味があった。スネイプ先生が好きなのは変わらないけど、それはそれとしてそういう経験がしたかった。
スネイプ先生と付き合いたいなんて言うのは宇宙に行きたいっていうのと同じようなもので現実味は無かったし、望むだけばかばかしかった。むしろ男性経験を積めば少しは大人になって、スネイプ先生と近い景色が見れるような気がした。
そう考えてよく知りもしない、好きでもない人からの告白をOKした。1ヶ月くらい付き合ってたけどキスをされた瞬間嫌悪感が爆発して突き飛ばした。それは彼のプライドをひどく傷つけたようでそのまま別れた。
その後いろいろと酷い噂を流された。ビッチだとか、私が浮気してたとか、5股だったとかそういう類のものだ。もともと友人が少ない、浮いていた私はそれを訂正する術もなくただ眺めているしかなかった。
15歳そこらでしかない私にはそれなりにショックな出来事だったけど、それ以上はどうにもならなかった。人のうわさに戸は建てられない。
数少ない心許せる友人である一つ年上のチャーリー・ウィーズリーが「大丈夫?」と心配そうに声をかけてくれた。
「別に、気にしてない。」
どっからどう見ても強がりでしかない私の言葉にチャーリーは「うん」とそれ以上何を言えばいいかわからないようだった。
「別に、好きでもないのに付き合ったのは本当だし、やっぱ無理だったから無理ってゆっただけだし」
「うん」
「ビッチだとか、そう思うんだったらそう思っておけばいいというか。逆に子供すぎて無理というか。」
「うん」
「今までだって他の人に好かれるようなキャラじゃないの自分でわかってるし、どうでもいいし」
「うん」
「チャーリーも何か言ってよ」
「おれの恋人になってよ、名前」
「、、、は?」
チャーリーを見ると、顔を真っ赤にしながらわたしの前髪を必死で見ていた。
なんで?とか、バカなの?とか、そういう軽口がのどまで出かかって辛うじて飲み込んだ。チャーリーがわたしに好意を持っていることはわかっていた、裏がわかっているから私も軽く心を許した。そういう不平等な関係だった。
それでもチャーリーはそういういわゆる性欲みたいなのを見せてこないから、私は彼の好意に甘えていたのだ。
「わ、私他に好きな人いる」
「あー、うん、わかってる、うん、多分そうだろうなって思ってた。でもこのままの君を見ていられないというか、形だけでも、その、俺と付き合ったことにすれば噂もなくなるかなって」
「それ、噂多分良くならないし、チャーリーの評判下げるだけだよ」
「えっ、そ、そうかな?」
そりゃそうでしょう。グリフィンドール生に守られるスリザリン生なんて双方から嫌われる未来しか見えない。そんなことすらわからないチャーリーがバカで、いい人なんだと思う。
彼はただ私のことが好きで、私のことを守りたくて勇気を出したのだ。
「それでもいいならいいよ」
「えっ?」
「チャーリーがそれでもいいなら、恋人にして」
ずるい言い方だったと思う。チャーリーは嬉しそうにYESと答えた。5年生が終わる直前の出来事だった。
数か月が経って、私は6年生に、チャーリーは最終学年の7年生になった。ホグワーツでは6年生から授業のコマ数が減ってより専門的な内容に絞られる。
慰者コースをとっていた私は他の生徒より授業の数が多く、全体の難易度が上がり日々の課題に目を回していた。
恋人になったといっても、チャーリーは私の気持ちを汲んであまり恋人らしいことはしてこなかった。
せいぜい手をつないで散歩して天気の話をするくらいだった。彼は女性に慣れていないものの、私にとってまさに紳士だった。
私は罪悪感すら愛おしく思えて、だいたいみんなこういう矛盾を抱えながら恋人になっていくのだと思った。大好きな人同士が結ばれることの方が珍しいのだ。苦みが自分を大人にしてくれるようだった。
スネイプ先生とはなるべく距離を置いた。私が追いかけまわしていただけだから、距離ができるのはあっという間だった。そもそも開くほどの距離もないというか、ただの先生と生徒がそのままの関係を維持しただけだった。
私の5年間の恋はこんなにあっけないものだったのかと思って心が痛んだ。その痛みもチャーリーの優しさで誤魔化した。
「名前は今年のクリスマスも学校に残るの?」
「うん、2週間で日本帰ってると時差ボケ辛いんだよね。」
談話室では話せないので中庭の噴水に腰かけて話した。日によっては雪も降る日もあり、寒くてローブの中に手を引っ込める私にチャーリーは自分のマフラーをかけてくれた。私は緑と赤2色のマフラーをぐるぐるとまいていた。
「その、良かったらうち来ない?」
「チャーリーの家?」
「うん、うち兄弟多いしクリスマスも友達呼ぶことも結構あるから。ほら、前名前がイギリス人のクリスマスの過ごし方が気になるって言ってたじゃん?まぁ魔法使いの家だから、普通のマグルとは違うかもしれないけど。
あ、ちゃんと友達っていうから、恋人じゃなくて!その、外堀から埋めようみたいな、そういうのじゃないから!」
たくさん話しながらチャーリーは顔を赤くさせた。髪も赤いから全部同じ色みたいだ。今顔を触ったらきっとポットのように温かいんだろう。
少し迷ったけど、これは私にとってありがたい申し出だった。毎年クリスマスは生徒が少ない分スネイプ先生と距離が近くて、今年はそれが少し気まずいと思っていたところだった。まぁ、スネイプ先生にとっては本当にどうでもいいことなんだろうけど。
そこまで考えて、私はまた自分のことしか考えていない自分が嫌になった。チャーリーは私の気まずさまで考えてくれてるのに。
「恋人ってゆっていいよ。家にお邪魔してもいいかな。」
「い、いいの?もちろん!」
チャーリーのパッと広がるヒマワリのような笑顔を見ていると、自分がいいことをしているような気になった。
スリザリンの談話室でぼーっとしながら、クリスマス学校に残る人のリストを遠くから眺めた。毎年ここの常連だったのに、今年は名前を書く必要がない。監督生がそのリストを確認して、私に渡しながら言った。
「後あなただけだから、名前書いたらスネイプ先生に持って行ってくれる?」
今年は残らないと断る前に、その女子生徒はさっさと談話室を出て行ってしまった。仕方ないとため息をついて私はそのリストをもって先生を探した。
魔法薬学の教室に居なかったので、先生の研究室のドアをノックし、「入れ」と短い声が聞こえてわたしはドアを開けた。
リストを渡してその場でOKと言われるまで待った。先生はリストをチェックしてから一回手を止め、もう一度確認してから言った。
「お前は残らないのか」
「はい。今年は友人の家にお邪魔することになったので。」
「トンクスか」
「違います」
「驚いた、お前にあの七変化以外にも友人がいたとは」
「もうちょっといますよ」
トンクスは確かに一番仲のいい友人だし、彼女は派手で、スリザリンとハッフルパフという組み合わせは珍しいので学内でも目立つ組み合わせだった。
それでもスネイプ先生が私の交友関係を把握しているのが少し嬉しい。ああもう、こういうのと距離を置くためにチャーリーと付き合っているというのに。
先生がすき、でもそれだけ。私が一方的に好きなって素敵なイベントも告白もないまま終わるたいしたことないどこにでもある片思いだ。
クリスマス、少し緊張してチャーリーの家にお邪魔したらみんなとても暖かく迎えてくれた。私がスリザリンということも全く気にせず、慰者コースをとっていることに驚いて、チャーリーにこんなちゃんとしてガールフレンドが居るなんてと母親のモリ―夫人は目を潤ませていた。
今にも結婚式の話まで始めそうな勢いにチャーリーがあわてて「母さん!」と止めに入っていた。
たいしたお土産は用意できなかったが、日本の正月の遊びだよと羽子板やら凧やら持っていけば彼の弟と妹たちがとても喜んでくれた。特に福笑いは大うけだったようで、イギリスでこんなに日本らしいことをしたのは初めてだった。
常に二人以上が話しているその狭い家は緊張する暇もないほどで、2週間は3日ほどのスピードで過ぎた。
旦那さんのアーサーさんは習字にとても興味があったようで、漢字で『魔法使い』と書いてあげたらとても嬉しそうに額に入れて壁に飾ってしまった。大して上手でもなく恥ずかしいのでどうにか下げといてくれとチャーリーに懇願したら、頑張ってみるとなんとも頼りない返事をくれた。
「遊びに来てくれてありがとう」を9人分聞いて、一つ一つに返事をした。特に来年ホグワーツ入学予定のロンと末っ子のジニーはとてもなついてくれて非常にかわいかった。
「来年ホグワーツで待っててよね!名前!」
「ずるい、私も早く学校に行きたい!ねぇまた家まで来てくれる?」
うんうん、また遊ぼうねと駅のホームまで二人の手を握りながらやっとの思いで汽車に乗って私はほっと一息ついた。
「ごめんちょっとうるさかったよね、疲れた?」
チャーリーが少し申し訳なさそうな顔をしながら聞いてきた。
「ううん、楽しかったよ。誘ってくれてありがとう。」
あのうるささはちょっとではないと思ったけど、楽しかったのは本心だ。もし本当に私がチャーリーと結婚でもしてあのウィーズリー家の一員になったら、多分私は魔女になれるだろうと思った。
あの家は隅から隅までイギリスの魔法使いだった。人を錯角させるほどに。
この目立つ乗車はすっかり話題になり、私とチャーリーは付き合っているという噂が学校に広まるまで三日もかからなかった。
案の定スリザリン生からの嫌がらせは悪化したが6年生ともなれば対処法も身についているというもので、何よりチャーリーが居たからそんなに辛くなかった。
唯一の誤算は、私が全然スネイプ先生を諦められなかったことだ。
最初は気にならなかったそれも、時間が経つにつれて少しずつ真綿のように私の首を絞めていく。当たり前のように享受していたチャーリーの優しさがだんだん辛くなってきて、八つ当たりのようにチャーリーに文句を言った。
チャーリーはとてもやさしくて、決して言い返さないから私も文句を言いやすくて、それにすら文句を言った。
だんだんと歯車がかみ合わなくなってきて、自分の中で別れを意識するようになった。
私はチャーリーを避けるようになり、別に今やらなくてもいい魔法薬学の居残り実験をしていた。わざと時間のかかる丁寧な抽出方法で、水がぽたぽたと落ちていくのを黙って見つめる。
チャーリーがこそっと隣に来て小さな声で話しかけた。
「このあと散歩しない?」
「ごめん無理。これやんなきゃいけない課題だから。」
顔も見ずにそっけなくそう返せば、チャーリーは邪魔してごめんねと言って教室を出た。
「そんな課題を出した覚えはないがね、ミス・苗字」
にやにやと笑うスネイプ先生に話しかけられて思わず目をそらす。いつもは嬉しいけどさすがに今はバツが悪かった。
「グリフィンドール生までも虜にするスリザリン生とは鼻が高いな」
「そんなんじゃないです」
もういっそのこと先生に告白してフラれてみようか。そうしたら私も割り切ってちゃんとチャーリーに向き合えるかもしれない。
「先生は恋人とかいないんですか」
「そんなくだらないものに割く時間はない」
取り付く島もない返答に心が折れる。これでは告白まで行き着くこともない。出来上がったのは弱い真実薬で、こぼさないよう丁寧に瓶に詰めた。
「先生は私みたいな人どう思います?」
「幅広い異性にモテる魅力的な女性のことか?」
「もうはい、それでいいです」
「それはそれはもう素晴らしい才能だと思うよ、ミス・苗字」
「そうですよね、私もそう思います。」
これ以上私がチャーリーを好きになることは無い。もう潮時だ。この期に及んで、私はまだ先生に嫌われるのが一番嫌なのだ。
私は自分が後戻りできないように、できたばかりの真実薬を全部飲み込んだ。
「行ってきます。戻ってきたら慰めてくれますか?」
「私が赤毛を慰めればいいのか?ずいぶん変わった申し出だな」
「わたし、わたしスネイプ先生に嫌われたくないんです。」
先生が好きなんですと言ってしまう前に、走って魔法薬学の教室を飛び出した。
そうして、私はチャーリーと別れた。
ほとんど丸1年、16歳にとって恋人と1年付き合うのはなかなか長い方だったと思う。
チャーリーはとても悲しそうな顔をしていたけど、そんな気はしてたよと最後まで笑ってくれた。
「最後に聞いていい?君が好きな人って誰だったの?」
「スネイプ先生」
チャーリーはすごく驚いた顔をして、本当に?と何度も確かめた。私が何度もうなずくと、少し笑って「ビルじゃなくてよかった。」と言った。好きな人がみんなビルに夢中になっていくのが軽くトラウマらしい。
「チャーリーは女の子の趣味悪いと思う」と言ったら「それ君が言う?スネイプ先生も中々だよ?」と言われてその通りすぎて笑ってしまった。
チャーリーは最後に私のおでこにキスをした。嫌じゃなかった。
チャーリーとこんなに楽しく話したのは久々で、私たちはちゃんと友達に戻った。
ただひたすらに、彼の優しさのおかげで。