日本人、女性
原作前
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ホグワーツ4年生、日本でいうと中3から高校1年生くらいだろうか。自分は特別でも何でもないということをじわじわと理解し、いまだに英語に苦戦しながら友達のいない校舎を歩いた。
それでも毎日それなりにやっていけるのはひとえにスネイプ先生が好きだから。世の学生はみんな先生に恋すればいいのではないだろうか。成績もよくなるし素行もよくなるだろう。ああいや、構ってもらいたくて校則違反するパターンもあるかもしれない。
2コマ続きの魔法薬学の授業。大鍋を自動でぐるぐるかき混ぜながら準備した材料を指示に沿って鍋に入れていった。
今作っているのは鎮静水薬で、飲んだ人の気持ちを落ち着ける効果がある。副作用として摂取しすぎるとすすり泣きが止まらなくなる。号泣でなくてすすり泣きというのがいかにも魔法薬らしくて面白い。
説明するスネイプ先生の声を一言一句聞き漏らすまいと真剣に耳を傾けた。スネイプ先生の声は滑るように静かでやわらかい声で、かすれた汚い私の声とはまるで正反対だ。
完成した鎮静水薬をそっと瓶に詰めて提出用のラベルを貼った。
いつも通りの授業、いつも通りスネイプ先生は私をスルーして隣の女子生徒の鍋を見て褒めた。彼女が純血だから。私は褒められない、日本人だから。
でも私の鎮静水薬のほうができがいいはずだ。理想的な透明感ある水色で、光を通すと反射できらきらと輝いた。
「可哀そうなアジア人、上手にお薬作ったのに褒めても貰えないなんてねぇ?」
さっきスネイプ先生に褒められていた女子生徒がわたしを煽った。
「そうね、スネイプ先生もあなたの鎮静水薬を褒めるのは苦労したんじゃないかな。下手すぎて。」
めったに言い返さない私が言い返したのが意外だったんだろう。顔を真っ赤にしてわなわなと震えている。別に今まで言い返さなかったのは私がいい子だったからじゃない、英語に自信が無かっただけだ。4年生ともなればそれなりに言葉を返すことくらいはできる。
「この生意気サル女!」女子生徒がペパーミントを乱暴に一掴みとり、私の鍋に突っ込んだ。
鎮静水薬はペパーミントの量を間違えると、すすり泣きの副作用が強くなる。一気に立ち込める煙が顔を覆った。とっさに目を閉じるが大して意味はない。近くできゃあと悲鳴が聞こえて、大惨事になったのは目を開けるまでもなくわかった。
「何事だ」
スネイプ先生の声が後ろから聞こえた。
「このサル女がペパーミントの量を間違えたんです、スネイプ先生!」
よくもまぁぬけぬけと。
「違います。彼女が私の鍋にペパーミントを突っ込んだんです。」
そういって私は目元を抑えながら自分の提出用鎮静水薬をスネイプ先生に渡し、先生はそれをじっと見た。嫌がらせが瓶詰めの後で良かった。
おおよその事情を察しのたのだろうが、スネイプ先生が相手の女子生徒を罰することはなかった。
「片付けておけ、ミス・苗字」
「はい、スネイプ先生」
ああ本当、これがスネイプ先生じゃなかったら暴れまわってるところだった。でも私はいい子だからそんなことしないの。スネイプ先生がわたしの名前を呼んでくれたから、それだけでいい。
なんてね。恋に恋する馬鹿な女ってこんな感じ。目元を拭いながら軽く笑った。
授業終わりの鐘が鳴って、みんな昼食をとりに食堂へ向かった。先ほどの女子生徒も私に捨て台詞をはいてからわざと大鍋を倒し周りを汚してから教室を出て行った。
しかたなしにため息をついてから掃除に取りかかる。
ペパーミントが目に染みて痛い。すすり泣きというか、これは玉ねぎが目に染みてるのと同じ状況じゃないのか。でも結果的にスネイプ先生と二人きりで教室に残ってるんだからラッキーかもしれない。グッジョブ意地悪スリザリン女子生徒。
しばらく黙って手を動かしていると、スネイプ先生がわたしに質問した。
「なぜ反論した」
私は自分が提出した鎮静水薬を指さした。
「うまくできたので」
どう考えても私の鎮静水薬のほうがうまくできていた。私の勝ちだった。だからくだらない喧嘩にも乗った。わたしの方が上手にできたのに、あの女が褒められてるのは癪だった。
スネイプ先生がわたしの鎮静水薬を手に取り、光にかざした。
「ああ、上出来だ」
褒められると思っていなかったので驚いて手を止め、スネイプ先生をじっと見た。スネイプ先生は珍しく薄く笑いながら言葉を続けた。
「どうした?褒められたくてわざわざ面倒を起こしたんだろう?」
「面倒を起こしたのは彼女の方です」
褒められたかったのはそうです。と心の中で。それでも嬉しくて、にやけるのを止められない。思わずそっと口元を隠してくるっと後ろを向いた。
「いつまでそのテーブルを拭いてるつもりだ?」
「特別汚れてたんです」
いつからかわからないけど、私が先生を好きなことはバレバレなんだろう、子供遊び程度にしか思っていないだろうが。だからたまにこうやってからかって遊んでくる。そんな先生も好きだった。
全ての片づけが終わると、もうほとんど昼休憩は終わっていて昼食を食べ逃したことを知る。時計から目線を外すと、目の前に急にサンドイッチが現れた。スネイプ先生が出したのだ、同じものが先生の前にもある。
「次の授業は?」
私はありがとうございますとお礼を言ってからサンドイッチをほおばった。
「魔法生物飼育学です」
「帰りに妖精の羽をむしってこい」
「どこにいるんですか?」
「門番の庭だ」
門番とはハグリットのことだ。
「またハグリットの対応私に押し付けてるだけじゃないですか」
「あいつの英語は聞くに耐えないうえに声がでかくてうるさい」
「あのなまり聞き取れないんですよ私」
「サンドイッチ代だ」
「食べた後にいうのはずるいですよ」とはいえ断る選択肢はないのだけれど。「どのくらいあればいいですか?」
「そうだな、20枚程度でいいか」
わかりました、と返事をしてサンドイッチの最後の一口を食べた。名残惜しいが、そろそろ行かないと授業に遅れてしまう。
「いってきます」
スネイプ先生は何も言わずに私を追い払うように手を振った。