日本人、女性
原作前
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名前・苗字は目立つ生徒ではなかった。
むしろ限りなく地味で、彼女の名前と顔が一致したのは苗字が3年の冬頃の授業だったと思う。スネイプはその日の授業を思い出していた。
「戯言薬の材料と効果効能は何だ」
クラスに呼びかけるが誰一人手が上がらない。この学年は外れだと舌打ちをしたとき、小さく手を挙げた生徒がいた。
おかっぱ頭の背の低いアジア系の女子生徒で、制服でスリザリンであることはわかるが名前がわからなかった。当てるのが面倒だと思ったが他に挙手している生徒はいない。
「答えろ」
少し考えたがやはり名前が出てこないのでそう指示をだした。
「戯言薬の材料はバレリアンの枝葉、トリカブト、ディタニィです。飲んだ人に支離滅裂なことを言わせます。」
「正解だ。名前は。」
「名前・苗字です。」
この時、こいつがあの苗字だったことに驚いた。苗字は1年の時レポートも試験もすべて酷い出来で、特に文法を酷く間違えおり読みづらく、レポートの採点にはいつもイライラしたのを覚えてる。呪文学の実技でも発音に問題があるとフリットウィックが言っていた。
英語話者ではないのは明らかだった。
そういえば、いつからかあの煩わしいレポートも見なくなった。いつのまに英語をまともに話せるようになっていたのだろうか。
彼女の掠れた声がやけに耳に残った。小さな声だったが聞き取りやすかった。
見ていると基本的に一人で行動しており、無口で表情も変わらない。いつも口元までマフラーで覆っていて、あの掠れ声を聞くことはしばらく無かった。
3月の中頃、私は手が空いたので放課後の校舎を見回りしていた。人の少ない空き教室では、たまに生徒たちが集まって校則違反のタバコやアルコールを持ち込んでいることがある。
ふと空き教室の一つからラジオの音が聞こえた。ほらな、と思いグリフィンドールであれば存分に減点してやろうと思い乱暴にドアを開けると、教室の一つの机に腰かけて新聞を広げている苗字と目が合った。ほかに人はいない。
思わぬ人物がそこに居て、お互いしばらく制止した。そういえばラジオだと思ったあの音は確かに彼女が新聞を読み上げる声だった。
「何をしている」
「新聞を読んでました」
「なぜ?」
なぜ、こんな人気のない空き教室でわざわざ新聞を読み上げる?
苗字はばつが悪そうな顔をして、少し間を開けてから答えた。
「英語の発音の練習に。人が居ると面倒なのでここを使ってました。」
そこでようやく合点がいった。彼女の英語が聞き取りやすかったのは、まるで抑揚のないアナウンサーのような話し方だったからだ。
「すみません、問題がありましたか?」
「消灯時間までには寮に戻れ。」
「はい、スネイプ先生。」
それから魔法薬学の授業で苗字はたまにに手をあげるようになった。こちらとしても授業がスムーズに進むので便利だった。
たまに雑用をまかせても二つ返事で引き受ける。彼女は気付くとそばに居て、むしろ積極的に手伝っているようだった。
教師になってわかったが、こういう生徒は一定数いる。学友に馴染めず、教師と過ごすことが多く、そこに居場所や価値を感じているもの。
子供というのは得てして憧れや尊敬を恋心と勘違いするものだ。年上、教師、そういった立場の違いに惑わされている様子は滑稽だった。
たいてい数か月もするとその女子生徒はまた別の男を追いかける。苗字もそういうタイプだったかと哀れなアジア人にレッテルを貼って片付けた。