日本人、女性
原作前
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イギリスで春は出会いの季節ではないし、立派な桜も咲く場所を間違えてるように見えた。
小学校のころ父親とそりが合わず引きこもった。我が家は陰陽師なんだと言っていて、時代遅れの頭のおかしい人だと思った。
見かねた母が全寮制のこのホグワーツを提案してくれた。洋画、海外ドラマが好きだった私はそれを受け入れた。私にとってはそれなりに勇気を振り絞った決断だった。
父にとっても厄介払いが出来てお互い丁度良かったと思う。私はホグワーツで魔法を学ぶことで、実家が陰陽師だと言うのはあの人の狂言ではなく本当の事だったのかと実感した。
最近知ったが陰陽師というのはあまり魔法界ではよく思われていない、呪いを好む秘密主義者だと思われてるらしい。漫画みたいな話だ。魔法だって十分漫画だけど。
いざホグワーツに入学してみるとあんまりにも英語が通じなくて頭を抱えた。映画もドラマも、音じゃなくて字幕を見ていただけだと気づいた。アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いにも苦労した。
おまけに魔法の呪文はほとんどがラテン語で、英語も分からないのラテン語なんてできるわけないだろうと投げ出したい気持ちだった。もし英語を話せてたらキレてたと思う。
1年生の時、黄色い服を着た2年のトンクスという女子生徒と友達になった。彼女はなぜか私が緑色の服を着てるのをやたら哀れんでくれた。自分の母親がどうのと説明してくれたが早口で何言ってるのか全く聞き取れなかった。
私がずっと聞き役に徹していたのが良かったのか、トンクスの正義感に燃える性格がそうさせたのか、彼女はいつも私を助けてくれた。
おかげでひどいいじめにあうこともなかったし、物を直したり呼び寄せる魔法を教えてくれたので多少の嫌がらせには耐えることができた。
何より、トンクスがくれた魔法蓄音機にはとても助けられた。手のひらサイズのレコーダーのようなもので、先生の英語を1度で聞き取れない私はそれを使って放課後何度も再生した。再生にはイヤホンのようなものを使った。トンクスなりのこだわりらしい。彼女はイギリスロックバンドにハマっている。
私はスネイプ先生の魔法薬学の授業が好きだった。みんなは先生を怖い、意地悪だと言うけど私は気にならなかった。
私はむしろマクゴナガル先生の方が怖かった。いつも正しくて、人望が厚く、もしマクゴナガル先生に敵と認定されてしまったら全員がそれに倣うような空気が怖かった。
スネイプ先生はいつも一人でいて、そんなところも好きだった。
今どき純血を贔屓する思想なんてありえないとトンクスは怒っていたが、典型的な京都人である私にはなんとなく通じるものがあった。嫌味を遠回しに表現するところとか、品を重んじる価値観とか、感情を隠すところとか、実家で慣れ親しんだそれを英語版で発見するのは少し嬉しかった。
たぶん、そういうのが私がスリザリンに組み分けされた理由なんだろう。ちなみに、組み分け帽子がなんて言ってたのかもわからなかった。
スネイプ先生の声は水の底のように静かで雑音が無く綺麗だった。淡々と話すので聞き取りやすかった。
私はスネイプ先生の声を蓄音機から何度も何度も再生した、暗記できるくらいに。おかげで魔法薬学は少し得意になった。
スネイプ先生の事が好きなのかとトンクスに聞かれた。大きくわけたらYESだけど、恋愛のそれじゃなくて尊敬とか憧れみたいなものだと言ったら微妙な顔をしながら納得していた。
魔法薬学の知識と技術は高いけど、性格は最悪、見た目も悪いというのがみんなの共通認識みたいだった。
でも私は違った。トンクスにはああゆったけど、尊敬も憧れも恋愛も全部ひっくるめて好きだった。1年生の頃から、ほとんど一目ぼれに近いくらい。初めて授業を受けたとき、魔法使いとはきっとこういう人のことを言うんだと思った。静かで落ち着いていて暗い場所に一人佇んで、自分の技術に絶対の自信をもって他を見下す。
学生の戯言で先生を困らせる訳にもいかないので、黙っておいた。
あと2ヶ月もすれば2年生も終わる。2ヶ月間の長期休暇に入って、また9月にここに戻ってくる。京都に帰れるのは嬉しいけど、父親に会うのは憂鬱だ。
スネイプ先生に2ヶ月も会えなくなるのはもっと憂鬱だ。
先生の声を再生しながら談話室の壁を眺めた。この壁の奥に、先生の研究室兼、私室がある。まるでストーカーのようだと思いながら、それでも先生のことを考えずには居られなかった。
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