宮地と小さなクラスメイト(黒バス)
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2.放課後
ほとんど人のいなくなった体育館で、宮地は部活動の時間と変わらずゴールに向き合っていた。
ストイックに練習を続けるのは、決して“天才”ではないからだ。
練習をしなければ上手くならない、少しでも気を抜けば後輩に追い抜かされる。
「宮地、そろそろ終わりにしよう」
「…おー」
主将に声をかけられ、ようやく外がすっかり暗くなったことに気付いた。
まだ続ける体力は残っているが、もう切り上げないと。
その空気を感じ取った後輩は、宮地に近付き掌をパッと突き出した。
「ボール片付けまっす」
「ん、サンキュ」
「つか宮地先輩、今日も来てんすよー、あの人」
そう言う後輩の目線を追えば、入口のところに咲哉が立っている。
既に恒例ともいえる光景だ。部活動時間以降も練習を続ける宮地を咲哉が待つ。
特に約束があるわけでも理由があるわけでもないのにだ。
「結構前からあそこで待ってるんで、早く行ってあげてくださいよ」
優しい事を言っている後輩は、言葉とは裏腹に必死に笑いを堪えた顔で宮地を見上げている。
宮地は何となく腹がたつ後輩の頭をポコッと叩き、そのまま汗をかいた服を乱暴に脱いだ。
「おい鈴木」
「お、終わったのか?ってななななに脱いでんだ変態!!」
「うるっせぇな、轢くぞ」
さっき後輩を叩いた力よりも強めにバコッと頭を叩く。
手荒で口が悪い、たいていの人間は宮地の本性を知って距離を置くが、咲哉は違う。
「いってぇ!なんで殴んだ…~~ってだから早く服着ろよ馬鹿!」
怖いもの知らずも良いところ。仕返しとばかりに、小さな手でポカポカと宮地の背中を叩く。
子供のような反抗に、宮地は不覚にもふっと笑った。
こんなガキくさい奴好きじゃない。けれど居心地は悪くない。
「わぁったから、もうちょっと待ってな」
「…っ、すげー見応えある体しやがって畜生…」
ぼそと呟いた咲哉の言葉は、自然と自分の貧弱な体と比較してのものだろう。
何を今更ぼやいてんだか。
宮地は無意識に頬を緩め、可愛いクラスメイトのためと足早に部室へ向かった。
・・・
高さのでこぼこが際立つ頭を並べて帰路を歩く。
一緒なのは駅までだ。それなのに宮地を待つ咲哉には、やはり理由はなかった。
話が弾むわけでもなく、一緒にいてすごくすごく楽しいわけでもない。
「お前さあ、いちいち待ってなくていいって」
「べ、別に待ってるわけじゃねーし!ただほら、同じ時間になったから」
「嘘つけ、んなわけあっかよ」
馬鹿にしたように笑った宮地の手が、咲哉の頬をぐいとつねる。
ついでに「痕ついてる」と言われ、咲哉は肩をすくめて顔を逸らした。
「勉強しようとして結局寝てたってオチだろ。さっさと帰れよ」
「か、帰ったらもっと寝る」
「はは、帰ってなくても寝てんじゃねぇか」
それでもこの時間まで宮地を待ってしまうのは、認めたくない感情のせいだった。
咲哉は知っているのだ。バスケをした後の宮地がすごく格好良いってこと。
「な、なんだよ…そんな帰れ帰れって。い、嫌なら嫌って言えよ…」
「嫌なんて言ってねーだろ」
「え、そう?」
「何嬉しそうにしてんだ、馬鹿」
またちょっとドキッとしかけて、咲哉はニヤけそうになる頬をぷくと膨らませた。
隣を歩く宮地の汗のニオイを感じる。
しっとりと濡れた髪と、火照った顔。それを色っぽいと思うし、ニオイだって全然嫌じゃない。
「宮地…なんか香水的なもの使ってんの?」
「は?するわけねーだろ。なんだよ、クセェって言ってんのか?」
「え!?なんでそーなんの!?むしろ逆ー…いや、なんでもねーけど」
暗がりでも咲哉の百面相が分かったのか、宮地が咲哉を見下ろし笑う。
その笑顔は格好良いのに可愛らしい。
ああ、駄目だ。見惚れる。
咄嗟にぱっと目を逸らして、落ち着こうと前方の街灯に視線を置いた咲哉は、そこに女子生徒がいることに気が付いた。
街灯の下、じっとこちらを見ている気がする。
「…あの子、宮地の知り合い?」
「は?」
「や、こっち見てる」
そんな二人の会話が聞こえたか、短いスカートを揺らして一歩近付いてくる。
知らない制服だが、このあたりの学校の子だろうか。
「あの」
ついに声をかけてきた女の子の顔付きの真剣さに、咲哉は思わず一歩身を引いた。
無意識に手が、宮地の背中を押す。
「は?何してんだ鈴木」
「これあれだって、宮地君をお呼びのヤツだって」
怪訝そうにした宮地の目が、咲哉が指さす女子生徒へと移される。
そしてその子の目的が予想できたのだろう、頭をかいて溜め息を吐いた。
「…オレに何か用?」
「は、はいあの…」
「こんな時間まで待っててもらって悪いけど、早く帰った方がいいよ」
「えっ」と声を漏らしたのは、咲哉と女の子と同時だった。
驚いた咲哉の手を引いて、宮地は女の子の横を通り過ぎようとしている。
なんでだ。
「お、おい馬鹿話くらい…」
「知り合いじゃねぇのに、話なんかねぇよ」
「お前になくても…」
ぱっとすれ違いざまに見た女の子の目は、大きく開かれて、少しだけ揺れて。
「あ、あの私、」
「“友達”にも、なる気はねぇから」
そんな顔すら見ることなく、宮地はそう慣れたように吐き捨てた。
既に先に歩き出した宮地に対し、戸惑いながらも振り返れば、女の子に駆け寄る友達と思しき子が見える。
それで少し安心したのと同時に、何故か、鼻がツンと痛くなったのを感じた。
「宮地…お前、酷い男だな」
「は?」
「今の子絶対、緊張しながらずーっとあそこに立ってお前を待ってたんだぞ」
口は悪いが見た目はイケメン、そんな宮地は経験豊富なのだろう。
「友達から」なんて言葉もずいぶんと聞いてきたのかもしれない。
でも、納得できない。
咲哉はぐいと宮地の腕を引いて足を止めた。
「なあ、やっぱ話くらい…!」
「話聞いたって、なんも変わんねーだろ」
「結果は変わらなくても、あの子の気持ちはぜってぇ違うって!言わせてもらえないなんて、可哀相だよ」
どうにも落ち着かなくて、ぐいぐいと宮地の腕を引っ張る。
しかし、宮地の足と心を動かすには足りなかった。
怪訝そうに細められた目と、煩わしそうに吐き出された息。腕は容易く振り払われ、咲哉は呆然と宮地を見上げた。
「優しく話聞いて、期待させてどうする」
「き、期待…」
「その気がねぇのに中途半端にする方が駄目だろ」
モテる男は羨ましいなあなんて、クラスメイトに言われた宮地はたいてい不機嫌になる。
咲哉が呼び出された宮地を冷やかした時なんて、やっぱり手加減なく殴られたものだ。
中途半端にして何か嫌なことが過去にあったのだろうか。
ハッピーエンドでない告白なんて、悲しみしか生まない、そういうのを経験しているのだろうか。
「な、なあ…宮地は、好きな子いんの?」
「は?」
「好きな子がいるから、他の子に対してはその気に、なんねぇのかな~、とか」
たたと小走りで隣に並び、ちらと宮地を見上げる。
宮地は面倒くさそうに目を細め、咲哉の頭をその大きな手で掴んだ。
「いねぇよそんなの」
「…もったいねぇ」
「ったく、お前はオレをどうしたいんだよ」
宮地の言葉に、咲哉はぽかんと口を開けて首を傾げた。
そんな咲哉を見てハッと笑った宮地が背を向けて先を歩き出す。
女の子と付き合って欲しくない。話を聞かずに自分の手を握ってくれたこと、素直に喜べばいいのに。
「…俺、あの子に感情移入してたんだ」
「何してんだよ、帰んぞ」
「う、うん」
大きな背中、捲られた袖から覗く筋肉質な腕。
握られた手の熱さが、今になってじわじわと体に巡ってくる。
スカートが似合う可愛い女の子でさえ駄目なのに、同じシチュエーションを自分で想像して悲しくなるなんて馬鹿だ。
「み、宮地清志!」
「何だよ」
「好きです、一目惚れしました。付き合って下さい!」
「…」
突然の告白に、宮地の顔から表情がなくなった。
ぱちくりと瞬きをして、声もなく口を薄く開く。
そんななかなか見れない宮地の顔に、咲哉は思わずふはっと吹き出していた。
「お、おもしれえ顔!!イケメンの間抜け面ゲットー!」
「なんなんだよテメェ…」
「何って、さっきの子の代弁だろーが!」
「ばっかじゃねーの」
ニカッと笑って見せた咲哉につられたのか、怒った顔をした宮地もすぐに頬を緩めて微笑んだ。
隣に並ぶ低い頭に手を乗せて、そのまま肩に腕を回す。
「お前となんてぜってぇ付き合わねーよ」
「あー!俺の一世一代の告白を断ったな!どうなってもしらねーぞ!」
「はっ、どうなんだよ?」
「明日からもっとしつこく付きまとっちゃる!」
腕が回りきらないくらい大きな体に腕を回して、腰にぎゅっと抱き着けば、宮地は歩きづらそうに体をふら付かせた。
「うわっ、うぜーな」
女の子みたいに思いを伝える日なんて来ないだろう。
でも、宮地にその気がないうちは。
宮地の隣に可愛らしい女の子が並ぶまでは、ずっと。
あっさりふられたことに切なさも感じつつ、咲哉は宮地に蹴られるまでしがみ付いて離れなかった。
(第二話・終)
追加日:2017/10/02
移動前:2015/11/15
ほとんど人のいなくなった体育館で、宮地は部活動の時間と変わらずゴールに向き合っていた。
ストイックに練習を続けるのは、決して“天才”ではないからだ。
練習をしなければ上手くならない、少しでも気を抜けば後輩に追い抜かされる。
「宮地、そろそろ終わりにしよう」
「…おー」
主将に声をかけられ、ようやく外がすっかり暗くなったことに気付いた。
まだ続ける体力は残っているが、もう切り上げないと。
その空気を感じ取った後輩は、宮地に近付き掌をパッと突き出した。
「ボール片付けまっす」
「ん、サンキュ」
「つか宮地先輩、今日も来てんすよー、あの人」
そう言う後輩の目線を追えば、入口のところに咲哉が立っている。
既に恒例ともいえる光景だ。部活動時間以降も練習を続ける宮地を咲哉が待つ。
特に約束があるわけでも理由があるわけでもないのにだ。
「結構前からあそこで待ってるんで、早く行ってあげてくださいよ」
優しい事を言っている後輩は、言葉とは裏腹に必死に笑いを堪えた顔で宮地を見上げている。
宮地は何となく腹がたつ後輩の頭をポコッと叩き、そのまま汗をかいた服を乱暴に脱いだ。
「おい鈴木」
「お、終わったのか?ってななななに脱いでんだ変態!!」
「うるっせぇな、轢くぞ」
さっき後輩を叩いた力よりも強めにバコッと頭を叩く。
手荒で口が悪い、たいていの人間は宮地の本性を知って距離を置くが、咲哉は違う。
「いってぇ!なんで殴んだ…~~ってだから早く服着ろよ馬鹿!」
怖いもの知らずも良いところ。仕返しとばかりに、小さな手でポカポカと宮地の背中を叩く。
子供のような反抗に、宮地は不覚にもふっと笑った。
こんなガキくさい奴好きじゃない。けれど居心地は悪くない。
「わぁったから、もうちょっと待ってな」
「…っ、すげー見応えある体しやがって畜生…」
ぼそと呟いた咲哉の言葉は、自然と自分の貧弱な体と比較してのものだろう。
何を今更ぼやいてんだか。
宮地は無意識に頬を緩め、可愛いクラスメイトのためと足早に部室へ向かった。
・・・
高さのでこぼこが際立つ頭を並べて帰路を歩く。
一緒なのは駅までだ。それなのに宮地を待つ咲哉には、やはり理由はなかった。
話が弾むわけでもなく、一緒にいてすごくすごく楽しいわけでもない。
「お前さあ、いちいち待ってなくていいって」
「べ、別に待ってるわけじゃねーし!ただほら、同じ時間になったから」
「嘘つけ、んなわけあっかよ」
馬鹿にしたように笑った宮地の手が、咲哉の頬をぐいとつねる。
ついでに「痕ついてる」と言われ、咲哉は肩をすくめて顔を逸らした。
「勉強しようとして結局寝てたってオチだろ。さっさと帰れよ」
「か、帰ったらもっと寝る」
「はは、帰ってなくても寝てんじゃねぇか」
それでもこの時間まで宮地を待ってしまうのは、認めたくない感情のせいだった。
咲哉は知っているのだ。バスケをした後の宮地がすごく格好良いってこと。
「な、なんだよ…そんな帰れ帰れって。い、嫌なら嫌って言えよ…」
「嫌なんて言ってねーだろ」
「え、そう?」
「何嬉しそうにしてんだ、馬鹿」
またちょっとドキッとしかけて、咲哉はニヤけそうになる頬をぷくと膨らませた。
隣を歩く宮地の汗のニオイを感じる。
しっとりと濡れた髪と、火照った顔。それを色っぽいと思うし、ニオイだって全然嫌じゃない。
「宮地…なんか香水的なもの使ってんの?」
「は?するわけねーだろ。なんだよ、クセェって言ってんのか?」
「え!?なんでそーなんの!?むしろ逆ー…いや、なんでもねーけど」
暗がりでも咲哉の百面相が分かったのか、宮地が咲哉を見下ろし笑う。
その笑顔は格好良いのに可愛らしい。
ああ、駄目だ。見惚れる。
咄嗟にぱっと目を逸らして、落ち着こうと前方の街灯に視線を置いた咲哉は、そこに女子生徒がいることに気が付いた。
街灯の下、じっとこちらを見ている気がする。
「…あの子、宮地の知り合い?」
「は?」
「や、こっち見てる」
そんな二人の会話が聞こえたか、短いスカートを揺らして一歩近付いてくる。
知らない制服だが、このあたりの学校の子だろうか。
「あの」
ついに声をかけてきた女の子の顔付きの真剣さに、咲哉は思わず一歩身を引いた。
無意識に手が、宮地の背中を押す。
「は?何してんだ鈴木」
「これあれだって、宮地君をお呼びのヤツだって」
怪訝そうにした宮地の目が、咲哉が指さす女子生徒へと移される。
そしてその子の目的が予想できたのだろう、頭をかいて溜め息を吐いた。
「…オレに何か用?」
「は、はいあの…」
「こんな時間まで待っててもらって悪いけど、早く帰った方がいいよ」
「えっ」と声を漏らしたのは、咲哉と女の子と同時だった。
驚いた咲哉の手を引いて、宮地は女の子の横を通り過ぎようとしている。
なんでだ。
「お、おい馬鹿話くらい…」
「知り合いじゃねぇのに、話なんかねぇよ」
「お前になくても…」
ぱっとすれ違いざまに見た女の子の目は、大きく開かれて、少しだけ揺れて。
「あ、あの私、」
「“友達”にも、なる気はねぇから」
そんな顔すら見ることなく、宮地はそう慣れたように吐き捨てた。
既に先に歩き出した宮地に対し、戸惑いながらも振り返れば、女の子に駆け寄る友達と思しき子が見える。
それで少し安心したのと同時に、何故か、鼻がツンと痛くなったのを感じた。
「宮地…お前、酷い男だな」
「は?」
「今の子絶対、緊張しながらずーっとあそこに立ってお前を待ってたんだぞ」
口は悪いが見た目はイケメン、そんな宮地は経験豊富なのだろう。
「友達から」なんて言葉もずいぶんと聞いてきたのかもしれない。
でも、納得できない。
咲哉はぐいと宮地の腕を引いて足を止めた。
「なあ、やっぱ話くらい…!」
「話聞いたって、なんも変わんねーだろ」
「結果は変わらなくても、あの子の気持ちはぜってぇ違うって!言わせてもらえないなんて、可哀相だよ」
どうにも落ち着かなくて、ぐいぐいと宮地の腕を引っ張る。
しかし、宮地の足と心を動かすには足りなかった。
怪訝そうに細められた目と、煩わしそうに吐き出された息。腕は容易く振り払われ、咲哉は呆然と宮地を見上げた。
「優しく話聞いて、期待させてどうする」
「き、期待…」
「その気がねぇのに中途半端にする方が駄目だろ」
モテる男は羨ましいなあなんて、クラスメイトに言われた宮地はたいてい不機嫌になる。
咲哉が呼び出された宮地を冷やかした時なんて、やっぱり手加減なく殴られたものだ。
中途半端にして何か嫌なことが過去にあったのだろうか。
ハッピーエンドでない告白なんて、悲しみしか生まない、そういうのを経験しているのだろうか。
「な、なあ…宮地は、好きな子いんの?」
「は?」
「好きな子がいるから、他の子に対してはその気に、なんねぇのかな~、とか」
たたと小走りで隣に並び、ちらと宮地を見上げる。
宮地は面倒くさそうに目を細め、咲哉の頭をその大きな手で掴んだ。
「いねぇよそんなの」
「…もったいねぇ」
「ったく、お前はオレをどうしたいんだよ」
宮地の言葉に、咲哉はぽかんと口を開けて首を傾げた。
そんな咲哉を見てハッと笑った宮地が背を向けて先を歩き出す。
女の子と付き合って欲しくない。話を聞かずに自分の手を握ってくれたこと、素直に喜べばいいのに。
「…俺、あの子に感情移入してたんだ」
「何してんだよ、帰んぞ」
「う、うん」
大きな背中、捲られた袖から覗く筋肉質な腕。
握られた手の熱さが、今になってじわじわと体に巡ってくる。
スカートが似合う可愛い女の子でさえ駄目なのに、同じシチュエーションを自分で想像して悲しくなるなんて馬鹿だ。
「み、宮地清志!」
「何だよ」
「好きです、一目惚れしました。付き合って下さい!」
「…」
突然の告白に、宮地の顔から表情がなくなった。
ぱちくりと瞬きをして、声もなく口を薄く開く。
そんななかなか見れない宮地の顔に、咲哉は思わずふはっと吹き出していた。
「お、おもしれえ顔!!イケメンの間抜け面ゲットー!」
「なんなんだよテメェ…」
「何って、さっきの子の代弁だろーが!」
「ばっかじゃねーの」
ニカッと笑って見せた咲哉につられたのか、怒った顔をした宮地もすぐに頬を緩めて微笑んだ。
隣に並ぶ低い頭に手を乗せて、そのまま肩に腕を回す。
「お前となんてぜってぇ付き合わねーよ」
「あー!俺の一世一代の告白を断ったな!どうなってもしらねーぞ!」
「はっ、どうなんだよ?」
「明日からもっとしつこく付きまとっちゃる!」
腕が回りきらないくらい大きな体に腕を回して、腰にぎゅっと抱き着けば、宮地は歩きづらそうに体をふら付かせた。
「うわっ、うぜーな」
女の子みたいに思いを伝える日なんて来ないだろう。
でも、宮地にその気がないうちは。
宮地の隣に可愛らしい女の子が並ぶまでは、ずっと。
あっさりふられたことに切なさも感じつつ、咲哉は宮地に蹴られるまでしがみ付いて離れなかった。
(第二話・終)
追加日:2017/10/02
移動前:2015/11/15