高尾と保健室の先生(黒バス)
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・後日談③ 印
「保健室にいる先生、かっこいいよねー」
とある女子生徒の何気ない呟きが、教室の真ん中に落ちる。
それは、少し前まで「誰?」と首を傾げる生徒が相次いだろう発言だった。
保健室に足を運ぶ生徒は少ない。毎年行われる健康診断には保健委員の生徒が手伝うから、校内で怪我でもしない限り関わらない人物だ。
しかし今、机に上半身を預ける女子生徒は言う。
「そう!なんか色気がすごくてやばいよね」
「大人の色気滲み出てるよねー…」
同調するように頷く女子は、うっとりとどこか宙を仰いだ。
恋心でもあるのか、傍で聞く男子生徒の焦りなど蚊帳の外だ。
「ねえ、私今日見ちゃったんだけど…先生の首のとこ、虫刺され見たいな痕なかった?」
「え、なに、なんかヤラシイこと考えてるでしょ!」
「だってホント、このへん!」
とんとんと人差し指で自身の首をつつく女子生徒と、その手を恥ずかしそうに弾く女子生徒と。
きゃあきゃあと高い声を上げる女子達は、恋バナでもするようなノリで頬を赤らめる。
中には本気で咲哉を狙っている輩もいるそうだ。
「もしかして…やっぱり最近格好良いのって…彼女?」
「天然っぽいし、年上の積極的な女性とか」
「先生尻に敷かれちゃってる系!?」
そんな輩から咲哉を守る為に、こっそり見えそうな位置に痕をつけたのは勿論高尾だ。
何も知らない女子の会話に、内心誇らしく「どうだ」と緩む顔を頬杖の内側に隠す。
彼女でなければ年上でもない。
それを不安要素と捉えた時期は通り過ぎ、高尾は彼に愛されていることを自負している。
「でもそういうとこも好きかも!」
「ねー、なんか女性にがつがつしてないっていうか?」
「むしろ襲われちゃう的な!」
しかし簡単に懲りてはくれないらしい。
ずりと机から肘を落とした高尾は、そのまま机に突っ伏した。
バレない程度にあの手この手。ただの嫉妬じゃない、これは高尾にとって重要な事だ。
昼休みに放課後。先生と会える時間は限られているというのに、ここ数日連敗中なのだ。
「今日は負けねぇ~…」
意気込みを乗せた声を机に吸い込ませる。
その宣言通り、一日終わりのチャイムが鳴り響くと、高尾は素早く鞄を肩にかけて教室を飛び出した。
ただ一番乗りだけでも駄目だ。差をつけないと、生徒として触れることしか出来ない。それじゃ意味がないのだ。
「しつれいしまーす!」
ノックもせずにガラガラと横に扉を開くと、驚いた顔で咲哉が顔を上げた。
寝ていたのだろう、椅子に腰かけながらも目がとろんと垂れている。ついでに腕枕の名残か頬が赤い。
「た、高尾君か…どうしたんだ?…ずいぶん早いな」
「まーな。先生に用あったから」
「僕に…?」
何だろう、と純粋な目を高尾へと向ける。
少し瞳の潤んだ寝起き顔。厄介なのは、この顔が高尾だけのものではないということだ。
「咲哉」
「な…!?」
高尾は咲哉へと歩み寄り、その無防備な耳へ唇を寄せた。
吐息を吹きかけるようにして、普段呼ばない名前を低く響かせる。
咲哉は慌てて自身の耳を押さえ、逃げるように体を反らした。
「こら!何考えてるんだ君は…っ」
「咲哉が鈍感なのが悪い。あと、期待させんのも悪い」
「一体何を…」
高尾の知る限り、咲哉にファッションへのこだわりは無い。
白衣の下なんて、シンプルなら良いというだけの適当なチョイスだ。
しかし、やけに首元の開く服は、前屈みになるだけで咲哉の内側を暴きそうになる。
「先生、最近格好良いんだって。クラスの女子が噂してる」
「は、はぁ…?」
「でもセンセーは俺のモンだから」
高尾は未だ驚いて体を固くしたままの咲哉の白衣をぐいと引いた。
無防備な生肌。色白な肌に流れる髪も、チラと覗くホクロも、全てが艶やかさを強調する。
高尾は咲哉の首元に唇を寄せ、鎖骨に舌を這わせて噛み付いた。
「い、痛っ!?」
「ん、あれ、足んねーな。もうちょっと…」
「高尾君っ、い、痛…っ!こら!」
かぷと唇で食み、今度は強く吸い付く。
離れる瞬間ちゅっと音が鳴り、しっかりと刻まれたアザが咲哉を飾った。
これならバッチリ見えてしまうはずだ。着る服に気を遣わない限り。
「なっ…!き、君は本当に…っ!!」
「あれ?先生涙目じゃん、かんわいー」
「馬鹿言ってないで、何してるんだよ…っ」
さすがに鈍感とはいえ何をされたのか理解したらしい。
壁に設置された鏡の前に移動した咲哉は、自身の肌を見て愕然としている。
それから今触れていない場所の赤にも気付いたのだろう、咲哉は慌てて高尾を振り返った。
「い…いつから…?」
「ん?さあ?いつからだっけなー」
「なっ…!!」
今にもぽろりと涙を落としそうな瞳。
首周りの乱れと相まって、情事を連想させる。
高尾は二ィッと口角を吊り上げ、とんとんと咲哉の首筋をつついた。
「何だよ、嫌?」
「い…嫌とか、そういう問題じゃないだろ…!変なこと探られたら…僕は嘘つくの下手なんだから…」
咲哉は心底困った様子ながら、冷静に白いテープをハサミで切りだした。
それをアザの上に貼り付け、白衣を引っ張り覆い隠す。
「あーあ、隠しちゃうんだ」
「あ、当たり前だろう…」
「残念、オレのって証だったんだけどなぁ」
高尾は露骨に頬を膨らませて、咲哉から顔を背けた。
高尾の想像では、咲哉はしゅんと眉を下げて「ごめん、でも」と言うはずだった。
咲哉は高尾へ罪悪感を抱き続けているから。
「高尾君…」
ほら、やっぱり謝る。
そう思って耳だけ咲哉に向けた高尾は、予期せぬタイミングで手を掴まれていた。
「いいから、こっちに来なさい」
ぐいと高尾の手を引っ張る咲哉が進む先は、カーテンの向こうだった。
高尾をその中に導くと、素早くカーテンを閉めて、ベッドに高尾を座らせる。
「な、何、どうしたんだよ先生」
「僕が怒らないと思ったら大間違いだ」
「え…」
キッと眉を吊り上げた顔は、残念ながら全然怖くはない。
咲哉はベッドに腰掛けた高尾の肩を掴み、ゆっくりと顔を近付けた。
「…っ!」
軽く、ほんの少しの痛みが耳の下辺りに走る。
咲哉は満足げに高尾を見下ろすと、小さく「よし」と呟いた。
「仕返し。まぁ、ほとんど見えないけどね」
「せ…先生…」
「今度からは、二人の時に…ちゃんと言って。驚くから」
「は、はーい…」
まだ少ししっとりとした、咲哉の触れた位置を手で押さえる。
見えないけれど、たぶんそこには咲哉の印。
「~~…センセ、おっとこまえじゃん!!」
「保健室では静かに」
「うっわ、惚れ直した、何今の信じらんねぇもー!!」
「君はさっさと部活に行きなさい」
ごろっとベッドに転がった高尾を余所に、咲哉はカーテンを開いて何でもなかったかのように定位置に戻って行く。
やばい、今のはハートをぶっ刺された。
「っはー…たまにこういう…カッケェんだもんなぁ」
真っ赤になった顔を両手で覆って、咲哉の匂いのする枕にそのまま伏せる。
誰も知らない咲哉の一面をまた見てしまった。
「先生、これからもっと暴いてやっから」
うつ伏せのまま、顔を上げて宣言する。
チラと振り返った咲哉は、照れくさそうに肩を竦めて微笑んだ。
(後日談③ 印・終)
追加日:2018/05/04
移動前:2014/10/05
「保健室にいる先生、かっこいいよねー」
とある女子生徒の何気ない呟きが、教室の真ん中に落ちる。
それは、少し前まで「誰?」と首を傾げる生徒が相次いだろう発言だった。
保健室に足を運ぶ生徒は少ない。毎年行われる健康診断には保健委員の生徒が手伝うから、校内で怪我でもしない限り関わらない人物だ。
しかし今、机に上半身を預ける女子生徒は言う。
「そう!なんか色気がすごくてやばいよね」
「大人の色気滲み出てるよねー…」
同調するように頷く女子は、うっとりとどこか宙を仰いだ。
恋心でもあるのか、傍で聞く男子生徒の焦りなど蚊帳の外だ。
「ねえ、私今日見ちゃったんだけど…先生の首のとこ、虫刺され見たいな痕なかった?」
「え、なに、なんかヤラシイこと考えてるでしょ!」
「だってホント、このへん!」
とんとんと人差し指で自身の首をつつく女子生徒と、その手を恥ずかしそうに弾く女子生徒と。
きゃあきゃあと高い声を上げる女子達は、恋バナでもするようなノリで頬を赤らめる。
中には本気で咲哉を狙っている輩もいるそうだ。
「もしかして…やっぱり最近格好良いのって…彼女?」
「天然っぽいし、年上の積極的な女性とか」
「先生尻に敷かれちゃってる系!?」
そんな輩から咲哉を守る為に、こっそり見えそうな位置に痕をつけたのは勿論高尾だ。
何も知らない女子の会話に、内心誇らしく「どうだ」と緩む顔を頬杖の内側に隠す。
彼女でなければ年上でもない。
それを不安要素と捉えた時期は通り過ぎ、高尾は彼に愛されていることを自負している。
「でもそういうとこも好きかも!」
「ねー、なんか女性にがつがつしてないっていうか?」
「むしろ襲われちゃう的な!」
しかし簡単に懲りてはくれないらしい。
ずりと机から肘を落とした高尾は、そのまま机に突っ伏した。
バレない程度にあの手この手。ただの嫉妬じゃない、これは高尾にとって重要な事だ。
昼休みに放課後。先生と会える時間は限られているというのに、ここ数日連敗中なのだ。
「今日は負けねぇ~…」
意気込みを乗せた声を机に吸い込ませる。
その宣言通り、一日終わりのチャイムが鳴り響くと、高尾は素早く鞄を肩にかけて教室を飛び出した。
ただ一番乗りだけでも駄目だ。差をつけないと、生徒として触れることしか出来ない。それじゃ意味がないのだ。
「しつれいしまーす!」
ノックもせずにガラガラと横に扉を開くと、驚いた顔で咲哉が顔を上げた。
寝ていたのだろう、椅子に腰かけながらも目がとろんと垂れている。ついでに腕枕の名残か頬が赤い。
「た、高尾君か…どうしたんだ?…ずいぶん早いな」
「まーな。先生に用あったから」
「僕に…?」
何だろう、と純粋な目を高尾へと向ける。
少し瞳の潤んだ寝起き顔。厄介なのは、この顔が高尾だけのものではないということだ。
「咲哉」
「な…!?」
高尾は咲哉へと歩み寄り、その無防備な耳へ唇を寄せた。
吐息を吹きかけるようにして、普段呼ばない名前を低く響かせる。
咲哉は慌てて自身の耳を押さえ、逃げるように体を反らした。
「こら!何考えてるんだ君は…っ」
「咲哉が鈍感なのが悪い。あと、期待させんのも悪い」
「一体何を…」
高尾の知る限り、咲哉にファッションへのこだわりは無い。
白衣の下なんて、シンプルなら良いというだけの適当なチョイスだ。
しかし、やけに首元の開く服は、前屈みになるだけで咲哉の内側を暴きそうになる。
「先生、最近格好良いんだって。クラスの女子が噂してる」
「は、はぁ…?」
「でもセンセーは俺のモンだから」
高尾は未だ驚いて体を固くしたままの咲哉の白衣をぐいと引いた。
無防備な生肌。色白な肌に流れる髪も、チラと覗くホクロも、全てが艶やかさを強調する。
高尾は咲哉の首元に唇を寄せ、鎖骨に舌を這わせて噛み付いた。
「い、痛っ!?」
「ん、あれ、足んねーな。もうちょっと…」
「高尾君っ、い、痛…っ!こら!」
かぷと唇で食み、今度は強く吸い付く。
離れる瞬間ちゅっと音が鳴り、しっかりと刻まれたアザが咲哉を飾った。
これならバッチリ見えてしまうはずだ。着る服に気を遣わない限り。
「なっ…!き、君は本当に…っ!!」
「あれ?先生涙目じゃん、かんわいー」
「馬鹿言ってないで、何してるんだよ…っ」
さすがに鈍感とはいえ何をされたのか理解したらしい。
壁に設置された鏡の前に移動した咲哉は、自身の肌を見て愕然としている。
それから今触れていない場所の赤にも気付いたのだろう、咲哉は慌てて高尾を振り返った。
「い…いつから…?」
「ん?さあ?いつからだっけなー」
「なっ…!!」
今にもぽろりと涙を落としそうな瞳。
首周りの乱れと相まって、情事を連想させる。
高尾は二ィッと口角を吊り上げ、とんとんと咲哉の首筋をつついた。
「何だよ、嫌?」
「い…嫌とか、そういう問題じゃないだろ…!変なこと探られたら…僕は嘘つくの下手なんだから…」
咲哉は心底困った様子ながら、冷静に白いテープをハサミで切りだした。
それをアザの上に貼り付け、白衣を引っ張り覆い隠す。
「あーあ、隠しちゃうんだ」
「あ、当たり前だろう…」
「残念、オレのって証だったんだけどなぁ」
高尾は露骨に頬を膨らませて、咲哉から顔を背けた。
高尾の想像では、咲哉はしゅんと眉を下げて「ごめん、でも」と言うはずだった。
咲哉は高尾へ罪悪感を抱き続けているから。
「高尾君…」
ほら、やっぱり謝る。
そう思って耳だけ咲哉に向けた高尾は、予期せぬタイミングで手を掴まれていた。
「いいから、こっちに来なさい」
ぐいと高尾の手を引っ張る咲哉が進む先は、カーテンの向こうだった。
高尾をその中に導くと、素早くカーテンを閉めて、ベッドに高尾を座らせる。
「な、何、どうしたんだよ先生」
「僕が怒らないと思ったら大間違いだ」
「え…」
キッと眉を吊り上げた顔は、残念ながら全然怖くはない。
咲哉はベッドに腰掛けた高尾の肩を掴み、ゆっくりと顔を近付けた。
「…っ!」
軽く、ほんの少しの痛みが耳の下辺りに走る。
咲哉は満足げに高尾を見下ろすと、小さく「よし」と呟いた。
「仕返し。まぁ、ほとんど見えないけどね」
「せ…先生…」
「今度からは、二人の時に…ちゃんと言って。驚くから」
「は、はーい…」
まだ少ししっとりとした、咲哉の触れた位置を手で押さえる。
見えないけれど、たぶんそこには咲哉の印。
「~~…センセ、おっとこまえじゃん!!」
「保健室では静かに」
「うっわ、惚れ直した、何今の信じらんねぇもー!!」
「君はさっさと部活に行きなさい」
ごろっとベッドに転がった高尾を余所に、咲哉はカーテンを開いて何でもなかったかのように定位置に戻って行く。
やばい、今のはハートをぶっ刺された。
「っはー…たまにこういう…カッケェんだもんなぁ」
真っ赤になった顔を両手で覆って、咲哉の匂いのする枕にそのまま伏せる。
誰も知らない咲哉の一面をまた見てしまった。
「先生、これからもっと暴いてやっから」
うつ伏せのまま、顔を上げて宣言する。
チラと振り返った咲哉は、照れくさそうに肩を竦めて微笑んだ。
(後日談③ 印・終)
追加日:2018/05/04
移動前:2014/10/05