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カカシ夢(2011.04~2016.09)

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・・・


「良く捕まえたね、サイ…」

チームプレイのシミュレーションを終えたカカシ班はぞろぞろとヤマトの周りに集まった。
結局、サイの活躍でナルトとサイチームの勝利になったものの、それはただの個人戦でしかなく。ナルトは怒りを隠せずにいるし、ヤマトもやれやれと大きなため息を吐き出した。

「お前、仲間って言葉知ってっか?」
「もちろん知ってますが、それが何か?個人能力の低さを人のせいにしないで下さい」

既に喧嘩モードに入っているナルトに対して、サイは更に煽るような言葉ばかりを続ける。
その手には、紙に書かれた、達筆な「仲間」という字。

「…サスケ君ならどうしましたかね?君を庇いながら戦ってくれたでしょうか?君からしたらカカシ班の仲間ですからね」

全く表情の変わらない、薄ら笑いを浮かべたサイ。元々胡散臭い笑みを常に浮かべた奴であるが、今の状況では挑発にしかならない。

「里を裏切り、君を傷つけた人を仲間と呼ぶならね」

急に冷静な表情になったナルトが、静かにサイを睨み付けた。それにはサクラもナナも冷や汗を流し、これ以上はよくないとナナが一歩サイの方へ踏み出す。しかし、それを制したのはナルトだった。

「…ナルト」
「いい。オレは…その仲間を救う為なら、こいつとだって組んでやる」

普段のナルトとは違う空気。遠くにいるサスケだけを見ているその真剣さ。ナナにはそのナルトの思い以上にかける言葉が見つからず、開いた口を閉じた。
その横を、真剣な面持ちのままナルトが通り過ぎる。一人、皆の先をナルトが行った。





「…何故彼は、サスケ君のことを…あんなにまで?」

ぽつりと呟いたサイの、初めての他人への興味。ナルトの背を見つめていたサクラが、少し考えてから口を開いた。

「ナルトは…サスケ君のことを兄弟みたいに思っているから。アナタも、お兄さんいるんでしょ…その気持ち、少しは分かるでしょ」

サイの兄の存在は初耳だった。ナナは何も言わずに視線をサイに移した。変わらない、サイの感情のこもらない笑みがそこにある。

「いえ、全く…ボクには感情ってものがないんだ」
「どういうこと…?でも、その兄弟がいなくなったときのことくらい、少しは想像できるでしょ?」
「ん…?まぁ、ね。兄さんもう死んでるし」

会話としては重い、次の言葉に躊躇うようなもの。しかし、やはりサイの表情は変わらない。

「その、兄が亡くなったときにも、何も感じなかったのか?」

少し言葉に詰まったサクラの代わりにナナがサイに問いかける。問わずとも、なんとなく何が返ってくるか想像は出来たけれど。

「さぁ…ボクは兄さんが死んだとき、どんな顏をすればいいかわからなかったから」
「顏には出ずとも、胸が痛むとか…悲しいとか。心の方は結構素直なもんだぞ」
「わかりませんね」
「…そ」

サイとはあまり会話を交わしたことがない。それもあって、サイの過去や事情は全く知らない。そんな状態で踏み寄るのは困難だと感じ、ナナは何も続けなかった。こういうのは、サクラに任せた方がいい。

「お話しはそこまでだよ、そろそろ行こう」

荷物持ってきて、と声をかけたヤマトの表情も、サイに対して何か思っているようで。眉間にシワを寄せて腕を組んでいるヤマトのなかなかの威圧感に、ナナは少し距離をとった。



・・・



再び野宿で向かえた夜。
そわそわと落ち着かない様子で外を眺めているナルトに、ナナが近付いた。

「…寝た方がいいぞ」
ナナ…オレってば、止まってる場合じゃねーと思うんだ」
「そんなことねぇよ。いざというとき眠くて動けなかったら、かっこ悪ぃだろ」

ナルトのサスケへの思いは、自分とは全然比べものにならない。その差異があるために、ナルトにかける言葉に毎回躊躇ってしまう。

「なぁ…ナナ

しかし、先に話を切り出したのはナルトの方だった。

ナナはサスケのこと、どう思ってる…?」
「どうって…」
「オレ、ナナのこと巻き込んでんじゃねーかなって…ナナは、一緒にいた時間そんなに長くねーし…」

不安そうに、ナルトの視線が地面に落ちた。サイのきつい言葉を流していたわけではなかったらしい。その耳で聞いて、頭で考えたのだろう。

「俺は誰だ?」
「…え」
「俺は、確かに木ノ葉にいた時間短いけど…これでも、カカシ班の人間なんだぜ」
「うん、わかってる…でもさ」
「サスケは、俺にとっても弟みたいな奴だよ」

勿論ナルトも…と思いながらも、そう思っているのが自分だけだったらと思うと怖くて。それは呑みこんでナナは小さく笑うとナルトの頭に手をのせた。ずいぶん自分に近付いたナルトの頭の位置。

「心配すんな。サスケが悪だなんて思ってない。悪いのは全部…大蛇丸、だろ」

大蛇丸、自分で口にしたくせに、ナナの肩は震えて拳を強く握りしめた。二度と会いたくなんかない。奴こそ木ノ葉を裏切った、絶対的悪だ。

「…裏切ったとか…俺が口に出来ることでもないし、な」
ナナ?」
「いや、な。俺なんて、五色で暴れまくって追い出されたんだぜ」
「そうなのか?」
「そーだよ」

意外だ、という顔丸出しなナルトに、今度はぷっと吹き出す。本当にナルトはわかりやすい。

ナナ、表情豊かになったよな」
「え?」

ナルトに対して思ったことがそのまま自分に返ってきたことに、ナナはぽかんと口を開いた。

「前より全然いい顔してるってばよ」
「そうか…?」
「おう。今のナナ、すげぇ好きだ」
「…そういう言葉はさぁ…本当に好きな相手に言えって…」

思いがけない素直なナルトの言葉に頬が熱くなる。こういうのは慣れてない。好意の言葉は、嫌悪の言葉よりもずっと苦手だ。
片手で自分の頬に触ったナナだが、そうさせたナルトも自分の両方の頬を手で覆った。

「い、言えねーってばよ!」
「は、はぁ?どうした急に」
「す、好きとかそんなこと…オレには無理だってばよ…」
「俺には言ったのに」
「い…言ったけどぉ、今のはそういうんじゃ…流れで…」
「いや、そりゃあわかってるけど」

本当にわかりやすい。そういえばナルトはサクラが好きだったか。ころころと変わるナルトの表情はやはり見ていて楽しい。それと引き換え、やはりサイには何か欠けている。
思い至ってナナは冷静になり、ナルトの肩をぽんと叩いた。

「…さ、そろそろ寝ろ。明日には天地橋に着く」
「ん…ナナも、おやすみ」
「あぁ」

明日には。ナナの頭に大蛇丸が過る。考えてしまわないように、ナナは布団を頭からかぶった。



天地橋。真ん中にはフードを被って肌を晒していない一つの人影。向かうのはサソリの姿に扮したヤマトのみ。ナルトとサクラとサイ、そしてナナはそれを茂みから見守っていた。

「ヤマト隊長…上手くやってよ…」

囁くサクラの声には緊張が混ざる。
昨日は随分と天地橋に近づいていたらしく、朝出発してからそれほど時間の経たないうちに目的地に辿り着いた。そのせいか、まだ心の整理がついていない、といったところか。
ナナもフードの男を見て、ごくりと唾を飲んだ。



「お久しぶりです、サソリ様」

ナナたちのいるところにも、微かにスパイの男の声が届く。その瞬間、ナナの体が固まった。思わず飛び出しそうになった体を必死に抑える。

ナナさん?」
「ッ、あいつ…」
「え…?」

心配そうにナナを覗き込んだサクラに対し、指でフードの男を指す。フードを外した男の容姿には、ナルトもサクラも見覚えがあった。

「薬師カブト…!」
「また、アイツか…!」

中忍試験で会っただけでなく、ナルトも一度カブトとは戦っている。ナナが五色に帰ってからの自来也との修業の間に、ナルトは大蛇丸とカブトと対峙していたのだ。

「あの野郎が…スパイ…?」

カブトは大蛇丸の一番傍にいる人間のはず。それも、大蛇丸がナナを求めているからと言って手を出してくるほどに。



「っ!?」

急に、ナナの体がびくんと震えた。

「どうしたんですか!?」
「ヤな…感じがする…」
「やな感じ?」

カブトへの怒りが冷めていくほどの殺気。それは、ある人物が潜んでいることを指しているとしか思えなかった。


「ヤマト隊長…何してんだってばよ!さっさと捕まえりゃいいのに!」

向こうでは、なんとかカブトに話を合わせようとするヤマトがそろそろマズいと感じ始めている。それは、会話が聞こえないこちらにもわかる状況。会話を進めれば進めるほどボロが出る。

「相手はあのカブトよ。慎重すぎるくらいでいいのよ」
「でも、慎重になりすぎて怪しまれたら、拘束するタイミングを失うよ」

ナルトの言うことも、サクラの言うことも、またサイの言うことも全て正しいと言えた。カブトはさっさと捕まえるべきだ。しかし、戦闘になってしまった場合の方がよっぽど厄介で。

「一発、殴りたいけどな…」
「…ナナさん?」
「どうしたんだってばよ」
「っは…俺、アイツ嫌いなんだよ」

そんなことを話している間に、雰囲気が変わった。攻撃に出ようとしたヤマト、そしてカブトの驚いた表情。そのカブトの背後には、大蛇丸の姿。

「…!」
「大蛇丸!」

ナルトは声を荒げ、サクラは息を呑んだ。ナナもやはり、というように視線を逸らして胸に手を置く。

「どうすんだってばよ!?」
「隊長の指示があるまでは待機するしかないわ!」

焦るナルトとサクラに対し、サイは大蛇丸の登場にも冷静でい続けている。ヤマトも必死に思考を巡らせ、どちらも倒すかこのまま退くかという二択に至ったものの、結局動けずにいるところだ。


しかし、サソリの味方だと思っていたカブトは、容赦なくそのサソリに対して攻撃をしかけた。サソリの首が壊れ、中に潜んでいたヤマトの姿が外の空気を浴びる。
咄嗟に距離をとり、ヤマトはカブトに疑問の目を向けた。

「どういうことだ!?カブト…お前は暁のスパイのはず!」
「サソリの術はとっくに大蛇丸様が解いてくれた。それでボクは大蛇丸様のお考えに共感しただけさ。…ところで、アンタ誰?」

サソリを始末するつもりだったのに、と呟くカブトにヤマトは青ざめた。サソリさえも騙されていたというのか。




「それより…後ろの子ネズミもここへ呼んだらどう?」

ゆっくりとした口調で大蛇丸が不敵に笑う。全て見透かされていた。それがわかり、ヤマトは4人に合図すると天地橋の真ん中へ招いた。

その合図と同時に、ナルトとサクラとサイが駆けつける。ヤマトの前に出た3人とは別に、ナナは静かにヤマトの後ろへ姿を現した。


「おや、嬉しいね。君もいるなんて」

ナルトを見て一瞬呆れたような顔をしたカブトは、すぐに嬉しそうな顔に変わった。

「私の元に…来る気になったのかしら」
「ん、なわけねぇだろ…!」
「怯えちゃって…相変わらず可愛いわねぇ…」

舌なめずりをしながら一歩前へ出る大蛇丸。それにはヤマトもクナイを構えた。ヤマトの後ろでは、会ってから今日まで見たことないほど怯えた顔をしているナナ

「九尾の子もいるみたいだし…少し遊んであげましょうかね。サスケ君とどっちが強いか…見てあげるわ」

ヤマトの前では、ナルトが異様なチャクラを出して震え出した。

「…サスケを、返せ…」
「返せはないだろ…ナルト君。サスケ君は望んで我々の元へ来たんだ。引きずりすぎだよ、男のくせに未練たらしいね」

「サスケ君の事が知りたいなら…力ずくで私から聞き出してみなさい…出来ればだけど」

カブトと大蛇丸の挑発。ナルトは九尾のチャクラを放ちながら大蛇丸に突っ込んで行った。ポコポコとチャクラとは思えない音が鳴っている。

「人柱力らしくなっちゃってるわね…ナルト君」

ナルトの本気の攻撃に吹っ飛んだ大蛇丸の顔は剥がれて、中にある別の人間の顔が晒された。

「それで…君が見張り役に選ばれたのね。私の実験体も少しは役に立ったじゃない…」


立て続けに起こる意味のわからない展開に、サクラはハテナを浮かべてヤマトを見つめた。

「全忍びの中で唯一の木遁使い…更に、尾獣を意のままに操る事が出来た初代火影の力が欲しくてね…」

何度も行われた初代の遺伝子を使った人体実験。六十人もの子供たちが犠牲になった実験の、唯一の成功例、それがヤマトだった。

「最低だ、お前…」
「クク…五色の力も欲しいのだけれどねェ…」
「っざけんな…!」
「そんなことより、今は私のサスケ君が強くなってるか、ためしにナルト君とやらせてみたいわね」

すっとナナからナルトへ視線を移した大蛇丸の目には、九尾の形をとったチャクラに包まれたナルト。

「オレの前で…自分のものみてーにサスケの名を口にすんじゃねーってばよ!」

チャクラから放たれる圧力。空気が体を痛めつけてくる。そこにいるナルトはまるでバケモノのようだった。
そのナルトにカブトが突っ込むと、素早く反応したナルトのチャクラ砲だけでその周辺が吹き飛ぶ。それに巻き込まれたサクラもまた強く飛ばされてしまった。

「サクラ!」

ヤマトが木遁で足場を作ったが、意識を失ったサクラはずるずると橋の下へと滑り落ちて行く。ヤマトは術を使っているために動けない。そしてサイは何故がサクラを無視してどこかへ飛び立って行ってしまった。

「隊長!俺が行きます!」
「頼んだよ」

サイを呆れた様子で見ていたヤマトの横から走って飛び込むと、ナナはサクラの体を抱き上げ、崩れた橋の破片の上を飛びながら向こうの岸壁に足をついた。
初めて見たナルトの九尾のチャクラ。その恐ろしさと言ったら、同じ忍とは思えないほどの圧迫感があった。

「…何考えてんだ、俺…」

ナルトはナルトだ。昨日だって、他愛のない話をしたばかりじゃないか。そう言い聞かせても、壊れた橋やヤマトの焦り様を見ればその危険さがわかってしまう。

「っ…サクラ、目ぇ覚ませ」

ぺしぺしと頬を叩く。ん、と苦しそうに声を上げてから、サクラはナナの腕の中で目を開いた。

「…っ、ごめんなさい、もう大丈夫」
「良かった…」
「あ、ナルトは!?」
「ナルトはあっち…向こうに」

更に越えた木々の向こうで黒いチャクラが上がっている。そこにナルトがいるのは間違いない、そしてそこには大蛇丸もいる。

「サクラ、ナナ!無事!?」
「隊長…」

ヤマトはすぐさま分身を作り出して、ナルトと大蛇丸を追った。その場に本人が残ってサクラの頭に触れる。自分の傷よりもナルトのことが気になって仕方のないサクラは不安そうにヤマトを見つめていた。

「ヤマト隊長は…ナルトのこと何か知ってるんでしょ?」
「サクラ…君は何も心配しなくていいよ」

優しいヤマトの言葉をやすやすと受け入れられる状態でもない。サクラとナナは目を合わせた。互いに情報不足であることを目で感じ取る。ナナも、九尾なんてバケモノをこの目で見るのは初めてだった。

ヤマトが何か言葉を繕おうと口を開いたとき、激しい爆発と共にナルトの姿が土煙の中から飛び出した。そのナルトはもはや、人間の姿とは言い難い…真っ黒なチャクラに覆われた小さな四本の尾を生やした狐と化している。



「さっきより、更に九尾に近づいてるね」

静かに近づいてきたカブトが、ナナの後ろに立った。

「これじゃ忍者の闘いというより、まるでバケモノ同士の闘いじゃないか…」
「てめぇ…!」
ナナ君、君も…バケモノを見る目でナルト君を見てたろ」
「そんなこと…っ」

激しい爆撃が再び起こり、ヤマトはサクラを抱えて飛んだ。ナナはというと、不本意ながらもカブトと同じ方向に避けることになってしまった。

「反抗的な目も好きだけど、そういう…怯えた顔もいいね」
「まだそういうこと言うのかよ…!」
「そりゃ、ボクは君を好いているからね」

着地して、ナルトを見る。地を鳴らす雄叫び。尾を揺らしてそこに座る姿にナルトを見ることが出来ない。

「…あんな姿になってまでサスケ君を助けたかったのかね。悲しい子だ…」

ふざけたことしか言わないカブトの言葉が、やけに深く聞こえた。ナルトを見ていると、自分の境遇なんてなんともないと思えるほどで、そういう面ではナルトはとても悲しい奴なのかもしれない。

「今、ナルト君のこと…同情しただろ」
「な…」
「ボクと同じ顔してたよ、ナナ君」

言い返せなかった。カブトの瞳から逃れることが出来ない。
涙を流しながらバケモノの姿をしたナルトに駆け寄るサクラを引きとめることさえも出来なかった。

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