ナツ夢(2012.02~2016.05)
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四日目、ロアは一人宿を出た。
向かう先は大魔闘演武の会場ではなく、昨日未来人と話したあの場所。
「…良かった、来てくれた」
無言でロアを睨む同じ顔は、どうやら痺れを切らしたという感じだろうか。
ずいぶん待ってようやく来てくれたその人は、呆れきった顔で、はぁっと息を吐いた。
「何の用だよ、行っとくけど俺はお前でもお前の味方じゃねぇぞ」
「聞きたいんだよ。どうして俺が…この世界を、救おうとしないのか」
7年後から来たと言うロア。
彼は、諦めたようにこれから起こる惨劇に対して「どうせ」と言った。
それが、気に食わなくて、信じられないのだ。
「話を、聞きたい。俺が…どうして7年でそんなに、変わったのか…」
「…」
黒い瞳が、じいっとロアを見つめてくる。
どこまでも黒い、今の自分とは違う姿。
「…お前、その髪は染めてんだろ?」
「え、」
「染めた頃は、ゼレフの魔力を扱えるようになって…髪の色も少し戻ってきてた」
知っている者はごく一部しかいない事実。
やはりこれは自分なのか、と何気なく感じながら、ロアはこくりと頷いた。
「俺の髪、分かるだろ。ゼレフの魔力に俺が勝てる日なんてこない」
さらりと目の前の男の髪が揺れる。
ロアは咄嗟に自分の髪を掴んでいた。
金に見える。けれど染められた髪が今どんな色をしているのかは分からない。
「死の捕食…俺の力は、愛しい者が近くにいる程暴走するようになった」
「…!」
死の捕食、初めてゼレフと顔を合わせた天狼島で見せられたものだ。
自分の意思とは関係なく、命を奪ってしまう恐ろしい力。ゼレフはあの力に苦しんで、悲しんでいた。
「もう、俺に愛しい者なんていない、分かるだろ」
「それは…、」
「そうじゃなきゃ、ここももう全部駄目になってる」
虚ろな瞳が、少しだけ天を仰ぐ。
それが自分の知っているゼレフと重なるようで、ロアは無意識に真実だと受け入れていた。
でなければ、こんなに虚無を感じさせる顔など出来るはずが無い。
「…お前、俺のこと同情してるだろ」
「え…」
「俺はお前だよ。お前もいずれこうなる。近い将来にな」
正面の男の手がロアに伸ばされる。
そのままとんっと強く胸を押され、ロアはよたっと後ろに下がった。
「なんで…そうだ、ゼレフは?ゼレフなら何とか出来たんじゃないのか」
「…」
「っ、じゃあどうして過去に来たんだよ、未来を変えに来たんじゃないのかよ…!」
「…」
未来のローグの目的は、ここに来るであろうドラゴンを支配するため。
それとは違うと言った男の目を見つめるが、その瞳は一切揺れることなくロアを見つめ返してくる。
何も言わない。ゼレフのことも、仲間達のことも、何も。
『続いてバトルパート!フェアリーテイル、ナツ・ドラグニル!!』
突然大きな音で響き渡ったアナウンス。
咄嗟に顔を上げると、遠くに見えるモニターには、大きくナツが映されていた。
「…」
同時に顔を上げたはずの未来の自分は、ロアの目がモニターを映している間に姿を消していた。
けれど、一瞬見えたその表情は泣きそうに歪んでいた、気がする。
「…なんで」
やはり何か心残りがあるのか。だからこそ、未来の自分は苦しんでいるというのか。
それが他人事ではなく、自分の辿り着く姿だと、それを信じろというのか。
「そう、だ、ナツの闘い…見に行かなきゃ…」
ロアはかくんと膝を折って、そのまま後ろに下がった。
待ちに待ったナツのバトルだ。きっと今日も良いバトルを見せてくれるはず。
そう思っているのに、足は思うように前に進まない。
「…どうして…どうして今なんだ…」
ゼレフの気配の正体は間違いなくあの未来人、未来の自分だ。
恐らく7年も経たずして、ゼレフの力に浸食されていたはずだ。なのに、どうして今更。
今年の大魔闘演武に、何があるというのだ。
「本当に…ドラゴンが来る、ってのか…」
今年、たくさんのドラゴンがここに来る。彼等が未来から来るきっかけがそれだとして。
けれど、ゼレフの気配は大魔闘演武の度に感じられていたとジェラール達は言っていたはずだ。
彼等以外に、ゼレフの気配を放つものがあるのか。それとも毎年彼等は大魔闘演武の度に来て、その瞬間を待っていたのか。
「…分かんねぇ…何なんだよ…っ」
せっかく話を聞けたのに、結局更に混乱しただけ。繋がりそうなのに、全てが結びつかない。
ロアは頭をがしがしとかいて、強く握り締めた手を胸に押し付けた。
・・・
会場に向かったものの、既にナツの闘いは終わっていた。
今度は宛もなくそこを後にして、やはり痛む胸を押さえる。
「…考えなきゃ…いけないのに…」
考えたい、それを邪魔する未来の自分の姿。
「おーい!ロア!」
ふと耳に馴染む声に呼ばれ、ロアははっと顔を上げた。
突然意識が覚醒し、ぱちぱちと数回瞬く。視界に映るのは、手を振るナツの姿。
「ナツ、どうかした?」
「なんかガジルが面白ぇとこ見つけたんだってよ!」
当然行くだろ、とそう言いたいのだろうナツに、ロアは一瞬目を細めた。
それどころではないのだ、と口をつきそうになる。
しかし、それを遮るかのような勢いで、ナツはロアの腕をぐいと引っ張った。
「っ、ナツ!?」
「ロア、お前、オレとスティングのバトル見てなかったんだってな?」
「や…それは…そうだけど」
「めちゃくちゃ格好良く勝ったんだぞ?」
腕を絡ませて、肩と肩とがぶつかる。
至近距離でロアを見つめてくる大きな瞳から、逃れることは出来ない。
「ショックだった!っつーわけで、付き合え!」
「な、横暴な…」
へらっと笑って言ってくるナツに、少しだけ笑い返す。
きっとナツはロアの気を紛らわせようとしてくれているのだろう。
それが分かるからこそ、ロアは抵抗することなくナツに身を任せた。
そうして合流したのはガジルとウェンディと、そして野次馬らしいルーシィとグレイ。
そのまま薄暗い洞穴のような場所に入って行き、悪くなった足場にロアはこつんと躓いた。
「うわ…っ」
「ロア、大丈夫か?」
「だ、大丈夫…だけど、何だこれ…」
ナツに支えられながら足元を確認し、ロアは唖然としていた。
大きな動物の骨がごろごろと転がっている。
「これ…ドラゴンの骨…ドラゴンの墓場だ」
「ドラゴン…!?」
ぽつりと零したナツの言葉に、ロアは過剰に体を揺らした。
けれどさすがに驚き目を見張るのはロアだけではない。
ルーシィもグレイも、ウェンディも、皆驚き辺りを見渡している。
「オレ達のドラゴンが姿を消して14年だ。つまりここに眠っているのは遥かに古い、遺骨だろうな」
ガジルがそう言いながら数歩先に進む。
その後をついて歩く最中、ぴたとウェンディが足を止めた。
「あ、ミルキーウェイです」
「どうしたの、ウェンディ?」
「ポーリュシカさんから教わった滅竜魔法の一つです。これを使えば、魂となったドラゴンの声を聞けるかもしれません」
「魂の声?」とルーシィが首を傾げる横で、ウェンディはすうっと息を吸い込んだ。
ウェンディを中心に、星のようにキラキラとした空間が広がる。
その光が集まる場所、そこに大きな影が映った。
「まさか…」
そう声を震わせずにはいられない。
ロアの目に映っているのは、確かに大きな、大きな、見たことはないけれど間違いなく。
「……我が名はジルコニス、翡翠の竜とも呼ばれておった」
地面をも響かせる低い声。
“翡翠の竜”とそう名乗る通り、その巨体は確かに想像の中にあったドラゴンと酷似していた。
「これが、ドラゴン…っ」
その大きな体を見上げて、後ずさる。
そんなロアの様子に気付いたドラゴンは、ロアに向けて鋭い爪の生えた手を伸ばした。
「っロア!」
咄嗟にナツも声を上げて、ロアの前に立ち塞がる。
けれどその大きな手は、すかっとナツとロアの体を擦り抜けた。
「心配するな、幽体には何も出来んよ、あっはっは!!」
大きな口を開けて、カッカと笑う。
その見た目と裏腹なドラゴンの態度に、皆ぽかんと見上げた。
「何か…見た目とイメージ違うわねこいつ…」
「なあ、ここで何があったんだ?」
ナツは、すぐにその質問をドラゴンに投げかけていた。
無数に転がるドラゴンの骨、それが気になって仕方がないのだろう。
ドラゴンは少し躊躇ったようにウーンと唸ってから、「まあ言ってもいいかな」と顔をこちらに向けた。
「…あれは400年以上昔の事だ」
かつて竜族は世界の王であり、人間は竜にとって食物にすぎなかった。
ドラゴンの低い声が話す内容は、誰もが知り得ない遥か昔の出来事だった。
次第に人間と共存できる世界を作りたいと異論を唱えるドラゴンが現れ、それに賛同する竜、反対する竜との間で戦争が始まる。
ドラゴンスレイヤーとは、人間を戦争に参加させるべく、共存派の竜から滅竜魔法を教えられた人間。
しかし、力をつけすぎたドラゴンスレイヤーは人間との共存を望む竜をも殺して行った。
その中でも竜の血を浴び過ぎた者、その男は次第に竜の姿に変わり、竜の王となっていた。
「竜の王が誕生した戦争、それが竜王祭、王の名はアクノロギア」
それまで静かに聞いていたナツもロアも、はっと目を開いた。
アクノロギア。そして竜王祭…それがまさに、大魔闘演武の姿だとすれば。
「竜王祭をきっかけに…ドラゴン達が復活するって可能性は…?」
「ん?ははは、それは無いだろう。それが有り得るのなら、とっくに私も復活しているはずだ」
ロアの質問にドラゴンが笑う。
それでも、ロアは一度浮かんでしまった最悪の事態を、頭から消すことは出来なくなっていた。
街の外れにこんなドラゴンの墓場があって、それが何かのきっかけに復活するようなことがあればと。途端に、未来人の言葉が現実を帯びてくる。
「っ、もう…無理です」
ウェンディがそう呟き、広げていた手を胸の前に戻した。
それと同時に目の前にいたドラゴンがすうっと姿を消す。どうやら、時間切れのようだ。
消えたドラゴンの姿を追って、皆何も映らない空を見上げる。
その背後、ざっと二つの足音が迫っていることに誰も気付いていなかった。
「やはり我々の研究と史実は一致していた」
背後から突然聞こえてきた声に、皆一斉に振り返った。
「アクノロギアはゼレフ書の悪魔に近い。恐らく一人のドラゴンスレイヤーをゼレフがアクノロギアにしたのだろう」
薄暗い空間に、シルエットが二つ見える。
話し声から察するに一人は男、そして背格好からもう一人女性だろう。
「つまり、元凶であるゼレフを討つことが、アクノロギア攻略の第一歩となるのだ」
かつん、という足音と共に距離が縮まる。
そして明確になった輪郭に、ロアははっと目を開いた。
「私はフィオーレ王国軍、聖騎士団団長のアルカディオス」
「同じく、臨時軍曹のユキノ・アグリアであります」
「お前、セイバートゥースの…!」
小柄の女性の正体は、先日会ったばかりのユキノ。
彼女との再会に驚くナツ達に対し、ロアだけはその隣の男を凝視していた。
見覚えがある。あれは、一度城に忍び込んだ時、極度の緊張状態の中捉えた男の姿と重なる。
「…ナツ、アイツだ。アイツがルーシィをさらおうとした奴だ!」
「っ何!?」
「まあ待て。あれはある作戦に星霊魔道士の力が必要だったのだ。今はユキノ軍曹に力を借りているし、手荒な真似はせんよ」
アルカディオスは両手を前に出して、敵ではないのだと意志を示している。
けれどロアは距離を保つように一歩下がり、怪しい男の隣に悠然と立つユキノに目を向けた。
「アンタもどうして…」
「言ったはずです。自分に出来る事をするのだ、と」
「でも、そいつは…っ!」
レイヴンテイルの名を使い、ルーシィをさらおうとしたことは紛れもない事実だ。
今思えば、ここまでの大魔闘演武で異様にレイヴンテイルとフェアリーテイルとがぶつかったのも、この男の策略だったと考えられる。
「とりあえず、見てもらった方が早い。ついてきてもらおう」
「私からもお願いします。この作戦が成功すれば、ゼレフ、そしてアクノロギアを倒せます」
ぺこりと姿勢良く頭を下げたユキノに、ロアは隣にいるナツと目を合わせた。
「ロア、お前はどうしたい?」
「どう…って…」
男のことは信用出来ない。
けれど、分からないことが多い今、少なからず情報を得るきっかけとなるかもしれない。
ロアはナツの腕をきゅっと掴みながら、低く声を絞り出した。
「…今は奴の言う通りにしてみよう」
「分かった」
ルーシィをさらおうとした男だと知り、ナツもアルカディオスに対して警戒はしているらしい。
前を歩き出したアルカディオスの後を続いて、竜の墓を後にするも、前方を見つめる目付きは鋭くなっている。
「ちょっと、ロア。そこまで知っててどうして話さなかったのよ…」
「王国騎士だぞ、手ェ出せる相手じゃないだろ」
「そうだけど…」
「知ったらナツは我慢出来なかっただろうし、困らせるだけだと思ったんだよ」
あの日、自分の中だけに抑え込んだ王国騎士の策略。
そういえば、あの日男は扉の前にいた。ようやく、あの扉の秘密が明らかになるのだ。
案内されるまま城の中に入り、ロアはごくりと唾を呑んだ。
「なあ、改めて聞いてもいいか。どうしてルーシィ…星霊魔道士の力が必要だったのか」
問いかけたロアに、アルカディオスは振り返らずに口を開いた。
「世界を変える扉、エクリプス。扉を開けば、400年の時を渡り、不死となる前のゼレフを討つ。それこそがエクリプス計画」
「…」
「星霊魔道士の持つ鍵、それが扉を開く鍵になるのだ」
扉。案内された部屋の奥、確かに大きな扉が立っている。
何か嫌な感じだ。それに近付くにつれて感じる魔力に、ロアは一瞬足を止めた。
未来のローグやロアが発していた魔力と似ている。
「…400年の時を渡り……?」
「そうだ。この扉を使えば時を超えられる」
「時…まさか…」
信じられない。そう思うのと同時に、今までハマらなかったピースが、ロアの中で綺麗に並べられた。
未来から来た者、そしてこの時代に存在しない大量の竜。
この扉が、全てを繋げるのだとしたら。
「駄目だ、こんな扉、使っちゃ駄目だ」
「…何?」
ロアは思わずそう呟いていた。
「こんなの危険すぎる!これを使ってアクノロギアを討つ、そんなの、リスクの方が大きすぎるだろ…!」
「…君は、ゼレフを討たれたくないだけでは?」
「違う、ゼレフは関係ない!」
違うかもしれない。けれど、そうである可能性がある以上使うのは危険だ。
しかし、ゼレフとの繋がりを持つ自分の言葉では、何も受け入れてもらえない。
「くそ…っ、わかってくれ、本当にこの扉は…」
「彼の言い分に賛成だ」
「…え?」
肯定的な言葉と同時に、突然ばたばたと後ろが騒がしくなった。
驚き振り返ると、小さな老人を筆頭に騎士がずらりとロア達を囲んでいる。
「な…っ、貴方はこの計画に反対なだけだろう!」
「そうだ!こんな歴史を変える作戦など、その危険性を少しでも想像出来んのか!」
図らずも、ロアの考えと同じ者がこの城内にいたらしい。
「アルカディオス大佐を国家反逆罪の容疑で拘束する!並びに星霊魔道士も拘束!それ以外の者は追い出せ!」
しかし、そのやり方はあまりに乱暴だった。
取り囲む騎士たちに、アルカディオスはおろか、ルーシィとユキノまで捕らえられている。
「ちょっと、なんであたしまで…」
「テメェら…ルーシィを巻き込むな!」
そんな光景を黙って見ているはずもなく、ナツは腕を振り上げ騎士たちに殴りかかろうとした。
そのナツの体は、前触れもなくぱたりとその場に倒れ込んでいた。
「っナツ!?」
「大魔闘演武は魔道士の魔力を微量に奪いエクリプスへ送る為のシステム。エクリプスの近くでは全ての魔力が奪われてしまうぞ」
「そんな…!」
ロアは意識朦朧としたナツを抱きかかえ、いくらなんでもと騎士を睨み付けた。
けれどこの状況を指示したのだろう老人は、静かに口を開くだけ。
「…エクリプスは発動させん」
その意志は同じなのに。
ロアはナツを抱いたまま、グレイもウェンディもガジルも下手に動くことが出来ずに城から追い出されてしまった。
・・・
あれだけの事があったのに、まだ夜は明けない。
バーに集まっていた皆の元に一度戻りナツを託して、ロアはまた一人ハニーボーンにいた。
きっと今頃皆、ルーシィを助け出す作戦を考えているはずだ。
「…くそ…」
ベッドに腰掛け、まだシャワーを浴びて乾ききっていない髪をがしがしとかく。
間違いなく、未来人が今この瞬間にいるのは、確実に発動されるであろうエクリプス計画のせいだ。
ドラゴンの群れがやってくるという未来も、恐らくあれのせい。
「…けど、何で…」
不可解なのは、王国騎士がその可能性を全く危惧していないことだ。
彼等の目的はあくまでゼレフを倒すこと。
ロアは何度目かの溜め息を吐き、俯いたまま目を閉じた。
それでも他には考えられない以上、ロアが出来ることは一つ。
「止めなきゃ…。俺は…あの扉を…」
目を開いて、自分の手のひらを見つめる。
すると、どんどんっと急に扉が音を叩いた。
「…ロア、いんのか?」
返事を待たずにカチャ、と静かに扉が開く。
覗き見えたその顔に、ロアは大げさに肩を揺らして身を起こした。
「ナツ、どうかした?」
「…どうかしたのは、ロアの方だろ」
向かってくるナツに、ロアは眉を下げて笑った。
いい加減、言及されてもおかしくないとは思っていた。ドラゴンの前、そして大きな扉の前でも変な態度をとったし。
「何を考えてんのか、聞かせてくんねえか?」
「ん?」
「ロアが泣く理由が知りたい。そんだけだから」
ロアの隣に腰掛けたナツが、じっとロアを見つめる。
その大きな瞳に、ロアはドキリとして目を逸らした。
「泣いてねえ、し」
「ロア」
頬を滑る固い手。
思わず込み上げそうになった思いに、ロアは口を噤んでから笑った。
まだ、どう話したら良いのか分からないのだ。何を、どう説明したら分かってもらえるのか。
「…もし、もしもだけど…未来から来たっていう自分が、自分じゃなくなってたら、どうする?」
「…?そりゃ、どういうことだ?」
「おんなじ顔して…違うことを、考えてる。この世界なんてどうだっていいって、愛する人なんかいないって」
違う、こんなことを話したいんじゃない。
「俺は、このままゼレフの魔力に押しつぶされて…ナツの傍にいられなくなるかもしれない…」
「ロア…」
こんなことを言いたいんじゃなかった。
もっと大事な、エクリプスのこと、考えなきゃいけないのに。
ロアはナツの腕に縋りついていた。
頭と心と体とが、めちゃくちゃだ。きっともう、とっくに限界だったのだろう。
「ナツ…っ」
少し濡れたロアの髪がナツの頬に触れる。
それに一瞬体を震わせたナツの手は、ロアの肩を掴んでいた。
「ロア…」
「え、ナ…」
乱暴に体を引き剥がされる。
驚き丸くする目から零れ落ちた涙を止めたのは、ナツの乱暴な口付けだった。
「んっ、…んん…!?」
口の端から声が漏れる。
そのままぽすんと重なったままベッドに落ち、それでも尚ナツはロアの頭をしっかりと抱えて深く口付けた。
「っ!!」
驚きのあまり、動けずただナツに身を任せる。
息が苦しい。それまでの不安が全てかき消されるほどの動揺と苦しさ。
ロアは一瞬離れた隙間で息を吸い込み、けほと小さく咳き込んだ。
「わ、悪いオレ…!」
「待ってナツ」
ぱっと退こうとしたナツの腕を掴んで引き寄せる。
ベッドの上で重なった二人の図は、まるでこれから行為に及ぶかのようだ。
「ロア…」
目の前でロアを呼ぶその声が震えている。
もし、もしも今、ナツがロアと同じ気持ちだったのなら。
ロアは煩い心臓を手で押さえ、もう片方の手でナツの胸元肌蹴た服を掴んだ。
「…ナツ、駄目、かな、今…俺、馬鹿なこと考えてんのかな…」
「あ、えと、」
「なあ、ナツ…今、ちょっとだけでいいから…ちょっとだけ、俺に、触って欲しい…」
ロアの体に触れないようにシーツを握り締めるナツの手。
それが、戸惑い揺れた。
「全部…好きにしてよ、ナツ」
「ロアは…、だって、それどころじゃねぇんだろ…?」
それどころではない。それ、とはなんだろう。
ロアはぼんやりとした頭で、自分の中にあるどうしようもない欲を抑えられなくなっていた。
むしろ、今でなければダメな気がして。諦め、とかそんなではなくて。
ただ、今、欲しいと。
「ロアが、弱ってんの…利用してるみてぇで…オレ」
「それでもいいよ」
ナツの喉が上下に動く。
まだ抵抗はあったのだろう。けれどそのまま顔を近付けてきたナツは、ロアの少し湿った首元を舌でなぞった。
「っ」
「ロア…すげぇ、いい匂いがする…」
「風呂、上がりだから」
「いや、そんなんじゃねえ…ロアの匂い、すげぇ好きなんだ」
ナツの切なげな声に、ロアの胸の奥がきゅっと痛くなる。
こんな状況なのに、好きで欲しくてたまらない。
「ナツ…っ」
自然と手を下半身へと伸ばして、自ら手を動かす。
それに気付いたナツははっと顔を上げて、少し恥ずかしそうに肩を震わせた。
触っていいものか躊躇っているのだろうか、未だ手はロアの横に置いたままぎゅっとシーツを握りしめている。
「…」
ロアはおずとナツに手を伸ばした。
「っ、ロア…!」
「あ…はは、良かった。ナツも、一緒じゃん…」
布越しに触れたナツの熱に、思わず頬を緩める。
ナツはそれに少し戸惑いを見せ、不安そうな視線をロアへと向けた。
「オレ…どうしたらいいんだ?」
「ん…触って、俺も、触るから」
「けど…」
けど、に続くナツの考えは分かっている。
ロアは首を小さく横に振って、ニッと笑った。
「諦めてるんじゃないよ。これが最後とか、思ってるんじゃない」
「ロア…」
「ナツに愛されてんだって、ちゃんと、感じたいんだ。それで…頑張れるから」
一人じゃない。きっと、ナツを好きでい続ける。
ナツの傍に、ずっといたいから。
「未来の自分の言葉より…今の、思いを信じさせて…」
縋るように、見上げたナツの胸に手を当てる。
一度歯を食いしばったナツは、その手をロアの体へと滑らせた。
ようやく触れるナツの手が、ロアの胸をたどり、腰を撫でて、ズボンの上に乗せられる。
求めた感覚、初めての行為に、酷く動揺しているのが分かる。
「…俺、風呂上がりだから綺麗だよ?」
「っ!そんなこと分かってる!ていうか、ロアはいつだって綺麗だ!」
「じゃあ…俺にさわんの、やっぱ嫌?男の体とか、」
「違ぇ…」
ぶんぶんと横に振られ、改めて見つめられたその瞳の奥にある熱がロアをとらえる。
「オレだって、ずっと…ロアの全部が欲しかった」
ここまでたどり着くのに、ずいぶんと時間がかかってしまった。
もっと平和な日常の中で、ここまで来れたら良かったのに。
距離が近付いて、体と体とが密着する。
ただ今は、治まらない熱とずっと求めた思いに身を任せたかった。
・・・
「おいナツ!いつまで寝てんだ!」
煩い声と同時に、纏っていた布団を引き剥がされた。
もぞと足をすらせながら目を開くと、呆れ顔のタレ目が覗いていることに気が付く。
「んあ…?」
「お前はルーシィ助けに乗り込むんだろうが」
グレイの声。その内容をゆっくりと頭に流し込み、ナツははっと目を開いた。
そうだ。城に捕らえられたルーシィを助けなければ。
それから。
「ロアは!?」
隣で目を閉じていたロア、それを確認したのはどれ程前のことなのだろう。
ナツの手はまだ少し暖かいシーツを握っていた。
「ロアなら、さっきすれ違ったぜ。一緒に行きゃいいって言ったんだが…目的が違うんだと」
「…ロア、追い掛けねーと」
「だからさっさと出る準備しろ」
オレはお前の分も大会で活躍してやるよ。
そう言って笑ったグレイの表情にも、どこか不安が浮かんでいるように見えた。
ロアは大丈夫だと言った。
はたして、それは本当に信じて良い言葉だったのか。
ナツはベッドの下に落ちていた服を掴み、袖を通す前に飛び降りた。
・・・
城への侵入は容易かった。
誰もロアがそこにいることに気が付かない。
臆することなく正面から入り、騎士たちの横を通り過ぎる。
「…エクリプス計画、もう準備出来てるんだって」
前から来る騎士の会話に、ロアはぴたと足を止めた。
「大丈夫なのか?未来から来たとかいう怪しい奴の言うこと信じて」
「姫様の判断だからな、大丈夫なんだろう」
「ドラゴンなあ…」
本当に来るのかドラゴンなんて。
そんな会話にロアは一瞬息を止めて彼らが通り過ぎるのを待った。
未来から来た怪しい奴。ドラゴンが来る。
そしてエクリプス計画の実施。
「…」
未来のローグと自分が関わっているのは間違いないようだ。
ロアの想像が正しいのなら、そのエクリプス計画がドラゴンを呼ぶものであるはずだ。
何か、虚言で惑わせている可能性が高い。
ロアは足音を立てないように、静かに先へと急いだ。
長い廊下を抜けて、広い場所へと出て。
「…くそ、どこだ…」
一度二度来た程度で、広い城のなかを把握出来るわけもなく、ロアはきょろきょろとあたりを見渡し、手当たり次第に扉を開いた。
ここじゃない。ここでもない。ここでも。
「…無駄だ」
足を踏み込んだ直後、背中で扉が閉まった。
はっとしたところでもう遅い。ロアの顔の横には、ナイフが突き刺さっていた。
「お前にエクリプスは破壊できない。それは、俺が一番よくわかってる」
広い部屋の真ん中に、黒い髪の自分が立っている。
その手は真っ直ぐにこちらに向けられていた。
「…お前、未来の俺なんだろ。俺を殺したらお前も消えるんじゃないのか」
「どうせ皆死ぬ」
感情の起伏の感じられない声色に、ロアは背筋がぞっとするのを改めて感じた。
一体どれほどの絶望を覚えればこんな風に変われるのか。
今更、考えるだけ無駄だ。
「俺は諦めない。絶対にあの扉を壊してやる」
「…それが無理だって言ってるんだろ」
「やってみなきゃ分からないだろ」
うつろな黒い瞳を見つめながら、一歩一歩と近づく。
その瞳はしばらく足元を見つめてから、静かにロアの方へと向けられた。
やはり何を考えているのか分からない。どこまでも、闇を持つ瞳。
「未来を変えようと、思わないのか」
「ああ、変えるよ。ここで全てを終わらせる。皆と一緒に死ぬんだ、お前も」
一瞬口元につくられた笑み。
ロアははっと息を吸い込んで、顔をしかめた。
「…そういうことか」
未来の自分がここに来て、ローグに手を貸す理由は、全てを終わらせること。
ここでロアを殺さないのは、『皆と一緒に』死にたいからだ。
「どうせ一人になる。だからお前もここで死ね」
「馬鹿じゃないのかお前…!」
「お前にはわからない。一人、生きていかなきゃならない苦しみは」
静かに告げられる思い。
もう、先を見ることを諦めた瞳は、再び足元へと落ちた。
「今ならまだ死ねる」
「…っ、」
皆と一緒に死にたい。
そんな願い、そんなの、許してたまるか。
「俺は皆と生きる未来を切り開く!」
「無駄だと言ってるだろ!」
声を荒げたロアは、その体から魔力とも言い難いその力を放った。
ざわざわと空気が音を立てて揺れる。それは、確かにゼレフの力と酷似していた。
「…っ、忘れたのか?ゼレフの力は、俺には効かないって」
びりびりという痛みにだけ足を踏ん張り堪えながら進む。
「未来は変えてやる…今の俺を信じろよ!」
「…無理だ」
「無理じゃない!お前を知った俺なら、変えられる!」
いつか目の前の男のようになる。
それを知っていれば、自分はその道を辿らないで進めるかもしれない。
「だから、俺は行く!」
踏ん張った足で地を蹴り、ロアは一気に距離を縮めた。
光を宿した手で掴む、絶望した男の腕。
しかし、その手は届くことなく別の腕に遮られていた。
「…行かせないよ」
「っ!?」
ロアは咄嗟にその腕を振りほどき飛び退いた。
もう一人の未来人。ローグはその鋭い目でロアを睨みつけていた。
突然訪れた緊迫した空気に、ロアはごくりと唾を飲み眼前の二人を見据えた。
妙な空気だ。二人の間に流れる空気は、ロアが思っていたものと違う。
「お前、わかってんだろうな」
鋭いローグの声は、もう一人のロアの方へと向けられる。
その鋭さに、黒い髪はさらりと揺れて顔を隠した。
「壊したいんだろ?」
「…」
「まさか今更、アレに絆されたのか?」
ローグの目はちらとロアを映す。
“アレ”と形容されたことに多少顔をひきつらせながらも、ロアは警戒を怠ることなく二人を静かに見守った。
やはり、様子がおかしい。初めて顔を合わせた時に見せた、協力的な態度は一切見られない。
「…」
「はあ…仕方ねぇな」
無言を貫くロアに対し、呆れ溜め息をついたローグは一度視線を落とした。
そして間髪入れずに、手を黒いロアへと伸ばす。
「なら死ね」
その嘘偽りのない言葉と行動に、ロアは思わず身を乗り出していた。
邪悪な魔力を纏うあの手に掴まれれば、そのまま捻り殺されてしまう。
届くはずもない手を伸ばして、制止出来ないとわかっていて「やめろ」と叫ぶ。
届かない手。そのロアの思いを繋いだのは、大きな背中だった。
「テメェ、何してんだ!」
怒気を含んだ、男性にしては少し高い声。
その声に反応した二人のロアは、驚き目を見開いていた。
「…ナツ」
ロアと同じ声がナツを呼ぶ。
ローグの手を掴んだナツは、その声にロアを振り返り、そして改めてもう一人に向き直った。
「あれ!?ロアが二人!?」
格好良く登場したというのに、途端に声を裏返らせて、ロアと黒い髪のロアとを交互に見やる。
そんなナツに思わず胸を撫で下ろしたロアは、胸に手を当て一歩歩み寄った。
朝、起こさぬようベッドを抜け出したのに、まさか追いつかれるとは思っていなかった。
「ナツ…なんでここに?」
「あ、ああいや、ロアの気配がしたからつい…」
「なんだよ、それ…馬鹿だな。けど、助かった」
助かったのは自分ではないけれど。
確実にロアの命を奪おうとしていたローグは、チッと舌打ちしてからナツの腕を弾いた。
「…ナツ・ドラグニル」
「ん?お前…どっかで見たような顔だな…」
ここまで隠してきたが、もう誤魔化せないだろう。
目の前にナツだって知っている顔が二つあるのだ。ロアは覚悟を決めて、ナツの隣に並んだ。
「ナツ、そいつは未来から来たローグ、らしい」
「ローグ?って…ドラゴンスレイヤーのか?」
「ああ。セイバートゥースの」
セイバートゥースのローグ。そう言われてナツの頭にも記憶に新しい寡黙なドラゴンスレイヤーが浮かんでいることだろう。
そして同時に見られる知った顔に、ナツはさすがにその体を震わせた。
「じゃあ、ロア…お前も」
ナツの目がロアではないロアを映す。
その瞬間真っ黒な瞳が大きく揺れたのが分かった。
「…ナツ」
「お前、なんでそんな泣きそうなんだ?」
「っ!」
ナツの手がロアの顔へと伸ばされる。
その瞬間、ロアは大きく後ろに飛び退くと、そのまま走り出していた。
そこにあった窓に体当たりし、パリンという音共に姿を消す。
「な!」
「チッ、使えねぇな」
驚きのあまりその姿を見送る事しか出来なかったナツとロア。
その目の前で、ローグだけはつまらなそうに舌を打った。
「ゼレフの力を使えるとか言うから連れてきたってのに、不安定なガラクタじゃねぇか」
自分のことを言われているかのようで、思わずロアはローグを睨み付ける。
しかし、その目はローグと合ってしまった。
「なあ、光のロア」
「え」
「お前だって、どうせ何も出来やしねぇよ。フェアリーテイルのお飾りが」
吐き出すように言われたそれに、ロアは息を呑んで何も言い返す事が出来なかった。
ぐさりと刺さって、取り除くことが出来ないのは、図星だからだ。
Sランクだ光の魔導士だと、いつの間にかそれが受け入れられなくなっている。
ロア・コーランドは、弱い。
「…今の、撤回しろ」
「あ?」
一瞬、ロアの頭を撫でる手があった。
顔を上げると、静かに踏み出したナツがロアの前に立っている。
「ロアに謝れ!」
叫んだナツの手は、ローグの胸倉に掴みかかった。
涼しい顔をしたローグとは対照的に、ナツは怒りで体を震わせている。
「っ、な、ナツ…!」
「ロア、オレがコイツぶん殴ってやる。アイツ、追い掛けるんだろ?」
「…っ、で、でも」
「行けよ」
自分のことなのに、そう戸惑ったロアへの強いナツの口調がその迷いをかき消した。
ナツの方を向いたまま一歩下がり、その背中にかける言葉を考える。
ごめん、違う。ありがとう、じゃない。
「っ、負けんなよ、ナツ…!」
「あたりめーだ!」
その背中に拳を当てて、ロアは先程割れたばかりの大きな窓から飛び降りた。
馬鹿にするな。そう言わんばかりに体に光を纏ってふわと浮き上がる。
そのまま城の大きな庭へと着地し、ロアは騎士たちに見つからないよう塀に体を寄せた。
裏側に出たらしく、人影はなかった。
それどころか緑が広がる景色に、ロアはふーっと大きく息を吐く。
結局ナツには何も話せなかった。それがロアにとっては良くても、ナツは知ったら怒るだろう。
無事、怒られるべく帰って来れればいいが。
そんな嫌なことを考えて首を左右に振り、こうしてはいられないと顔を上げる。
その目の前には、同じ顔があった。
「…馬鹿だな、なんでお前まで来るんだよ」
「…!、お前」
そこで待っていたのか。
先程同じ場所から飛び降りた男は逃げることなくここにいた。
「何だよ、本当は追っかけて来て欲しかった口か?」
「……未来を、変えられるとは思ってない。どうせ、お前には何も出来ない」
「…、それは、さっきローグにも聞いた。なんだよ、言いたいことあんだろ」
淡々としゃべる自分と同じ顔の男が気に食わなくて、投げやりにそう言い返す。
すると俯いたままのロアの指がゆっくりと動き、ぴっと木々の向こうを指した。
「向こうの広場だ。エクリプスは、今外にある」
「え…!」
無意識にその指が向く先を見て、ロアは目を細めた。
外にあるということは、発動の時はもうそこまで来ているということだろう。
「エクリプス計画は、本来ゼレフを殺すためのもの。それは本当だ」
「お前…」
「でも、アイツが、俺達がそそのかした。これから開かれるエクリプスは…本来の使われ方をしない」
二人の思惑と種明かし。けれどそれは、ロアにとってはもはや答え合わせでしかなかった。
全てはあのローグの策略。国をも巻き込んだ奴の欲望の全て。
「姫たちは、未来人の俺達の言葉を助言として信じてる。それが、ドラゴンを呼ぶことになるとも知らずにな」
『これより、ドラゴン迎撃に備えて、エクリプス・キャノン発射シークエンスに移行します!』
暗い顔が語る、それを裏付けるかのように響き渡った声。
ロアは慌ててその場へ急ごうと足を動かし、けれど真実を語った男を振り返った。
「お前等の思惑、全部壊してやる」
「壊せるものなら、壊してみろよ。ゼレフ」
「俺はゼレフじゃない、ロアだ!それはお前もだぞ、ロア!」
最後まで悪態を吐いた男を睨んでから、ロアは目的を果たすために走り出した。
全てはここで決まる。
扉を破壊出来れば全てがなかったことになる。ドラゴンなんて襲って来ない。このまま大魔闘演武が行われるだけだ。
しかし、もし壊せなければその時は。
「そんなことに、させてたまるか…!」
国を敵に回しても、このゼレフの力を使ってでも。
ロアは自分の手のひらを見つめてから、先に見えるエクリプスへと一直線に走った。