リクオ夢(2011.10~2015.03)
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放課後。狐ノ依は違うクラスであるリクオを一人昇降口で待っていた。
最初は一人で立っていると声をかけられることが多く、待つことが嫌いだった。それでも、最近ようやく慣れてきたというのに、その日は何かおかしかった。
「あ、狐ノ依くん…これ、受け取ってくれる?」
「私もあげる!」
「これ、私からも!」
「え、ぁ…ありがとう」
何が何だかわからず突き返すことも出来ずに受け取る。それらは全て違う形の箱やら袋に入っていて、甘い匂いがした。
「良かった、狐ノ依くんいたぁ」
「いっぱいもらってるね」
はい、と言ってクラスメイトと女の子たちが手渡していく。時には知らない子からも。戸惑いながら受け取って行くうちに、手には持ちきれなくなっていた。
「あら、狐ノ依がすごいことに…」
HRが長かったのか、二人で待ち合わせて来たから遅いのか、ようやくつららとリクオが昇降口から出てきた。
そして狐ノ依を見た瞬間つららが驚いて駆け寄ってくる。
「これじゃあ、私からはあげる必要なさそうね」
ね、リクオ様とつららが声をかけたリクオにも同じようなものが二つ。
「ねぇ、これって何なの?」
「え、狐ノ依ってば知らずに受け取っていたの?リクオ様といい…」
はぁ、とつららが息を吐く。
「今日はバレンタインと言って、女子が男子に何をあげても怪しまれない日なの!」
「へぇ…?」
「ちなみに…」
つららが狐ノ依の耳元に口を近づけて、ぼそりと言った。
「特に好意を持っている男子に物を贈るのが定番だけど」
「こ…好意?」
自分の手に持っている大量の贈り物を見て、狐ノ依はさっと青ざめた。
リクオのためにあまり目立たないように過ごしてきたはずなのに、いつの間にこんなに好意を持たれてしまっていたのか。というか、受け取って良いものだったのか。
ふとリクオの手にある二つの物を思い出して嫌な予感が過る。
「…リ、リクオ様…?もしやそれを渡した女子というのは…」
「あ、これ?これはつららとカナちゃんが」
「…!」
予想の的中に狐ノ依は更に青ざめた。
「つ、つらら!どうしてその、バレンタインとやらを教えてくれなかったの!?」
「え、ぇえ?」
「ボクだって、女の子でもあるのに!」
「狐ノ依、声が大きいわよっ!」
近くを通っていた生徒が狐ノ依の台詞に困惑の顔をしている。ここでこの話を続けるのはまずい。つららは帰りましょうと言ってリクオと狐ノ依の背中を押した。
・・・
家に着いてからも狐ノ依はずっとそわそわしていた。自分の受け取ったチョコたちのことなど気にすることなく、リクオの受け取ったカナからのチョコが気になる。
リクオはどうするのだろう。
「食べる…しかないよね、チョコなら」
可愛い箱に入ったカナからの贈り物。リクオの様子を陰から見ていた狐ノ依は唇を強く噛んだ。いつ箱を開けるのか、いつ食べるのかが気になって離れられない。
「ねぇねぇ狐ノ依、これ食べていいの?」
「狐ノ依が美味しそうなものいっぱいもらってきたぞー」
妖怪たちは狐ノ依のもらったチョコやらお菓子やらにむらがっている。
「…ボクだけじゃ、食べきれないし…少しならいいよ」
わーいわーいと騒ぐ小さい妖怪たちを見て狐ノ依は笑った。女の子たちには申し訳ないような気もするが、喜んで食べてもらえた方がいいだろう。
女子から男子に贈り物。確かによくよく考えれば興味のない男子にわざわざ可愛い箱を用意してプレゼントなんて、しないだろう。
「カナちゃんは…やっぱりリクオ様を…」
「狐ノ依?そこでずっと何してるの?」
「あ!リクオ様…!」
当然、そこにいる狐ノ依の存在にリクオが気付いていないはずもない。
「そんなところにいないで、入りなよ」
「も…申し訳ありません」
こそこそしていたことが申し訳なくなり、狐ノ依は頭を下げた。
部屋に入っても狐ノ依は落ち着かなかった。部屋に置いてあるカナからのプレゼントが視界の端でちらつく。
「狐ノ依…」
「は、はい!なんでしょう」
「狐ノ依は学校でも人気者、なんだね」
「…え?」
思わぬことを言われ狐ノ依は首を傾げた。
「今日のバレンタイン、たくさんもらってただろ?」
「あ…あぁ、そのことですか…」
数は多かったが、ほとんどまともに関わったことのない女子からの贈り物。狐ノ依からすればむしろ、リクオのことの方が重く感じていた。リクオとカナはそれでなくても仲良しなのだから。
「そういえばボクはさ、学校での狐ノ依の様子…知らないんだよね」
「そう、かもしれませんね。クラスが違いますから」
「…悔しいな。ボクの知らない狐ノ依を見ている女の子がたくさんいるなんて」
どくん、と胸が大きく鳴った。同じだ。狐ノ依も、リクオと同じ思いをずっと持っていた。その対象が狐ノ依にとってはカナという一人の女の子に特定されているという点は大きく違うが。
「それは、むしろ自分の方が…」
「狐ノ依もさ、そんなに畏まらないで…もっといろんな姿をボクにも見せてよ」
「…っ」
リクオの言葉、リクオの行動はいつでも狐ノ依の心を揺れ動かせる。リクオの一言で少し前までもやもやして不安だった心が、晴れきって穏やかになってしまった。
「…はい。自分はリクオ様のものです。全てをリクオ様に捧げます」
「んー…ちょっと違うんだけど」
「…?」
「ま、今はそれでいいか」
リクオはにこっと笑うと狐ノ依の頭を撫でた。この狐ノ依の表情はきっと誰も知らない。自分しかしらない狐ノ依の顔があることは、とても嬉しかった。
でもやっぱりカナに先を越されたことが悔しくて、狐ノ依は夜に抜け出してチョコレートを買いに行った。女の子の手作りには負けるけれど、一緒に食べれるならそれでいい。
「大事なのは、気持ちだから…!」
口に出す言葉は自分に言い聞かせるもの。それでも見栄を張って少し高そうなチョコレートを手に持って、帰路を歩いた。
「遅かったじゃねぇか」
「リクオ様?」
リクオの元に行くと、酒を片手に待ちかねた様子でいるリクオが座っていた。2月の夜、肌寒い風が吹く庭に面した廊下。月明かりが当たっている姿は本当に美しい。
「おいで」
「…はい」
リクオは狐ノ依を自分の隣に座らせると、狐ノ依の手に握られているチョコレートを取り上げた。
「…これは?」
「あ、その…リクオ様に、というか…一緒に食べたいと思って…」
一緒にというのが嬉しくて、リクオは狐ノ依の頬を撫でた。いつもリクオを上に見る狐ノ依の口から、そのような言葉が聞けるのは珍しい。
リクオはそのチョコを一かけ取り出して、ひょいと狐ノ依の口に入れた。
驚き目を丸くしてリクオの顔を見た狐ノ依に口付けをすると、二人の間で同じ味が混ざっていく。
「甘いな」
「ぁ…あ、甘い…ですね」
「狐ノ依、もう一回…口開けて」
リクオは再びチョコを手に取った。何をされるかわかってしまった以上、口を開けるのが恥ずかしく感じられる。
リクオの指が狐ノ依の唇をなぞって、それに応えるように口を小さく開いた。
「んっ…」
甘い味が口に広がってから、リクオの口で蓋をされる。チョコの味なんて全然わからない。頭から足の先までじわじわと熱で満たされていく。
「そんな、もの欲しそうな顔して…誘ってんのかい…?」
「し、してません…」
「今日ずっと、オレのこと見ていただろう」
「そ、それは…!」
ばれてる。とか考えている余裕も今の狐ノ依にはなかった。リクオの鋭い瞳から目を逸らすことが出来ない。
「心配するこたぁねぇよ」
「…?」
「狐ノ依がオレを見ている限り…オレは狐ノ依に応える」
「そんな、それは自分の台詞です!」
思わず乗り出して訴えた狐ノ依の頬を両手で包む。そしてリクオはもう一度狐ノ依に口付けをした。
長い口付けに体を熱くした狐ノ依に、更にリクオは掌を差し出す。言われなくてもわかる、血を飲めという合図だった。
「その…もういろいろと、お腹いっぱい、なのですが」
「でも、血は欲しいだろう?」
「…い、いただきます」
尖った八重歯をリクオの手のひらに突き刺して、流れ出す血を貪った。本能に呑まれると汚らしくなるから嫌なのに、リクオの血が美味しくて、狐ノ依は夢中で舌をはわせる。
それさえも、リクオは愛おしそうに見つめるのだった。
・・・
「…ところで、リクオ様。カナちゃんからのチョコは…」
「ん?あぁ。皆で食べちまったけど」
少し、カナに申し訳なくなる狐ノ依だった。
最初は一人で立っていると声をかけられることが多く、待つことが嫌いだった。それでも、最近ようやく慣れてきたというのに、その日は何かおかしかった。
「あ、狐ノ依くん…これ、受け取ってくれる?」
「私もあげる!」
「これ、私からも!」
「え、ぁ…ありがとう」
何が何だかわからず突き返すことも出来ずに受け取る。それらは全て違う形の箱やら袋に入っていて、甘い匂いがした。
「良かった、狐ノ依くんいたぁ」
「いっぱいもらってるね」
はい、と言ってクラスメイトと女の子たちが手渡していく。時には知らない子からも。戸惑いながら受け取って行くうちに、手には持ちきれなくなっていた。
「あら、狐ノ依がすごいことに…」
HRが長かったのか、二人で待ち合わせて来たから遅いのか、ようやくつららとリクオが昇降口から出てきた。
そして狐ノ依を見た瞬間つららが驚いて駆け寄ってくる。
「これじゃあ、私からはあげる必要なさそうね」
ね、リクオ様とつららが声をかけたリクオにも同じようなものが二つ。
「ねぇ、これって何なの?」
「え、狐ノ依ってば知らずに受け取っていたの?リクオ様といい…」
はぁ、とつららが息を吐く。
「今日はバレンタインと言って、女子が男子に何をあげても怪しまれない日なの!」
「へぇ…?」
「ちなみに…」
つららが狐ノ依の耳元に口を近づけて、ぼそりと言った。
「特に好意を持っている男子に物を贈るのが定番だけど」
「こ…好意?」
自分の手に持っている大量の贈り物を見て、狐ノ依はさっと青ざめた。
リクオのためにあまり目立たないように過ごしてきたはずなのに、いつの間にこんなに好意を持たれてしまっていたのか。というか、受け取って良いものだったのか。
ふとリクオの手にある二つの物を思い出して嫌な予感が過る。
「…リ、リクオ様…?もしやそれを渡した女子というのは…」
「あ、これ?これはつららとカナちゃんが」
「…!」
予想の的中に狐ノ依は更に青ざめた。
「つ、つらら!どうしてその、バレンタインとやらを教えてくれなかったの!?」
「え、ぇえ?」
「ボクだって、女の子でもあるのに!」
「狐ノ依、声が大きいわよっ!」
近くを通っていた生徒が狐ノ依の台詞に困惑の顔をしている。ここでこの話を続けるのはまずい。つららは帰りましょうと言ってリクオと狐ノ依の背中を押した。
・・・
家に着いてからも狐ノ依はずっとそわそわしていた。自分の受け取ったチョコたちのことなど気にすることなく、リクオの受け取ったカナからのチョコが気になる。
リクオはどうするのだろう。
「食べる…しかないよね、チョコなら」
可愛い箱に入ったカナからの贈り物。リクオの様子を陰から見ていた狐ノ依は唇を強く噛んだ。いつ箱を開けるのか、いつ食べるのかが気になって離れられない。
「ねぇねぇ狐ノ依、これ食べていいの?」
「狐ノ依が美味しそうなものいっぱいもらってきたぞー」
妖怪たちは狐ノ依のもらったチョコやらお菓子やらにむらがっている。
「…ボクだけじゃ、食べきれないし…少しならいいよ」
わーいわーいと騒ぐ小さい妖怪たちを見て狐ノ依は笑った。女の子たちには申し訳ないような気もするが、喜んで食べてもらえた方がいいだろう。
女子から男子に贈り物。確かによくよく考えれば興味のない男子にわざわざ可愛い箱を用意してプレゼントなんて、しないだろう。
「カナちゃんは…やっぱりリクオ様を…」
「狐ノ依?そこでずっと何してるの?」
「あ!リクオ様…!」
当然、そこにいる狐ノ依の存在にリクオが気付いていないはずもない。
「そんなところにいないで、入りなよ」
「も…申し訳ありません」
こそこそしていたことが申し訳なくなり、狐ノ依は頭を下げた。
部屋に入っても狐ノ依は落ち着かなかった。部屋に置いてあるカナからのプレゼントが視界の端でちらつく。
「狐ノ依…」
「は、はい!なんでしょう」
「狐ノ依は学校でも人気者、なんだね」
「…え?」
思わぬことを言われ狐ノ依は首を傾げた。
「今日のバレンタイン、たくさんもらってただろ?」
「あ…あぁ、そのことですか…」
数は多かったが、ほとんどまともに関わったことのない女子からの贈り物。狐ノ依からすればむしろ、リクオのことの方が重く感じていた。リクオとカナはそれでなくても仲良しなのだから。
「そういえばボクはさ、学校での狐ノ依の様子…知らないんだよね」
「そう、かもしれませんね。クラスが違いますから」
「…悔しいな。ボクの知らない狐ノ依を見ている女の子がたくさんいるなんて」
どくん、と胸が大きく鳴った。同じだ。狐ノ依も、リクオと同じ思いをずっと持っていた。その対象が狐ノ依にとってはカナという一人の女の子に特定されているという点は大きく違うが。
「それは、むしろ自分の方が…」
「狐ノ依もさ、そんなに畏まらないで…もっといろんな姿をボクにも見せてよ」
「…っ」
リクオの言葉、リクオの行動はいつでも狐ノ依の心を揺れ動かせる。リクオの一言で少し前までもやもやして不安だった心が、晴れきって穏やかになってしまった。
「…はい。自分はリクオ様のものです。全てをリクオ様に捧げます」
「んー…ちょっと違うんだけど」
「…?」
「ま、今はそれでいいか」
リクオはにこっと笑うと狐ノ依の頭を撫でた。この狐ノ依の表情はきっと誰も知らない。自分しかしらない狐ノ依の顔があることは、とても嬉しかった。
でもやっぱりカナに先を越されたことが悔しくて、狐ノ依は夜に抜け出してチョコレートを買いに行った。女の子の手作りには負けるけれど、一緒に食べれるならそれでいい。
「大事なのは、気持ちだから…!」
口に出す言葉は自分に言い聞かせるもの。それでも見栄を張って少し高そうなチョコレートを手に持って、帰路を歩いた。
「遅かったじゃねぇか」
「リクオ様?」
リクオの元に行くと、酒を片手に待ちかねた様子でいるリクオが座っていた。2月の夜、肌寒い風が吹く庭に面した廊下。月明かりが当たっている姿は本当に美しい。
「おいで」
「…はい」
リクオは狐ノ依を自分の隣に座らせると、狐ノ依の手に握られているチョコレートを取り上げた。
「…これは?」
「あ、その…リクオ様に、というか…一緒に食べたいと思って…」
一緒にというのが嬉しくて、リクオは狐ノ依の頬を撫でた。いつもリクオを上に見る狐ノ依の口から、そのような言葉が聞けるのは珍しい。
リクオはそのチョコを一かけ取り出して、ひょいと狐ノ依の口に入れた。
驚き目を丸くしてリクオの顔を見た狐ノ依に口付けをすると、二人の間で同じ味が混ざっていく。
「甘いな」
「ぁ…あ、甘い…ですね」
「狐ノ依、もう一回…口開けて」
リクオは再びチョコを手に取った。何をされるかわかってしまった以上、口を開けるのが恥ずかしく感じられる。
リクオの指が狐ノ依の唇をなぞって、それに応えるように口を小さく開いた。
「んっ…」
甘い味が口に広がってから、リクオの口で蓋をされる。チョコの味なんて全然わからない。頭から足の先までじわじわと熱で満たされていく。
「そんな、もの欲しそうな顔して…誘ってんのかい…?」
「し、してません…」
「今日ずっと、オレのこと見ていただろう」
「そ、それは…!」
ばれてる。とか考えている余裕も今の狐ノ依にはなかった。リクオの鋭い瞳から目を逸らすことが出来ない。
「心配するこたぁねぇよ」
「…?」
「狐ノ依がオレを見ている限り…オレは狐ノ依に応える」
「そんな、それは自分の台詞です!」
思わず乗り出して訴えた狐ノ依の頬を両手で包む。そしてリクオはもう一度狐ノ依に口付けをした。
長い口付けに体を熱くした狐ノ依に、更にリクオは掌を差し出す。言われなくてもわかる、血を飲めという合図だった。
「その…もういろいろと、お腹いっぱい、なのですが」
「でも、血は欲しいだろう?」
「…い、いただきます」
尖った八重歯をリクオの手のひらに突き刺して、流れ出す血を貪った。本能に呑まれると汚らしくなるから嫌なのに、リクオの血が美味しくて、狐ノ依は夢中で舌をはわせる。
それさえも、リクオは愛おしそうに見つめるのだった。
・・・
「…ところで、リクオ様。カナちゃんからのチョコは…」
「ん?あぁ。皆で食べちまったけど」
少し、カナに申し訳なくなる狐ノ依だった。