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カカシ夢(2011.04~2016.09)
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ナナが五色に帰ってから2年経った。ナナはどうするのだろう、どうしているのだろうなんて、毎日のようにナナのことばかり考えていた日々はどこへやら。
元々ナナは五色の人間なのだから、向こうで親族が見付かったというなら残るという選択肢が出てもおかしくはない。
今ではそんな開き直りのような覚悟もし始めていた。
「…はぁ」
愛しい人間が自分の手から離れるのが、こんなに切ないとは。ソファーに腰かけたまま、カカシは頭を抱えていた。
いくら覚悟しても受け入れているかどうかは別だ。ゆっくりと体をソファーへと倒し目を閉じる。
そうすると、自ずとナナと生活した日常が思い出されて、幸福感と喪失感に入り乱れた。
「……おい」
そんな状態だったからか、耳を掠めた声にすぐ反応出来なかった。
「寝てんの……?」
この家はカカシとナナのものだ。カカシ以外の声がするとしたら、それはナナのものしかない。
とうとう幻聴も聞こえ出したか。
「ただいま」
柔くカカシの髪に触れた指。
ようやく目を開いたカカシは、その指を辿ってそこに立つ人間の姿を目に映した。
「あれ、ナナ……?」
「んだよ、起きてんじゃん」
懐かしいその人は、ずいぶん大人びたように見えた。
それもそうだろう。大人であるカカシと違ってナナはまだ十代だ。
「いつ、帰ったの」
「今だよ、たった今」
ますます綺麗になった。体を起き上がらせ、無意識にカカシはナナの顔を見つめていた。
心から浮かれているのに、格好悪いところを見せたくなくて、冷静を装う。
「……五色は、どうだったの」
「俺、ちゃんと愛されてたんだって、叔父さんが、両親のこと話してくれた」
父の弟だというその人は、生きていてくれて良かったと泣いて喜んでくれた。
それでナナの中に生まれたのが、五色を復興させたいという感情だった。
五色は少しずつ変わっている。ナナが木ノ葉にいるように、五色が他の忍の里で活躍し出すのも、遠い未来ではないかもしれない。
「良かったの?五色にいなくて」
「まあ……そろそろ、あんたにも会いたかったし」
「嬉しいこと言ってくれるね」
「それで。俺、あんたのこと結構好きかもって気付いた」
失ってから気付く、とはよく言ったもの。カカシと離れてみて、自分にとってカカシがどんな存在だったのか気付かされた。
それが、好きということなのかはよくわからないけれど、ナナはそういうことでいい気がしていた。
「カカシ……?」
曖昧に言ったとはいえ、せっかく口に出した思いに対しカカシが一向に何も言わないことに不安を覚え、ナナはゆっくりカカシの顔を見た。
「何黙ってんだよ」
「や、ちょっと。今見ないで」
すっと顔を逸らされる。見ないでも何も、カカシの顔で確認出来る面積の少なさと言ったら目元くらいなものなのに。
「おい、俺の話聞いてたよな」
「聞いてた聞いてた。だからこんなんなってんでしょうよ」
「こんなんってどんなだよ」
自信の顔を隠すカカシのその手を掴んで離そうとすると、逆に引き寄せられて、ナナはすっぽりカカシの腕に収まった。
「愛してるよ、ナナ」
「な……」
「オレなんか、ずっとナナのこと好きなんだから」
「二年経ってんだけど。ずっと俺のこと好きだったわけ?」
「当然」
気付くの遅いよ、と耳元で囁くと、うっせと呟きながらもナナは背中に腕を回した。
「重たいモノ置いてこれたんだな」
「そうだな、背中軽くなった感じ。俺、たぶん強くなれた気がする」
「わかるよ。ナナ、強くなったな」
ぽんぽんと頭に手をやると、ナナは嬉しそうに擦り寄ってくる。強くなったのは確かだが、甘え方もしっかり身につけてきたらしい。
自分と違うナナの匂いがする。ナナが、帰ってきた。
・・・
カカシの家を後にして火影のもとに向かう途中、ナナはあることに気付いた。火影岩が増えている。一番端に追加されているのは恐らく女性の顔。
「そっか、あのじいさん死んだんだっけ」
結構慕われている良い人だったイメージがあった分、少し胸が痛んだ。ナルトやサクラ、サスケはどんな気持ちだったのだろう。
カカシは全く変化なかったが、ナルトたち三人はまだ幼かったから、当然背も高くなって大人に近づいているのだろう。
そんなことを考え目的地に着くと、前から誰かやって来るのが見えた。
「あれ、サクラ?」
「え、あ……! ナナさん! いつ帰って来たんですか?」
ナナに気付いたサクラはぱっと顏を明るくさせた。
ナナの胸あたりにあったサクラの顔はナナの顔の高さに届いていて、その成長は明らかだった。髪も短くしたようで、さっぱりした雰囲気になっている。
「大きくなったな」
「ナナさんは、なんだか丸くなったみたい。あ、太ったって意味じゃないですよ! 雰囲気が落ちついたなって」
サクラは今の火影を師にしているらしく、ここにいたのは火影の所に行っていたからだと言った。
「あ、サクラ」
「なんですか?」
「ナルトとサスケはどうしてる?」
サクラは口ごもった。その理由がわからず首を傾げたナナを見てサクラは苦笑した。
「ナルトは今修業に出ていてで、私も全然会ってないんです」
「サスケは?」
「サスケ君は今、木ノ葉には……」
何かあったのだ。サクラの反応でそれはわかったが、サクラから聞くのは酷なようで、ナナは後でカカシに聞くことにした。
火影は思っていたより、若く普通っぽい女性だった。ナナのことも知っていたようで、よく帰ったなと言う言葉が少し嬉しかった。
帰ってきた。木ノ葉に帰ってきたのだと実感させられた。
「お前の所属していた第七班だが、今はバラバラになっている。暫く任務に出たければ即興の班になると思っておけ」
「ばらばら、ですか」
「事情はカカシに聞くといい、私よりよく知っているからな」
最初からそのつもりだったナナは素直に頷いた。
「あぁ、それと。今は平和だが、いつ何が起こるかわからないということを覚えておけ」
行っていいぞと言われ、ナナは何も聞かずにその場を去った。
部屋を出ると、カカシがそこに立っていた。
「待ってるのもなんだしね、それに話さなきゃいけないこともある」
「サスケのことか?」
「あぁ、知ってたの」
「サクラに会って、何かあるんだろうなって」
わざわざカカシが出て来るほどだから、嫌な話なのだろう。ため息を吐いてから、ナナはカカシの目を見た。
「教えろよ、何があったのか」
カカシの話はこうだった。
ナナが木ノ葉を去った後、木ノ葉に暁という集団に所属しているサスケの兄が現れた。うちは一族はそのサスケの兄、イタチによって滅ぼされていて、サスケの復讐の相手だった。
暁の狙いはナルト。それを知ったサスケはナルトを追ったが、イタチに返り討ちにあってしまう。
それをきっかけにサスケは再び復讐に目覚め、力を求めた。
そこに大蛇丸の誘惑。力が欲しければ私を求めろ、という大蛇丸に、サスケはのってしまった。
そしてサスケは木ノ葉を捨てた。
同時にナルトは、これからも狙われ続けるだろうということで、伝説の三忍の一人、自来也に連れられ修業中である。
木ノ葉の三忍はその自来也と今の火影である綱手と大蛇丸。
「大蛇丸は、サスケを取り込んで自分のものにするつもりだ。それが……恐らく大蛇丸の今の体が限界になる、一年後」
「……よくわかんねぇけど。それ、ナルトは?」
「勿論知ってる。だから、ナルトもそろそろ帰って来るんじゃないかな」
伝説の三忍にナルトもサクラも、サスケもそれぞれ師を持ったという状況に、何か運命的なものを感じているのはナナだけではないだろう。
「ていうか、なんでナルトは狙われてんの」
「ナルトは、ちょっと特別でね」
なんとなく理解した。綱手が今は平和って言ったのは、その暁という奴らと大蛇丸がいつ動き出すかわからない状態が今、というわけだ。
そして暁が動かないのは、ナルトにその強い師がついているからか。ということは、ナルトが帰ってきたらそこからは何かが起こる可能性が高い。
「今の木ノ葉は嵐の前の静けさ……」
「そういうこと。ナナは物分りが良くて助かるよ」
物分りもいいし、大蛇丸という言葉に過剰に反応しなくなったのは大きな成長だと言えた。見た目だけでなく、精神的にも立派になった。
カカシはふっと笑うとナナに口づけた。
「っ、何してんだよ」
「無性に触れたくなった」
「あんた、空気読めよ。そういう気分じゃねぇっつの」
「でも、帰ってきたら最後までやらせてくれるって言ったし」
手でぐいっとカカシの顔を押し返したナナは顏を赤くしてシャワーを浴びてからにしてくれと小さく声を発した。
カカシの家に戻ると、ナナはシャワー室に入った。
つまり、シャワーを浴びたら触らせてくれるということだろう。
しかし、待つことなんて今のカカシには出来るはずもなく、カカシもそのあとを追った。
「は!? あんた入ってくんなよ」
その言葉を遮るようにカカシはナナの唇を奪う。ナナは本当に嫌がっているようで、カカシの髪の毛を掴んで引っ張ったが、それは更にカカシをあおるだけだった。
「本当に、俺はそんな気分じゃねって……ッん」
「ナナ、綺麗になった」
「知らな……っあ、やめろって」
前よりも短くなった髪は濡れて顔に張り付いている。服を脱いだナナの体は前よりも筋肉がついてたくましくなったように見える。
カカシは手をナナの下半身に伸ばした。
「っ……」
ナナが息を呑んだのがわかった。
でも、抵抗しない。カカシはナナの肌に触れながら、後ろに指を這わせた。
「痛かったら言ってね」
「ん、平気だけど……気、早すぎだろ」
カカシに背中を向けていたナナの腰を引いて、壁に手を付かせると更に指を増やして広げる。
早く入れたいという思いが勝って、少し乱暴になってしまうのを止められない。
「ナナ……いい?」
「いい、けどっ、あんたの、顔っ、見せて……」
後ろからだと嫌な事を思い出す。それを察すると、カカシはシャワー室の床に座り、その上にナナを座らせた。
跨ぐように座ったナナの足は自然に広げられ、ナナは恥ずかしそうに顔をそらす。
しかしすぐに顔をカカシの方に戻した。
「あんた、何自然にマスク取ってんだよ!?」
「え、顔見せてって言ったでしょ。キスも、したいし」
一緒に生活していたとは言え、カカシは上手いこと顔を隠していて、素顔を間近で見るのは初めてだった。
顔なんて別に気にしていなかったが、不意打ちすぎて胸が高鳴る。その素顔には、なんで顔隠してるんだと思わざるを得ない。
ナナがそんなことを考えている間にも、カカシはゆっくり後穴を指で広げながら、体をそこに埋めていった。
「ぁ、……っ」
「大丈夫か、ナナ」
カカシはナナのものを片手で刺激しながら、片手で腰を持つとぐっと引き寄せた。奥まで入ると、カカシも大きく息を吐く。
「あ、ああ……っ奥、苦し、」
「動かない方が、いい?」
「別に、い、っいいよ……」
カカシは両手でナナの腰を支えると、もっと奥までいくように腰を動かした。
ナナの息遣いが頭をおかしくしていく。気持ち良さで全身が痺れる。
「あっ、あ、カカシ、っもう、」
カカシの首に腕を回してしがみ付くナナの体が強張った。カカシの耳元で甘い声が響く。
その日から、再びカカシとナナの生活が始まった。
・・・
朝からにやにやしているカカシが気になって声をかけると、ナルトが帰って来たのだと嬉しそうに語った。
「オレは出迎えに行くけど」
「あぁ…俺は後から行くよ」
カカシと共にナルトを待つのはなんとなく恥ずかしい気がして、ナナはカカシと時間をずらして家を出ることにした。
ナナが木ノ葉に戻ってから丁度3ヶ月ほど経った頃だった。
少し見つけるのに時間がかかったが、ナルトの声の大きさから場所の特定はしやすかった。
遠目から見ても大きくなったナルトに無意識に頬が緩む。ナルトの周りには既にカカシとサクラと火影の綱手、ともう一人知らない人、ナルトの修業を見ていた自来也がいるのが見える。
近寄ろうか少し迷っていたナナの存在にカカシが先に気付いた。
「ナナ、そんなところで何してるの」
「え!?ナナ!?どこだってばよ!」
キョロキョロと周りを探し始めるナルトを見て、さすがに木の影から出て行った。
「久しぶりだな、ナルト」
「おぉ!…あれ、ナナってば更にでかくなった…?」
ナルトは挨拶もせずに自分の背とナナのとを比べて横にした手をスライドさせた。
実際のところ、ナルトは最後に会ったときより10㎝以上伸びているに対し、ナナは2㎝程度しか変わっていない。しかしナルトから見るとまだナナに追いついていないことが悔しかったのだろう。
「それ、お前が言うか?相当でかくなったじゃねぇか」
「うー…追いついたと思ったのに」
「ナルト、年はいくつになったんだ?」
「16…って、今ガキ扱いしたろ!オレってば、強くなったんだからな!」
はいはい、と頭を撫でると更にナルトは顔を赤くして怒りだした。ガキ扱いしたつもりはなかったが、やはりまだまだガキだ。
ナナの視線はナルトに手を置いたまま自来也に移る。
「自来也様、ですよね。お初にお目にかかります」
「そういうお前さんは…」
「五色ナナと言います」
「なるほど…五色か…。惜しいのぉ、女だったら」
「おい、エロ仙人!変なこと考えんじゃねーってばよ!」
サスケがいなくなったというのに、以前の明るい性格を残したままのナルトにナナは安心していた。自分がナルトくらいの時はまだ荒れていたということもあり、心配していたが…やはり、育った環境が良いらしい。
「ナナさん、お兄さんみたいな顏してる」
「え?」
「今ナルトのこと見て、すごく優しそうな顏してましたよ」
「…は、サクラはよく見てるな」
「え、ちょ、…なんか二人仲良くなってない?サクラちゃん、もしかしてナナとそういう…」
「ナナさんに失礼でしょ!バカナルト!」
二人の仲の良さも相変わらずのようで、サスケのことはあるが安心したナナの視界にさっきから黙りっぱなしのカカシが入る。
「カカシ…?何してんだ?」
「んー…」
返事もおぼつかない様子でカカシが夢中になっているのは。愛読書イチャイチャシリーズの新作、『イチャイチャタクティクス』。
「…は?」
「え、ナナ!?これは、その」
「…へぇ、まだそんなの読んでたんだカカシって…はぁ、なるほどなぁ」
そんなの、というナナの言葉に作者である自来也の肩がぴくっと揺れた。
「ナナ、それってば、エロ仙人が書いたんだぜ」
「え…」
ナナの軽蔑の目は自来也に向かっていた。
「なるほど…カカシを変態に育てあげたのは、貴方ってことですね」
「いやいやぁ…それほどでもないのぉ」
「褒めてねーってばよ」
なんだかんだ盛り上がっているナナ達を見ていた綱手は急に手をぱん、と叩いた。それに皆黙って綱手の方に視線を送る。しかし、口を開いたのはカカシだった。
「どれだけ成長したのか見てやる。ルールは初めて会った時と同じね」
イチャイチャタクティクスを仕舞ったカカシの手には、ちりんと音をたてる昔と同じ鈴。それだけ見ればナナにもナルトにも当然サクラにもカカシが何をするつもりなのかわかった。
「ナナは悪いけど」
「はいはい、見守ってますよ」
ナナはもう上忍レベルと認められている。さすがにカカシも三対一のナナを相手にするというのには無理があるとわかっていた。
それに、ナナとは個人的に何度も手合せして実力はほぼ理解している。今更確認もないだろう。
ナナはそのカカシの考えを汲み、彼らから距離を取ってナルト達の成長を見ていることにしたのだった。
「五色ナナ、少しいいか」
声をかけてきたのは綱手だった。
「なんですか?」
「今後の第七班のことだ」
今まではばらばらだったために、カカシ、ナルト、サクラと行動することは無くなっていたが、カカシが二人の成長を確認しているように、これからは再び第七班で動くことが増えるということだろう。予想していたナナは素直に頷いて綱手の次の言葉を待った。
「何か有ったとき、当然お前達は第七班として行動することになる」
「はい」
「お前を一番理解しているのはカカシだからな、上手くまとめてくれるだろうが…お前は五色だ」
「…と、いうと?」
「五色として動かされることもあると考えておけ」
五色の元々の能力は生活の補助。水を出し、熱を生み、風を吹かせ、地を形成し、電気を作る。今後の戦いでは、そういうことが必要になる可能性があるということだ。
「…そんなに、状況は悪いのですか」
「悪くなる可能性が高い。木ノ葉だけでなく、他の忍の里に要求されることもあるだろうからな、いつでも動けるようにしていて欲しい」
「…わかりました」
今のところ五色で積極的に動くのはナナしかいない。こういう日が来るのも、わかっていたことだ。ようやくか、と思うくらい。
ちら、とカカシ達が戦っている方に目を向ける。ナルトもサクラも強くなったのは明らかで、地面は盛り上がっているし、ぶつかり合う音も聞こえる。
これは、すぐには終わらないな…。ナナはそこにあった木の幹に背中を預けて腰を下ろした。
ナルトも戻ってきて、ナルトを狙う暁が動き出すのも時間の問題…その中にはサスケの復讐の相手イタチがいて、恐らくサスケも動き出す…
今後のことを考えようとしても、全く見えてこなかった。
・・・
「ナナ」
とん、と肩を叩かれて目を開けるとカカシの顔が目の前にあった。
「…終わったのか?」
「終わったよ、帰っていても良かったのに」
「いや…悪い、全然見てなかった」
カカシの手を取り立ち上がる。カカシは満足そうな顔をしていて、それが何を意味するかわかった。
「鈴、取られたんだ」
「ん…あいつら、立派になったよ」
教え子の成長は嬉しいらしい。嬉しそうに目を細めるカカシを見て、なんとなくナナも嬉しくなってふっと笑った。
「あれ、それでナルトとサクラは?」
「あいつらは二人で楽しんでるよ」
「…ふーん」
「ふーんって、そこでオレ達はいい雰囲気になってこないのね」
「は?今更だろ、いつも一緒にいんのに…」
自分で言った言葉にナナの頬が少し赤くなる。その頬をカカシの手が撫でると、ナナはその手を握りしめた。
「なぁ…これから何が起こんのかな」
「…ナナ」
「言いたかねぇけど…嫌な予感がするんだよな」
「そうだね」
ナナは自分からカカシの口を覆う布を下ろすと唇を合わせた。思わぬナナの行動に目を丸くしたカカシの手はわきわきとさせて動揺を露わにしている。それを見てナナは満足したように笑った。
「いい雰囲気になったか?」
「い、いや今のは想定外でよく…もう一回!」
「ヤだよ、そのエロい本でも読んでろ」
「いや、こんな本、ナナに比べたら」
「比べんな!」
穏やかに過ごしている今この時にも、暁は動き出していた。
平和でいられるのも…もう多くの時間は残されていない。すぐに壊されていくことは、もう皆感じ始めていた。
元々ナナは五色の人間なのだから、向こうで親族が見付かったというなら残るという選択肢が出てもおかしくはない。
今ではそんな開き直りのような覚悟もし始めていた。
「…はぁ」
愛しい人間が自分の手から離れるのが、こんなに切ないとは。ソファーに腰かけたまま、カカシは頭を抱えていた。
いくら覚悟しても受け入れているかどうかは別だ。ゆっくりと体をソファーへと倒し目を閉じる。
そうすると、自ずとナナと生活した日常が思い出されて、幸福感と喪失感に入り乱れた。
「……おい」
そんな状態だったからか、耳を掠めた声にすぐ反応出来なかった。
「寝てんの……?」
この家はカカシとナナのものだ。カカシ以外の声がするとしたら、それはナナのものしかない。
とうとう幻聴も聞こえ出したか。
「ただいま」
柔くカカシの髪に触れた指。
ようやく目を開いたカカシは、その指を辿ってそこに立つ人間の姿を目に映した。
「あれ、ナナ……?」
「んだよ、起きてんじゃん」
懐かしいその人は、ずいぶん大人びたように見えた。
それもそうだろう。大人であるカカシと違ってナナはまだ十代だ。
「いつ、帰ったの」
「今だよ、たった今」
ますます綺麗になった。体を起き上がらせ、無意識にカカシはナナの顔を見つめていた。
心から浮かれているのに、格好悪いところを見せたくなくて、冷静を装う。
「……五色は、どうだったの」
「俺、ちゃんと愛されてたんだって、叔父さんが、両親のこと話してくれた」
父の弟だというその人は、生きていてくれて良かったと泣いて喜んでくれた。
それでナナの中に生まれたのが、五色を復興させたいという感情だった。
五色は少しずつ変わっている。ナナが木ノ葉にいるように、五色が他の忍の里で活躍し出すのも、遠い未来ではないかもしれない。
「良かったの?五色にいなくて」
「まあ……そろそろ、あんたにも会いたかったし」
「嬉しいこと言ってくれるね」
「それで。俺、あんたのこと結構好きかもって気付いた」
失ってから気付く、とはよく言ったもの。カカシと離れてみて、自分にとってカカシがどんな存在だったのか気付かされた。
それが、好きということなのかはよくわからないけれど、ナナはそういうことでいい気がしていた。
「カカシ……?」
曖昧に言ったとはいえ、せっかく口に出した思いに対しカカシが一向に何も言わないことに不安を覚え、ナナはゆっくりカカシの顔を見た。
「何黙ってんだよ」
「や、ちょっと。今見ないで」
すっと顔を逸らされる。見ないでも何も、カカシの顔で確認出来る面積の少なさと言ったら目元くらいなものなのに。
「おい、俺の話聞いてたよな」
「聞いてた聞いてた。だからこんなんなってんでしょうよ」
「こんなんってどんなだよ」
自信の顔を隠すカカシのその手を掴んで離そうとすると、逆に引き寄せられて、ナナはすっぽりカカシの腕に収まった。
「愛してるよ、ナナ」
「な……」
「オレなんか、ずっとナナのこと好きなんだから」
「二年経ってんだけど。ずっと俺のこと好きだったわけ?」
「当然」
気付くの遅いよ、と耳元で囁くと、うっせと呟きながらもナナは背中に腕を回した。
「重たいモノ置いてこれたんだな」
「そうだな、背中軽くなった感じ。俺、たぶん強くなれた気がする」
「わかるよ。ナナ、強くなったな」
ぽんぽんと頭に手をやると、ナナは嬉しそうに擦り寄ってくる。強くなったのは確かだが、甘え方もしっかり身につけてきたらしい。
自分と違うナナの匂いがする。ナナが、帰ってきた。
・・・
カカシの家を後にして火影のもとに向かう途中、ナナはあることに気付いた。火影岩が増えている。一番端に追加されているのは恐らく女性の顔。
「そっか、あのじいさん死んだんだっけ」
結構慕われている良い人だったイメージがあった分、少し胸が痛んだ。ナルトやサクラ、サスケはどんな気持ちだったのだろう。
カカシは全く変化なかったが、ナルトたち三人はまだ幼かったから、当然背も高くなって大人に近づいているのだろう。
そんなことを考え目的地に着くと、前から誰かやって来るのが見えた。
「あれ、サクラ?」
「え、あ……! ナナさん! いつ帰って来たんですか?」
ナナに気付いたサクラはぱっと顏を明るくさせた。
ナナの胸あたりにあったサクラの顔はナナの顔の高さに届いていて、その成長は明らかだった。髪も短くしたようで、さっぱりした雰囲気になっている。
「大きくなったな」
「ナナさんは、なんだか丸くなったみたい。あ、太ったって意味じゃないですよ! 雰囲気が落ちついたなって」
サクラは今の火影を師にしているらしく、ここにいたのは火影の所に行っていたからだと言った。
「あ、サクラ」
「なんですか?」
「ナルトとサスケはどうしてる?」
サクラは口ごもった。その理由がわからず首を傾げたナナを見てサクラは苦笑した。
「ナルトは今修業に出ていてで、私も全然会ってないんです」
「サスケは?」
「サスケ君は今、木ノ葉には……」
何かあったのだ。サクラの反応でそれはわかったが、サクラから聞くのは酷なようで、ナナは後でカカシに聞くことにした。
火影は思っていたより、若く普通っぽい女性だった。ナナのことも知っていたようで、よく帰ったなと言う言葉が少し嬉しかった。
帰ってきた。木ノ葉に帰ってきたのだと実感させられた。
「お前の所属していた第七班だが、今はバラバラになっている。暫く任務に出たければ即興の班になると思っておけ」
「ばらばら、ですか」
「事情はカカシに聞くといい、私よりよく知っているからな」
最初からそのつもりだったナナは素直に頷いた。
「あぁ、それと。今は平和だが、いつ何が起こるかわからないということを覚えておけ」
行っていいぞと言われ、ナナは何も聞かずにその場を去った。
部屋を出ると、カカシがそこに立っていた。
「待ってるのもなんだしね、それに話さなきゃいけないこともある」
「サスケのことか?」
「あぁ、知ってたの」
「サクラに会って、何かあるんだろうなって」
わざわざカカシが出て来るほどだから、嫌な話なのだろう。ため息を吐いてから、ナナはカカシの目を見た。
「教えろよ、何があったのか」
カカシの話はこうだった。
ナナが木ノ葉を去った後、木ノ葉に暁という集団に所属しているサスケの兄が現れた。うちは一族はそのサスケの兄、イタチによって滅ぼされていて、サスケの復讐の相手だった。
暁の狙いはナルト。それを知ったサスケはナルトを追ったが、イタチに返り討ちにあってしまう。
それをきっかけにサスケは再び復讐に目覚め、力を求めた。
そこに大蛇丸の誘惑。力が欲しければ私を求めろ、という大蛇丸に、サスケはのってしまった。
そしてサスケは木ノ葉を捨てた。
同時にナルトは、これからも狙われ続けるだろうということで、伝説の三忍の一人、自来也に連れられ修業中である。
木ノ葉の三忍はその自来也と今の火影である綱手と大蛇丸。
「大蛇丸は、サスケを取り込んで自分のものにするつもりだ。それが……恐らく大蛇丸の今の体が限界になる、一年後」
「……よくわかんねぇけど。それ、ナルトは?」
「勿論知ってる。だから、ナルトもそろそろ帰って来るんじゃないかな」
伝説の三忍にナルトもサクラも、サスケもそれぞれ師を持ったという状況に、何か運命的なものを感じているのはナナだけではないだろう。
「ていうか、なんでナルトは狙われてんの」
「ナルトは、ちょっと特別でね」
なんとなく理解した。綱手が今は平和って言ったのは、その暁という奴らと大蛇丸がいつ動き出すかわからない状態が今、というわけだ。
そして暁が動かないのは、ナルトにその強い師がついているからか。ということは、ナルトが帰ってきたらそこからは何かが起こる可能性が高い。
「今の木ノ葉は嵐の前の静けさ……」
「そういうこと。ナナは物分りが良くて助かるよ」
物分りもいいし、大蛇丸という言葉に過剰に反応しなくなったのは大きな成長だと言えた。見た目だけでなく、精神的にも立派になった。
カカシはふっと笑うとナナに口づけた。
「っ、何してんだよ」
「無性に触れたくなった」
「あんた、空気読めよ。そういう気分じゃねぇっつの」
「でも、帰ってきたら最後までやらせてくれるって言ったし」
手でぐいっとカカシの顔を押し返したナナは顏を赤くしてシャワーを浴びてからにしてくれと小さく声を発した。
カカシの家に戻ると、ナナはシャワー室に入った。
つまり、シャワーを浴びたら触らせてくれるということだろう。
しかし、待つことなんて今のカカシには出来るはずもなく、カカシもそのあとを追った。
「は!? あんた入ってくんなよ」
その言葉を遮るようにカカシはナナの唇を奪う。ナナは本当に嫌がっているようで、カカシの髪の毛を掴んで引っ張ったが、それは更にカカシをあおるだけだった。
「本当に、俺はそんな気分じゃねって……ッん」
「ナナ、綺麗になった」
「知らな……っあ、やめろって」
前よりも短くなった髪は濡れて顔に張り付いている。服を脱いだナナの体は前よりも筋肉がついてたくましくなったように見える。
カカシは手をナナの下半身に伸ばした。
「っ……」
ナナが息を呑んだのがわかった。
でも、抵抗しない。カカシはナナの肌に触れながら、後ろに指を這わせた。
「痛かったら言ってね」
「ん、平気だけど……気、早すぎだろ」
カカシに背中を向けていたナナの腰を引いて、壁に手を付かせると更に指を増やして広げる。
早く入れたいという思いが勝って、少し乱暴になってしまうのを止められない。
「ナナ……いい?」
「いい、けどっ、あんたの、顔っ、見せて……」
後ろからだと嫌な事を思い出す。それを察すると、カカシはシャワー室の床に座り、その上にナナを座らせた。
跨ぐように座ったナナの足は自然に広げられ、ナナは恥ずかしそうに顔をそらす。
しかしすぐに顔をカカシの方に戻した。
「あんた、何自然にマスク取ってんだよ!?」
「え、顔見せてって言ったでしょ。キスも、したいし」
一緒に生活していたとは言え、カカシは上手いこと顔を隠していて、素顔を間近で見るのは初めてだった。
顔なんて別に気にしていなかったが、不意打ちすぎて胸が高鳴る。その素顔には、なんで顔隠してるんだと思わざるを得ない。
ナナがそんなことを考えている間にも、カカシはゆっくり後穴を指で広げながら、体をそこに埋めていった。
「ぁ、……っ」
「大丈夫か、ナナ」
カカシはナナのものを片手で刺激しながら、片手で腰を持つとぐっと引き寄せた。奥まで入ると、カカシも大きく息を吐く。
「あ、ああ……っ奥、苦し、」
「動かない方が、いい?」
「別に、い、っいいよ……」
カカシは両手でナナの腰を支えると、もっと奥までいくように腰を動かした。
ナナの息遣いが頭をおかしくしていく。気持ち良さで全身が痺れる。
「あっ、あ、カカシ、っもう、」
カカシの首に腕を回してしがみ付くナナの体が強張った。カカシの耳元で甘い声が響く。
その日から、再びカカシとナナの生活が始まった。
・・・
朝からにやにやしているカカシが気になって声をかけると、ナルトが帰って来たのだと嬉しそうに語った。
「オレは出迎えに行くけど」
「あぁ…俺は後から行くよ」
カカシと共にナルトを待つのはなんとなく恥ずかしい気がして、ナナはカカシと時間をずらして家を出ることにした。
ナナが木ノ葉に戻ってから丁度3ヶ月ほど経った頃だった。
少し見つけるのに時間がかかったが、ナルトの声の大きさから場所の特定はしやすかった。
遠目から見ても大きくなったナルトに無意識に頬が緩む。ナルトの周りには既にカカシとサクラと火影の綱手、ともう一人知らない人、ナルトの修業を見ていた自来也がいるのが見える。
近寄ろうか少し迷っていたナナの存在にカカシが先に気付いた。
「ナナ、そんなところで何してるの」
「え!?ナナ!?どこだってばよ!」
キョロキョロと周りを探し始めるナルトを見て、さすがに木の影から出て行った。
「久しぶりだな、ナルト」
「おぉ!…あれ、ナナってば更にでかくなった…?」
ナルトは挨拶もせずに自分の背とナナのとを比べて横にした手をスライドさせた。
実際のところ、ナルトは最後に会ったときより10㎝以上伸びているに対し、ナナは2㎝程度しか変わっていない。しかしナルトから見るとまだナナに追いついていないことが悔しかったのだろう。
「それ、お前が言うか?相当でかくなったじゃねぇか」
「うー…追いついたと思ったのに」
「ナルト、年はいくつになったんだ?」
「16…って、今ガキ扱いしたろ!オレってば、強くなったんだからな!」
はいはい、と頭を撫でると更にナルトは顔を赤くして怒りだした。ガキ扱いしたつもりはなかったが、やはりまだまだガキだ。
ナナの視線はナルトに手を置いたまま自来也に移る。
「自来也様、ですよね。お初にお目にかかります」
「そういうお前さんは…」
「五色ナナと言います」
「なるほど…五色か…。惜しいのぉ、女だったら」
「おい、エロ仙人!変なこと考えんじゃねーってばよ!」
サスケがいなくなったというのに、以前の明るい性格を残したままのナルトにナナは安心していた。自分がナルトくらいの時はまだ荒れていたということもあり、心配していたが…やはり、育った環境が良いらしい。
「ナナさん、お兄さんみたいな顏してる」
「え?」
「今ナルトのこと見て、すごく優しそうな顏してましたよ」
「…は、サクラはよく見てるな」
「え、ちょ、…なんか二人仲良くなってない?サクラちゃん、もしかしてナナとそういう…」
「ナナさんに失礼でしょ!バカナルト!」
二人の仲の良さも相変わらずのようで、サスケのことはあるが安心したナナの視界にさっきから黙りっぱなしのカカシが入る。
「カカシ…?何してんだ?」
「んー…」
返事もおぼつかない様子でカカシが夢中になっているのは。愛読書イチャイチャシリーズの新作、『イチャイチャタクティクス』。
「…は?」
「え、ナナ!?これは、その」
「…へぇ、まだそんなの読んでたんだカカシって…はぁ、なるほどなぁ」
そんなの、というナナの言葉に作者である自来也の肩がぴくっと揺れた。
「ナナ、それってば、エロ仙人が書いたんだぜ」
「え…」
ナナの軽蔑の目は自来也に向かっていた。
「なるほど…カカシを変態に育てあげたのは、貴方ってことですね」
「いやいやぁ…それほどでもないのぉ」
「褒めてねーってばよ」
なんだかんだ盛り上がっているナナ達を見ていた綱手は急に手をぱん、と叩いた。それに皆黙って綱手の方に視線を送る。しかし、口を開いたのはカカシだった。
「どれだけ成長したのか見てやる。ルールは初めて会った時と同じね」
イチャイチャタクティクスを仕舞ったカカシの手には、ちりんと音をたてる昔と同じ鈴。それだけ見ればナナにもナルトにも当然サクラにもカカシが何をするつもりなのかわかった。
「ナナは悪いけど」
「はいはい、見守ってますよ」
ナナはもう上忍レベルと認められている。さすがにカカシも三対一のナナを相手にするというのには無理があるとわかっていた。
それに、ナナとは個人的に何度も手合せして実力はほぼ理解している。今更確認もないだろう。
ナナはそのカカシの考えを汲み、彼らから距離を取ってナルト達の成長を見ていることにしたのだった。
「五色ナナ、少しいいか」
声をかけてきたのは綱手だった。
「なんですか?」
「今後の第七班のことだ」
今まではばらばらだったために、カカシ、ナルト、サクラと行動することは無くなっていたが、カカシが二人の成長を確認しているように、これからは再び第七班で動くことが増えるということだろう。予想していたナナは素直に頷いて綱手の次の言葉を待った。
「何か有ったとき、当然お前達は第七班として行動することになる」
「はい」
「お前を一番理解しているのはカカシだからな、上手くまとめてくれるだろうが…お前は五色だ」
「…と、いうと?」
「五色として動かされることもあると考えておけ」
五色の元々の能力は生活の補助。水を出し、熱を生み、風を吹かせ、地を形成し、電気を作る。今後の戦いでは、そういうことが必要になる可能性があるということだ。
「…そんなに、状況は悪いのですか」
「悪くなる可能性が高い。木ノ葉だけでなく、他の忍の里に要求されることもあるだろうからな、いつでも動けるようにしていて欲しい」
「…わかりました」
今のところ五色で積極的に動くのはナナしかいない。こういう日が来るのも、わかっていたことだ。ようやくか、と思うくらい。
ちら、とカカシ達が戦っている方に目を向ける。ナルトもサクラも強くなったのは明らかで、地面は盛り上がっているし、ぶつかり合う音も聞こえる。
これは、すぐには終わらないな…。ナナはそこにあった木の幹に背中を預けて腰を下ろした。
ナルトも戻ってきて、ナルトを狙う暁が動き出すのも時間の問題…その中にはサスケの復讐の相手イタチがいて、恐らくサスケも動き出す…
今後のことを考えようとしても、全く見えてこなかった。
・・・
「ナナ」
とん、と肩を叩かれて目を開けるとカカシの顔が目の前にあった。
「…終わったのか?」
「終わったよ、帰っていても良かったのに」
「いや…悪い、全然見てなかった」
カカシの手を取り立ち上がる。カカシは満足そうな顔をしていて、それが何を意味するかわかった。
「鈴、取られたんだ」
「ん…あいつら、立派になったよ」
教え子の成長は嬉しいらしい。嬉しそうに目を細めるカカシを見て、なんとなくナナも嬉しくなってふっと笑った。
「あれ、それでナルトとサクラは?」
「あいつらは二人で楽しんでるよ」
「…ふーん」
「ふーんって、そこでオレ達はいい雰囲気になってこないのね」
「は?今更だろ、いつも一緒にいんのに…」
自分で言った言葉にナナの頬が少し赤くなる。その頬をカカシの手が撫でると、ナナはその手を握りしめた。
「なぁ…これから何が起こんのかな」
「…ナナ」
「言いたかねぇけど…嫌な予感がするんだよな」
「そうだね」
ナナは自分からカカシの口を覆う布を下ろすと唇を合わせた。思わぬナナの行動に目を丸くしたカカシの手はわきわきとさせて動揺を露わにしている。それを見てナナは満足したように笑った。
「いい雰囲気になったか?」
「い、いや今のは想定外でよく…もう一回!」
「ヤだよ、そのエロい本でも読んでろ」
「いや、こんな本、ナナに比べたら」
「比べんな!」
穏やかに過ごしている今この時にも、暁は動き出していた。
平和でいられるのも…もう多くの時間は残されていない。すぐに壊されていくことは、もう皆感じ始めていた。