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カカシ夢(2011.04~2016.09)
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中忍試験の本選。最終試験の日、サスケは修業の成果を発揮していた。
手から激しいチャクラを放つ、その名を千鳥という。カカシの術、雷切のもう一つの名だ。
対戦相手である少年、我愛羅。砂の殻にこもるようにして攻撃を防ぐ彼に対し、サスケはその千鳥で立ち向かう。
「サスケの千鳥が上回ったな」
「え?」
「よく見ろ、砂の壁が割れてる」
見た目の通り千鳥の威力は強く、絶対防御を突き破る。
ナナの隣でそれを見守るナルトも、サスケの新技を目の当たりにして肩を震わせた。圧倒的な力、千鳥という術。
ナルトにはない、必殺技と呼べるに相応しいものだった。
しかしその瞬間、異様なチャクラが漏れ出していた。
「なんだ、アレは…」
我愛羅を包む砂の中から出てきた不気味な腕。人間のものではない、化け物の腕が砂の殻から突き出ている。
「ナナ!」
「カカシ?」
突然、カカシがナナを抱き寄せた。
何が起こったかわからないナナはされるがままカカシの腕に倒れ込む。
「攻撃を受けてる!」
驚いて顔を上げると、周りの人間がほとんど眠りについていた。
この会場全体にかけられた幻術のせいだ。ナナが寝ずに済んでいるのは、カカシが術の解除を行ったからだった。
「攻撃? どうして……」
「わからない……が、恐らく砂が仕組んでいたんだろ」
「砂……?」
既に敵と思われる忍者たちが攻撃を開始しているらしく、周囲からはクナイのぶつかる音が聞こえている。
「この戦いはどうなる?」
「もう中止だろう。それに、我愛羅は他の砂の忍に連れられていなくなった」
もはやカカシと話している余裕すらない。
その間も敵の攻撃は止まず、ナナは刀を抜いて応戦するしかなくなっていた。
「ちっ……うぜぇ! カカシ、技使っていいか?」
「え?」
カカシの返事など待たず、ナナはチャクラを刀へと流し込んだ。
ナナの目と刀が緑色に変わる。刀の一振りが向かってくる敵を舞い上げ切り裂いた。
「カカシ! 俺は何をしたらいい」
「村の外へ、我愛羅を追ったナルトを追えるか」
「あぁ」
ナナは刀を強く握るとぱっと飛び出して行った。
・・・
ナルト達がいなくなってからそれほど時間は経っていない。
ナナは速さには自信があったし、すぐ追いつけると思ってスピードをあげた。
しかし、そこに誰かの人影があることに気付き足を止めざるを得なくなった。
道を塞ぐかのように動かず立っている影。敵か、味方か、判断できずに目を凝らして唾をのむ。
「やぁ、ようやく会えたね」
ナナは何をするつもりなのか分からないその男の行動を待ってしまった。
「会いたかったよ、五色ナナくん」
「……誰だ」
近付いて来た男の手がほんの少しナナの体に触れる。
それを叩き落とそうとしたナナは驚いて目を見開いた。
「……!?」
ナナの膝がガクンと落ちる。刀を握ろうとした手にも力が入らなかった。
「っな、んだこれ」
「逃げないでくれて有難う。ま、逃げても捕まえたけどね」
「どういうことだ、これ……」
動くのは指先と首程度。思い通りに機能しない体にナナが歯を食いしばったとき、男はナナに口付けていた。
「っん!?」
さらに男が指でナナの首を突くと、途端に息が出来なくなった。
「は、ぁッ、何……」
「これはね、医療忍術の一種なんだよ。どう? 動かなくて苦しいだろう」
そう言いながら、男はナナの服に手をかけた。抵抗出来ないナナのズボンがいとも容易く下ろされる。
「て、め……!」
「僕は薬師カブト。さて、大蛇丸様のお気に入りの味、試させてもらうよ」
無理やり体を後ろに向かされる。
「ぐ、ぁ、ああ……!」
体に突き立てられた痛みにナナの体が震える。
痛みだけじゃない、悔しさ、怒り、いろんなものの混ざった涙は顔をつたって地面に跡を残した。
「初めてじゃないね、もしかして、はたけカカシともうやった?」
「す、るか……てめ、らとっ、一緒に、すん、なっ」
「いいね、壊したくなるよ……」
「ぐああっ……!」
悲鳴に近いその声を聞いたものは一人もいなかった。
近くで起こっている戦いの外側だ、人の声など届くはずがない。
「はっ君もバカだよねぇ。狙われているのに、一人きりになるなんてさ」
「……」
「もう声を出す気力もないか。脆いね、本当に」
倒れたナナをカカシが発見したのは、もう全てが終わった頃。
砂の襲撃は大蛇丸が仕組んだことで、火影は大蛇丸との戦いで亡くなった。その全てが明らかになった後の事だった。
・・・
「カカシさん!早く来てください!」
次の日、カカシが病院に入院させたナナの見舞いに出向くと、切羽詰まった様子で看護師の女性が駆け寄ってきた。
「どうしたんですか!?」
「こっちへ、とにかく来てください!」
病室へ案内され、眼前に映ったのは、看護師何人かがナナをベッドに押さえつけている光景だった。
「放せよ! オレに触るなッ!」
「カカシさん、彼ずっとこの調子で暴れるんです! もう、我々には…っ、落ち着いて!」
「このままだと、落ち着くまで彼を眠らせるしか……!」
カカシはゆっくりナナに近づくと、看護師たちに離れるよう声をかけた。
看護師は任せます、と言ってナナから手を離す。するとナナは目の前にいたカカシの首に手をかけた。
「っ、ナナ」
目を血走らせているナナの手はカカシの首に食い込む。
看護師の悲鳴が聞こえたが、気にすることなくカカシはナナの体を抱きしめた。
「っ!? か、カカシ……?」
ナナの手から力が緩んで、さすがのカカシも咳き込んでしまった。
ナナは慌てたようにカカシを突き飛ばし、ベッドに顔を埋めた。
「……今は、俺に構わないでくれ……今は、一人にしてくれ……」
小さい子供のように、ナナは首を振り続ける。
カカシは看護師たちに席を外すように頼み、そこに残った。
どれだけ沈黙が続いただろうか。呼吸が落ち着いてきたナナは小さく声を漏らした。
「なぁ、あんただって、俺の姿見て本当は欲情したんじゃねぇのか?」
「何?」
「本当は、俺のこと抱きたいんだろ? あんただって奴らと同じ……」
ぱしん、という乾いた音が病室に響く。
カカシに平手打ちされた。その一瞬の出来事にナナは茫然として動けなくなった。ひりひりと痛む頬のことなんてどうでもよくて、カカシを見つめ返す。
「オレを見くびるなよ、ナナ」
「……っ」
「……また来るよ」
病室から出て行くカカシの背中を、ナナは見ることが出来なかった。
自分の情けなさに、頭が上がらない。カカシがそんな奴だなんて、本当は全く思っていない、思えるはずもなかったのに。
・・・
ナナは一人、窓の外を見てため息をついた。
手には文が握られている。敬愛する先生からの手紙なのに、錘が一つ増えたような感覚だった。
「ナナ、入っていい?」
「……あぁ」
もう来てくれないかもしれないと思っていたカカシは普通にやってきた。
カカシは入った瞬間やつれた顔をしているナナに驚いたが、その理由はなんとなくわかった。
「先生から、文が届いたって?」
ナナは無言でその文をカカシの方に差し出した。
自分一人で抱えるのが嫌だったのもあるが、カカシには見てもらうべきだと思ったのだ。
君が元気にやっていることを信じて、一つ報告したい。
君の父親の兄弟だという人物が今五色の里に来ている。
君の存在を知ったのは最近だそうで、君に会いたがっている。
今は君の関係者として捕えられているが、どうするかは君次第だ。
私は、君を信じている。
内容はつまり、五色に戻れと、そういうことだった。
「ナナ、その……初めは親戚に世話してもらったって」
「それは、母ので、父側の親戚は初めてなんだ」
複雑そうなナナの顔は、出来れば会いたくないと言いたげだ。
それもそうだろう、今までの親戚たちは結局ナナを捨てたのだから。
しかしこうやって悩むのは、ナナにとって一番の理解者である先生が来てほしいと言っているからだ。
「俺、これを期に……一回戻った方がいいと思ってる」
重たそうに言葉を紡ぐナナを、カカシは抱きしめてやりたいと思っていた。その衝動を抑えるために視線を窓の外に移すと、窓に映ったナナの口が動いた。
「カカシ、俺の背中、押してくれるか?」
「ナナ、大丈夫だ。ナナは、オレの……」
「……」
「オレの自慢の、第七班の一員だよ」
ナナは優しく微笑んでいた。
その後、ナナは無事退院した。
早くも明日には五色に帰ることになっている。そうしたら、もう二度と木ノ葉に戻ってこないかもしれない。どんなにナナが嫌いな場所だとしても、故郷であることには違いないのだ。
「うん、良かったな、きっかけが出来て」
「逃げたって仕方ないのは、わかってたからな」
本当はもう五色なんて忘れたかった。それくらい、嫌なことが多すぎた。
でも、両親のことを知る人がいるなら、それは会うべきなのだ。
「ナナ、最後かもしれないから言ってもいいか?」
「最後って、大げさだな。何?」
カカシはナナに近づくと、その手を握りしめた。体温の低い手はぴく、と震えた。
「本当は、抱き締めたいと思ってるよ。ナナの全てを手に入れたいと、ずっと思ってる」
何か言おうとして、ナナが押し黙った。一度顔を背けて、それからゆっくりカカシの方を向く。
「じゃあ、俺に気持ちいいセックス教えてよ」
「え、」
「本当は、気持ちいいものなんだろ? あんたが……出来るならだけどな」
ナナの顔は通常より赤くなっていて、目はカカシをいつも通り睨んでいる。握っていた冷たい手は、熱く、汗ばんでいる。
「い、いいの!?」
「う、せぇ。いいって言ってんだよ」
ナナは自分からベッドに腰掛けると、上着を脱いだ。
服を脱がすときも、素肌に触れたときも、ナナは恐怖に体を震わせた。
その度に、カカシは大丈夫、と声をかけて優しく背中を撫でた。
触れられるほど、体は火照って、ナナの声も甘くなっていく。
「まだ怖い?」
「少し。でも、あんたが触ってるって思えば、まだ大丈夫」
その言葉に安心して、カカシはナナに胸に唇を寄せた。それから少しずつキスする場所を下の方にずらして、腹筋のほどよくついたお腹にキスを落としながら、ズボンに手をかけた。
「ナナ、ここ…舐めていい?」
「……っ歯、立てたら殺す」
「ん、気を付けるよ」
ナナの初めて見る部分。というよりは他人の下半身など間近で見ることなどない。
しかし、ナナのものだから嫌な気はしない。
「っぁ…」
初めて、ナナの顔が変わった。
「気持ち良かった?」
「ん、悪くはない……」
強がるナナの返答にカカシは微笑むと、更に咥え込んだ。
根元まで咥えて、吸って、圧迫する。それに合わせてナナの息遣いが荒くなり始めた。
前のめりになって、カカシの頭にしがみ付く。そうでもしないと快感でどうにかなってしまいそうだった。
「あ、あっ……カカシ、もう……」
ナナの手は更にカカシの髪の毛を掴んだ。足の先まで快感で痺れて、感覚がおかしくなっていく。
「気持ち良かったか?」
まだ整わない息を肩でしながら、ナナは小さく頷いた。
明らかに変な声を出したことを思い出して、ナナはやる前より恥ずかしそうにしている。それを見て、カカシは立ち上がるとナナの頭に手をのせた。
「ありがとな、ナナ」
「え? あ、終わりで……いいのか?」
「ん、ナナが帰ってきたら。その時はもっと、触れたいかな」
それとも、今して欲しい? と明らかに狙ったような口調で言うカカシに、ナナは当然嫌な顔をして睨みつけた。
「調子のんな」
あとは、寝て起きれば翌日になる。
ナナとの当分の分かれは近づいていた。それでも、カカシにもう不安はなかった。
・・・
木ノ葉の里に来たときに通った門を今度は内側から見ていることに少し不思議に感じる。いつの間に、こんなにここに愛着がわいたのだろう。
じ、と下から眺めていると、ナナは後ろから名前を呼ばれた気がして振り返った。
「ナナ!」
「ナナさん!どうして言ってくれなかったんですか……!」
ナルトと、サクラだった。二人は相当急いで来たらしく、目の前まで来ると膝に手をついて呼吸を荒くしている。
「なんで」
「カカシ先生に聞いたんだってばよ!」
「ナナさん、暫く五色に帰るって」
あの野郎。そう思ったのも束の間、目の前の二人の顔を見たら何も考えることなど出来なくなった。
「ナナ、ぜってー帰って来いよ!そんで、勝負する!約束!」
「ナナさん、いってらっしゃい!」
二人の笑顔はとても眩しくて、それが自分に向けられているということが堪らなく嬉しかったのだ。
「……あぁ」
なんだか気恥ずかしくて背を向けて歩き出そうとすると、再び後ろから、今度は何か飛んできた。思わずそれを手に取るとそれは。
「……握り飯?」
「五色、遠いんだろ。途中で食え」
ナルトとサクラとは少し離れた後ろの方に、サスケの姿。
少し恥ずかしそうに顔をそらして目だけをこちらに向けているサスケ。ナルトとサクラも驚いたようだった。
「お前ら、ホント、いい奴らだな」
自然に漏れた言葉に、ナルトたち三人は目を丸くして、それからまた満面の笑顔が咲いた。
「さっさと行けってばよ!」
「あぁ、またな」
このまま留まっても離れ難くなるだけだと思い、ナナは振り向かずに歩き出した。
2022/05/05
手から激しいチャクラを放つ、その名を千鳥という。カカシの術、雷切のもう一つの名だ。
対戦相手である少年、我愛羅。砂の殻にこもるようにして攻撃を防ぐ彼に対し、サスケはその千鳥で立ち向かう。
「サスケの千鳥が上回ったな」
「え?」
「よく見ろ、砂の壁が割れてる」
見た目の通り千鳥の威力は強く、絶対防御を突き破る。
ナナの隣でそれを見守るナルトも、サスケの新技を目の当たりにして肩を震わせた。圧倒的な力、千鳥という術。
ナルトにはない、必殺技と呼べるに相応しいものだった。
しかしその瞬間、異様なチャクラが漏れ出していた。
「なんだ、アレは…」
我愛羅を包む砂の中から出てきた不気味な腕。人間のものではない、化け物の腕が砂の殻から突き出ている。
「ナナ!」
「カカシ?」
突然、カカシがナナを抱き寄せた。
何が起こったかわからないナナはされるがままカカシの腕に倒れ込む。
「攻撃を受けてる!」
驚いて顔を上げると、周りの人間がほとんど眠りについていた。
この会場全体にかけられた幻術のせいだ。ナナが寝ずに済んでいるのは、カカシが術の解除を行ったからだった。
「攻撃? どうして……」
「わからない……が、恐らく砂が仕組んでいたんだろ」
「砂……?」
既に敵と思われる忍者たちが攻撃を開始しているらしく、周囲からはクナイのぶつかる音が聞こえている。
「この戦いはどうなる?」
「もう中止だろう。それに、我愛羅は他の砂の忍に連れられていなくなった」
もはやカカシと話している余裕すらない。
その間も敵の攻撃は止まず、ナナは刀を抜いて応戦するしかなくなっていた。
「ちっ……うぜぇ! カカシ、技使っていいか?」
「え?」
カカシの返事など待たず、ナナはチャクラを刀へと流し込んだ。
ナナの目と刀が緑色に変わる。刀の一振りが向かってくる敵を舞い上げ切り裂いた。
「カカシ! 俺は何をしたらいい」
「村の外へ、我愛羅を追ったナルトを追えるか」
「あぁ」
ナナは刀を強く握るとぱっと飛び出して行った。
・・・
ナルト達がいなくなってからそれほど時間は経っていない。
ナナは速さには自信があったし、すぐ追いつけると思ってスピードをあげた。
しかし、そこに誰かの人影があることに気付き足を止めざるを得なくなった。
道を塞ぐかのように動かず立っている影。敵か、味方か、判断できずに目を凝らして唾をのむ。
「やぁ、ようやく会えたね」
ナナは何をするつもりなのか分からないその男の行動を待ってしまった。
「会いたかったよ、五色ナナくん」
「……誰だ」
近付いて来た男の手がほんの少しナナの体に触れる。
それを叩き落とそうとしたナナは驚いて目を見開いた。
「……!?」
ナナの膝がガクンと落ちる。刀を握ろうとした手にも力が入らなかった。
「っな、んだこれ」
「逃げないでくれて有難う。ま、逃げても捕まえたけどね」
「どういうことだ、これ……」
動くのは指先と首程度。思い通りに機能しない体にナナが歯を食いしばったとき、男はナナに口付けていた。
「っん!?」
さらに男が指でナナの首を突くと、途端に息が出来なくなった。
「は、ぁッ、何……」
「これはね、医療忍術の一種なんだよ。どう? 動かなくて苦しいだろう」
そう言いながら、男はナナの服に手をかけた。抵抗出来ないナナのズボンがいとも容易く下ろされる。
「て、め……!」
「僕は薬師カブト。さて、大蛇丸様のお気に入りの味、試させてもらうよ」
無理やり体を後ろに向かされる。
「ぐ、ぁ、ああ……!」
体に突き立てられた痛みにナナの体が震える。
痛みだけじゃない、悔しさ、怒り、いろんなものの混ざった涙は顔をつたって地面に跡を残した。
「初めてじゃないね、もしかして、はたけカカシともうやった?」
「す、るか……てめ、らとっ、一緒に、すん、なっ」
「いいね、壊したくなるよ……」
「ぐああっ……!」
悲鳴に近いその声を聞いたものは一人もいなかった。
近くで起こっている戦いの外側だ、人の声など届くはずがない。
「はっ君もバカだよねぇ。狙われているのに、一人きりになるなんてさ」
「……」
「もう声を出す気力もないか。脆いね、本当に」
倒れたナナをカカシが発見したのは、もう全てが終わった頃。
砂の襲撃は大蛇丸が仕組んだことで、火影は大蛇丸との戦いで亡くなった。その全てが明らかになった後の事だった。
・・・
「カカシさん!早く来てください!」
次の日、カカシが病院に入院させたナナの見舞いに出向くと、切羽詰まった様子で看護師の女性が駆け寄ってきた。
「どうしたんですか!?」
「こっちへ、とにかく来てください!」
病室へ案内され、眼前に映ったのは、看護師何人かがナナをベッドに押さえつけている光景だった。
「放せよ! オレに触るなッ!」
「カカシさん、彼ずっとこの調子で暴れるんです! もう、我々には…っ、落ち着いて!」
「このままだと、落ち着くまで彼を眠らせるしか……!」
カカシはゆっくりナナに近づくと、看護師たちに離れるよう声をかけた。
看護師は任せます、と言ってナナから手を離す。するとナナは目の前にいたカカシの首に手をかけた。
「っ、ナナ」
目を血走らせているナナの手はカカシの首に食い込む。
看護師の悲鳴が聞こえたが、気にすることなくカカシはナナの体を抱きしめた。
「っ!? か、カカシ……?」
ナナの手から力が緩んで、さすがのカカシも咳き込んでしまった。
ナナは慌てたようにカカシを突き飛ばし、ベッドに顔を埋めた。
「……今は、俺に構わないでくれ……今は、一人にしてくれ……」
小さい子供のように、ナナは首を振り続ける。
カカシは看護師たちに席を外すように頼み、そこに残った。
どれだけ沈黙が続いただろうか。呼吸が落ち着いてきたナナは小さく声を漏らした。
「なぁ、あんただって、俺の姿見て本当は欲情したんじゃねぇのか?」
「何?」
「本当は、俺のこと抱きたいんだろ? あんただって奴らと同じ……」
ぱしん、という乾いた音が病室に響く。
カカシに平手打ちされた。その一瞬の出来事にナナは茫然として動けなくなった。ひりひりと痛む頬のことなんてどうでもよくて、カカシを見つめ返す。
「オレを見くびるなよ、ナナ」
「……っ」
「……また来るよ」
病室から出て行くカカシの背中を、ナナは見ることが出来なかった。
自分の情けなさに、頭が上がらない。カカシがそんな奴だなんて、本当は全く思っていない、思えるはずもなかったのに。
・・・
ナナは一人、窓の外を見てため息をついた。
手には文が握られている。敬愛する先生からの手紙なのに、錘が一つ増えたような感覚だった。
「ナナ、入っていい?」
「……あぁ」
もう来てくれないかもしれないと思っていたカカシは普通にやってきた。
カカシは入った瞬間やつれた顔をしているナナに驚いたが、その理由はなんとなくわかった。
「先生から、文が届いたって?」
ナナは無言でその文をカカシの方に差し出した。
自分一人で抱えるのが嫌だったのもあるが、カカシには見てもらうべきだと思ったのだ。
君が元気にやっていることを信じて、一つ報告したい。
君の父親の兄弟だという人物が今五色の里に来ている。
君の存在を知ったのは最近だそうで、君に会いたがっている。
今は君の関係者として捕えられているが、どうするかは君次第だ。
私は、君を信じている。
内容はつまり、五色に戻れと、そういうことだった。
「ナナ、その……初めは親戚に世話してもらったって」
「それは、母ので、父側の親戚は初めてなんだ」
複雑そうなナナの顔は、出来れば会いたくないと言いたげだ。
それもそうだろう、今までの親戚たちは結局ナナを捨てたのだから。
しかしこうやって悩むのは、ナナにとって一番の理解者である先生が来てほしいと言っているからだ。
「俺、これを期に……一回戻った方がいいと思ってる」
重たそうに言葉を紡ぐナナを、カカシは抱きしめてやりたいと思っていた。その衝動を抑えるために視線を窓の外に移すと、窓に映ったナナの口が動いた。
「カカシ、俺の背中、押してくれるか?」
「ナナ、大丈夫だ。ナナは、オレの……」
「……」
「オレの自慢の、第七班の一員だよ」
ナナは優しく微笑んでいた。
その後、ナナは無事退院した。
早くも明日には五色に帰ることになっている。そうしたら、もう二度と木ノ葉に戻ってこないかもしれない。どんなにナナが嫌いな場所だとしても、故郷であることには違いないのだ。
「うん、良かったな、きっかけが出来て」
「逃げたって仕方ないのは、わかってたからな」
本当はもう五色なんて忘れたかった。それくらい、嫌なことが多すぎた。
でも、両親のことを知る人がいるなら、それは会うべきなのだ。
「ナナ、最後かもしれないから言ってもいいか?」
「最後って、大げさだな。何?」
カカシはナナに近づくと、その手を握りしめた。体温の低い手はぴく、と震えた。
「本当は、抱き締めたいと思ってるよ。ナナの全てを手に入れたいと、ずっと思ってる」
何か言おうとして、ナナが押し黙った。一度顔を背けて、それからゆっくりカカシの方を向く。
「じゃあ、俺に気持ちいいセックス教えてよ」
「え、」
「本当は、気持ちいいものなんだろ? あんたが……出来るならだけどな」
ナナの顔は通常より赤くなっていて、目はカカシをいつも通り睨んでいる。握っていた冷たい手は、熱く、汗ばんでいる。
「い、いいの!?」
「う、せぇ。いいって言ってんだよ」
ナナは自分からベッドに腰掛けると、上着を脱いだ。
服を脱がすときも、素肌に触れたときも、ナナは恐怖に体を震わせた。
その度に、カカシは大丈夫、と声をかけて優しく背中を撫でた。
触れられるほど、体は火照って、ナナの声も甘くなっていく。
「まだ怖い?」
「少し。でも、あんたが触ってるって思えば、まだ大丈夫」
その言葉に安心して、カカシはナナに胸に唇を寄せた。それから少しずつキスする場所を下の方にずらして、腹筋のほどよくついたお腹にキスを落としながら、ズボンに手をかけた。
「ナナ、ここ…舐めていい?」
「……っ歯、立てたら殺す」
「ん、気を付けるよ」
ナナの初めて見る部分。というよりは他人の下半身など間近で見ることなどない。
しかし、ナナのものだから嫌な気はしない。
「っぁ…」
初めて、ナナの顔が変わった。
「気持ち良かった?」
「ん、悪くはない……」
強がるナナの返答にカカシは微笑むと、更に咥え込んだ。
根元まで咥えて、吸って、圧迫する。それに合わせてナナの息遣いが荒くなり始めた。
前のめりになって、カカシの頭にしがみ付く。そうでもしないと快感でどうにかなってしまいそうだった。
「あ、あっ……カカシ、もう……」
ナナの手は更にカカシの髪の毛を掴んだ。足の先まで快感で痺れて、感覚がおかしくなっていく。
「気持ち良かったか?」
まだ整わない息を肩でしながら、ナナは小さく頷いた。
明らかに変な声を出したことを思い出して、ナナはやる前より恥ずかしそうにしている。それを見て、カカシは立ち上がるとナナの頭に手をのせた。
「ありがとな、ナナ」
「え? あ、終わりで……いいのか?」
「ん、ナナが帰ってきたら。その時はもっと、触れたいかな」
それとも、今して欲しい? と明らかに狙ったような口調で言うカカシに、ナナは当然嫌な顔をして睨みつけた。
「調子のんな」
あとは、寝て起きれば翌日になる。
ナナとの当分の分かれは近づいていた。それでも、カカシにもう不安はなかった。
・・・
木ノ葉の里に来たときに通った門を今度は内側から見ていることに少し不思議に感じる。いつの間に、こんなにここに愛着がわいたのだろう。
じ、と下から眺めていると、ナナは後ろから名前を呼ばれた気がして振り返った。
「ナナ!」
「ナナさん!どうして言ってくれなかったんですか……!」
ナルトと、サクラだった。二人は相当急いで来たらしく、目の前まで来ると膝に手をついて呼吸を荒くしている。
「なんで」
「カカシ先生に聞いたんだってばよ!」
「ナナさん、暫く五色に帰るって」
あの野郎。そう思ったのも束の間、目の前の二人の顔を見たら何も考えることなど出来なくなった。
「ナナ、ぜってー帰って来いよ!そんで、勝負する!約束!」
「ナナさん、いってらっしゃい!」
二人の笑顔はとても眩しくて、それが自分に向けられているということが堪らなく嬉しかったのだ。
「……あぁ」
なんだか気恥ずかしくて背を向けて歩き出そうとすると、再び後ろから、今度は何か飛んできた。思わずそれを手に取るとそれは。
「……握り飯?」
「五色、遠いんだろ。途中で食え」
ナルトとサクラとは少し離れた後ろの方に、サスケの姿。
少し恥ずかしそうに顔をそらして目だけをこちらに向けているサスケ。ナルトとサクラも驚いたようだった。
「お前ら、ホント、いい奴らだな」
自然に漏れた言葉に、ナルトたち三人は目を丸くして、それからまた満面の笑顔が咲いた。
「さっさと行けってばよ!」
「あぁ、またな」
このまま留まっても離れ難くなるだけだと思い、ナナは振り向かずに歩き出した。
2022/05/05