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カカシ夢(2011.04~2016.09)

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苗字は「五色」固定です。
名前

木ノ葉の里は暁によって壊滅状態。
その復興作業を行っていたナナの元にやってきた雷の国、雲隠れの里の忍二人。年はナルト達と同じか少し上くらい、といったところか。

ナナの首元に当てられたクナイは、敵対心剥き出しの男の手に持たれたモノ。
それに驚くでもなく、心当たりのあったナナはやはりこうなるのかと息を吐き出した。

「…詳しい説明を要求したいんだけど」
「お前を見たってヤツがいる!お前等がオレ達の里を襲ったんだろ!」

雷の国。確かにサスケ達と共に行動している間訪れたところだ。そして、そこにいた八尾をサスケが倒した。
それだけわかっていれば、彼らの目的は自ずと見えてくる。

「確かに、サスケは八尾の捕獲をした…けど」
「言い訳なら短めにしろよ」
「俺、その時記憶が無くなってて…それでサスケに使われてたんだ」

少し視線を下げて、ついでに眉も下げる。
ナナの言う話は真実とは少し違うものの、決して間違っているというわけでもない。

「はぁ?んなこと信じると思ってんのか?」
「俺の言葉が信じられないなら、火影様にでも聞いてくれ。俺が記憶を失くしていた事についても知っているはずだ」
「…」

木ノ葉にはいない、雷の国特有の色の濃い肌。飴のついた棒を咥えながら器用にしゃべる男は、疑いの目をナナに向けるのを止めなかった。

しかし、こんなありがちな、同情を誘う為の作戦はまんまと成功した。

「おいオモイ!放してやれよ!」
「え!?」

ばしっと力づくで、女の方がオモイと呼ばれた男の腕をナナから引き剥がす。
腕どころか体ごとナナから離れた男の代わりにずいっと近付いた女は、ナナの手を握り締めて顔をうっとりとさせた。

「大丈夫だったか…?」
「あ、あぁ」
「おい、カルイ。お前イケメンに媚売るつもりだろ!ずりぃぞそんなの!!」
「うっせー!オモイは黙ってろ!」

他国の忍というだけあって、ナナも争いを避けようと頭を働かせていたが、どうやらそんなことを考える必要もなかったらしい。
なかなか年相応に面白い連中のようだ。

「サスケが襲った八尾はウチらの師匠なんだ。だから、何か情報があれば教えて欲しい」
「…サスケに復讐したいってことか」
「おい、カルイ!そいつの言うこと信じるのか」
「そもそも、こいつは五色の人間だ!傷つけるわけにはいかねーのわかってんだろ!?」

サスケが八尾を倒した、という状況を監視していた雲隠れの忍は、ナナが五色であるということも把握していたのだろう。
カルイもオモイも、ナナが五色であることを端からわかっていたように見える。

「なぁ、何か知らないか?」
「…俺は、サスケが暁で…暁が尾獣を集めている、ということしか」
「暁が、尾獣を…!?だからか…」

二人は顔を見合わせて、納得せざる得ない事実に唇を噛んだ。
サスケが暁、という情報は既に漏れている。暁の装束を着ているところを目撃されているからだろう。


悪い奴等ではないのは確かだが、この二人はサスケへの復讐を目論んでいる。
誤魔化すことには成功したものの、嫌な予感は無くならなかった。特にナルトやサクラのことを思うと、コイツらを野放しにしておくのは危なすぎる。

「…復讐なんて、やめた方がいい」

我ながら、生臭いことを言っている。
しかし、この二人の考えを変えさせる術など無いのだから、自分の思う通りに言うしかなかった。

「なんだよ、文句でもあるのか?」
「いや…個人的な意見だ。俺は好かない」
「悪いけど、抜け忍うちはサスケの抹殺許可は火影から下りてる。オレ達はサスケに復讐するからな」
「え…!?」

抹殺許可。その単語に、ナナは目を見開いて驚愕した。何故、今更になってそんなことを。
他国にまで影響を及ぼしてしまったからか、暁の一員となってしまったからか。
それにしても、火影がそんな許可下ろすなんて考え難い。

「カルイ、他あたろう」
「あ!その前に、名前、あんたの名前教えろ!」
「え、あ…五色ナナ

カルイは手をぶんぶんと振りながら、オモイはこちらを睨み付けながら、ナナに背を向けて行ってしまった。

呼び止める為の言葉が見当たらない。どんどん離れていく背中に、ナナは何度か手を彷徨わせることしか出来なかった。





再び静かな木々の音しか聞こえなくなる。
止めることが出来なかったとはいえ、もう少し足止めするべきだったかとナナは後悔していた。
あの二人がもしナルトやサクラと接触したら、ただでは済まない気がする。
二人のサスケへの思いは、ただ“友情”で表せるものではない。


「…くそ」

ぐしゃっと髪を掴んで、ナナはベンチに腰かけた。
途端に疲れがどっと戻ってくる。

サスケは、水月は香燐は重吾は、あまりにも大きなものに手を出してしまった。

「俺は…」

暁は憎い。一度でもカカシを殺めた暁は憎くて仕方ないのに、彼等の無事を祈っている。
いつか、カカシを殺めるかもしれない彼等の無事を。

関わってしまった人間の死は、もう嫌だった。



「あ!こんなとこに居やがった!」
「…?」

上から聞こえてきた声に、思わずぱっと顔を上げる。
本当に上から来たのか、とんっとナナの前に降りてきたのは赤丸に跨るキバだった。

「おいナナ、お前まだ聞いてねーんだろ?」
「何を」
「綱手様が火影を解任されたって話だよ!」
「はぁ?」

キバは相当焦っているのか、いつも以上に早口に話した。

綱手はペインによる木ノ葉潰しからずっと目を覚ましていない。いつまでも火影不在の状態でいることも出来ず、次の火影を立てることとなった。
新たな火影の名はダンゾウ。その男が雲隠れの要請、「サスケの始末」を許可してしまったのだという。

「そのダンゾウってのが…オレはよく知んねーんだけど、裏の人間でヤバい奴らしい」
「…そんな、こんな時期に」
「さっきナルト達にも会って話したんだけどよ、カカシ先生もダンゾウの名前を聞いて嫌な予感がするって言ってたぜ」

いつも明るい印象の強いキバが、声を押さえて真面目な表情で話す。
そうなってしまうのも当然だろう。火影が信じられなくなる、なんて状況は今の木ノ葉には痛すぎる。

「そうだ、ナルト…ナルト達はどこに?」
「えっと…向こう、こっからそう遠くないとこにいたけど…乗せてやろーか?」
「いや、いい。ありがとう、キバ」
「お、おお!」

ナナは疲れていたことも忘れて、すぐさまキバの指さした方へと走り出していた。

赤丸の背を借りなかったのは、キバを巻き込みたくなかったからだ。
少なくとも、ナナよりは昔からサスケを知っていて、ナルトの友人であるのだ。余計な心配はかけたくなかった。


木の上を渡りながら、ナナはナルト達の姿を探していた。
キバからもらった曖昧な情報だけでこの広い森の中探すのは、やはり困難で。焦りから冷や汗が頬に伝う。

「あ…!」

そんな時に視界に入ったのは、ナルトでもサクラでもなく、彼等と共にいたらしいカカシの姿。

ナナはその大きな背中に安心して、ぱっと木から降りた。

「カカシ!」
「あれ、ナナ。こんな所でどうしたの」

まさかナナが木の上に居たとは思いもしなかったらしいカカシは、唯一見えている右目をぱちぱちと数回瞬かせた。

「さっき…雲隠れから来た忍に会った。ナルトとサクラが接触したらマズイかもしんねぇ」
「…サスケのことを言われた?」
「あぁ…。サスケに対して恨みを持ってる」
「…」

カカシは暫く黙って、何を思ったのかナナの頭に手を乗せた。

「何?」
「ありがとな、ナナ
「はぁ?いいからナルト達を…」

頭に乗せた手がするっと降りて、肩に回った。その手に力が込められると、すとんとナナの体はカカシの体に寄りかかって。そのまま抱き込められた。

「おいカカシ…」
「サスケは抜け忍だ。本来なら抹殺されるのが普通…。この手のことは、もう避けられないんだよ」
「だから…諦めろっていうのか、あんたが」
「現実を受け止めなければいけない時が来たってことだ。ナルトも、サクラも」
「…残酷だ」

大人が、それから現実が。
カカシなら、どうにかしてくれるのではないか、なんて淡い期待は打ち砕かれて、ナナはカカシの体を突き飛ばしていた。

「あんたの言ってることは正しいだろうけど、そんな簡単に割り切れるもんじゃねーよ」
「そうだな…」
「…カカシ?」

ナナの手に押されて後ろによろけたカカシは、視線を下げたまま動かなくなった。

カカシの顔はほとんど見えない。
今、どんな顔をしているのかも全くナナの位置から把握出来ない。

「…カカシ、無理してんだろ」
「そう見える?」
「見えない。だからこっち向けよ」
「はは…そうだよ、割り切れてないのはオレも同じ」

カカシの眉は八の字に下がって、マスクで隠れていたってどんな顔をしているのか想像出来た。

「俺、あんたのそういうところ、好きだよ」
「…最後のとこだけもう一回言ってくれる?」
「ふざけんな」

やっぱりカカシは、思っていた通りの奴だった。
カカシを見つけた時と同じ安心感が戻ってくる。ナナは自ら突き放したカカシの腕を取って引き寄せた。

「きっとナルトもサクラも大丈夫だよ、信じて待とう」
「…わかったよ」

カカシは向きを変えて歩き始めた。さっきまで焦っていたのが嘘であるかのように、ナナはカカシに従ってその後ろを続く。


木ノ葉はまだ大半が壊れて、ヤマトとナナの働きあっても建物が戻った場所はごく一部。
なんとか急遽組み立てられたテントの張られた場所を活動の拠点としていた。

そこに向かう二人の歩幅は変わらない。変わらない足取りで変わってしまった里を歩く。

変わり果てた木ノ葉の里を見るのはまだ慣れなくて、ナナは木ノ葉の中腹部に近付けば近付くほど顔を俯かせていった。



・・・



テントに戻って暫く。
ナルトはサイに連れられて戻ってきた。酷く殴られた跡を残し、痛々しい姿で。

「ナルト、何があった?」
「ちょっと衝突があっただけだってばよ」
「…雲隠れの忍に会った?」
「え、なんでそれ…」

ナルトはあえて言おうとはしなかったが、やはり雲隠れのオモイとカルイの二人に接触していた。

あの二人は、サスケに恨みを持っているとはいえ、卑怯なことをするとは思えない。
恐らく、ナルトが痛めつけられることを受け入れたのだろう。

テントの中に運び、サイが傷を負ったナルトの処置をする。サクラに治療を頼むのが早いのだろうが、サクラには見られたくない、とのことだった。



「なぁ、カカシ先生」
「ん?」
「オレってば、雷影に会ってくる!」

ナルトの放った言葉に、カカシとヤマトの目が大きく開かれる。
ナナは、なんとなく予想出来た事態に、小さく息を吐いて頭を抱えた。

「会ってどうする?」
「サスケを許してもらうよう説得する!」
「そんな、駄目だよ!これから五影会談もあるし、どの隠れ里も外へ出ることを自粛している!」

カカシ以上に、ヤマトが声を荒げていた。

五影会談。今の暁は木ノ葉だけの問題でなくなっている。五つの国の長が集まって話し合うのだそうだ。
それにもう一つの問題、ナルトが尾獣であるというこもある。
暁の狙いであるナルトは、今保護するべき存在となっていた。むやみに外へ出すのは危険でしかない。

「なぁ、ナナ
「なんだ」
「暁の面をした奴…わかるよな。そいつが黒幕なんだろ。サスケも、そいつに利用されて暁に入ったんだろ?」
「…!」

暁の面をした奴。ナナをサスケの元へ連れて行った、マダラという男のことだろう。

「確かに…サスケが暁に加担することになったのは…そいつ、うちはマダラのせいだと思う」
「…うちはマダラ…。16年前の九尾の事件も、そいつのせいだって四代目が言ってた」

四代目、ナルトの父であり、16年前の九尾の事件で亡くなった木ノ葉の火影。
ナルトが九尾の力で暴走したとき、それを止めたのは四代目だったそうだ。

もちろん、そんなことナナが知る由もないが。

「なぁ、うちはマダラって誰なんだ?」
「初代火影と闘い、散ったとされる元木ノ葉のうちは一族のリーダーだった男だ。オレも奴の写輪眼を見たからな…間違いないだろう」

カカシの説明に、ナナも納得した。
確かに、その目に宿る写輪眼はナナも見た。
本来なら生きているはずのない人間だが、その計り知れない能力を前にしては、否定出来る根拠は存在しない。

「ナルト…四代目は、お前になんて言った?」

突然のカカシからの質問に、ナルトは暫くきょとんとして。それから考えるように目線を下げてから、力強い目でカカシを見つめ返した。

「オレを信じてるって言ってくれた!」

ナルトは、眩しい笑顔を向けていた。
ナナにはわからない、父親という存在。それは、ナルトにとって大きな存在だったのだろう。
ナルトの返答にカカシはぐっと親指を立てて笑い、それから「よし」と呟いた。

「サイ、お前はマダラについて火影に報告してくれ」
「あ、はい」
「ナルト、お前は雷影の所に行け!ま、オレとヤマトはその付き添いだけど」
「よっしゃ!」
「え、えぇ…!?」

ナルトの嬉しそうな声と、ヤマトの不満そうな声が重なる。
ナナは、じっとカカシを見つめて、自分に向けられる言葉を待った。

「…ナナは…そうだな、サイと木ノ葉で待機していてくれ」
「俺に出来ることはねーってことな」
「国を越えて行われるやりとりに、ナナを巻き込むわけにはいかないんだよ」
「…五色だから?」
「そ。どの国も、ナナを欲しがってる。だから待ってて、ね?」
「ガキ扱いすんな」

カカシの甘い言葉遣いに、ナルトとヤマトの視線が二人から逸らされる。
ここ最近になって隠す気がなくなったらしいカカシは、どこでもナナにデレデレだった。

「カカシ先生ー、行くなら早く行くってばよ」
「ん。じゃあ宜しくな、サイ」
ナナさんをですか?」
「報告をだよ」

これから雷影に会いに行く、だなんて無謀なことをするとは思えない程の緩い空気に、ナナは呆れてため息を吐いた。

それでも、カカシと少しでも離れたくないと思っている自分がいるのを自覚していて。ナナは何も言い返すことなく、無意識に不機嫌になる顔を俯かせていた。


カカシ達が木ノ葉を発って、サイは今の火影、ダンゾウに文書を放った。

その間ナナは、何が書かれているのか読むことの出来ないサイの字をじっと見つめていることしか出来ず。しかし、じっとサイを見ていたナナは、サイの様子が少しおかしいことに気付いていた。


「なぁ、サイ。お前何か考え事でもしてんのか?」
「え、どうしてですか」
「なんか、時々意味もなく俯いたり…顔上げたりしてたから」

サイは、最近になってずいぶんとナルトやサクラに心を許すようになった。
それもあって、当初の堅苦しい印象は無くなっている。
とはいえ、いつだって無駄なことはしない人間だったサイがとる行動として、今はおかしな部分が多すぎる。

「何を考えてる?俺には言えないことか?」
「…いえ、少し、ナルトとサクラのことを考えていました」
「ナルトと、サクラ?」

それは、ナナの考えていたこととは全く違っていた。

サイは、今の火影であるダンゾウの下についている“裏”の事情を知る忍である。そのことが引っかかっていたり、何か命令されていたり、なんていう面倒事かと思いきや。

「ナルトは、サクラとの約束に縛られている」
「…約束?そんなものがあるのか?」
「いえ…ボクも詳しくは知らないのですが…。でもボクは、サクラと話をしに行きます。良ければナナさんも一緒に来て下さい」
「…わかった」


ずっと思っていたことなのか、さっき何かあったのか、真面目な性格故に考えすぎているのか。
なんにせよ、サイが本気でナルトの事を思っているからこその行動だろう。

サイが良い方向へ変わってきたことに喜びを感じながら、ナナはサイの後ろをついて行った。





「サイ、サクラがどこにいるのか知ってるのか?」
「はい。五代目火影の様子を見ているそうです」
「…そっか」

五代目火影、綱手は皆の為に力を使って倒れてしまった。
カカシといい綱手といい、強い忍は誰かにやられて倒れるのではない。守って自滅する。
それが悪いとは思わない。木ノ葉の忍の良いところともいえる。

ナナさんこそ、どうかしましたか」
「え、いや…。どいつもこいつも馬鹿ばっかりだと思って」
「ボクのことですか?」
「違ぇよ」

本人前にして言うかよ。くくっとナナが笑うと、何故かサイは目を丸くさせて歩みを遅くさせた。

ナナさんは、とても綺麗に笑うんですね」
「は…?」
「間近で見たのは初めてなのでドキッとしました。あ…これが恋…」
「いやいや、それは違うと思う」

いいから早く歩け、と背中を押すと、サイは何事もなかったかのように歩き出した。




「失礼します」

サイが先に頭を下げてテントに入る。ナナも同じように言ってからサイに続いた。

「サイ…とナナさん…?」

テントの中には、寝かれている綱手と、それを囲むようにサクラと綱手の側近であるシズネ。
ほとんど何も置かれていない殺風景なテントの中は、綱手の意識が戻っていないこともあり、暗い空気が流れている。

「サクラ…少し話があります」
「…?」

サクラは一度シズネを見て、シズネが頷くのを確認するとすっと立ち上がった。
元々暗い空気の漂っていた、ということもあり、何やら一層妙な雰囲気が広がる。

「話って?」
「ナルトのことです」

サイが一歩ずつサクラに近付く。
入口付近で立ち止まったまま、ナナはその二人を見守ることにした。




サイが話し始めたのは、先ほどのナルトの様子のことだった。
雲隠れの忍二人にサスケの情報を売らなかったナルトは、体中をボロボロにされるまで殴られ続けた。
サスケの代わりに、自らの体を差し出したのだ。サスケを庇う為に。

それをサクラに伝えていなかったのは、ナルトがサクラに心配をかけたくなかったから。

「今ナルトは、サスケのことを許してもらう為、雷影に会いに行ったよ。まあ、無理だろうけど」
「ナルト…そこまでして…」

サクラは口元を覆った。サスケの為にそこまでするナルトに対して、サクラはどんなことを思うのか。
ナナは正直ナルトのことを阿呆だと思った。何がナルトをそこまでさせるのか知れない。
ただ、わかるのはナルトの、サスケへの強い思いだけだ。

「ボクはサスケの代わりにカカシ班に配属された。まだ日も浅いし、カカシ班のことは分からない。人の感情も分からない」
「…」
「君とナルトの約束も知らない」
「…!」

サクラとナルトの約束。それを聞いた瞬間、サクラの目が変わった。

「けど、ナルトが君のことを本当に好きだってことくらい…ボクにだってわかる!」

きつい言葉だった。
初めてかもしれないサイの荒げた声はテントの中に響き渡って、ナナの中にも突き刺さる。これは、サイのナルトを思う心が宿った言葉だ。

「君がナルトに何を言ったのかは知らない…けど、ナルトはそれをずっと背負っている」
「っ、」
「サスケはナルトを苦しめている。でも、それは君もなんじゃないのかい?」

ぼろぼろと止めどなくサクラの目から涙が零れた。
泣くってことは、つまりサクラもそれを自覚したということだろう。

ナルトに頼りたくなる気持ちは、ナナの中にもあった。
里の英雄となったナルトは、確かに強くて。カカシを救ってくれたのもナルトなのだから。

「サイ、それは…サクラだけじゃないだろ?」
「はい。皆、ナルトに頼り過ぎている」
「里そのものがナルトを特別に見ているし…。そもそも約束とか関係無く、ナルトはサスケのことを本当に救い出したいと思っているはずだ」

サイの言うことは正しいのだろう。それでも、サクラが思い詰めてしまうのも間違っている。
ナナはサクラに近付くと、その頭に手を乗せた。

「サクラ…サイが言いたいのはつまり、俺達はナルトに頼ってばかりじゃいけないってことだ」
「…」

サクラは俯いて何も言わない。ただ時折地面に落ちる水滴が、まだサクラの心が不安定になっていることを表している。

「そう…ナルトの為にも木ノ葉の為にも、ボクら自身がなんとかしなきゃ駄目だ」

「サイとナナの言う通りだ」

ふわっとテントの入口が持ち上がって、知った顔が入ってきた。
奈良シカマル。ナルト達の同期の中でもいち早く中忍へと成長し、木ノ葉の上層部にも信頼されている男だ。

「オレ達が暁を止め…サスケを止めるんだ。オレはその件で、第七班のメンバーに承諾を得に来た」

シカマルの心はもう決まっているようだった。言葉にブレが無い。
サイとナナには、その承諾されるべき内容が既に予想出来ていた。当然、ずっと話を聞いていたシズネにも。

「サスケはもう国際的にも重罪人として扱われる。サスケは、木ノ葉の手で処理すべきなんだ。サクラ、オレの言ってること分かるよな」

さっきよりも、地面を濡らす粒の数が増えた。シカマルの言っていること…オブラートに包まれた「サスケを殺さなければ」という部分が見えたのだろう。

ナナは静かにサクラの頭から手を退かした。






長い沈黙だった。

サイと二人で歩いていた時とは真逆。早く終わって欲しいと願いたくなる、重苦しい沈黙。
後は、サクラの考えがまとまるのを待つのみ、だなんて。

急を要することだとはいえ、好きな人を殺す覚悟を今すぐにしろとは、あまりにも酷い仕打ちだ。

「…」

だからといって、ナナがサクラにかけてやれる言葉は無い。
人を殺した数がどんなに多くても、愛する者を手にかける苦痛と比べることは出来ない。



「…ナルトには、私が話す」

ぽつりとサクラが呟く。
皆の視線がサクラに集まって、サクラは目を赤くしたまま顔を上げた。

「…私なんかを好きになってくれたバカだから…だからそれは私の役目にさせて」

決意の目。
しかし、自分がナルトを苦しめていたのだということに思い詰めているようにも見える。

今の短時間で、本当に迷いなく納得することが出来たのか。サクラには無理だ。
ナナは何も言わなかったが、じっとサクラから目を離さずにいた。

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