黒バス(2012.10~2017.12)
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「暑いねー」
間延びした声が、どこに向かうでもなく発せられた。
そりゃそうだろう。夏なんだから。
そう思った真司の口からは息しかこぼれなかった。
「烏羽ちん?」
「ん」
「しゃべるのもや?」
「や、ではないけど」
それどころではないのだ。
真司はもう一度息をついて目を閉じた。
夏でも練習のきつさが変わることはない部活。
さすがに体力の限界をむかえ、部室のベンチに横になった真司の横で、紫原は大きな体を小さくして寄り添っていた。
「あれれ?寝ちゃった?」
「んー寝てない…」
暗い視界の向こうで、服の擦れる音が聞こえる。
そのまま近づいてきた気配は、するりと真司の頬をなでた。
「あっつくなってるねー」
「だって…熱いじゃん。なんで紫原君手、冷たいの?」
「んー?」
返事はなく、けれどカランカランと音がする。
それが当然氷の音だと分かった真司は、無意識に手を伸ばした。
「…」
「烏羽ちん?握手?」
「ちょうだい…」
差し出した手をぎゅっと握った大きな手が、ゆるやかに上下に揺れる。
そうじゃない、と思いながらも、口から漏れるのはやはり息ばかり。
真司はいつまでも水筒が手渡されない不満から、ゆっくりと顔を持ち上げた。
「…!?」
その真司の頭にがっちりと腕が回された。
驚く間もなく、にったりと笑った顔が近付いてくる。
それを避ける元気などあるはずもなく、真司は目を丸くしたまま固まってしまった。
「ん…!んん…」
口と口とが重なって、ぽかんと開けていた口には熱い紫原の舌が。
「ん…?」
歯にぶつかったものがカチンと音を立てる。
それと同時に口に押し込まれた冷たいものに、真司ははっとして開いた目で紫原を見つめた。
「…ちょっとー、キスの時は目閉じなよ」
「ち、違うじゃん、今の」
「違くないよ。キスしたくなったの、それはついでー」
それ、と言いながら紫原の人差し指が真司の口を指す。
それならば余計に厄介だ。真司はまだだるさの残る体を起こし、紫原の胸に倒れ込んだ。
「烏羽ちん?」
「……熱い」
「暑いねー」
「ん…」
ぽんぽんと紫原の大きな手が真司の頭を撫でる。
無邪気に何してくれるんだ本当に。
真司は先程より火照った顔を、紫原の肩に埋めた。