黒バス(2012.10~2017.12)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ばたんっと背後で大きな音が響いた。
放課後、屋上。空は薄ら影っているが、朝降っていた雨は止んでいる。
「烏羽君、ここにいたんですか」
「おはようテツ君」
「おはよう、じゃないですよ。探しました」
そう言って、黒子は一度はぁっと息を吐き出した。
少し頬に汗が滲んでいるのは、教室から体育館から探してくれたのだろうか。
そう思うと少し嬉しい。
「どうしてわざわざこんなところに?」
「ん、たまにはテツ君に俺の気持ち味わってもらおうと思って」
「はぁ…」
黒子の不思議そうな顔に笑いそうになる。
本人は自覚がないのだろう。
「ふと、思い出したんだよね。一年前の今頃のこと」
「…卒業、した頃でしょうか」
「うん。俺、テツ君のことばっか考えてて、テツ君に会いたいなーって、ずっと思ってて、ね」
「そう言ってましたね」
たぶん、その時の黒子は影が薄いとかそういうレベルの話ではなくて。
何か月にも及ぶかくれんぼをし続けていた状況というか。
また思い出して少し悲しくなる。曇った顔を無理やり笑顔に変えて、真司は俯きかけた顔を上げた。
「そう、テツ君にも思わせてやりたいと思ったんだよね」
「だから一日ボクに見つからないようにしてたんですか」
「今日、テツ君は俺に会いたいんじゃないかと思って」
朝から休み時間もずっと、真司はなるべく教室には留まらずに移動していた。
黒子に見つかりたくなくて、だったのだが、思い返すと無駄にトイレにこもったり、かなり馬鹿みたいな事をしていたものだ。
「もし、ボクが君を探さなかったらどうしたんですか」
「どうしたかなぁ。考えてなかった」
「まぁ、実際探したんですけど」
黒子の目が一瞬自分の鞄に移る。
今日は3月14日。日本じゃ大体、一か月前のお返しをする日みたいなものだ。
「結構頑張って用意したんですよ」
「ホント?楽しみにしてたんだよね」
黒子の手が彼の鞄の中に入る。
そこから取り出されたのは、チョコレートの入った小さな包みだった。
まさにホワイトデーって感じだ。
「烏羽君」
「ん?」
「君はボクの太陽です」
突然、黒子が真司の手を掴んだ。
一体今黒子が何を言ったのか…茫然と見つめ返すことしか出来ない。
「大丈夫です。もう、君の前から消えたりはしません」
「なんで、俺が、え?太陽?」
「…自分で考えて下さい」
やっぱり黒子は文学的なことを言うんだなぁ。
そうぼんやりと思いながら、少しずつ恥ずかしくなってくるのは、何となく理解したからだろうか。
じっと見つめてくる黒子から先に目を逸らして、真司は柵の向こうへ目を向けた。
「俺にそんな価値あるとは思えないけど!」
少し投げやりに叫ぶ。
後ろで小さく笑った黒子は、真司の横に並び柵に手をかけた。
「ありますよ。君はとても素敵な人ですから」
「な、んだそれ。余計分かんない」
「分からなくてもいいんです。ボクだけ知っていれば」
ちらと横目で黒子を見ると、何故だかとてもすっきりした顔をしている。
そんな横顔に安心したのは、そこに消えそうだった黒子がいなかったから。
たぶん本当に、もうあの時の黒子はいないのだろう。
「…テツ君、これ、食べてもいい?」
「どうぞ。ゆっくり食べて下さい」
ごそごそと包みを開いて、少し歪な形のチョコを取り出す。
その時初めて手作りなのだということに気付いて。
少し不安に感じながらも口に入れたそれは、予想を裏切った普通のチョコだった。
「あれ、普通に美味しい」
「なんだと思って口に入れたんですか」
「はは」
笑って誤魔化して、雲の切れ間から現れた太陽に目を細める。
そこに見えるのに絶対に手が届かない。
近いようで遠くて。手に入らないのに、無いと生きていけなくて。
「太陽…って…」
そんな、存在。なのだとしたら。
「テツ君、ゆっくり食べるから、ずっと隣にいてね」
「はい」
どうして、こんな気持ちになるのだろう。
本当に消えてしまうのはどちらなのだろう。
真司はとんと肩にぶつかった黒子の体に寄り添った。
放課後、屋上。空は薄ら影っているが、朝降っていた雨は止んでいる。
「烏羽君、ここにいたんですか」
「おはようテツ君」
「おはよう、じゃないですよ。探しました」
そう言って、黒子は一度はぁっと息を吐き出した。
少し頬に汗が滲んでいるのは、教室から体育館から探してくれたのだろうか。
そう思うと少し嬉しい。
「どうしてわざわざこんなところに?」
「ん、たまにはテツ君に俺の気持ち味わってもらおうと思って」
「はぁ…」
黒子の不思議そうな顔に笑いそうになる。
本人は自覚がないのだろう。
「ふと、思い出したんだよね。一年前の今頃のこと」
「…卒業、した頃でしょうか」
「うん。俺、テツ君のことばっか考えてて、テツ君に会いたいなーって、ずっと思ってて、ね」
「そう言ってましたね」
たぶん、その時の黒子は影が薄いとかそういうレベルの話ではなくて。
何か月にも及ぶかくれんぼをし続けていた状況というか。
また思い出して少し悲しくなる。曇った顔を無理やり笑顔に変えて、真司は俯きかけた顔を上げた。
「そう、テツ君にも思わせてやりたいと思ったんだよね」
「だから一日ボクに見つからないようにしてたんですか」
「今日、テツ君は俺に会いたいんじゃないかと思って」
朝から休み時間もずっと、真司はなるべく教室には留まらずに移動していた。
黒子に見つかりたくなくて、だったのだが、思い返すと無駄にトイレにこもったり、かなり馬鹿みたいな事をしていたものだ。
「もし、ボクが君を探さなかったらどうしたんですか」
「どうしたかなぁ。考えてなかった」
「まぁ、実際探したんですけど」
黒子の目が一瞬自分の鞄に移る。
今日は3月14日。日本じゃ大体、一か月前のお返しをする日みたいなものだ。
「結構頑張って用意したんですよ」
「ホント?楽しみにしてたんだよね」
黒子の手が彼の鞄の中に入る。
そこから取り出されたのは、チョコレートの入った小さな包みだった。
まさにホワイトデーって感じだ。
「烏羽君」
「ん?」
「君はボクの太陽です」
突然、黒子が真司の手を掴んだ。
一体今黒子が何を言ったのか…茫然と見つめ返すことしか出来ない。
「大丈夫です。もう、君の前から消えたりはしません」
「なんで、俺が、え?太陽?」
「…自分で考えて下さい」
やっぱり黒子は文学的なことを言うんだなぁ。
そうぼんやりと思いながら、少しずつ恥ずかしくなってくるのは、何となく理解したからだろうか。
じっと見つめてくる黒子から先に目を逸らして、真司は柵の向こうへ目を向けた。
「俺にそんな価値あるとは思えないけど!」
少し投げやりに叫ぶ。
後ろで小さく笑った黒子は、真司の横に並び柵に手をかけた。
「ありますよ。君はとても素敵な人ですから」
「な、んだそれ。余計分かんない」
「分からなくてもいいんです。ボクだけ知っていれば」
ちらと横目で黒子を見ると、何故だかとてもすっきりした顔をしている。
そんな横顔に安心したのは、そこに消えそうだった黒子がいなかったから。
たぶん本当に、もうあの時の黒子はいないのだろう。
「…テツ君、これ、食べてもいい?」
「どうぞ。ゆっくり食べて下さい」
ごそごそと包みを開いて、少し歪な形のチョコを取り出す。
その時初めて手作りなのだということに気付いて。
少し不安に感じながらも口に入れたそれは、予想を裏切った普通のチョコだった。
「あれ、普通に美味しい」
「なんだと思って口に入れたんですか」
「はは」
笑って誤魔化して、雲の切れ間から現れた太陽に目を細める。
そこに見えるのに絶対に手が届かない。
近いようで遠くて。手に入らないのに、無いと生きていけなくて。
「太陽…って…」
そんな、存在。なのだとしたら。
「テツ君、ゆっくり食べるから、ずっと隣にいてね」
「はい」
どうして、こんな気持ちになるのだろう。
本当に消えてしまうのはどちらなのだろう。
真司はとんと肩にぶつかった黒子の体に寄り添った。