黒バス(2012.10~2017.12)
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朝から緑間にラッキーアイテムだと言って可愛らしいキャンディをもらった。
午前の休み時間にはメリークリスマス!と女の子を引き連れた黄瀬が顔を出して。格好良いシルバーのブレスレットを真司の手に置いて行った。
昼休みには珍しく紫原がお菓子を届けに来て、その隣に立っていた赤司は頭を撫でてくれた。
そんな、少し特別な一日の終わり。
イルミネーションが色を灯し始めた街並みを、真司は一人歩いていた。
「…」
楽しくて、嬉しかったからこそ、ぽっかりと空いたどこかが塞がってくれない。
浮足立ったカップルがすれ違う、そんな普段なら目につく様子も今は背景として通り過ぎていく。
「去年は…どうしてたっけ…」
寒いと嘆きながら、シェイクを飲んでいた彼。
相棒に一番喜ぶ物をやるんだ、と買って来たのは青峰だった。
無表情で口に含んで、有難うございますと微笑んだのは。
「…テツ君」
歩きなれた通学路。
帰りに寄ったマジバーガーが目の前にある。
ふと、通り過ぎそうになった店内の窓際の席に、薄い水色の髪が見えた。
「…っ、」
招き入れる自動ドアに引き寄せられるように駆けこんで、外から見えた席を探して店内を見渡した。
部活を辞めた黒子、それ以来一度も姿を見ていない。
どうしても話がしたかった。
辞めてしまったその理由、姿を見せてくれなくなったそのワケ。
きっと、彼なりのヘルプに真司は気付けなかったのだ。それが、申し訳なくて、謝りたくて。
「気のせい…か…」
いつも座っていた場所に、黒子の姿はない。
学校の教室にも、図書室にも、体育館にも、どこにも見当たらない。
「…いくらでも買ってあげるよ」
誰もいないテーブルに手を乗せて、痛い程に握り締める。
「Lサイズだっていいよ、喜んでくれるなら…なんだって、」
皆でまた過ごしたい、だなんて贅沢な事は言わない。
去年のクリスマスのように、皆で集まりたいだなんて思わない。
ただ、笑ってくれるだけでいいのに。
「どこいっちゃったんだよぉ…」
淡い冬の寒さを感じる度に、あの色を思い出してしまう。
寒そうに震える細い肩、雪景色に溶け込むような薄いその影。
真司は肩にかけた鞄から、一つの袋を取り出した。
黒子の為に用意したクッキー。紫原から死守したものの、誰の口にも入らずに終わるらしい。
柄にもなく丁寧にラッピングしたそれを放り投げると、真司は足早に店を出て行った。
「何期待してんだよ…馬鹿みたいだ…っ」
今まで会えなかったのに、今日会えるかもなんて。
濡れた頬を冷たい風が撫でる。吐き出す息は白く、真司は自分の腕を抱いて帰路を走り抜けた。
「…美味しいです」
ぽつりと賑やかな店内にかき消された声は、誰の耳にも届いていなかった。