黒バス(2012.10~2017.12)
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降り注ぐ雨。
何もない休日、家に居るのが嫌で目的も無く飛び出した真司は傘を持っていなかった。
初めは走って帰ればなんとかなると思っていたのだが、それでは済まない程になってきて。
真司は仕方なくコンビニの屋根の下で少しでもおさまるのをまっていた。
「財布持って来れば良かった…」
コンビニに立ち寄ったところで、お金を持っていなければ何も出来ない。
傘の一つでも買えれば良かったのだが。
「はぁ…」
家の中にいても外に出ても良い事がない。
急に雨の中一人でいる今の状況に切なさを覚えて、すんと息を吸うと一筋涙が零れた。
「どしたの?」
ウィーンとコンビニの自動ドアが音を立てたのとほぼ同時に、見知らぬ少年の声が耳を掠めた。
初めは自分に投げられたものだと気付かなくて。それでも動かない視線に振り返らざるを得なくなった。
「俺…?」
「そーそ、君。びしょ濡れで店にも入らず何してんの?」
声の感じから、若干軽そうな印象。
しかし、真司の顔を見ると少年はさっと表情を変えた。
「って…ありゃ、思ってたよりもシリアスムード?オレ邪魔しちゃった?」
「はぁ…?」
「反応薄っ!あ、言っとくけどナンパとかじゃねーからな」
そりゃそうだろう。言い返す気も起こらず、真司はじとっとした視線を少年に送った。
けらけらと笑い続けている少年には何の効力ももたらさなかったが。
「な、傘ねーんだろ。止みそうにもねーし、入ってかね?」
前髪を真ん中で分けている黒髪の少年は、その手に持つ傘をばさっと広げた。それを少しだけこちらに傾かせる。
「家こっから近いなら送ってく」
「まぁ…ここから10分くらい、ですけど」
「お、なら問題ねーな!」
にこにこと笑顔を浮かべたまま、少年の手が真司の背中を押した。
肩を抱くように引き寄せられれば、その傘は二人くらい簡単に守ってみせた。
「家、どっち?」
「こっち…真っ直ぐ、です」
なんだか流されてしまった。
初対面の人にここまでしてもらって良いのだろうかという疑問は、隣で傘を持つ少年が嬉しそうだったからすぐに消えた。
この人は、元々世話焼きであるか、またはお節介焼きなのだろう。
「中学生、だよな?何年?」
「え…二年」
「まじ!?同い年かよ!あ、オレ、高尾和成。あんたは?」
「烏羽真司」
同い年、というのがそんなに面白いか。高尾と名乗った少年は再びけらけらと笑い出した。
その度に傘が小刻みに揺れて、肩に冷たい雨が当たる。
と言っても既に濡れきった身、気になりはしない。
「オレはこの辺の中学じゃねーんだけどさ、真司はこの辺?」
「うん、帝光中」
「あー、バスケむっちゃ強ぇよなー」
「そーなんだよねぇ。俺、バスケ部なんだけど周りが尋常じゃなくて」
「うっそ!?オレもバスケ部!」
似合う、真司は純粋にそう感じた。
上手いかどうかは知らないが、バスケをしている姿は格好いいことだろう。
きっとこいつもモテるんだ。奴等と同じで。
「なんつーのかな、こういうの。運命?」
ぱっとこちらを向いた高尾と目が合う。
運命。この言葉に真司は今朝聞いたことを思い出した。
「高尾君、何座?」
「星座のこと?んならさそり座だけど…あ、何、もしかして占いとか信じちゃう人?」
「俺じゃなくて、友達が」
今日のお前は最下位だから注意しろ。さそり座の奴と共にいると良いのだよ。
過保護なのか何なのか、最下位であった真司を心配して電話をかけて来た緑間。さすがはおは朝、今回もドンピシャだ。
「そっか、じゃあオレが真司の不運を救ったってわけだ!」
「まぁそういうことになるね」
実際に、いつ止むかもしれない雨を待たずに帰路を辿れているのが証拠だ。
それだけではなく、高尾の人柄のおかげでナーバスになっていた心もいつの間にか晴れている。
「ありがとう、高尾君」
「どーいたしまして。もう一人で泣いたりすんなよ」
「な、泣いてないし…!」
高尾の手が真司の目元を触る。
ばたばたと傘を叩く雨の音。なのに真司の心は酷く穏やかなものに変わっていた。
「あ、あそこ、俺んち」
電気が灯っていない家。母がいないことを確認し、真司は高尾と向き合った。
「ここまでどうも」
「あ、ちょ…メアド、交換しね?」
「残念、携帯持ってないんだ」
確かに、たった10分でここまで親しくなれた人間は他にいない。
現在いる友人よりも親しみやすい人だとは確信している。
とはいえたかが10分の付き合いだ。真司にとってはそれ程大事にしたい縁ではなかった。
「同じ都内のバスケ部なら…いつか会えるかも」
「確かに!オレ等、運命の糸で繋がってっし?」
「そーですね」
「ちょ、棒読み」
軽く手を振って別れる。
高尾の肩は、片方だけ袖から水が滴る程に濡れてしまっていた。
「またね!」
その背中に向けて放った声は、余りにも現実味のないもので。
それでも、高尾は嬉しそうに笑っていた。
一位はさそり座。運命的な出会いをするかも。ラッキーアイテムは雨傘。
図らずも二人が出会った、とある雨の休日。
何もない休日、家に居るのが嫌で目的も無く飛び出した真司は傘を持っていなかった。
初めは走って帰ればなんとかなると思っていたのだが、それでは済まない程になってきて。
真司は仕方なくコンビニの屋根の下で少しでもおさまるのをまっていた。
「財布持って来れば良かった…」
コンビニに立ち寄ったところで、お金を持っていなければ何も出来ない。
傘の一つでも買えれば良かったのだが。
「はぁ…」
家の中にいても外に出ても良い事がない。
急に雨の中一人でいる今の状況に切なさを覚えて、すんと息を吸うと一筋涙が零れた。
「どしたの?」
ウィーンとコンビニの自動ドアが音を立てたのとほぼ同時に、見知らぬ少年の声が耳を掠めた。
初めは自分に投げられたものだと気付かなくて。それでも動かない視線に振り返らざるを得なくなった。
「俺…?」
「そーそ、君。びしょ濡れで店にも入らず何してんの?」
声の感じから、若干軽そうな印象。
しかし、真司の顔を見ると少年はさっと表情を変えた。
「って…ありゃ、思ってたよりもシリアスムード?オレ邪魔しちゃった?」
「はぁ…?」
「反応薄っ!あ、言っとくけどナンパとかじゃねーからな」
そりゃそうだろう。言い返す気も起こらず、真司はじとっとした視線を少年に送った。
けらけらと笑い続けている少年には何の効力ももたらさなかったが。
「な、傘ねーんだろ。止みそうにもねーし、入ってかね?」
前髪を真ん中で分けている黒髪の少年は、その手に持つ傘をばさっと広げた。それを少しだけこちらに傾かせる。
「家こっから近いなら送ってく」
「まぁ…ここから10分くらい、ですけど」
「お、なら問題ねーな!」
にこにこと笑顔を浮かべたまま、少年の手が真司の背中を押した。
肩を抱くように引き寄せられれば、その傘は二人くらい簡単に守ってみせた。
「家、どっち?」
「こっち…真っ直ぐ、です」
なんだか流されてしまった。
初対面の人にここまでしてもらって良いのだろうかという疑問は、隣で傘を持つ少年が嬉しそうだったからすぐに消えた。
この人は、元々世話焼きであるか、またはお節介焼きなのだろう。
「中学生、だよな?何年?」
「え…二年」
「まじ!?同い年かよ!あ、オレ、高尾和成。あんたは?」
「烏羽真司」
同い年、というのがそんなに面白いか。高尾と名乗った少年は再びけらけらと笑い出した。
その度に傘が小刻みに揺れて、肩に冷たい雨が当たる。
と言っても既に濡れきった身、気になりはしない。
「オレはこの辺の中学じゃねーんだけどさ、真司はこの辺?」
「うん、帝光中」
「あー、バスケむっちゃ強ぇよなー」
「そーなんだよねぇ。俺、バスケ部なんだけど周りが尋常じゃなくて」
「うっそ!?オレもバスケ部!」
似合う、真司は純粋にそう感じた。
上手いかどうかは知らないが、バスケをしている姿は格好いいことだろう。
きっとこいつもモテるんだ。奴等と同じで。
「なんつーのかな、こういうの。運命?」
ぱっとこちらを向いた高尾と目が合う。
運命。この言葉に真司は今朝聞いたことを思い出した。
「高尾君、何座?」
「星座のこと?んならさそり座だけど…あ、何、もしかして占いとか信じちゃう人?」
「俺じゃなくて、友達が」
今日のお前は最下位だから注意しろ。さそり座の奴と共にいると良いのだよ。
過保護なのか何なのか、最下位であった真司を心配して電話をかけて来た緑間。さすがはおは朝、今回もドンピシャだ。
「そっか、じゃあオレが真司の不運を救ったってわけだ!」
「まぁそういうことになるね」
実際に、いつ止むかもしれない雨を待たずに帰路を辿れているのが証拠だ。
それだけではなく、高尾の人柄のおかげでナーバスになっていた心もいつの間にか晴れている。
「ありがとう、高尾君」
「どーいたしまして。もう一人で泣いたりすんなよ」
「な、泣いてないし…!」
高尾の手が真司の目元を触る。
ばたばたと傘を叩く雨の音。なのに真司の心は酷く穏やかなものに変わっていた。
「あ、あそこ、俺んち」
電気が灯っていない家。母がいないことを確認し、真司は高尾と向き合った。
「ここまでどうも」
「あ、ちょ…メアド、交換しね?」
「残念、携帯持ってないんだ」
確かに、たった10分でここまで親しくなれた人間は他にいない。
現在いる友人よりも親しみやすい人だとは確信している。
とはいえたかが10分の付き合いだ。真司にとってはそれ程大事にしたい縁ではなかった。
「同じ都内のバスケ部なら…いつか会えるかも」
「確かに!オレ等、運命の糸で繋がってっし?」
「そーですね」
「ちょ、棒読み」
軽く手を振って別れる。
高尾の肩は、片方だけ袖から水が滴る程に濡れてしまっていた。
「またね!」
その背中に向けて放った声は、余りにも現実味のないもので。
それでも、高尾は嬉しそうに笑っていた。
一位はさそり座。運命的な出会いをするかも。ラッキーアイテムは雨傘。
図らずも二人が出会った、とある雨の休日。