黒バス(2012.10~2017.12)
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「話が早くて助かるぜ、テツ。つくづくバスケだと気が合うな」
「はい、ボクもそう、思います…!」
恐らく、初めから二人はぶつかるつもりだったのだろう。
第1クォーターにて他の選手を圧倒した黒子の“消えるドライブ”を待ち構えるようにして、青峰が黒子の前に立ち塞がる。
そして黒子は、それに応えるように姿勢を低くした。
普通の選手だったなら、ここで黒子を目で追うことは出来なかっただろう。
しかし今の相手は、並大抵の選手ではない、青峰大輝だ。
「残念だったな、テツ」
黒子が、どんな思いで技を極めていたか、知らない真司ではない。
この試合にどれほどの思いを抱いて来たか、近くで見て来たから知っている。
青峰の手が、黒子のボールを弾いた瞬間、真司は思わず椅子から腰を上げていた。
「勘違いすんなよテツ。影ってのは光あってこそだろうが。お前じゃ、オレを倒せねぇ」
青峰がシュートしたボールが、コートの上で数回跳ねる。
周りの音が、全て消えたかのような、時が止まったかのような。そんな重い空気の中、コートで黒子が膝をついた。
「あまり失望させんなよ…テツ。こんなもんがオレを倒すために出した答えなら、そりゃムダな努力だ」
青峰の低い声が、真司の耳にも届くほど静かだった。
どうしてこうなった。どうして。そう思わずにはいられない程、突然に起こった絶望的な光景。
「…っ、」
真司はがくんと膝から折れるように再び椅子に体を預けると、そのまま俯いて自分の太腿を強く叩いていた。
本当に自分に出来る事はなかったのだろうか。こんな黒子の姿を、ベンチから見る事しか出来ないのか。
「くそ…!」
役に立たない自分の右目を覆って、もう一度強く太腿を叩いて背中を丸める。
影でい続けた黒子が、決死の覚悟で青峰に挑んだ。
じゃあ自分はどうしてこんなところでうずくまっているのだ。そんな事を思い詰め自分に問いかけたって、答えどころか、自らに絶望するだけだ。
「…」
「お、おい…烏羽?大丈夫…?」
隣に座っている降旗が真司を覗き込み、慰めるように背中を撫でる。
はっとして顔を上げると、状況の悪さに気付いてリコが動いたのだろう、タイムアウトの声が響いた。
「ほら、皆帰ってくるよ」
「うん…分かってる」
降旗がタオルを掴んで立ち上がる。真司も両手で頬をぱちんと叩いて腰を上げた。
戻ってくる黒子は下を向いたままフラフラしている。酷使しすぎたのだろう、震える足を黒子はきつく押さえていた。
「誰か黒子君のテーピングおねがい!」
「あ、テツ君のテーピングは、俺が」
椅子に座らせた黒子の前に膝をついて、黒子が押さえる足に触れる。
一瞬びくりと足を揺らした黒子は、先程の真司と同じようにうずくまってしまった。
「…テツ君」
かける言葉が見つからない。
何も出来ない自分が、何を言ったって薄っぺらくなってしまう。
「…青峰君の言葉なんて、気にしちゃ駄目だ。それは…テツ君だって、分かってるはずだよ」
「…っ」
「青峰君には、まだ、見えてないだけだよ…」
それでも、何か、何か自分の言葉が、黒子に伝われば良いと思って。
テーピングを黒子の細い足に巻きながら、何とか言葉を繋げようとして。
「ちくしょう…っ」
そんな真司の言葉が、黒子に届くはずもない。
押し殺すように零した黒子の声は、涙と共にぽとぽとと落ちていた。
真司の手に落ちた熱い雫に、自然と込み上げる熱いものに、真司の視線も床へと落ちる。
「無駄な努力なんてねーよ」
そんな中、ぽすんと真司と黒子の頭に乗せられたのは火神の手のひらだった。
「皆信じてるぜ。お前は必ず戻ってくるってな。その間に、オレがアイツにそれを教えてやるよ」
火神の大きな背中がコートに戻っていく。
ああ、やっぱり、火神は黒子の光だ。
再び試合が始まる音を何気なく聞きながら、真司は黒子の隣の椅子に腰かけて、黒子の背中に腕を回した。
「ねぇ、テツ君、見て」
とんとんと震える背中を軽く叩くと、それまで俯いていた黒子が顔を上げた。
まだその瞳は涙で揺れている。
「テツ君はもっと頼って良かったんだよ。火神君の力は…こんなものじゃない」
コートに立つ火神の動きは、それまでと違う。
青峰を捕らえ、青峰の速さに追いついていた。今まで、力を抑えていたかのように、その力が解放されたかのように。
「烏羽君…知っていたんですか…?」
「実はね、一昨日くらいかな火神君の携帯からメールが来てさ。文面は英語で…たぶん火神君からじゃなかったけど」
「…それには、何と?」
「期待してろって。それと火神君がストバスでごっつい外国人達を圧倒してるムービーが添付されてた」
まさに、今青峰に食らいついている姿はその映像の火神に良く似ている。
単純に「本当に強くなったんだなあ」と思うのと同時に「これが本当の火神の姿なのだ」と思った。記憶に新しい出来事だ。
「どうして教えてくれなかったんですか、それ」
「え…あー…いやだって…タイガのガールフレンドへって書いてあって…なんか見せ辛くて」
「何ですかそれ。その誤解は許されないです」
視界のすみで黒子の頬が少し膨れたのが見えた。
自分の言葉が少しでも黒子の気分を変えられたのなら。
真司はやはり黒子を見ずに、顔をコートに向けたまま一度だけ噛み締めるように微笑んだ。
火神の躍進あって、一度開いた点差は縮まった。食らいついた第2クォーター、終了時点差は2点。
真司は汗を拭うメンバーにタオルや飲み物を手渡しながら、10分のインターバルの為にコートを後にした。
「…あれ、黒子は?」
控え室に戻ると、降旗が一度辺りを見渡してからぽつりと呟いた。
全員が控え室の中をぐるりと確認してから、「またか」とため息を吐く。
黒子は影が薄いだけでは飽き足らず、どうにも放浪癖があるらしい。
「ってそういえば火神もいねぇ!」
「はぁ…全く二人揃って仕方ないわね」
身体を冷やさなければ良いけど。とぼやいたリコは既に次のことや選手の体のことを考えているようだ。
真司は暫く先輩達の様子を見てから、ドアの目の前で止めていた足を微かに動かした。
「…あの、俺、様子を見に行っても良いですか」
真司の発言に、一瞬リコの眉がぴくりと吊り上る。
けれどすぐにはぁっと息を吐き出したのは、ここまで想定済みだったからだろう。
「構わないけど、さっさと連れて戻って来なさいよ。」
「はい!」
後ろ手にドアを開いて、何となく覚えている会場内をほどほどのペースで走る。
不覚だった。ぼーっとしていたとはいえ、黒子がいなくなったことに気付かなかったなんて。
自分が信じられない思いで、辺りを見渡す。
ロビーを抜けて外に出ると、その二人の姿は思いの外すぐに見つかった。
「テ、」
「1年の時、ボクは青峰君と出会いました」
その背中に呼びかけようとして、けれど黒子の声と重なり、真司は口を閉ざした。
黒子の声が向く先は火神だ。
「青峰君は既にレギュラー、一方ボクは3軍。けれど、バスケが好きだと言う思いだけは同じだったんです」
「バスケが好き…か」
「はい。その思いだけで、部活の後に一緒に練習するようになって…青峰君は、いつも笑っていました」
真司の知らない、1年の時の黒子と青峰。
その二人の姿が知りもしないのに頭に浮かぶようで、真司は静かに目を閉じた。
「ボクがあまりにも上達しなくて諦めかけた時、『チームに必要のない選手はいない』と勇気づけてくれたのも、青峰君でした」
「…」
「この試合、ボクはどうしても勝ちたい。ただ…見たいんです」
ここまで黒子はいろんなものを乗り越えてきたのだろう。
では自分は、どうだったか。
「青峰君はいつも笑顔でプレイしてて、バスケが本当に好きでした。ボクは…もう一度笑ってプレイをする青峰君が見たい」
大事な試合の最中とは思えない程、黒子の声は落ち着いており、また黒子を見下ろす火神も静かにその言葉を聞いていた。
そういえば、青峰の笑顔を随分と見ていない。
青峰を好きで、近くにいたつもりで、やはり黒子ほど心から寄り添えてはいなかったのだ。
「もし、この試合に勝つことが出来たら…もしかしたら」
「知るかよ、そんなもん。まあでも、ただ負けたらそれこそ今までと何も変わらねぇ。オレ達にできんのは、勝つために全力でプレイするだけだろ?」
「…そうですね」
今までの自分の甘さを思い知った。
真司は込み上げそうになった涙を抑えて唇を震わせた。
知らなかったのではない、知ろうとしていなかっただけだ。
「…テツ君!火神君!」
自分の中に生まれてしまった不安や妙な苛立ちに蓋をして、振り返った二人に微笑みかける。
少し驚いた様子で目を開いた黒子も、すぐにいつもの表情に戻った。
黒子の表情は火神からの言葉をもらい、どこか安心したようにも見える。
「探したよ、そろそろ戻らないと!」
「…はい。もう戻ります」
『これより後半、第3クォーターを始めます』
第3クォーター、一度青峰に敗れ涙した黒子が再びコートに立っていた。
第3クォーター。
黒子の調子が戻り、いつも通りの誠凛のバスケが戻ってきていた。
イグナイトパスは火神だけでなく他のメンバーにも繋がれる。その結果、この試合で始めて誠凛がリードした。
しかし、桐皇が黙っているはずもない。
すぐさま動きを見せた桐皇は、今吉が黒子のマークにつくことで黒子を封印させた。
それどころか、青峰も圧倒的なバスケで火神の足を止めさせる。
結局流れは桐皇へ。点差が広がるどころか、自由に動けないまま黒子のミスディレクションが発揮される時間が減らされていく。
第3クォーター、残り時間わずか。
ついに黒子のミスディレクションが切れ、全ての選手に黒子の姿が捕えられるようになってしまった。
「なんで…烏羽ちん出さね~の?」
ぽつりと、観客席から見ていた紫原が呟いた。
それを聞いた氷室も「そういえば」と、この試合の間ずっとベンチにいる真司へ視線を向けた。
「彼も、敦と同じ名門帝光中学で試合に出てたんだよな」
「うん。まあ別に強くないけど、この場面で烏羽ちん出さない意味わかんない」
「何か…まだ策があるというのか…?」
思い返してみれば、今だけじゃない。真司を出すべき瞬間は何度もあった気がする。
圧倒的な青峰率いるチームなら尚更。真司の足があれば、流れを変えるくらい出来るはずだ。
「真司っち…なんで出てこないんスか…」
桐皇と誠凛の試合が行われるコートに近い位置で見ていた黄瀬も、口にせずにはいられなかった。
「そういや、あのチビ出てこねぇな…」
「あの子のプレイが見れるの、少し楽しみにしてたんだけどな…黄瀬、お前何か知ってるんじゃないのか?」
「や…オレは…」
黒子と真司の相性は良い。けれど、黒子がいなくても一人で戦える足を持っている。
嫌だった。真司の怪我が、やはり何か、バスケを出来なくさせていると理解しまう事が。
「…やっぱ、真司は出て来れねーか…」
この同じ状況の中、高尾には見えていた。
悔しそうに足を叩き、顔を覆った真司の姿。
「真ちゃんだって分かってんだろ、真司のケガ」
「アイツは、大丈夫だと言ったのだよ」
「んなの上辺に決まってんだろ…。スポーツマンにとって、目がどんだけ大事か、考えなくても分かんぜ」
黒子のミスディレクションが使えなくなった今、誠凛は勝つための一つの要素を失ったことになる。
まだ第3クォーターの中盤。黒子抜きで勝てる程、誠凛と桐皇の実力は競っていない。
「…万策尽きたか」
その声は誰のものだったか。
試合を見守る全ての人間が、誠凛の負けを確信した。
「…違うまだ、これからだ」
そんな会場の空気を読み取ったかのように、微かな声でそう言った真司。
その瞳は、真っ直ぐにコートを見つめていた。
視線の先にいるのは、ミスディレクションの効力を失って尚コートに立つ黒子。
「次じゃない、今勝つんだ!」
そしてそれに呼応するかのように黒子が声を上げる。
その声をきっかけに、誠凛の全員の目の色が変わったのは、誰の目にも分かるほど明らかだった。
そして次の瞬間、ボールを持つ伊月が今吉の前から姿を消したのもまた、気のせいではない。
ミスディレクションオーバーフロー
ミスディレクションを切れさせた黒子が、自分自身に視線を集める。それは、自分以外の味方全員に消えるドライブと同じ効果を与えるという、最後の手。
第3クォーターが終わる。点差は11点。
縮めきれなかった、けれど、まだ誠凛の闘志は消えていなかった。
「スマン、テーピングを直してくれないか」
戻ってくるなり椅子に腰かけた木吉がそう言う。
すぐさま反応して木吉の前に膝をついた真司は、木吉の顔色に一度言葉を失った。
苦しそうに歪んだ顔。自分の足を睨み付け、持ちこたえてくれと自分に訴えているように見える。
「…、木吉先輩」
汗で湿り、少し緩んだテーピングを取ってから、新しく巻き直す。
真司はその膝を手のひらで軽く撫でた。
「木吉先輩、俺は…これから先、試合に、キセキの世代に勝つ為には木吉先輩が必要だと思っています。だから、あの試合で迷わず庇いました」
「…ああ、だからオレはまだここにいる」
「でも、あの時、木吉先輩でなくても、同じことをしていたと思います」
木吉は、真司の言葉の意図が分からない様子で首を傾げた。
それに気付いて、真司もどう言ったら良いか迷って「あー…」と声を漏らす。
「つまり…木吉先輩が、一人で抱える必要はないってことです」
「…烏羽」
自分が木吉に背負わせてしまったものを、少しでも下ろさせてあげたい。
その一心で言い切ると、隣で日向が木吉の背中をぽんと叩いた。
「烏羽が全部言ってくれたな」
「日向…」
「お前抜きで勝てるとは思わねーけど、オレ等の分まで頑張る必要はねぇよ」
いつの間にか、全員の視線が木吉に集まっていた。日向の声を聞いて、頷き笑う。
まだ点差はある、けれど全員諦めていない。全員が、自分達は大丈夫だと信じている。
それを見て安心したのは、きっと真司だけではないだろう。
真司は残り10分を信じて、また彼等を見守る時間に身を委ねた。
そして始まった第4クォーター。
この試合で、見ていた全ての人達を驚かせる出来事が起こった。
ゾーン、極限の集中状態。
本来、実力の100%を出す事は不可能、けれどゾーン状態の時のみ、不可能なはずの100%を可能にする。
限られた人しか開くことの出来ない扉を、青峰と火神の二人の高校生が開いた。
ほぼ互角。むかえた最後の5秒、桐皇リードの1点差。
最後にチャンスを掴んだのは、青峰が弾いたボールを手にした黒子。
その黒子からの強烈なパスを受け取ってゴールにボールを叩き込んだのは、火神だった。
点数が切り替わり『タイムアップ』の声が響き渡る。
その瞬間、嘗てない歓声が会場を包み込んでいた。
「オレは…負けたのか…」
歓声の中、青峰の久しぶりに聞いた穏やかな声が微かに届く。
コートの真ん中で、火神に支えられるようにして立つ黒子。そしてその前には、まだ茫然とした顔で黒子を見下ろす青峰。
「…あ…」
涙を流して、声を上げて、立ち上がって喜ぶメンバーの中、真司は椅子に座ったままぼろぼろと泣いていた。
この試合、青峰は楽しんでバスケをしていた。
それが嬉しくて、嬉しくて、そして、悲しく悔しかった。
「…やったな!烏羽!」
隣で降旗がぽんぽんと真司の背中を叩く。
それに反応して顔を上げた真司を見た瞬間、降旗の目が驚き見開かれた。
「…烏羽…?それ、さ、うれし涙だよな?」
「え…、あ、たりまえ、じゃん」
「…だ、だよな…!」
笑って頷いた降旗は、恐らく気が付いていた。
けれど、今この状況で悲しむ理由等ないはずだ。だから笑って誤魔化し、視線をコートに戻した。
黒子と青峰が拳を合わせる。久々の光景に、また真司の目から涙がこぼれた。
本当に嬉しいのだ。ようやく青峰に勝ち、そして黒子の願いも叶った。
『101対100で誠凛高校の勝ち!』
コートに響いた声で再び歓声が上がるのを聞きながら、真司は零れ続ける涙を拭った。
・・・
試合が終わって、控え室に戻る。
その間十分に分かち合った喜びに、メンバーは既に満足しきっていた。
そもそもやりきった反動で疲れは相当のものだ。
控え室でぐったりと眠るように倒れ込んだ皆を横目に、真司は一人控え室を後にした。
「ふう…」
自分が、何故こんなにも悲しいのか理由に気付いている。
けれど吐き出すわけにもいかない状況に、息苦しさを感じていたのは事実だ。
選手の為に用意されたタオルを一つ手に持って、それをぎゅっと握りしめる。
会場の外に出ると、心地の良い風に吹かれた真司の髪は軽く揺れた。
「…真司」
呼び声は、風に乗っているかのように、自然と真司の耳に入って来た。
驚きも無く、振り返ってその人を視界に入れる。
「……赤司君」
「こんなに早く二人きりになれるとは、思っていなかったよ」
当然のことながら誠凛と桐皇の試合を観ていたのだろう、赤司がふわりと微笑む。
そんな赤司から、咄嗟に目を逸らしていた。
「試合に勝ったのに、あまり嬉しくなさそうだな」
「嬉しいよ。嬉しいに決まってるじゃん…」
「嘘だな。大輝を救ったのが自分でなくて不服か。それとも、テツヤの願いを叶えたのが自分でなくて悔しいのか」
「…!」
この見透かした目が、今の真司の感情を見事に見抜く。
赤司は真司の反応を見て「やっぱり」と目を細めた。
「…僕は今、本気で後悔してるよ。真司を…テツヤに任せたこと」
「え…?」
「僕の見込み違いだった。いろいろとね」
赤司の手が真司の右目へ伸ばされる。
条件反射で身を引くと、赤司はその手で真司の腕を掴んだ。
「少し、向こうで話そう。ここでは話し難いこともある」
ぐいと思いの外強い力で腕を引かれ、もつれた足で赤司の後を続く。
少しの不安と恐怖。赤司への接し方が分からないのは、久々に会ったからというだけではない。
「ねえ、真司。今何を考えているか当ててあげようか」
「え…」
「今の僕が一体誰なのか…だろう?」
赤司が足を止めて振り返る。
その目がやはり昔と違う気がして、真司は無意識のうちに目の前の赤司を恐れた。