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カカシ夢(2011.04~2016.09)
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少し道を抜ければ、すぐに人気の少ない場所に出た。よく見れば今日はやけに良い天気で、急ぎ足だったためか、少し汗が肌をつたう。濡れているために、見た目に違いはないが。
ヒナタは心配そうな顔を浮かべたままナナを段差に座らせた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「あぁ…」
それだけ交わして沈黙が続く。
元々ヒナタは進んで人と関わろうとするタイプではない。それはナナも同じなのだから、こうなることは容易に想像出来ることだ。
「えと…何も拭くもの、持ってなくて」
「あ?いいよ、こんなのすぐ乾く」
どうして濡れているのかとかは聞かないんだな。そう思いながらも服の裾を引っ張って顔を拭う。
きゃっ、と言う声は、ナナの腹部が露出されたからだろう。
「な、ナルトくんと一緒にいると、思ってました…」
「あぁ…そのはずだったんだけど…」
言葉に詰まると、ヒナタも戸惑った様子で口を噤んだ。
こうして二人で話すのは初めてで、互いに存在を知っていた程度といっても過言ではない相手だ。
それでも、ナナはヒナタがどんな子なのか大体知っているつもりだった。
「あんたは…ナルトが好きなんだろ」
「ぇ、え!?え、えと…そ、その…」
「罪な奴だな、ナルトも。こんな良い子に愛されて」
「そ、そんな…」
「…嫌にならないか?あまりにも空き過ぎた…ナルトとの距離に」
昔からナルトを知っている人からしたら、今ナナが感じている以上の思うことがあって当たり前だ。
ナナがそう考えた通り、ヒナタはしゅん、と眉を下げた。
「…そ、…で、でも。わ、私…ナルトくんが強くなって、すごく…嬉しいんです」
「そりゃあ、そーだろうけど」
「お、落ちこぼれと言われていたナルトくんが…。わ、私みたいな人間でも、希望を抱いていいんじゃないかって…励まされているようで」
ポジティブ、なんて軽い言葉で表現していいのかわからないが、ヒナタは本当に前向きな少女だった。
「わ、私も頑張りたいって…そう思える」
ナナは何も言えなかった。卑屈にしかなれない自分とは違う、この子を巻き込んではいけない。
「ご、ごめんなさいっ」
「何が?」
「ど、どうでも良い話を…」
「いや…」
ぽたっと髪から滴った水がズボンの色を変える。
巻き込んではいけない、そう思ったのに口が勝手に開いてしまった。
「俺は…好きな相手が強くて、イライラする」
「え?」
「自分に腹が立つ…」
ぽつりと漏らした言葉に、ヒナタは瞬きの数を増やした。俯いたナナの顔を覗き込んで、不安そうに顔を歪ませる。
「隣に立つことさえ出来ない。俺は足手まといだから」
「…ナナさん」
「悪ぃ…忘れてくれ」
「いえ…私も、同じです…」
きゅっと自分の手をきつく握り締めて、それでもヒナタは真っ直ぐ前を見ていた。
「でも、諦めたくない…。ナルトくんが、そうであるように」
少しこちらを向いて、にこっと笑う。その笑みに笑い返すことは出来なかった。
あまりにも眩しすぎる。
「あんた…すげぇな」
「あっ…また、わ、私…」
「かっこいいよ。ナルトとお似合いだと思う」
かあっと赤くなって俯く姿はただの恋する女の子なのに、ナナよりも小さい体で強い心を持っている。
「あ、あ、あの…ナナさんの、好きな人のこと、聞いていいですか…?」
「ん?…そうだな」
カカシのこと、改めて口に出すことなんてなかったから、いざ考えてみると少し小っ恥ずかしい。
普通だったらこんな話になんか答えなかっただろうが、ヒナタが真面目に話してくれたから、答えなければいけないと思った。
「強くて、暖かくて…俺をわかってくれる。いつだって、傍にいたいんだ」
「…素敵」
「今だって…傍で支えたかった…」
「…そ、傍にいることが全てじゃないです。帰りを待つ人も…大事だと、わ、私は思っています」
握りこぶしを作って元気づけようとするヒナタに、胸が熱くなった。きゅ、と締め付けられるような感覚。この熱さは嫌じゃない。
「…ありがとう」
ようやく、自然に笑えた気がした。
・・・
ヒナタと別れてから、ナナは一人で木ノ葉の里の外れにある門に向かった。
一人になりたかったのと、少しでも早くカカシに会いたかったのと。それから、カブトから逃げるため。
さすがに任務に出た木ノ葉の忍が戻ってくるような場所に来ることはないだろう。
「諦めない…。傍にいることが全てじゃない…」
ぽつりぽつりとヒナタの言葉を思い出す。そんなこと、考えたこともない、ような気がする。
余りにも真っ直ぐで、素直な言葉。
それを素敵だと思う反面、それ故に自分の汚いところが浮き出て感じられる。
「カカシ…」
ナナは門の脇に立って、体をきつく抱き締めた。
この体は、何人の男を相手にしきたのか、もう覚えてもいない。
でも、昔の方がまだマシだった。
「自分から…好きでもない男を…」
好きでもない男を誘った挙句、気持ち良くて、喘いで。でも足りない。カブトでないと本当の快楽は与えてくれない。
そんなことを一瞬でも考えてしまった自分の頬を打つ。
「それだけは、駄目だ。絶対に…」
頭を抱えて目を閉じる。
「カカシ…」
名前を呼び続ける。そうしていれば、変なことを考えずに済むかもしれない。
そうして目を閉じて、また思い出した。
・・・・・・
・・・
ゆらりと近寄る大きな男。小さくて細い腕は抵抗する力を持ち合わせてなどいなかった。
掴まれて、床に叩きつけられると、肌に空気が当たって。唯一持っていた服が布きれに姿を変える。
「や…っ」
まだ綺麗だった体に這う男の手。下半身に熱が集まる初めての感覚に恐怖しか感じなかった。
その後はずっと痛みに堪えて歯を食いしばるだけ。無理矢理こじ開けられた体は、男を受け付ける器となってしまった。
「痛い…も、ヤダぁ…」
泣いたって、誰も助けてくれない。声は居場所を知らせるためのもの。聞きつけた男は笑みを張り付けてやって来る。
「あ、ぅ…」
体に走る感覚は、数を重ねるにつれて気持ちの良いものに変わり始める。痛みとはなんだったのか、麻痺して、おかしくなって。
声も体も、喜ばせるものに変わって。気付いた時には、最悪の連鎖にはまっていた。
・・・
・・・・・・
「う…っぐ、」
ナナは地に手をついた。気持ちが悪い。五色は本当に嫌な場所だった。
##NAME2##が現れなかったらどうなっていたか。考えるだけでもおぞましい。
「昔の方がマシ…?なわけあるかよ…」
むしろあの時代と比べたら、どんなこともマシに思える。
「昔から…俺は弱かった」
いつだって、誰かの力に縋っていた。一度力をつけたせいで、思い上がっていたのかもしれない。
「待つのが…俺の役割だった…」
地についた手に力が籠る。握り締めた手に頭を乗せて、ナナの体は小刻みに震えた。
「なァ、俺…どこで間違ったんだ?」
誰に問うわけでもない。自分を笑った。
せっかくヒナタの言葉に勇気づけられたと思ったのに、結局辿り着くのはここ。自虐的になる弱い自分。
「嫌だ…カカシ…置いていかないで」
信じられないくらい弱弱しく、震えた声が漏れた。
それに自分でも驚いて、揺れる瞳を見開き、静かに体を起き上らせる。
これ以上カカシに心配を、迷惑をかけたくない。かけるわけにいかない。嫌われるようなことは…
唇を強く噛み、ナナは門の向こうを見つめた。
そして一歩、足を踏み出した。
・・・
いのとチョウジとカカシと、増援として到着したヤマトとナルト。彼らの眼前にいるのは、暁の一人、不死身の男。
もともと二人組だったが、もう一人はシカマルが一人で相手をしている。
どちらも、戦況はナルト達に向いていた。
シカマルは頭を使い相手を追い込み、カカシは二度敵を殺している。
「奴は心臓が五つある。残りは三つ…三回殺す必要がある」
「オレに…やらせてくれってばよ」
ナルトの術は既に五割完成していた。五割、といえどもはや別人。
ナルトの手に回るチャクラは風の性質を持ち、激しい高音を鳴り響かせている。
その場にいる誰もが目を見張った。
「ボクも加勢する!」
「駄目だ!巻き添えをくうよ!」
体を乗り出したチョウジをヤマトが制する。それほど、ナルトの習得した術は強大なものだった。
凝縮されたチャクラは最大の力を発揮し、その高速の回転は相手を攻撃し続けるだろう。
「ナルト、その術はゼロ距離でぶつけないと…それに発動時間も短い。ただ突っ込んでもぶつからないよ」
「…わかってるってばよ」
影分身をつくり、一人で陽動作戦に出る。ナルトはどうしても一人で敵を倒したかった。
三人の陽動に続いて術を発動した一人が続く。敵は、術を発動した一人、オリジナルを狙いに来た。
ナルトは変わった、それは術を習得したということだけではない。頭も使えるようになっていた。
陽動の中に混ぜていたオリジナル。それが、敵に攻撃をぶつける。初めからそのつもりだったのだ。
ケタ違いの攻撃回数は、一度で敵を粉砕した。残り三回、など必要なく、一度で相手を倒すに至ったのだった。
・・・
無事、敵を倒し一息つく彼ら。
そこにシカマルとサクラとサイも到着した。増援としてシカマルの方に向かったサクラとサイだったが、着いた時には戦いは終わっていたのだ。
シカマルは一人で、アスマの仇を討ったのだった。
そのまま再びナルト達の方へと戻ってきたサクラとサイ、しかしそこにはもう一人。
それに真っ先に気付いたのはカカシだ。
「あれ、ナナ…?」
サクラとサイに支えられるようにして、そこにいる。俯いているし、やけに薄着で、髪は湿っているように見えるが、間違いなくナナだ。
「ナナ、大丈夫なのか?無理して来なくて良かったんだぞ…」
「…途中でナナさんを見かけたので、一緒に、来たんですけど」
サクラもサイも、少し複雑そうな顔をしている。
俯いたままのナナに、そこにいる全員の視線が何気なく集まった。ナルトに関しては、力を使い果たしてバテているが。
「ナナ…?」
何も返事がない。心配になってカカシが近付くと、ようやくナナの顔が上がった。
「…!」
ぼろぼろと涙が零れ落ちて、顔は真っ赤に染まっている。そんなナナの状態に、カカシは言葉なく目を丸くさせた。
一体どうしてこんなことに。困惑しているうちに、ナナの腕がカカシの背に回っていた。
「お、俺…っ足手まとい、で…来ても、迷惑と思っ…」
「ちょ、っと、ナナ落ち着いて」
「でも…待ってても、俺っ、弱気に…ッ」
嗚咽で上手く話せていない。けれど、何が言いたいのか、カカシには全部伝わっていた。
「どうして、急にそんな弱気になった?」
「わ、かんな…。俺、今、変で…、不安に…」
「ナナ。ナナを置いていったりしないよ」
「ん…、ぅ」
こくこくと首が縦に振られて、カカシは頬を緩めた。背を撫でてやると、少しずつ息も整っていく。
ナナの全てがカカシ中心で動いている。それが愛おしくて、痛々しくて。そっと髪にキスを落とす。
そこまでやってカカシは周りの視線を思い出し、恐る恐る見渡した。
「あー…ね。まぁ、さすがに…察した?」
カカシに対して送られる、じとっとした目。
「そんな、ナナさんが…」
「え、カカシ先生ってそういう趣味だったの?」
「…オレは、何も見てないっす」
「これって、あれですよね。本で読みました。ホ」
「サイ、言わなくていいから!」
ゆっくりと首を回して、カカシは最後の綱であるヤマトに目を向けた。
「…ナナは、ボクから見ても、綺麗だと…思いますよ」
「おい」
闘いはまだまだ始まったばかりで、この後も休む間なく里を出ることになるだろう。
カカシは未だぎゅっと締め付けてくるナナに、確かな不安を感じていた。そしてこの時は撫でてやることしか出来なかった。
その不安の原因が何なのか、なんとなくわかっていたのに。
ヒナタは心配そうな顔を浮かべたままナナを段差に座らせた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「あぁ…」
それだけ交わして沈黙が続く。
元々ヒナタは進んで人と関わろうとするタイプではない。それはナナも同じなのだから、こうなることは容易に想像出来ることだ。
「えと…何も拭くもの、持ってなくて」
「あ?いいよ、こんなのすぐ乾く」
どうして濡れているのかとかは聞かないんだな。そう思いながらも服の裾を引っ張って顔を拭う。
きゃっ、と言う声は、ナナの腹部が露出されたからだろう。
「な、ナルトくんと一緒にいると、思ってました…」
「あぁ…そのはずだったんだけど…」
言葉に詰まると、ヒナタも戸惑った様子で口を噤んだ。
こうして二人で話すのは初めてで、互いに存在を知っていた程度といっても過言ではない相手だ。
それでも、ナナはヒナタがどんな子なのか大体知っているつもりだった。
「あんたは…ナルトが好きなんだろ」
「ぇ、え!?え、えと…そ、その…」
「罪な奴だな、ナルトも。こんな良い子に愛されて」
「そ、そんな…」
「…嫌にならないか?あまりにも空き過ぎた…ナルトとの距離に」
昔からナルトを知っている人からしたら、今ナナが感じている以上の思うことがあって当たり前だ。
ナナがそう考えた通り、ヒナタはしゅん、と眉を下げた。
「…そ、…で、でも。わ、私…ナルトくんが強くなって、すごく…嬉しいんです」
「そりゃあ、そーだろうけど」
「お、落ちこぼれと言われていたナルトくんが…。わ、私みたいな人間でも、希望を抱いていいんじゃないかって…励まされているようで」
ポジティブ、なんて軽い言葉で表現していいのかわからないが、ヒナタは本当に前向きな少女だった。
「わ、私も頑張りたいって…そう思える」
ナナは何も言えなかった。卑屈にしかなれない自分とは違う、この子を巻き込んではいけない。
「ご、ごめんなさいっ」
「何が?」
「ど、どうでも良い話を…」
「いや…」
ぽたっと髪から滴った水がズボンの色を変える。
巻き込んではいけない、そう思ったのに口が勝手に開いてしまった。
「俺は…好きな相手が強くて、イライラする」
「え?」
「自分に腹が立つ…」
ぽつりと漏らした言葉に、ヒナタは瞬きの数を増やした。俯いたナナの顔を覗き込んで、不安そうに顔を歪ませる。
「隣に立つことさえ出来ない。俺は足手まといだから」
「…ナナさん」
「悪ぃ…忘れてくれ」
「いえ…私も、同じです…」
きゅっと自分の手をきつく握り締めて、それでもヒナタは真っ直ぐ前を見ていた。
「でも、諦めたくない…。ナルトくんが、そうであるように」
少しこちらを向いて、にこっと笑う。その笑みに笑い返すことは出来なかった。
あまりにも眩しすぎる。
「あんた…すげぇな」
「あっ…また、わ、私…」
「かっこいいよ。ナルトとお似合いだと思う」
かあっと赤くなって俯く姿はただの恋する女の子なのに、ナナよりも小さい体で強い心を持っている。
「あ、あ、あの…ナナさんの、好きな人のこと、聞いていいですか…?」
「ん?…そうだな」
カカシのこと、改めて口に出すことなんてなかったから、いざ考えてみると少し小っ恥ずかしい。
普通だったらこんな話になんか答えなかっただろうが、ヒナタが真面目に話してくれたから、答えなければいけないと思った。
「強くて、暖かくて…俺をわかってくれる。いつだって、傍にいたいんだ」
「…素敵」
「今だって…傍で支えたかった…」
「…そ、傍にいることが全てじゃないです。帰りを待つ人も…大事だと、わ、私は思っています」
握りこぶしを作って元気づけようとするヒナタに、胸が熱くなった。きゅ、と締め付けられるような感覚。この熱さは嫌じゃない。
「…ありがとう」
ようやく、自然に笑えた気がした。
・・・
ヒナタと別れてから、ナナは一人で木ノ葉の里の外れにある門に向かった。
一人になりたかったのと、少しでも早くカカシに会いたかったのと。それから、カブトから逃げるため。
さすがに任務に出た木ノ葉の忍が戻ってくるような場所に来ることはないだろう。
「諦めない…。傍にいることが全てじゃない…」
ぽつりぽつりとヒナタの言葉を思い出す。そんなこと、考えたこともない、ような気がする。
余りにも真っ直ぐで、素直な言葉。
それを素敵だと思う反面、それ故に自分の汚いところが浮き出て感じられる。
「カカシ…」
ナナは門の脇に立って、体をきつく抱き締めた。
この体は、何人の男を相手にしきたのか、もう覚えてもいない。
でも、昔の方がまだマシだった。
「自分から…好きでもない男を…」
好きでもない男を誘った挙句、気持ち良くて、喘いで。でも足りない。カブトでないと本当の快楽は与えてくれない。
そんなことを一瞬でも考えてしまった自分の頬を打つ。
「それだけは、駄目だ。絶対に…」
頭を抱えて目を閉じる。
「カカシ…」
名前を呼び続ける。そうしていれば、変なことを考えずに済むかもしれない。
そうして目を閉じて、また思い出した。
・・・・・・
・・・
ゆらりと近寄る大きな男。小さくて細い腕は抵抗する力を持ち合わせてなどいなかった。
掴まれて、床に叩きつけられると、肌に空気が当たって。唯一持っていた服が布きれに姿を変える。
「や…っ」
まだ綺麗だった体に這う男の手。下半身に熱が集まる初めての感覚に恐怖しか感じなかった。
その後はずっと痛みに堪えて歯を食いしばるだけ。無理矢理こじ開けられた体は、男を受け付ける器となってしまった。
「痛い…も、ヤダぁ…」
泣いたって、誰も助けてくれない。声は居場所を知らせるためのもの。聞きつけた男は笑みを張り付けてやって来る。
「あ、ぅ…」
体に走る感覚は、数を重ねるにつれて気持ちの良いものに変わり始める。痛みとはなんだったのか、麻痺して、おかしくなって。
声も体も、喜ばせるものに変わって。気付いた時には、最悪の連鎖にはまっていた。
・・・
・・・・・・
「う…っぐ、」
ナナは地に手をついた。気持ちが悪い。五色は本当に嫌な場所だった。
##NAME2##が現れなかったらどうなっていたか。考えるだけでもおぞましい。
「昔の方がマシ…?なわけあるかよ…」
むしろあの時代と比べたら、どんなこともマシに思える。
「昔から…俺は弱かった」
いつだって、誰かの力に縋っていた。一度力をつけたせいで、思い上がっていたのかもしれない。
「待つのが…俺の役割だった…」
地についた手に力が籠る。握り締めた手に頭を乗せて、ナナの体は小刻みに震えた。
「なァ、俺…どこで間違ったんだ?」
誰に問うわけでもない。自分を笑った。
せっかくヒナタの言葉に勇気づけられたと思ったのに、結局辿り着くのはここ。自虐的になる弱い自分。
「嫌だ…カカシ…置いていかないで」
信じられないくらい弱弱しく、震えた声が漏れた。
それに自分でも驚いて、揺れる瞳を見開き、静かに体を起き上らせる。
これ以上カカシに心配を、迷惑をかけたくない。かけるわけにいかない。嫌われるようなことは…
唇を強く噛み、ナナは門の向こうを見つめた。
そして一歩、足を踏み出した。
・・・
いのとチョウジとカカシと、増援として到着したヤマトとナルト。彼らの眼前にいるのは、暁の一人、不死身の男。
もともと二人組だったが、もう一人はシカマルが一人で相手をしている。
どちらも、戦況はナルト達に向いていた。
シカマルは頭を使い相手を追い込み、カカシは二度敵を殺している。
「奴は心臓が五つある。残りは三つ…三回殺す必要がある」
「オレに…やらせてくれってばよ」
ナルトの術は既に五割完成していた。五割、といえどもはや別人。
ナルトの手に回るチャクラは風の性質を持ち、激しい高音を鳴り響かせている。
その場にいる誰もが目を見張った。
「ボクも加勢する!」
「駄目だ!巻き添えをくうよ!」
体を乗り出したチョウジをヤマトが制する。それほど、ナルトの習得した術は強大なものだった。
凝縮されたチャクラは最大の力を発揮し、その高速の回転は相手を攻撃し続けるだろう。
「ナルト、その術はゼロ距離でぶつけないと…それに発動時間も短い。ただ突っ込んでもぶつからないよ」
「…わかってるってばよ」
影分身をつくり、一人で陽動作戦に出る。ナルトはどうしても一人で敵を倒したかった。
三人の陽動に続いて術を発動した一人が続く。敵は、術を発動した一人、オリジナルを狙いに来た。
ナルトは変わった、それは術を習得したということだけではない。頭も使えるようになっていた。
陽動の中に混ぜていたオリジナル。それが、敵に攻撃をぶつける。初めからそのつもりだったのだ。
ケタ違いの攻撃回数は、一度で敵を粉砕した。残り三回、など必要なく、一度で相手を倒すに至ったのだった。
・・・
無事、敵を倒し一息つく彼ら。
そこにシカマルとサクラとサイも到着した。増援としてシカマルの方に向かったサクラとサイだったが、着いた時には戦いは終わっていたのだ。
シカマルは一人で、アスマの仇を討ったのだった。
そのまま再びナルト達の方へと戻ってきたサクラとサイ、しかしそこにはもう一人。
それに真っ先に気付いたのはカカシだ。
「あれ、ナナ…?」
サクラとサイに支えられるようにして、そこにいる。俯いているし、やけに薄着で、髪は湿っているように見えるが、間違いなくナナだ。
「ナナ、大丈夫なのか?無理して来なくて良かったんだぞ…」
「…途中でナナさんを見かけたので、一緒に、来たんですけど」
サクラもサイも、少し複雑そうな顔をしている。
俯いたままのナナに、そこにいる全員の視線が何気なく集まった。ナルトに関しては、力を使い果たしてバテているが。
「ナナ…?」
何も返事がない。心配になってカカシが近付くと、ようやくナナの顔が上がった。
「…!」
ぼろぼろと涙が零れ落ちて、顔は真っ赤に染まっている。そんなナナの状態に、カカシは言葉なく目を丸くさせた。
一体どうしてこんなことに。困惑しているうちに、ナナの腕がカカシの背に回っていた。
「お、俺…っ足手まとい、で…来ても、迷惑と思っ…」
「ちょ、っと、ナナ落ち着いて」
「でも…待ってても、俺っ、弱気に…ッ」
嗚咽で上手く話せていない。けれど、何が言いたいのか、カカシには全部伝わっていた。
「どうして、急にそんな弱気になった?」
「わ、かんな…。俺、今、変で…、不安に…」
「ナナ。ナナを置いていったりしないよ」
「ん…、ぅ」
こくこくと首が縦に振られて、カカシは頬を緩めた。背を撫でてやると、少しずつ息も整っていく。
ナナの全てがカカシ中心で動いている。それが愛おしくて、痛々しくて。そっと髪にキスを落とす。
そこまでやってカカシは周りの視線を思い出し、恐る恐る見渡した。
「あー…ね。まぁ、さすがに…察した?」
カカシに対して送られる、じとっとした目。
「そんな、ナナさんが…」
「え、カカシ先生ってそういう趣味だったの?」
「…オレは、何も見てないっす」
「これって、あれですよね。本で読みました。ホ」
「サイ、言わなくていいから!」
ゆっくりと首を回して、カカシは最後の綱であるヤマトに目を向けた。
「…ナナは、ボクから見ても、綺麗だと…思いますよ」
「おい」
闘いはまだまだ始まったばかりで、この後も休む間なく里を出ることになるだろう。
カカシは未だぎゅっと締め付けてくるナナに、確かな不安を感じていた。そしてこの時は撫でてやることしか出来なかった。
その不安の原因が何なのか、なんとなくわかっていたのに。