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カカシ夢(2011.04~2016.09)
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連れていかれたのは、もう何度来たかわからない火影の元。そこにいる火影も連れて来てくれたシズネも複雑そうな顔をしている。どう説明してよいやら、そんな感じだ。
「まぁ、なんだ。簡潔に言えば、私たちにはどうすることも出来ん」
「…は」
頭をがしがしとかいてから綱手の言った言葉は、ナナの理解するところになかった。というか、全く中身が見えてこない。
「何か、大蛇丸のチャクラの一部が体の中に植え付けられている」
「植え、つけ…って、それで俺の体はどうなってんですか」
「よくはわからんが…恐らく支配するつもりだろう」
「支配?」
「…体の支配。自分の体のことだ、わからないか?」
ナナの手が胸に強く押し付けられた。突如訪れる体の熱さ。それの意味するところは、確かに、わかるような気がする。
「俺は、どうすれば」
「悪いが、それは大蛇丸にしか取り除くことは出来ん。もしくは、大蛇丸が死ぬかでもせんと…」
「だから、俺は、」
そんなことが聞きたいのではないのだ。もっと、大事なところ。
「今はカカシとヤマトが傍にいるな」
「は、い…」
「常にその二人の目の届く所にいろ」
「それだけですか…?」
何も、解決策になっていない。違う、解決策なんてなかった。結局大蛇丸の前にどうすることも出来ないということだ。
「…わかりました」
何も納得出来ていないまま首だけ縦に動かす。火影がそう言うのだから、それに従う他ない。
「その、このこと…カカシたちには」
「他の伝令係が伝えているはずだ」
「っ、」
伝わらなければ良かったのに。というか、知られたくなかった。
これ以上、信頼を失いたくなかった。
「ナナくん、大丈夫ですか…?」
「はい…」
「下まで送りますね」
シズネの手が、とんとナナの肩に置かれた。それに従って一歩足を動かす。シズネはナナに歩幅を合わせてくれていた。
・・・
外に出ると、ナナは大きく息を吸った。その息さえも少し震えている。
そんなナナの様子を見ていたシズネは、正面に立つとナナの頬に手を軽く置いた。
「ナナくん。君はもっと大人を頼るべきです」
「な、んだよ、急に」
「君は一人で抱え込もうとしすぎなんです。心配をかけまいとして、余計な心配をかけて…」
「俺は、もう子供じゃない」
「大人からしたら、まだまだ子供です」
怪訝そうなナナの瞳がじっとシズネを見つめる。近い距離と、目の前の綺麗な顔立ちに耐えられず、先に視線をはずしたのはシズネだった。
「あんただって、そう俺と変わらないだろ」
「え!?ナナくん、いくつですか?」
「20だけど」
「…私は三十路ですよ」
「……まじすか」
今度は視線を逸らしたナナをシズネが見つめる。そんなつもりはなかったが、思わず見惚れてしまう。それほど、やはりナナの容姿は人目を惹いた。
「…美しすぎるのも、考えものですね」
「は?」
「大蛇丸は、あなたの体を欲していると聞きました。チャクラとか、五色の力とかではなく…」
自分で言っておきながら、シズネは少し赤くなった自分の頬をかいた。
「すみません、余計なことを言いました」
「いや…。悪いだけじゃないんだ」
「…?」
ぽつりと呟いたナナは相変わらずどこか違うところを向いている。長い睫が揺れて、薄い唇が小さく開いた。
「この顔だったから…本当に愛してくれる人もいる」
「そんな、」
「俺、性格悪いだろ。わかってんだ、そんなこと」
「ナナくん、そんな卑屈にならないで」
頭を下げて、シズネの横を通り過ぎる。ナナの視線は地に向いたまま。それに危うさを感じて一歩踏み出したシズネの足は、すぐにピタッと止まった。
「カカシさん」
「ナナを回収しに来ました」
その会話に、ナナの足も止まっていた。シズネの背後に現れたカカシ。ナナがカカシの声に気が付かないはずがない。視線も、しっかりとカカシを捕らえている。
「ナルトが、ナナに一楽のラーメンを食わせたいって煩いんだよ」
「…そう」
ほんの少し柔らかくなったナナの表情。それを確認したシズネの表情も、安心したようなものに変わった。
「…頼れる人、いるじゃないですか」
「ん?何か言いました?」
「いえ。カカシさん、あとお願いします」
シズネが背中を向けて去って行く。その背中が見えなくなってから、カカシはすぐさまナナの手を握った。
誰も見ていないとはいえ、弾かれると思ったその手はぎゅっと握り返されている。
「あれ、嫌がらないの」
「…」
「キスしていい?」
「調子のんな」
今度はいつも通り弾かれる。その手をカカシはナナの胸に置いた。とくんとくん、と少し早めの心拍数。
「ナナの大丈夫は信じない」
「…」
カカシの言葉に、ナナはゆっくり目を地面に落とした。
・・・
また、ナルトの修業が始まった。増々激しくなる修業の内容に、カカシとヤマトの手は休まることなくなった。ナルトは九尾のチャクラがむき出しになるほど必死になっている。当然、ナナが一人になる時間は増えた。
「は、…ぁっ…」
三人に気付かれないように、少し距離をとった場所で一人息を荒くする。時間を有効活用しようと一人、刀を手に取ってチャクラを流した。何やら、思っていた以上に状況は悪くなっているようだ。
「くそ…っ、ふざけんなよ…」
チャクラを練るだけで胸の奥が熱くなる。このままでは、どんどん体がおかしくなってしまう。それでも、カカシやヤマトには気付かれたくなかった。
そんなことを繰り返していた時。彼らに悪い知らせが入った。
「…猿飛アスマさんが…亡くなりました…」
耳を疑わずにはいられなかった。カカシと親しかったその人。決して弱くはなかったはずだ。
いつ死ぬのかわからない、それが忍の世界。ナナだって何人も殺めてきたのに、急に“死”というものを近く感じてしまった。
葬儀のために一度里に戻る。
そこで見たカカシの辛そうな表情から、ナナは目を逸らした。なんとなく、見てはいけない気がしたのだ。気丈に振る舞いながらも、顔に出てしまっている、カカシの心の内を。
・・・
「ナナ」
葬儀が終わった後、茫然としていたナナの背後にカカシが立っていた。振り返ると、既にいつも通りの顔に戻ったカカシが映る。
「カカシ…」
「まさか、アスマがやられるなんてな」
「暁、だっけ」
「あぁ」
アスマは暁の二人組と戦っていたのだと聞いた。詳しい事は聞いていないが、ナルトの同期であるシカマルを含む中忍以上で形成された小隊で動いていたらしい。
「ナナ、怒らずに聞いて欲しい」
「…何」
「アスマをやった奴と戦いに行く」
「は…!?」
「聞けって」
カカシの掌がナナの顔を前に出る。黙って聞け、そう言いたいのだろうが、ナナの体は我慢ならないようで小刻みに震えた。
「アスマの教え子だった子達が勝手に行動しようとしている。それを見過ごすことは出来ないだろ」
「それで…?」
「小隊は四人は必要だ。オレが監視役兼、として小隊に加わる」
「なんで、あんたが…。だったら、俺も」
カカシはナナの言葉には何も言わずに首を横に振った。
「そ、か…今の俺は、足手まといだもんなぁ…」
「…ナナは、ナルトとヤマトと、後から来てくれ。もう二人には言ってある」
ナルトの技はまだ完成していない。それが完成したら、援護として後から来るように。必要なのは、ナルトの力だ。
「俺は…」
「ナナ、心配するな。アスマの時と違って、相手がわかっているから対策も出来る」
「俺は、邪魔にしか、なれないのか…」
「ナナ」
こんなに悔しいことが、未だ嘗てあったろうか。悔しさでどうにかなりそうだった。力がないから、今はここでカカシを送り出すことしか出来ない。
「し…」
「死なない。オレはナナを置いていったりしないよ」
「そんなこと」
「まだ、ナナを他のヤツに渡したくなんかないからな」
「…っ」
一瞬、額に触れるカカシの唇の感触。それに驚いて体を固くさせている間に、カカシは目の前からいなくなっていた。
ほんのり残るカカシの感触。手で額を抑えて、そのまま髪の毛をくしゃっと握りしめた。
「信じることしか、出来ないのか…」
大蛇丸のせいだ。あいつが変なものを残すから。
大蛇丸の姿が過って、身体が熱くなる。思わずその場に座り込んで、自分を抱え込むようにうずくまった。
「はっ…確かに、こんなじゃ…何も、」
こうなる感覚が短くなってきている。そして、それが性欲を掻き乱すものになってきていることにも気付いていた。そんなの、カカシにだけは知られたくない。
「ナナ…?」
そんなことを考えたのがいけなかったのか。綱手から目を離さないように言われているヤマトが、こうなっているナナに気付かないはずもなく。
「ナナ、大丈夫!?」
「やっ、馬鹿!触んな…!」
肩に触れたヤマトの手を弾く。紅潮した頬と荒い息。何度か見た発作は、ヤマトの目から見ても今までとは違うものに変わっていた。
「…今、カカシ先輩は戦いに向かった、よね」
「ん…」
「このことは」
「知られて、たまるかよ…」
「とりあえず…ボクはナルトの修業に戻るよ。ナナは、一度綱手様のところで診てもらった方がいい」
刺激しないように、ヤマトの手は優しくナナの手を引いた。しっかり地面に立てていることを確認して、それでも心配そうな目を向けてくる。
「隊長…は、早くナルトと修業に…。俺は、一人で平気だから」
「…本当に?」
「あぁ」
ヤマトも焦っているのだろう。早く援護に行かなければならないということ。
ヤマトはナナに背を向けてナルトの方に駈け出して行った。
「はぁ…っ、くそ…」
援護にすらいけないかもしれない。ナナは歪ませた顔を手で覆って俯いた。
・・・
長い間、熱が治まるのを待っていた。葬儀が終わってから、もうずいぶん経つ。その付近にはもはや誰もいなくなっていた。
「…な、んで」
ゆっくり立ち上がるも、ぶるっと体が疼いた。
おかしい。いつもは時間が解決してくれたのに、治まる気配が全くない。
「おい、っざけんな…」
綱手の元に行くのもはばかられる。誰にも会いたくない。
「っく、」
何も考えるな。余計なことは何も。自分に言い聞かせながら、一歩一歩と足を進める。何故だか、足だけは自然と動いていた。ぼーっとする頭で、どこに向かっているのかもわかっていないまま、足だけを動かす。
暫くして着いたのは、里の端にある演習場だった。修業用に設置された切株に体を預けて座り込む。熱すぎる熱をどうにかしたくて、ナナは自分の股間に手を置いていた。
「ぁ、ッ」
着物の上から擦っただけで声が出る。頭には、どういうわけか大蛇丸の影。おかしい、間違ってる、そう思うのは頭の片隅、ほんの少しだけ。
「お、ろちまる…さま」
勝手に動いた口。我に返って自分の口を抑えたナナの耳に、がさっという足音が入った。
「あーあ。もう頭の支配まで到達しちゃってるね」
「な、だ…誰…」
その声には聞き覚えがあった。足音のした方に向けた視界には、その声の主が映っている。
「わからないの?悲しいなあ」
「まさか…カブト…」
にやりと弧を描いた口。そこにいるのは薬師カブト、であるはず。しかし、その姿は大蛇丸にも似た、蛇の目を持っていた。
「君に朗報だよ」
そこにいるのがカブトだとわかり、ナナは少し身構えた。刀に手を置いて、いつでも抜刀出来るようにする。それを気にしない様子で、カブトは続けた。
「大蛇丸様は死んだ。うちはサスケが殺した」
「…え」
大蛇丸が死んだ、ということは、どういうことだ。綱手の言った言葉を思い出す。仕込まれた大蛇丸のチャクラは、大蛇丸にしか取り出せない。もしくは、大蛇丸が死ねば…
「じゃ、じゃあ、なんで…俺の体は」
「今、大蛇丸様はボクの中にいるんだよ」
「は…?」
「ボクが大蛇丸様を取り込んだんだ」
意味のわからないことを言う。しかし、それは納得せざるを得なかった。カブトが近付くたびに高まる熱。カブトの変わり果てた容姿。
「君に仕込まれたのは、身体の支配と頭の支配。このままだと、君は大蛇丸様に洗脳されてしまう」
「っ…」
「でもね、ボクは君を洗脳したくはないんだよ。従順な君は、君じゃない。ボクは反抗的な君の目がたまらなく好きなんだ」
一歩、カブトが近付く。
「く、くんな…」
「取り除いてあげるよ」
「や、」
カブトの口から、長い舌がチラついた。それがナナの方に伸びてくる。嫌なのに、体が動かない。無意識にナナは招き入れるように口を開いていた。
「ん、…っ!」
中まで入り込んでくる長い舌に涙が出た。しかし、カブトの言うことは本当だった。途端にナナの頭はすっきりしてくる。
「う、げほっ…!」
「これで君は…」
「ッあ、あ、触んな!」
カブトの手がナナの腰を擦った。それだけなのに、ナナの体は大きく揺れた。体の支配は残ったままであるナナの体は、カブトに触られるだけで反応してしまう。
「洗脳されたままの方が、マシだったかもね」
「や、っ嫌だ、あ、」
感じたことのないほどの快楽が体を突き抜ける。それでも、腰を触られているだけでは絶頂を向かえることが出来ない。もどかしい、もっと気持ち良くなりたい。
「ここ、触って欲しいだろ」
「っくそ…調子、のんな」
「そうそう、そういうの待ってた」
カブトの手が、ナナの着物の中に入り込んだ。そのまま、既に大きくなったものを握り込む。途端にナナの体が大きく跳ねた。
「あ…!」
「ほら、どう?気持ちいいだろ」
「っ、や、め、ッああ!」
「君は、これからもこの感覚を思い出すんだ。ボクに触られた時の感覚を思い出して、ボクじゃなきゃいけなくなる」
足を持ち上げられて、無理矢理カブトの熱を押し込まれる。痛いのなんて一瞬。堪らない快感だけが体を突き上げていた。
「はっ、う…」
「ああ…やっぱり君の中は、最高だよ」
「うそ、だ…こんな、んっ…!」
「好きだよ、ナナくん…」
「あ、ああ、あ!」
滲んだ涙が頬をつたう。刀は腰に付いている。体の自由が奪われているわけでもない。それなのに、抵抗出来なかった。感じたことのないほどの快感は、ナナの頭を麻痺させていた。
洗脳された方がマシ。その言葉の意味がようやくわかってくる。
頭は嫌だと訴えるのに、あまりの快楽は欲しいと求めてしまう。ナナの体と頭に起こる葛藤。そして、この行為が終わった後、後悔に苛まれるのだろう。
また、抱かれてしまった、と。
拒否出来なかったと。
重たい目をゆっくりと開く。ぼんやりしていた視界がはっきりしてくると、白い天井が見えていることに気付いた。
ここはどこだろう。起き上ろうとすれば体がズキズキと痛んで、柔らかいシーツを指が触った。
「あ…?」
「お、起きたか」
少し軽めの声が聞こえ、ナナは横に視線を向けた。
「大丈夫か?」
「え…あ、あんたは」
少し長めの髪に咥えた千本が特徴的な男。
それが中忍試験の時に試験官を務めていた不知火ゲンマであると気付くには少し時間が必要だった。記憶力があるとはいえ、もう二年以上前の話だ。
「お前さん、またなんか問題起こしたのか?ヤマトさんが相当心配してたぞ」
「…俺は、…ここはどこだ?」
「悪いが、オレの家に運ばせてもらったぞ。あんな恰好の奴を綱手様の所へは連れていけないからな」
あんな格好…?暫く考えて、ナナはさっと青冷めた。
カブトに襲われてその後、どうしたのか全く記憶にない。やられている間に意識を失った可能性が高い。
「何があったのか、話せるか?」
「…嫌だ」
「言い方が悪かったな。何があったのか話せ。お前さんのことは報告しなきゃならんからな」
「そ、れは尚更困る…」
恐らく、ナナが大蛇丸の支配を受けつつあることを聞いているのだろう。木ノ葉の忍として、カカシには勿論、綱手にも報告するはずだ。
それは困る。薬師カブトに犯されたなど、口が裂けても言えない。
「…大蛇丸に会ったのか?襲われたんじゃないのか?」
「違う」
「はぁ、言いたかないだろうけどな…お前さんの行動は把握すべきなんだと。わかってくれ」
一糸纏わぬ姿で、下半身にだけ布がかけられている。その自分の状態から、なんとなく何があったか想像できた。
汚されたままに倒れていたナナを見つけたゲンマが、ここに連れて帰り、体を拭ってくれたのだろう。誰かに犯されたのだろうという憶測しか、ゲンマには出来ていないはずだ。
「…別に、その辺の男捕まえて楽しんでただけだ」
軽蔑されたっていい。事実がカカシに知られなければどんな手段だって使ってやる。
「久々に激しかったから意識飛ばしたんだろ」
「…それを、信じろって?」
「任務に連れていってもらえなくてイライラしてたんだよ、それだけだ」
「んー…」
困ったように頭を抑えるゲンマ。これが事実かどうかの疑いと、このことを報告すべきかで迷っているのだろうか。
となると、この嘘が報告されることも避けなければならない。
「俺の性癖が知られるのは困る。誰にも言わないでくれ」
「あ、あのなぁ」
「…あんたにも、やらせてやるから」
「あぁ?」
ゲンマの言葉を待たず、ナナはゲンマの肩を掴んで自分が寝かされていたベッドに押し倒した。
「おいおい、オレにそんな趣味は」
「目閉じてじっとしてればいい」
ゲンマの下半身に手を伸ばす。しかし、ズボンに手をかける前に手を掴まれ、逆に抑え込まれてしまった。
さすがに特別上忍の名を持つ忍だ。体もナナより大きいゲンマの抵抗をくらったら、どうすることも出来ない。
「っ、頼むよ、カカシには言わないでくれ、こんなこと…!」
「わぁった、わぁった。オレもこんなこと言いにくいしな」
呆れたように笑ったゲンマに安心して、ナナは体に入っていた力を抜いた。
ゲンマが悪い奴じゃなくて良かった。引かれたかもしれないが、カカシに伝わらないならそれくらい構わない。
カチャ、と千本が置かれる音が聞こえた。
「っん!」
「認めたかないが、お前さんの体に欲情しなかったわけじゃない」
「な、ん…結局やんのかよっ」
「やらせてくれるんだろ?口止め料として」
「…」
前言撤回。結局どいつもこいつも同じなのだと切なくなった。誘ったのは自分だとはいえ、男をこうも簡単に抱きたくなる精神はどうなのか。
そんなことを考えている暇もほとんど残されていなかった。
「ふ…っ、ぁ」
敏感になっている。ナナは自分の体の変化にすぐに気付いた。しかもそれだけではない。敏感になっているくせに、それが酷く物足りないのだ。
「胸…いいから、下触って…」
「ずいぶんと慣れてんだな」
「あんた知らないのか?俺が五色でどんな生活してたか…、んっ」
直接触られる刺激に、ナナの体がぴくりと揺れた。
どうして、こんなことをしているんだろうと、ふと正常に頭が働く。しかし手が勝手に自分の快楽を求めて動いた。
あぁ、結局、俺も同じか…。
「いれてもいいのか?」
「いれねぇで…っ、終わらせる気、だったのか?」
「はは、まさか」
熱が押し込まれる。それでも足りなくて、自分のものに手を這わせて。それを見たゲンマがいやらしく笑った。
「お前さん、すごいな」
「ぁ、ん…ッ、」
「元々綺麗だが、こりゃ相当だ」
「む、だ口叩くな…!も、っと、早く…」
自分が何を言っているかなんて、こうなったら考えていない。
しかしこれもまた後悔することをナナはわかっていた。だからこそ、何も考えないように快楽を求め続けた。
カブトに襲われたことをカカシに知られたくなくて、他の男とやる。意味のないことの繰り返し。
もはや、自分の体に価値なんて見出せなくなっていた。
「…シャワー使え。適当に休んだら出て行っていいぞ」
「本当に、言わないで下さいよ」
「言えないだろ、こんなこと」
呆れたようにも自嘲したようにも見える。ゲンマを信じて、ナナは重い腰を持ち上げ体を動かした。
シャワーなんかで洗い流せるはずがないのに、頭から流れる水を浴びることを止められなかった。
・・・
しわしわになるのではないかと思うくらいシャワーを浴び続けた後、ナナはほとんど濡れたまま立ち去った。
熱い体は風に当たって冷えていく。決してそのために濡れた体のまま飛び出したのではないが、今はそれが丁度良かった。
「ヤマト隊長はもう行っちまったか…」
カカシの援護。
思い出した途端、居ても経ってもいられなくなってしまった。
暁、猿飛アスマを殺した相手。カカシは弱くない、むしろ強い。しかし、そんな簡単なことではなくて。
「カカシ…」
こんなことしている間にカカシに何かあったら。
体が震えた。そんなことがあったら、もう生きていけない。生きていたくもない。
「カカシ…俺を、殺さないでくれよ…!」
目の前が歪む。
「…」
立ち止まって、辺りを見渡した。通り過ぎる人が、ナナを横目で見ている。
「最善策なんて、わかんねぇよ…」
ぽたぽたと髪から水が滴る。今何をするのが正しいのかなんてわからない。
唯一わかるのは、カカシの援護にはいけないということだ。
「ッ、」
腰にズキッと痛みが走って、ナナは膝を折った。ざわつく周りの声が煩い。
そのガヤの中の一つが近付いてきた。
「あ、…あの」
上から聞こえてきた高い声と、差し出された手。その手が体に触れそうになって、ナナは思わず叩いてしまった。
「きゃっ…」
自分でもその行動に驚いて、はっと顏を上げる。すると、そこには見たことのある顔があった。
「あ、あんたは…ナルトの…」
「は、はい…?」
それは、ナルトの同期である少女、日向ヒナタだった。
→
「まぁ、なんだ。簡潔に言えば、私たちにはどうすることも出来ん」
「…は」
頭をがしがしとかいてから綱手の言った言葉は、ナナの理解するところになかった。というか、全く中身が見えてこない。
「何か、大蛇丸のチャクラの一部が体の中に植え付けられている」
「植え、つけ…って、それで俺の体はどうなってんですか」
「よくはわからんが…恐らく支配するつもりだろう」
「支配?」
「…体の支配。自分の体のことだ、わからないか?」
ナナの手が胸に強く押し付けられた。突如訪れる体の熱さ。それの意味するところは、確かに、わかるような気がする。
「俺は、どうすれば」
「悪いが、それは大蛇丸にしか取り除くことは出来ん。もしくは、大蛇丸が死ぬかでもせんと…」
「だから、俺は、」
そんなことが聞きたいのではないのだ。もっと、大事なところ。
「今はカカシとヤマトが傍にいるな」
「は、い…」
「常にその二人の目の届く所にいろ」
「それだけですか…?」
何も、解決策になっていない。違う、解決策なんてなかった。結局大蛇丸の前にどうすることも出来ないということだ。
「…わかりました」
何も納得出来ていないまま首だけ縦に動かす。火影がそう言うのだから、それに従う他ない。
「その、このこと…カカシたちには」
「他の伝令係が伝えているはずだ」
「っ、」
伝わらなければ良かったのに。というか、知られたくなかった。
これ以上、信頼を失いたくなかった。
「ナナくん、大丈夫ですか…?」
「はい…」
「下まで送りますね」
シズネの手が、とんとナナの肩に置かれた。それに従って一歩足を動かす。シズネはナナに歩幅を合わせてくれていた。
・・・
外に出ると、ナナは大きく息を吸った。その息さえも少し震えている。
そんなナナの様子を見ていたシズネは、正面に立つとナナの頬に手を軽く置いた。
「ナナくん。君はもっと大人を頼るべきです」
「な、んだよ、急に」
「君は一人で抱え込もうとしすぎなんです。心配をかけまいとして、余計な心配をかけて…」
「俺は、もう子供じゃない」
「大人からしたら、まだまだ子供です」
怪訝そうなナナの瞳がじっとシズネを見つめる。近い距離と、目の前の綺麗な顔立ちに耐えられず、先に視線をはずしたのはシズネだった。
「あんただって、そう俺と変わらないだろ」
「え!?ナナくん、いくつですか?」
「20だけど」
「…私は三十路ですよ」
「……まじすか」
今度は視線を逸らしたナナをシズネが見つめる。そんなつもりはなかったが、思わず見惚れてしまう。それほど、やはりナナの容姿は人目を惹いた。
「…美しすぎるのも、考えものですね」
「は?」
「大蛇丸は、あなたの体を欲していると聞きました。チャクラとか、五色の力とかではなく…」
自分で言っておきながら、シズネは少し赤くなった自分の頬をかいた。
「すみません、余計なことを言いました」
「いや…。悪いだけじゃないんだ」
「…?」
ぽつりと呟いたナナは相変わらずどこか違うところを向いている。長い睫が揺れて、薄い唇が小さく開いた。
「この顔だったから…本当に愛してくれる人もいる」
「そんな、」
「俺、性格悪いだろ。わかってんだ、そんなこと」
「ナナくん、そんな卑屈にならないで」
頭を下げて、シズネの横を通り過ぎる。ナナの視線は地に向いたまま。それに危うさを感じて一歩踏み出したシズネの足は、すぐにピタッと止まった。
「カカシさん」
「ナナを回収しに来ました」
その会話に、ナナの足も止まっていた。シズネの背後に現れたカカシ。ナナがカカシの声に気が付かないはずがない。視線も、しっかりとカカシを捕らえている。
「ナルトが、ナナに一楽のラーメンを食わせたいって煩いんだよ」
「…そう」
ほんの少し柔らかくなったナナの表情。それを確認したシズネの表情も、安心したようなものに変わった。
「…頼れる人、いるじゃないですか」
「ん?何か言いました?」
「いえ。カカシさん、あとお願いします」
シズネが背中を向けて去って行く。その背中が見えなくなってから、カカシはすぐさまナナの手を握った。
誰も見ていないとはいえ、弾かれると思ったその手はぎゅっと握り返されている。
「あれ、嫌がらないの」
「…」
「キスしていい?」
「調子のんな」
今度はいつも通り弾かれる。その手をカカシはナナの胸に置いた。とくんとくん、と少し早めの心拍数。
「ナナの大丈夫は信じない」
「…」
カカシの言葉に、ナナはゆっくり目を地面に落とした。
・・・
また、ナルトの修業が始まった。増々激しくなる修業の内容に、カカシとヤマトの手は休まることなくなった。ナルトは九尾のチャクラがむき出しになるほど必死になっている。当然、ナナが一人になる時間は増えた。
「は、…ぁっ…」
三人に気付かれないように、少し距離をとった場所で一人息を荒くする。時間を有効活用しようと一人、刀を手に取ってチャクラを流した。何やら、思っていた以上に状況は悪くなっているようだ。
「くそ…っ、ふざけんなよ…」
チャクラを練るだけで胸の奥が熱くなる。このままでは、どんどん体がおかしくなってしまう。それでも、カカシやヤマトには気付かれたくなかった。
そんなことを繰り返していた時。彼らに悪い知らせが入った。
「…猿飛アスマさんが…亡くなりました…」
耳を疑わずにはいられなかった。カカシと親しかったその人。決して弱くはなかったはずだ。
いつ死ぬのかわからない、それが忍の世界。ナナだって何人も殺めてきたのに、急に“死”というものを近く感じてしまった。
葬儀のために一度里に戻る。
そこで見たカカシの辛そうな表情から、ナナは目を逸らした。なんとなく、見てはいけない気がしたのだ。気丈に振る舞いながらも、顔に出てしまっている、カカシの心の内を。
・・・
「ナナ」
葬儀が終わった後、茫然としていたナナの背後にカカシが立っていた。振り返ると、既にいつも通りの顔に戻ったカカシが映る。
「カカシ…」
「まさか、アスマがやられるなんてな」
「暁、だっけ」
「あぁ」
アスマは暁の二人組と戦っていたのだと聞いた。詳しい事は聞いていないが、ナルトの同期であるシカマルを含む中忍以上で形成された小隊で動いていたらしい。
「ナナ、怒らずに聞いて欲しい」
「…何」
「アスマをやった奴と戦いに行く」
「は…!?」
「聞けって」
カカシの掌がナナの顔を前に出る。黙って聞け、そう言いたいのだろうが、ナナの体は我慢ならないようで小刻みに震えた。
「アスマの教え子だった子達が勝手に行動しようとしている。それを見過ごすことは出来ないだろ」
「それで…?」
「小隊は四人は必要だ。オレが監視役兼、として小隊に加わる」
「なんで、あんたが…。だったら、俺も」
カカシはナナの言葉には何も言わずに首を横に振った。
「そ、か…今の俺は、足手まといだもんなぁ…」
「…ナナは、ナルトとヤマトと、後から来てくれ。もう二人には言ってある」
ナルトの技はまだ完成していない。それが完成したら、援護として後から来るように。必要なのは、ナルトの力だ。
「俺は…」
「ナナ、心配するな。アスマの時と違って、相手がわかっているから対策も出来る」
「俺は、邪魔にしか、なれないのか…」
「ナナ」
こんなに悔しいことが、未だ嘗てあったろうか。悔しさでどうにかなりそうだった。力がないから、今はここでカカシを送り出すことしか出来ない。
「し…」
「死なない。オレはナナを置いていったりしないよ」
「そんなこと」
「まだ、ナナを他のヤツに渡したくなんかないからな」
「…っ」
一瞬、額に触れるカカシの唇の感触。それに驚いて体を固くさせている間に、カカシは目の前からいなくなっていた。
ほんのり残るカカシの感触。手で額を抑えて、そのまま髪の毛をくしゃっと握りしめた。
「信じることしか、出来ないのか…」
大蛇丸のせいだ。あいつが変なものを残すから。
大蛇丸の姿が過って、身体が熱くなる。思わずその場に座り込んで、自分を抱え込むようにうずくまった。
「はっ…確かに、こんなじゃ…何も、」
こうなる感覚が短くなってきている。そして、それが性欲を掻き乱すものになってきていることにも気付いていた。そんなの、カカシにだけは知られたくない。
「ナナ…?」
そんなことを考えたのがいけなかったのか。綱手から目を離さないように言われているヤマトが、こうなっているナナに気付かないはずもなく。
「ナナ、大丈夫!?」
「やっ、馬鹿!触んな…!」
肩に触れたヤマトの手を弾く。紅潮した頬と荒い息。何度か見た発作は、ヤマトの目から見ても今までとは違うものに変わっていた。
「…今、カカシ先輩は戦いに向かった、よね」
「ん…」
「このことは」
「知られて、たまるかよ…」
「とりあえず…ボクはナルトの修業に戻るよ。ナナは、一度綱手様のところで診てもらった方がいい」
刺激しないように、ヤマトの手は優しくナナの手を引いた。しっかり地面に立てていることを確認して、それでも心配そうな目を向けてくる。
「隊長…は、早くナルトと修業に…。俺は、一人で平気だから」
「…本当に?」
「あぁ」
ヤマトも焦っているのだろう。早く援護に行かなければならないということ。
ヤマトはナナに背を向けてナルトの方に駈け出して行った。
「はぁ…っ、くそ…」
援護にすらいけないかもしれない。ナナは歪ませた顔を手で覆って俯いた。
・・・
長い間、熱が治まるのを待っていた。葬儀が終わってから、もうずいぶん経つ。その付近にはもはや誰もいなくなっていた。
「…な、んで」
ゆっくり立ち上がるも、ぶるっと体が疼いた。
おかしい。いつもは時間が解決してくれたのに、治まる気配が全くない。
「おい、っざけんな…」
綱手の元に行くのもはばかられる。誰にも会いたくない。
「っく、」
何も考えるな。余計なことは何も。自分に言い聞かせながら、一歩一歩と足を進める。何故だか、足だけは自然と動いていた。ぼーっとする頭で、どこに向かっているのかもわかっていないまま、足だけを動かす。
暫くして着いたのは、里の端にある演習場だった。修業用に設置された切株に体を預けて座り込む。熱すぎる熱をどうにかしたくて、ナナは自分の股間に手を置いていた。
「ぁ、ッ」
着物の上から擦っただけで声が出る。頭には、どういうわけか大蛇丸の影。おかしい、間違ってる、そう思うのは頭の片隅、ほんの少しだけ。
「お、ろちまる…さま」
勝手に動いた口。我に返って自分の口を抑えたナナの耳に、がさっという足音が入った。
「あーあ。もう頭の支配まで到達しちゃってるね」
「な、だ…誰…」
その声には聞き覚えがあった。足音のした方に向けた視界には、その声の主が映っている。
「わからないの?悲しいなあ」
「まさか…カブト…」
にやりと弧を描いた口。そこにいるのは薬師カブト、であるはず。しかし、その姿は大蛇丸にも似た、蛇の目を持っていた。
「君に朗報だよ」
そこにいるのがカブトだとわかり、ナナは少し身構えた。刀に手を置いて、いつでも抜刀出来るようにする。それを気にしない様子で、カブトは続けた。
「大蛇丸様は死んだ。うちはサスケが殺した」
「…え」
大蛇丸が死んだ、ということは、どういうことだ。綱手の言った言葉を思い出す。仕込まれた大蛇丸のチャクラは、大蛇丸にしか取り出せない。もしくは、大蛇丸が死ねば…
「じゃ、じゃあ、なんで…俺の体は」
「今、大蛇丸様はボクの中にいるんだよ」
「は…?」
「ボクが大蛇丸様を取り込んだんだ」
意味のわからないことを言う。しかし、それは納得せざるを得なかった。カブトが近付くたびに高まる熱。カブトの変わり果てた容姿。
「君に仕込まれたのは、身体の支配と頭の支配。このままだと、君は大蛇丸様に洗脳されてしまう」
「っ…」
「でもね、ボクは君を洗脳したくはないんだよ。従順な君は、君じゃない。ボクは反抗的な君の目がたまらなく好きなんだ」
一歩、カブトが近付く。
「く、くんな…」
「取り除いてあげるよ」
「や、」
カブトの口から、長い舌がチラついた。それがナナの方に伸びてくる。嫌なのに、体が動かない。無意識にナナは招き入れるように口を開いていた。
「ん、…っ!」
中まで入り込んでくる長い舌に涙が出た。しかし、カブトの言うことは本当だった。途端にナナの頭はすっきりしてくる。
「う、げほっ…!」
「これで君は…」
「ッあ、あ、触んな!」
カブトの手がナナの腰を擦った。それだけなのに、ナナの体は大きく揺れた。体の支配は残ったままであるナナの体は、カブトに触られるだけで反応してしまう。
「洗脳されたままの方が、マシだったかもね」
「や、っ嫌だ、あ、」
感じたことのないほどの快楽が体を突き抜ける。それでも、腰を触られているだけでは絶頂を向かえることが出来ない。もどかしい、もっと気持ち良くなりたい。
「ここ、触って欲しいだろ」
「っくそ…調子、のんな」
「そうそう、そういうの待ってた」
カブトの手が、ナナの着物の中に入り込んだ。そのまま、既に大きくなったものを握り込む。途端にナナの体が大きく跳ねた。
「あ…!」
「ほら、どう?気持ちいいだろ」
「っ、や、め、ッああ!」
「君は、これからもこの感覚を思い出すんだ。ボクに触られた時の感覚を思い出して、ボクじゃなきゃいけなくなる」
足を持ち上げられて、無理矢理カブトの熱を押し込まれる。痛いのなんて一瞬。堪らない快感だけが体を突き上げていた。
「はっ、う…」
「ああ…やっぱり君の中は、最高だよ」
「うそ、だ…こんな、んっ…!」
「好きだよ、ナナくん…」
「あ、ああ、あ!」
滲んだ涙が頬をつたう。刀は腰に付いている。体の自由が奪われているわけでもない。それなのに、抵抗出来なかった。感じたことのないほどの快感は、ナナの頭を麻痺させていた。
洗脳された方がマシ。その言葉の意味がようやくわかってくる。
頭は嫌だと訴えるのに、あまりの快楽は欲しいと求めてしまう。ナナの体と頭に起こる葛藤。そして、この行為が終わった後、後悔に苛まれるのだろう。
また、抱かれてしまった、と。
拒否出来なかったと。
重たい目をゆっくりと開く。ぼんやりしていた視界がはっきりしてくると、白い天井が見えていることに気付いた。
ここはどこだろう。起き上ろうとすれば体がズキズキと痛んで、柔らかいシーツを指が触った。
「あ…?」
「お、起きたか」
少し軽めの声が聞こえ、ナナは横に視線を向けた。
「大丈夫か?」
「え…あ、あんたは」
少し長めの髪に咥えた千本が特徴的な男。
それが中忍試験の時に試験官を務めていた不知火ゲンマであると気付くには少し時間が必要だった。記憶力があるとはいえ、もう二年以上前の話だ。
「お前さん、またなんか問題起こしたのか?ヤマトさんが相当心配してたぞ」
「…俺は、…ここはどこだ?」
「悪いが、オレの家に運ばせてもらったぞ。あんな恰好の奴を綱手様の所へは連れていけないからな」
あんな格好…?暫く考えて、ナナはさっと青冷めた。
カブトに襲われてその後、どうしたのか全く記憶にない。やられている間に意識を失った可能性が高い。
「何があったのか、話せるか?」
「…嫌だ」
「言い方が悪かったな。何があったのか話せ。お前さんのことは報告しなきゃならんからな」
「そ、れは尚更困る…」
恐らく、ナナが大蛇丸の支配を受けつつあることを聞いているのだろう。木ノ葉の忍として、カカシには勿論、綱手にも報告するはずだ。
それは困る。薬師カブトに犯されたなど、口が裂けても言えない。
「…大蛇丸に会ったのか?襲われたんじゃないのか?」
「違う」
「はぁ、言いたかないだろうけどな…お前さんの行動は把握すべきなんだと。わかってくれ」
一糸纏わぬ姿で、下半身にだけ布がかけられている。その自分の状態から、なんとなく何があったか想像できた。
汚されたままに倒れていたナナを見つけたゲンマが、ここに連れて帰り、体を拭ってくれたのだろう。誰かに犯されたのだろうという憶測しか、ゲンマには出来ていないはずだ。
「…別に、その辺の男捕まえて楽しんでただけだ」
軽蔑されたっていい。事実がカカシに知られなければどんな手段だって使ってやる。
「久々に激しかったから意識飛ばしたんだろ」
「…それを、信じろって?」
「任務に連れていってもらえなくてイライラしてたんだよ、それだけだ」
「んー…」
困ったように頭を抑えるゲンマ。これが事実かどうかの疑いと、このことを報告すべきかで迷っているのだろうか。
となると、この嘘が報告されることも避けなければならない。
「俺の性癖が知られるのは困る。誰にも言わないでくれ」
「あ、あのなぁ」
「…あんたにも、やらせてやるから」
「あぁ?」
ゲンマの言葉を待たず、ナナはゲンマの肩を掴んで自分が寝かされていたベッドに押し倒した。
「おいおい、オレにそんな趣味は」
「目閉じてじっとしてればいい」
ゲンマの下半身に手を伸ばす。しかし、ズボンに手をかける前に手を掴まれ、逆に抑え込まれてしまった。
さすがに特別上忍の名を持つ忍だ。体もナナより大きいゲンマの抵抗をくらったら、どうすることも出来ない。
「っ、頼むよ、カカシには言わないでくれ、こんなこと…!」
「わぁった、わぁった。オレもこんなこと言いにくいしな」
呆れたように笑ったゲンマに安心して、ナナは体に入っていた力を抜いた。
ゲンマが悪い奴じゃなくて良かった。引かれたかもしれないが、カカシに伝わらないならそれくらい構わない。
カチャ、と千本が置かれる音が聞こえた。
「っん!」
「認めたかないが、お前さんの体に欲情しなかったわけじゃない」
「な、ん…結局やんのかよっ」
「やらせてくれるんだろ?口止め料として」
「…」
前言撤回。結局どいつもこいつも同じなのだと切なくなった。誘ったのは自分だとはいえ、男をこうも簡単に抱きたくなる精神はどうなのか。
そんなことを考えている暇もほとんど残されていなかった。
「ふ…っ、ぁ」
敏感になっている。ナナは自分の体の変化にすぐに気付いた。しかもそれだけではない。敏感になっているくせに、それが酷く物足りないのだ。
「胸…いいから、下触って…」
「ずいぶんと慣れてんだな」
「あんた知らないのか?俺が五色でどんな生活してたか…、んっ」
直接触られる刺激に、ナナの体がぴくりと揺れた。
どうして、こんなことをしているんだろうと、ふと正常に頭が働く。しかし手が勝手に自分の快楽を求めて動いた。
あぁ、結局、俺も同じか…。
「いれてもいいのか?」
「いれねぇで…っ、終わらせる気、だったのか?」
「はは、まさか」
熱が押し込まれる。それでも足りなくて、自分のものに手を這わせて。それを見たゲンマがいやらしく笑った。
「お前さん、すごいな」
「ぁ、ん…ッ、」
「元々綺麗だが、こりゃ相当だ」
「む、だ口叩くな…!も、っと、早く…」
自分が何を言っているかなんて、こうなったら考えていない。
しかしこれもまた後悔することをナナはわかっていた。だからこそ、何も考えないように快楽を求め続けた。
カブトに襲われたことをカカシに知られたくなくて、他の男とやる。意味のないことの繰り返し。
もはや、自分の体に価値なんて見出せなくなっていた。
「…シャワー使え。適当に休んだら出て行っていいぞ」
「本当に、言わないで下さいよ」
「言えないだろ、こんなこと」
呆れたようにも自嘲したようにも見える。ゲンマを信じて、ナナは重い腰を持ち上げ体を動かした。
シャワーなんかで洗い流せるはずがないのに、頭から流れる水を浴びることを止められなかった。
・・・
しわしわになるのではないかと思うくらいシャワーを浴び続けた後、ナナはほとんど濡れたまま立ち去った。
熱い体は風に当たって冷えていく。決してそのために濡れた体のまま飛び出したのではないが、今はそれが丁度良かった。
「ヤマト隊長はもう行っちまったか…」
カカシの援護。
思い出した途端、居ても経ってもいられなくなってしまった。
暁、猿飛アスマを殺した相手。カカシは弱くない、むしろ強い。しかし、そんな簡単なことではなくて。
「カカシ…」
こんなことしている間にカカシに何かあったら。
体が震えた。そんなことがあったら、もう生きていけない。生きていたくもない。
「カカシ…俺を、殺さないでくれよ…!」
目の前が歪む。
「…」
立ち止まって、辺りを見渡した。通り過ぎる人が、ナナを横目で見ている。
「最善策なんて、わかんねぇよ…」
ぽたぽたと髪から水が滴る。今何をするのが正しいのかなんてわからない。
唯一わかるのは、カカシの援護にはいけないということだ。
「ッ、」
腰にズキッと痛みが走って、ナナは膝を折った。ざわつく周りの声が煩い。
そのガヤの中の一つが近付いてきた。
「あ、…あの」
上から聞こえてきた高い声と、差し出された手。その手が体に触れそうになって、ナナは思わず叩いてしまった。
「きゃっ…」
自分でもその行動に驚いて、はっと顏を上げる。すると、そこには見たことのある顔があった。
「あ、あんたは…ナルトの…」
「は、はい…?」
それは、ナルトの同期である少女、日向ヒナタだった。
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