黒バス(2012.10~2017.12)
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とんっとボールが跳ねる。
ゴールは火神の体重という大きな負担をかけられ、大きく軋んだ。
真司の目の前で繰り広げられているのは、勝負ともいえない圧倒的な手合せ。
黒子のバスケもさることながら、火神のバスケもなかなか。
「おい、お前…本当に最強っつうチームにいたんだよな…?」
「はい」
「…」
火神は聞いたところによると帰国子女であるらしい。
本場のバスケを仕込まれた火神にとって、日本のバスケはお遊びの域を超えなかった。
それ故に、今はただただ強い奴を求めている。
「お前なぁ…!強気で受けときながら、なんなんだよ!なんでオレに勝てると思ったんだよ!」
「まさか。ボクが火神君に勝てるわけないじゃないですか」
「あぁ!?」
「君の強さを直に見たかったんです」
白熱もしなかった1on1は火神が黒子のボールを弾いたところで終わった。
一触即発な雰囲気も、真司には滑稽なものに見える。
黒子と火神は全くもって噛み合っていないのだ。
「オマエ、バスケやめた方がいいよ。オマエにバスケの才能はねぇ」
努力だなんて言っても、天才っての間違いなく存在する。どんなに頑張っても、そこを超えることは出来ない。
そんなこと、真司も黒子もよく分かっている。
さすがに火神は言いすぎだ。真司は黒子と火神の上着を抱えたまま一歩前に出た。
「それは嫌です」
しかし、それを止めるように黒子ははっきりと言い放った。
「バスケが好きなんで。それに、ボクは誰が強いとかどうでもいいです」
「はぁ?」
「ボクは君とは違う。ボクは影だ」
火神の眉間にシワが寄る。元々悪い目つきはもっと悪くなって、いかにも悪人面だ。
黒子のその不可解な宣言は、火神の力を認めたという現れなのだろう。
「…ねぇ、火神君」
とはいえ、言われっぱなし、やられっぱなしも気に食わない。
「一回、俺ともやんない?」
「あ?」
「俺のシュート、止めてみせてよ」
「…いーけど。オマエはそれなりに出来んだろうな?」
「それはもう、やってみれば分かるんじゃないですかね」
真司は黒子に二人の制服を手渡した。
それと引き換えにバスケットボールが真司の手の上に乗せられる。
「テツ君、見てて。俺結構頑張ったんだ」
とん、とボールを打つ。
真司はぎりぎりまで赤司の元に残った。ずっと近くで彼等のバスケを見ていた。
正直に言ってしまえば、その真司に火神のバスケは劣って見える。
「行くよ」
真司は姿勢を低くして、飛び出した。
最後まで“キセキの世代”と試合に出続けた黒子。
彼の記録はほとんど残っていない。しかし、“キセキの世代”の天才5人が一目置く存在、幻の6人目。シックスマンの存在は、確かに噂されるものであった。
一方真司が彼等と試合に出たのは、練習試合数回のみ。
“キセキの世代”に一目置かれる存在は二人いる。
それは彼等しか知らない、隠された事実だった。
放課後、体育館にちらほら集まり始める一年生達。
リコは、体育館の隅で彼等をじっと眺めていた。
気になるのは、黒子テツヤ、火神大我、そして烏羽真司。
昨日、初めて彼等の体を見させてもらったところ、それぞれに違った特徴を持っていることが分かった。
「おい、カントク。怪しいぞ」
「わ!ちょっともう、びっくりさせないでよ日向君!」
急に視界に入り込んだ日向に、リコの体がびくっと震える。
リコにとって人の能力値を見るのはある意味趣味のようなもので、決してやましいことをしているワケではない。
それでもにやついてしまう頬を押さえながら、リコは一年生に視線を戻した。
「ねぇ日向君、練習時間って余裕あるわよね?」
「ん?まぁ、そうだな」
「一年生の実力見たいんだけど、試合にしてもいいかしら」
やっぱりか。とでもいいだけに息を吐いた日向は、リコの目の先を追った。
「火神は分かる。あと、帝光のレギュラーだったっていう黒子も。あの、烏羽には何があるんだ?」
リコには能力が数値として見えているが、日向には勿論そんなもの見えない。
外見だけ見れば、真司は小さくて細いだけ、なんの取り柄も見当たらないのだ。
「火神君に関しては、全てがずば抜けてる。才能の塊って感じね」
「まぁ、分かる気がする」
「烏羽君は…足、スピード、柔軟性、一部の数値が火神君さえも上回ってるのよ」
そもそも火神の数値を知らない日向には、説明されても想像し難いことだ。
しかしリコの輝いた瞳を見るあたり、余程のことなのだろう。
「きっと見た方が早いわ」
「…だな」
日向はパンパンッと両手を打った。
全員を集めて告げるは、一年対二年での試合を行うという旨。
それで一年生達が驚くのは言うまでもない。
誠凛高校バスケットボール部は、去年設立された。その一年生だけの状況で、決勝リーグまでいった実績を持っているのだ。
「ビビるとこじゃねーよ。相手は弱いより強い方がいいに決まってる!」
威勢がいいのは火神一人。
しかし、黒子と目を合わせた真司はふっと小さく笑った。
「どうしたんですか、烏羽君」
「早くテツ君がすごいってとこ、見せつけたいんだ」
「では、少し出し惜しみします」
「えぇ…」
渡されたユニフォームを頭から着る。
黒子と同じ色。それだけで胸が高鳴るのは、やはりこうして同じ舞台に立つことを望んでいたからだ。
「行くぞ!」
火神の声に続いて、ピッと高いホイッスルの音がなった。
高校に来て初めての試合開始だ。
・・・
キュッというバッシュの音と、ドリブルの音が鳴り響く。
真司は一歩引いたところから火神の様子をうかがっていた。
経験の差か、やはり二年生達は皆一般以上の強さを持っている。しかし、それを上回ったのは、火神だった。
「一年が押してる!」
「つか、火神だけでやってるよ!」
その感想もごもっとも。
きしきしと揺れるゴールは火神のダンクの威力を物語っている。
とはいえ、さすがに二年生がそのまま押されっぱなし、なんてことは有り得ない。
「そろそろ、大人しくしてもらうか」
「そうだな。火神を止めよう」
日向は、汗を拭いながらニッと笑った。それに気付いて、伊月も口元に笑みを浮かべる。
点数を決めているのはほとんど火神のみ。つまりは火神さえ止めてしまえば済む話。
二年生達は火神を三人がかりで止めに入った。
途端に一年生サイドの点数は決まらなくなって、あっという間に30対15という点差が開いてしまった。
「…やっぱ、強い」
「てゆーか…二年生に勝てるわけないし」
「もういいよ…」
息を切らしながら、とうとう根を上げ始めた一年生。それに対し、火神はやる気を失った一年生の胸倉を掴み上げた。
「もういいって…それ、どういう意味だよオイ!」
「そうだよ、まだまだこれからだって」
「っつーお前は!なんで手ェ抜いてんだよ!」
へらっと笑う真司を見て、火神の手が小刻みに震え出した。
今の所、真司は目立った活躍をしていない。しかし、火神は知っているのだ。
「烏羽、お前そんなもんじゃねーだろ…!」
「まぁ、俺はいいとして」
「良くねーよ!」
ドスの聞いた声で喚く火神をスルーして、真司はとんっと黒子の肩に手を置いた。
一年生達の目が、一斉に黒子に向けられる。
「すみません。適当にパスもらえませんか」
「…?」
それを見ていた二年生達は、唖然としていた。
皆総じて思うのは、黒子っていつから試合に出ていたっけ、というもので。
勿論黒子に言わせれば「初めからいました」なのだが。
「頑張れ!あと三分!」
そんな声が聞こえて試合が再開する。
もはや点差が絶望的である以上、一年生達は黒子の提案を疑いながらも受け入れるしかない。
「頼むから、ボール取られるなよ…っ」
そんな声と共に黒子のパスがまわされる。
そのボールは黒子の手に持たれることなく、真司の元へ。
「おしっ」
そこにいたと思われた真司は、気付くとゴールの下にいて。そのままボールはゴールへ。
何もかもが早すぎて、誰もがぽかんと口を開けたままだった。
「どういうことなの…?」
皆の気持ちを代弁したかのようにリコが呟く。
リコは顎に手を持っていき、黒子と真司の様子をまじまじと眺めた。
「烏羽君は、思った通りの瞬発力と速さを持ってる…」
しかも、ドリブルしているとは思えない程のスピードだった。
それだけでなく、ドリブル中の体勢の低さ。身長の低さとプラスされてかなりボールを奪い取るのが難しくなっているのだろう。
「黒子君は…パスの中継役になってるのね」
といってしまえば簡単なのだが、それには手品のように複雑な種がある。
黒子の存在感の薄さ、更にボールに触れる時間の短さも相まって、気付くとボールが他の者の手に移っているように見えるのだ。
それが黒子の、ミスディレクション。
「これは…本当にすごいことになるかも!」
リコの目が期待に輝く。
黒子から真司へ。黒子から火神へ。
ボールは素早く移動して点数を重ねていく。
最後は、火神のシュートだった。
得点版がひらりとめくられ、結果は38対37。
「おおおお!一年生チームが勝った!」
わっと盛り上がる体育館。
一年生全員が嬉しそうに喜ぶのは、黒子がパスを皆に回したおかげで、一人一回以上シュートを決められたというところにもある。
さすがは黒子だ。
真司は黒子とぱんっと両手を合わせた。
「テツ君、やっぱすごい」
「烏羽君も、速さに磨きがかかりましたね」
懐かしい黒子とのバスケに、少し本気を出してしまった。
額に流れる汗を拭って、ふーっと息を吐く。
これが誠凛高校バスケットボール部。キセキの世代と戦う為のメンバー。
しみじみと、目を細める。
そんな真司の背後にリコが迫っていた。
「ねぇ、烏羽君」
「はい?」
「ずいぶんと黒子君に詳しいのね」
「あ…」
リコの目は、“どうして?”とは言っていない。
“分かってるから、詳しく説明しなさい?”こんな感じだ。
「…えっと」
「烏羽君、隠したところですぐにバレると思いますよ」
「はぁ…だよね」
出身校を隠す理由は特にない。ただ、帝光中だというだけで目立つのが嫌で、また期待されるのが嫌だったというだけ。
真司は頭をかきながら、小さく口を開いた。
「俺も、帝光中のバスケ部に所属してました」
「うん。やっぱりね」
思った通り、と頷いたのはリコだけ。それを聞いていた他のメンバーは皆揃って目を丸くした。
皆が唖然とする中、日向がゆっくりと真司に歩み寄る。
「ちょ、ちょっと待て、まさか烏羽も試合に出てた、とか」
「はい。烏羽君もレギュラーでした」
「ち、違う。俺はレギュラーの皆に遠く及ばなかった」
「どっちだよ」
どうして嘘をつくんですか、とでも言いたげな黒子の目。
真司は一度息を吐き出してから、黒子を見つめ返した。
「…俺は、皆に大事にされてただけ。実力じゃないよ」
「赤司君は、そんなことでレギュラーを決めるような人ではないはずです」
「でも」
「はいはい!そこまで!これで部活は終了!」
収拾がつかなくなると判断したリコが早々に手を打つ。
これで今日の部活は終わり、ということで良いようだ。
なんだかはっきりしないままだが、わらわらと一人ひとり解散していく。
真司も着替えてバックを背負うと、体育館を後にした。
・・・
帰って行く一年生を横目に、がらがらと得点板を引きずりながら小金井は大きく溜め息を吐いた。
その溜め息を聞いた同じく二年生の土田も、釣られて深く息を吐き出す。
「今年の一年すごすぎじゃね?」
「あぁ…本当に」
心強いメンバーが増えることは喜ばしいことだ。
とはいえ、先輩として悔しいものは悔しい。
「まさか帝光出身が二人もいるとはっていうか、烏羽君?意外過ぎるっしょ」
第一印象じゃ、運動が出来るようには見えない小さな少年だったのに。
速さだけならこの部内一番、それどころか今すぐ陸上部と勝負して欲しいものだ。
「あーんな真面目そうな見た目してるのに」
「真面目そう?それ、烏羽のことか?」
一年生の記録、38という数字をペラペラと捲りながら呟く小金井に、伊月はきょとんと細い目を丸くさせた。
「え、見るからにそんなキャラっぽくない?」
「そうかな…。オレにはどっちかっていうとチャラい風に見えたけど」
「「「どこが!?」」」
伊月の発言に突っ込んだのは会話をしていた小金井だけではなく。それを聞いていた土田と日向も声を上げていた。
いや、今のは突っ込まざるを得ないというか。伊月の目を疑うレベルだ。
「だって、睫毛ばっしばししてるし、唇ツヤツヤだったし」
淡々と言う伊月は別にボケているようでもなく、至って真剣で。
しかも、彼等には伊月の目を疑うという事が出来ない理由がある。
彼はイーグルアイという広い視野を持っている選手なのだ。
伊月の目には、試合で何度も助けられている。
「え…こういうのにもイーグルアイって発動すんの?」
「ちょ、発動とかいうなよ。っていうかさ、カントクは烏羽の顔見たんだろ?」
「そういえば!」
伊月の言葉で皆の視線がリコに集まった。
びくっと肩を上下に揺らしたリコの頬には、たらりと冷や汗が流れる。
「い、いやぁ…別に、どうってことない顔してたけど…?」
「なんか怪しいな…」
日向の眼鏡の奥の瞳がぎらりと光る。
別に真司の顔なんてどうあろうが構わない。しかし、この流れで急に気になるものになってしまった。
「ところで、伊月に烏羽はどう見えてたの?」
「んー…少女漫画の主人公?」
「それ女じゃん」
「あれ、ホントだ」
「もう!そんな無駄話してないでさっさと体育館から出る!」
早く早く、と言いながらリコが伊月と小金井の背中を押す。
そんなリコ自身にも、そこまで真司の顔を隠す理由はない。しかし、皆が余りに知りたがるから隠したいものに変わってしまった。
「皆、明日から烏羽君が来たからって執拗に迫らないでね!」
という釘を刺しつつ、ぞろぞろと体育館を出て行く。
いや、さすがにそこまではしないだろ。とそれぞれ思いながらも、誰よりも先に真司の顔を見てやるという野望が生まれつつあった。
明るい店内に微妙な空気が漂う。
昨日と同じような状況、マジバに三人偶然ながら集う事となった。
真司と黒子は一緒に来たのだが。
「なんでまたいんだよ…」
「ここのバニラシェイク好きなんです」
「ていうか、嫌なら君が来なきゃいいんじゃないの、火神君」
ちょこんと椅子に座ってシェイクをすすっている黒子の前に座っているのは、ハンバーガーに噛り付く火神。
その二人を眺めている真司は、小さく欠伸をしてから自分のコーラに手を伸ばした。
「火神君、テツ君のことどう思った?」
「あ?…あぁ…」
先日、火神は黒子のことを馬鹿にした。火神が普通の神経をもっているのなら、今日の試合で印象は変わったはずだ。
じっと真司の目が火神を見つめる。
その真司の視界は、ほとんど自分の前髪で覆われているが。
真司の質問に、火神は照れ臭そうに頬をかいて。それからハンバーガーを一つ黒子に放った。
「何ですか?」
「弱い奴には興味ねー…けど、それ一つ分くらいは認めてやる」
「…どうも」
若干嬉しくなさそうに黒子がそれを受け取る。
「火神君、俺は?」
「あ?オマエも欲しいのかよ」
「ちーがーう。どうだった?って聞いてんの」
「速ぇな。小動物みてぇだった」
「…」
さり気なく、小さいと馬鹿にされたようにしか思えない。
真司はぷくっと頬を膨らませて、火神から顔を逸らした。
まぁ、火神程の大きな体の人間にはそう見えても仕方ないのかもしれない。真司か火神か、どちらがおかしいかと言えば、火神の方だ。
そう自分の中で納得させて苛立ちかけていた心を落ち着かせる。
「烏羽君はすごいですよ」
そんな真司の心境を悟ったのか、はたまた純粋な本心か。
「え?」
「ボクは、君のこと尊敬してます」
黒子はにこっと笑って、真司の手を掴んだ。
さすが黒子は人の持ち上げ方にも慣れてるなぁ、なんて少し曲がったことを考えながら、真司は黒子の手を握り満面の笑みを返した。
「有難う、テツ君。俺も、テツ君のこと尊敬してるよ」
「烏羽君…」
「おい、オレはどうしたらいいんだよこれ」
完全に二人の世界を目の前で見せつけられ、火神があからさまにムスッとする。
仲間に入りたいのか?と手を広げれば、勿論アホかとどやされたが。
「ありがとうございましたー」
入って来た時と変わらない明るさを保つ店員の声を聞き流しながら、彼等はマジバを後にした。
積極的に話す面子が足りていないメンバーで、会話はほとんどなく。
もくもくと食べ続ける火神と、火神にもらったハンバーガーを何とか食べきった黒子。そしてそれを真司は眺めていただけ。
「なぁ」
同じ帰路を黙ったまま歩く中、どこまでも続くと思われた沈黙を破ったのは火神だった。
「キセキの世代って奴と、オレが今やったらどうなる?」
分かりやすい質問。
真司は黒子と目を合わせて、こくりと頷いた。
「手も足も出ないだろうね」
「…瞬殺されます」
「黒子、お前もっと別の言い方ねーのかよ」
最強だったキセキの世代の五人は、それぞれ別の強豪校へと進学した。
それでなくとも強かった学校にキセキが入ったのだ。つまり、頂点に立つのはそのどこかだろう。
憶測でしかないとはいえ、その可能性の高さは相当のものだ。
しかし、それを聞いた火神は嬉しそうに笑った。
「いーじゃねぇか。決めたぜ、そいつら倒して日本一になる!」
「簡単に言うけど、無理だよ」
「はい。無理だと思います」
「おい!」
しかし、そういう黒子も火神と同じくらい嬉しそうにしている。
顔に出やすい火神と黒子とでは、その見た目に分かる嬉しさというものは大きく違っている。それでも、思うことは同じのようだ。
「一人では無理です。…ボクも、決めました」
黒子の、覚悟を決めた声。
真司は思わず口を閉ざして一歩下がった。
「ボクは影だ…でも、影は光が強いほど濃くなり、光の白さを際立たせる」
それは、帝光中時代に青峰のそれであったように、火神の相棒となることを決めたということだろう。
「光の影として、ボクもキミを日本一にする」
格好いい。なんて一言で今の空気を壊すようなことはしない。
真司は全てを呑み込んで、黒子と火神の姿を見ていた。
ほんの少し寂しくなるのは、輝かしい黒子と青峰の姿を知っているから。
そして、青峰という光が黒子を照らすことを止めたという過去も知っているからだ。
「言うじゃねーか。勝手にしろよ」
「はい、頑張ります」
どうか、今度こそは、火神こそは黒子を照らし続けてくれ。
そう祈りながら、真司は二人の背中をバシッと叩いた。
「青春だねぇ」
「オマエはおっさんか」
一人では勝てなくても、力を合わせれば。
それを忘れたキセキの世代に思い知らせて。願わくは、再び彼等と。
真司は二人の背中に回した手のひらを、きつく握り締めていた。