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カカシ夢(2011.04~2016.09)

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もはや自我を失ってしまっているナルトに弾かれてサクラが飛ばされた。サクラの腕はナルトに振り払われた時についた傷で血が滲んでいる。

「ぅ…」
「サクラ…!」

苦しそうにするサクラにはっとして、ナナはようやく駆け寄った。
サクラの思いの深さに涙が出そうになる。自分だけ明らかに開いた距離がなんだか切ない。

「サクラ!大丈夫か!?」
「ボクが治してあげる」
「…何だと?」

カブトが近付いてきて、サクラに向けて手を伸ばした。何を考えているのかわからないカブトの、陰のかかった顔。
ヤマトはナルトを止めるため術に集中していて、今まともに動けるのはナナしかいない。それを確認して、ナナはすぐさまサクラを庇って前に出た。

「心配しなくても、変なことはしないさ」
「てめぇは信じられねぇ…」
「ボク達と君達にはね、共通の目的があるんだよ…暁が邪魔だというね」

生かしておけば、一人でも多く暁を始末してくれるかもしれない。それだけの理由で、カブトは本当にサクラの治療をした。

「あぁでも…ナナ君、君は別」
「な、」

サクラの意識が戻って、ゆっくりと目が開く。ヤマトもナルトを木遁の術で抑え込んだところ。ナナは鳩尾に一発くらっていた。

「て、め…!」
「感謝しなよ、君だけ先にアジトへ招いてあげるんだから」

抵抗する間もなく、カブトはナナを腕に抱えて地を蹴った。
遠くでヤマトの声が聞こえる。注意すべき存在だとわかっていたはずなのに、またナナはカブトの手に堕ちてしまった。




・・・




意識がなくなっていたというわけではない。頭の指示通りに体が動こうとしないのだ。
ナナは情けなくも、カブトに足をがっちりと固定された状態で担がれたまま、大蛇丸と合流することになった。

「大蛇丸様、ナナ君はどうしますか」
「そのまま…連れて行って頂戴」

白い肌に、蛇のような鋭い瞳。こんな不気味な人間を目の前にして、冷静でいろなんてのが無理だ。しかし、それよりも気になることがある。当たり前のようにこの場にいるサイはなんなのだろう。

「なんで、サイが…」
「ボクの任務は元々別にあったんですよ。むしろ貴方がここにいることの方が不思議だ」
「俺が…来たくてここにいるように、見えるか?」
「いえ。捕まるなんて、ナナさんも大したことないんですね」
「…」

言い返せない。全くその通りすぎる。二人の会話を聞いていたカブトが馬鹿にしたように鼻で笑ったのが気に食わなくて、ナナはそれきり黙っていた。





・・・




外の空気がほとんど入り込まない、日の光の入らない暗い場所。恐らくここがアジトで間違いないだろう。
そこで地に足ついたナナは、身動き取れない状態でカブトに寄りかかっていた。


「ぁ、っあ…」
「あれ、前よりココ、柔らかくなったんじゃない?」
「黙れ…っ」

ズボンが膝に纏わり着く。薄暗い空間の冷たい空気が直接触れて欲しくないところを刺激していた。

ぐちゅぐちゅと音を鳴らしながら、カブトの指が中をかき乱す。抵抗出来ないのは、サイによって手の自由が利かなくなっているから。というのは言い訳で、実際のところ、体が思うように動いていないからだった。

「コッチも…随分と敏感になったね?」
「や、め…ッあ…」

頬を真っ赤に染めながら、荒く息を吐き出したナナが顔を逸らすと、楽しそうにこちらを見ている大蛇丸が視界に映った。ナナの乱れる様子を見つめている。

「もの欲しそうな顔で私を見るなんて…そんなに飢えているのかしらねぇ…」
「ちが、あッ!」
「ほら、よそ見している余裕なんてないだろ?」
「ぅあ…、く、そが…!」

苦しさから、後ろにいるサイに顔を寄せた。サイは今のこの状態を前にしても、無表情のままだ。

「サイ…っ、放してくれ…」
「ごめんなさい」
「サイ…!」
「彼が放したところで、君の体は上手く動かないだろうけどね」

そう、どうせカブトの術が自由を奪っている。カブトの手は執拗にナナの気持ち良いところを刺激した。





「…何してるんだ?」



キィ、という扉の軋む音。その奥に見える陰に、ナナは息を呑みこんだ。

「あら、サスケ君…アナタも遊びたいのかしら」
「…何をしてると聞いている」

ナナの目は大きく見開かれた。サイも、名前だけ知るその人物の唐突なる登場に手を緩める。そのせいで、ナナはずるずると足を折った。

「さ…サスケ…」
「誰だ?」

冷静なその声色。怪訝そうに眉をひそめる表情。高くなった身長に、大人びた顔つき。それでも、間違いなくナナの知った、サスケがそこにいた。

「…ナナか」
「サスケ君…今ならナナ君もアナタの思い通りよ」
「…オレにそんな趣味はない」
「そう…残念ね…」

大蛇丸の手がナナの顎を掴んだ。酸素を求めるために開いていたナナの口の中に長い舌が入り込む。

「ん、ぐ…!?」

蛇のように長い舌は、ナナの口内を通り越して、喉の奥に入っていった。息が出来ない、いやそれ以上にキモチワルイ。ナナは苦痛に顔を歪めて、傍らに立っていたサイの足をぎゅっと掴んだ。

「ぅ、げほっ…何しやがる…」
「何、ただ私を求める体にしてあげただけよ…」
「っ…!?」

体に直接何かを注入された、直接改造でもされたんじゃないか、とも思えるほど体が熱くて、奥からじわじわと震えた。それは、大蛇丸から何かを感じて起こっている。

「ぁ、あ…あ…」
「本当に…素晴らしい体…早く私のものにしたいわ…」

大蛇丸の手がナナの素肌に触れる。それだけで大きく体を震わせたナナに満足したように笑うと、大蛇丸はナナの首筋に噛みついた。

「ぅあっ…!」

歯が突き刺さり、血が流れる。それを舐めあげてから、大蛇丸はサスケに視線を移した。

「どう?サスケ君は…こんな彼を見るのは初めてでしょう…?」
「…フン。会わないうちに相当堕ちたんだな、ナナ…」

たんたん、と静かに足音を鳴らしながら、サスケの陰が近付く。それを少し怖いと思ってしまった。ナナは、サイの足を掴み、なんとか距離をとろうと身をよじった。

「あんたのそんな顔…」
「サスケ…?ッやめ…!」

サスケの手が、ナナの股間に重なった。既に弄られていたために濡れたそこから、いやらしい音が聞こえる。

「っはぁ、ア…さす、け…」
「情けないな」

逸らそうとした顔は、髪を掴まれて無理矢理サスケの方を向かされた。自分にとって弟のような…木ノ葉で少ない親しい人間。だったはずなのに。

「や…やめろ、サスケ…ッ」
「大丈夫よ、ナナ君…近くに私がいる今なら…全て快楽に感じられるわ」
「サスケ、皆…お前を連れ戻したくて…お前が大事だから…」

サスケと話したいことなんてたくさんあった。どれくらい強くなったのか、今までどんなことをして過ごしたのか。離れていた時間が長い分、思うこともいろいろあったのに。
まだ自分より小さいサスケ。そのサスケの手がナナの記憶に残る男たちと同じになっていた。

「あんたのこと、ずっと大人で強い奴だと思っていたが…案外そうでもなかったんだな」
「ぅ、…!やめろ、手放せ…!」
「こんな形で再会するとはな」
「あ、くッ、…ぁあ…!」

敏感になった体は、サスケの手の動きを自然に受け入れていた。
びくっと震え、ナナは体を大きく反らし、そのままゆっくりと目を開く。サスケはナナを見下ろして嘲笑していた。

「は…っ、なんで、こんな…」

視線を上げてサスケの目を見る。何も見えない黒。
ナナに触れていた手を怪訝そうに見つめると、サスケは何も言わずにその場からいなくなった。


「そろそろ…あの子たちも来る頃かしら…。カブト、この子たちを部屋へ連れていきなさい」
「はい」

カブトはまだ息の整わないナナを抱き上げてから、サイにもついて来るように合図した。何の抵抗もなくカブトの腕に抱かれたナナの目は大蛇丸に向いている。
体の熱は全く引いていない。

「大蛇丸様が何を君の体に仕込んだのかしらないけど、なかなかの効き目らしいね」
「…は?」
「大蛇丸様から離れたくない?」
「…馬鹿、いうな…」

自覚なく体が無意識に大蛇丸へ向いていたことに、ナナ自身気付いていなかった。
しかし、明らかにナナの中で何かが狂い始めていた。






「さ、ナナ君はここ」

いつの間にか、ナナはある部屋のベッドへ寝かされていた。少し埃っぽい臭いのする、あまり使われていなかったであろう部屋。薄暗い中、ベッドの脇に立ったカブトが笑った。

「本当に…君は淫乱なのかな。誰相手でも簡単に気持ちよくなっちゃうんだね」
「…っ」
「そういう、性に敏感なところ、好きだよ」
「俺は…嫌いだ…」

きし、とベッドが軋む。

「また…ナナ君の中、入りたいな」
「…触ったら、殺す…」
「クク…君がボクを?無理だよ」

ま、今はしないけどね、とカブトがベッドに腰をかけた。それと反対の、壁の方へ体を向ける。大人しくここで寝るつもりなどなかったが、ベッドから立ち上がったところで今のナナには何も出来そうにない。

「仕込みは完了したし、今回は逃げてもいいよ。動けるならだけど」
「…?」
「じゃあね」

カブトはそれだけ告げると何もせずに部屋から去って行った。


間もなく、遠くから何か声と大きな音が聞こえてくる。ナルト達が追いかけてきたんだな、と思いながら、ナナは静かに目を閉じた。



・・・



どれほど経ったか。いや、間を開けずにきたのかもしれない。意識を無くしたようにベッドに体を預けていたナナの体は大きな手に揺さぶられた。

ナナ!」

声を抑えながらも、必死に呼びかけているのがわかる。目を開けると、心配そうにしているヤマトがそこにいた。

「…隊長」
「大丈夫…ではなさそうだね…」
「いえ、平気です」
「無理しなくていいよ」

ヤマトは優しくナナの背中に手を回すと、起き上らせてから自分の方へナナを引き寄せた。日の当たらない部屋の中は寒いのに、ナナの体は熱い。

「何があったか、聞いてもいいかい」
「…言わなきゃ駄目ですか」
「一応隊長としては知っておきたいけど…」
「…カカシ班に何か及ぼすようなことは…何も…」

つまり個人的には何かあったのだな、と口には出さずに納得した。そしてそれがどのようなことなのか、大よその予想はついている。そして、それは追及していいような内容ではない。

「動ける?」
「…はい」

体を放してヤマトが立ち上がると、ナナも続いて立ち上がった。
しっかり足は地面についている。手にも力はある。今のところ体に異常はないことを確認し、ナナは小さく頷いた。

「…口を濯ぎたい」
「え…?」
「いえ、なんでもないです」

気になるのは、大蛇丸にされたこと。あの瞬間、体が熱くなって思わず求めそうになった。
というのもあるが、思い出して口の中が気持ち悪くなった。舌なのだろうが、通常のものより明らかに太く長かったそれ。

「っ…」
「ちょっと、本当に大丈夫?」
「…優しいんですね」
「はぁ。当然だろ」
「カカシが煩いから?」
「…それもあるけど、」

ヤマトは呆れたように息を吐き出して、ナナの背中を擦った。

「仲間だろ」
「…」

少し照れ臭い。しかし、その言葉はナナに伝わっていた。唇を噛んで、眉間にシワを寄せて、それから少し目尻を濡らす。すん、と息を吸って、ナナは視線をヤマトに真っ直ぐ向けた。

「ナルトたちは」
「今はサイと合流した。サスケとも…交戦してる」
「あんたなんでここに来たんだよ」
ナナを放ってはおけないよ」
「…それは、すみませんでした」



ヤマトとナナは部屋から飛び出すと、すぐに皆の元へ向かった。その間に今までの流れを聞く。
サイはサスケを殺す為にこの任務について来た、というのが真実であったらしい。しかし、ナルトの言葉を聞いて心を入れ替えたのか、繋がりを確かめたい、と力になろうとしてくれている。
それがわかったからこそ、ヤマトはようやく一つ心配事がなくなって、ナナの元へ来れたのだそうだ。

「また俺は…」

足を引っ張ったのか。

「何か言った!?」
「何も」

結局何を言っても心配をかけることしか出来ない。なら、何も言わない方がいいに決まっている。
少し俯いて自分への嫌悪感に潰されそうになっていると、前にいるヤマトがぴたっと止まった。

「今更だけど…ナナは、来ない方がいいかもしれない」
「なんで」
「大蛇丸と薬師カブトがサスケと一緒にいるんだ」
「…あ」

ここで待ってて、とヤマトの手が肩に乗る。
確かに会わない方がいい。ナナは自分でも何かおかしいことはわかっているのだ。大蛇丸に近づくにつれて感じる熱さ。
体が動くようになっているのは、カブトが治してくれたから。更に逃げていいとも言った。それは、今逃げてもまたナナがここに来ることを確信しているから…?

遠ざかるヤマトの足音と、ナルトの叫び声が耳を通り抜ける。

「…カカシ」

急に胸が苦しくなった。

「あんたがいないと…」

全然駄目だ。いくら強くなったつもりになっても、根本的な部分は何も変わっていない。五色には##NAME2##がいたように、いつでもそこにいてくれる存在が必要だった。

「…触られた」

脱がされて、触られて、犯されて。
一人、体を許した存在がいたって、簡単に奪われる。昔からそうだった。力がなければどうすることも出来ない。

「強くなったんじゃなかったのかよ…!」

ナナは蹲って、顔を手で覆った。
最後に誰かの役に立ったのはいつだろう。いつから自分は守られてばかりの足手まといになったのだろう。今となっては恐らく、ナルトにも、サスケにも勝てない。サクラにもパワーで劣る。何よりサクラには医療忍術がある。

「何が、五色だよ…っ」

溢れそうになる涙を堪えた。泣いたら負けだ。ここで泣いたら、それこそ何もできないガキと同じになってしまう。

手の甲で目をこすり、ゆっくり顔を上げる。光が差し込む向こうで、ナルトは今、ようやくサスケと対面した。変わってしまったサスケを見てどう思っているのか、ナナには想像も出来なかった。


激しい戦闘音は、そう時間も経たないうちに止んでいた。カブトが言っていた、暁を一人でも多く倒すという目的。ナルトもその大きな戦力であったために、大技を出そうとしたサスケを大蛇丸とカブトが止めたのだった。


またサスケに届かなかった悔しさに、ナルトとサクラは涙を流した。しかし、心折れたりはしない。繋がりを見たサイも、一緒に立ち向かうことを誓うのだった。



「ヤマト隊長、そういえばナナさんは?」
「あ…!」

ふと思い出してサクラがヤマトを見る。ヤマトもはっとしたように来た道の方に顔を向けた。もう大蛇丸の気配は感じられない。とりあえず安全であることを確認して、ヤマトはナナのいる場所に戻った。



ナナ!」

暗闇の中、小さくうずくまるナナの姿。ヤマトは少し足を止めて、ゆっくり近付いた。

「大蛇丸はいなくなったけど…やっぱり駄目そう?」

余計なことには触れないようにナナの高さに合わせて座る。長い前髪に隠れて顔がよく見えない。しかし、その目に光るものが見えて、ヤマトは言葉を失った。

「…そうですか」

小さな声。それからナナはばっと立ち上がった。何事もなかったような顔をしているが、明らかに目元に滲むものがある。

ナナ…早く木ノ葉に戻ろう」
「…」

唇を噛んで、言葉なくナナは首を縦に振った。

「…何?」
「あー、いや。なんでもないよ」

ナナの顔を見すぎたヤマトは、ナナと目が合ってしまい、あからさまに逸らした。何も言わないで欲しいのか、それとも気付いていないのか。
とにかく今は早く木ノ葉に帰って、ナナの精神面に休息を与えるべきだ。気遣いながらも、カカシに会ってなんと説明したら良いか、ヤマトは頭を抱えるのだった。




・・・




「で…?」
「オレたちはあきらめねぇ!」

木ノ葉に戻ったナルトたちは綱手に今回の任務の報告を行っていた。ナルトとサクラとサイは強い目をしている。それを見て、ヤマトを穏やかに笑ってみせた。


木ノ葉に戻るまでのナナは、ほとんど普段と変わらなかった。少なくとも、ナルトとサクラの前では。サイとは無意識に距離をとるようになってしまったし、ヤマトの前では気が抜けない。
ナナがどんどん疲れていったことに、ヤマトはずっと気付いていた。




ナナ、お前は残れ」

話を終えてナルト、サクラと一人ずつ部屋から出て行く。そしてサイが出たところで、綱手がナナを呼んだ。ヤマトもわかっていたかのようにすぐさま真剣な顔つきに変わった。

「なんでしょうか」
「大蛇丸と接触して…何かあったんじゃないのか」
「…」
「今回のことは、お前だけの問題じゃないんだ。悪いが、話してもらうぞ」

ヤマトは、小さく息を吐いた。やはり誤魔化せるものではなかった。だいたい想像できるナナの身に起こったこと。それを確認しなければいけないとわかっていたが、ヤマトには触れることが出来なかった。

「…俺にも、わからない」

暫く沈黙があった後、ナナは小さく漏らした。

「わからないだと?」
「わかるのは、何か体に入れられたかもしれないってことだけだ」

今度は綱手とヤマトが黙り込んだ。綱手の横に立っていた側近であるシズネは耳まで真っ赤にしてあたふたし始めている。

「何か、とは?」
「っわかんねぇよ…!」

大きく首を左右に振って、ナナは胸を強く抑えた。わからない、というよりはわかりたくない。もし、洗脳するようなものだったら。自分が自分で無くなるようなことがあったらと思うと気が気ではないのだ。

「…とりあえず、検査する必要はあるな」

綱手がばさっと資料をシズネに渡す。それを受け取ると、相変わらず赤い顔でヒィヒィ言っているシズネはすぐに部屋から出て行った。


ナナ、とりあえずお前は休みを取れ。暫くしたらまた呼ぶ」
「…すみません」

ナナ自身、ヤマトにも綱手にも気を遣われていることくらい気付いていた。しかし、それよりも何よりも、自分が襲われたことを言いたくなどなかった。


ヤマトの心配そうな目を感じながら、ナナは部屋を後にした。
そこからどこに向かうかなんて決まっている。ナナの足は真っ直ぐに木ノ葉病院を目指していた。



・・・



もう見慣れた場所。見知った看護師が明るい笑顔で声をかけてくる。それをうわべだけで返事をしながら、カカシのいるだろう病室に足を進めた。
一分でも、一秒でも早く会いたい。会ってどうしたいとかそういうことはない。会って、顔を見て、声を聞ければそれで良かった。


たんたんと足音が響く。それに伴って心臓が煩くなる。
ようやく辿り着くと、カカシのいるだろう病室をノックもせず開け放った。


「あ…」

驚いた顔はこちらを見ている。本を手に持っていたカカシはそれを閉じてから、ナナに優しく笑いかけた。

「おかえり」

全身に入っていた力が急に抜けて、無意識に足が速くなる。ナナは部屋の奥にあるベッドまで駆け寄った。

「カカシ」
「ん、何?」
「カカシ…」
「うん…おいで」

カカシの手がナナの方に伸ばされて、ナナはその手を握った。冷え切ったナナの手とは対照的に、暖かいカカシの掌。
そんなに長い間離れていたわけでないのに、この程度の熱では足りなくて。ナナはカカシの胸に顔を埋めていた。
その時、ナナが唇を強く噛むのをカカシは見逃さなかった。

「全く、この子はいつからこんなに甘えん坊になったのかな」
「…うっせぇ」
「じゃあ、黙ってた方がいい?」
「…意地悪、言うな…」

弱弱しい声と共に、カカシの腕がぎゅっと掴まれた。爪が食い込むくらい強く、震える手が掴んでいる。
やはり行かせてはいけなかった。大蛇丸に狙われている存在だとわかっていながら、出会ってしまうかもしれない任務に行くことを止められなかったなんて。
ナナの体を強く抱きしめながら、カカシは扉の方を見つめた。

「カカシは…体、まだ駄目なのか?」
「心配してもらうほどではないよ」
「そ、か」

少し嬉しそうなナナの声。

ナナ、顔見たい」
「っ、」
「顔、上げてくれないか」

緩んでいたナナの体はぴしっと固くなった。息を呑んだナナの肩を掴んで体を引き剥がせば、驚いて見開いた目に滲む涙。ナナの目の端を光らせていた涙は、カカシと目が合った途端にあふれ出した。


「っ、い、意地悪、すんなって…っ言った、ばっか…!」
「…ごめん」
「ふ、…っ、あんたの顔、見て…安心した、だけ…」
「あぁ、そうだね」
「も…責任とれ、っ、ばか…!」

我慢してきた涙は溢れだして止まらなくて。カカシはナナの目を擦る手を掴んで、止まらない涙に唇を寄せた。
こんなに素直に涙を流すナナを見るのは初めてだった。きゅっと唇を噛み締め、紅潮した頬を涙で濡らし、嗚咽で上手くしゃべれていない。不謹慎なのだろうが愛しさが込み上げた。

ナナ
「ん…っ」

唇を重ねれば、しょっぱい味が移る。
カカシが息苦しそうにするナナを布団に招き入れ、自分の横に寝かせると、まもなくナナは穏やかな寝息を立てて眠りについていた。






「…テンゾウ」

ナナの頭を撫でながら、カカシは扉の向こうに呼びかけた。

「もう、いいんですか?」

少しだけ開いて、黒い目が部屋の中を覗く。テンゾウ…カカシ班の隊長代理のヤマトだ。ヤマトはカカシの横で眠るナナの姿を確認すると、肩を撫でおろして部屋に踏み込んだ。

「何があったか聞かせてくれ」
「…はい…。あと、ナナがいるので、一応ヤマトの方でお願いします…」




カカシにとって、抱えるには大きすぎるナルトの問題。それだけでなく、ナナの目に見えない不安まで抱えることになってしまった。

そしてこれは、これから起こる不幸の始まりでしかないのだった。

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