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初恋は純白であれ

卒業するまで、檜山と話さなくなった。
そうしようとしたわけでもなく、ただお互いに。
進路もバラバラだ。深津は推薦を受けた大学に、檜山は東京の大学へと進学が決まった。
事の後、鋭い河田から何かあったかと心配されたが、バスケ部の仲間には深津は今まで通りな姿を見せていた。
誰も何も言わないまま、お互いに無関心のまま。卒業式を迎えて、深津はぼうっと前に座る檜山の背中を眺めた。

(もうこれで最後だ)

三年間変わらない景色だった、と思いながら、彼のことを見ると少しだけ蓋をした思いがこぼれそうになった。担任が涙を堪えながら話す言葉を聞き流して、胸に付けられた卒業生を示す花の模造の飾りを指でいじる。

「なあ」

誰かに声をかけられて、反射的に前を向くと檜山が振り向いていた。檜山は会った時のような、人当たりのいい笑みを浮かべている。

「高校三年間ありがとな」

檜山は少しだけ潤んだ目でそう言う。

「こちらこそ、だピョン」

自然と出た言葉はそれだった。
ぎこちなく聞こえてないだろうか。
檜山は笑うと、そのまま前を向いた。
これで本当に終わりだと思った。彼にとって綺麗な三年間のままで終わってしまいたかったのだ。
そして湧き出そうになった感情すらも、彼にとって無いことにされたようだった。このまま、ここに置いて行けと言われているような気がした。
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