傭兵
名前
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荘園の中庭、初夏の風吹く柔らかな芝で二人の男女が対峙していた。
「ナワーブと手合せするの久しぶりだね」
「そうだな。ここのとこお互い入れ違いでゲーム漬けだったしな…今日が楽しみだったぜ」
傭兵のナワーブと護衛のオルガレーノである。
体術を得意とする二人は、空き時間が被る時にこうして手合わせして身体が鈍らないようにしているのだ。
「私もだよ。それじゃあさっそく…」
「「お願いします!!」」
挨拶とともに構えを取る二人。
ナワーブは左半身で右手を顎の前、小指側が前面に見えるよう握り、左手の手刀を胸の前におく、ナイフ使いを想定した徒手拳の構え。
対するオルガレーノは同じく左半身で右手を顎の前、左手は胸の延長線で握る拳法スタイルの構えを取り、双方相半身の立ち位置となる。
しばらく互いに無言の牽制をした後、先に動いたのはナワーブだった 。
「ハァッ!!」
右足で大きく踏み込んだ勢いで左手刀をオルガレーノの米噛み目掛けて打ち込む。
オルガレーノが軽く仰け反り躱すと、その勢いを殺さず、目標を前方に出ていた左手首に修正する。
身体の末端から攻めて着実に戦闘力を削ぐ、実戦的な一手だ。
だがオルガレーノはその動きを読み、狙われた左手を手刀の軌道から逃がすと同時に、右手でナワーブの掴んだ。
「今のを避けるとは、やるなっ!」
躱されたにも関わらず、ナワーブは不敵にニヤリ、と笑う。
互いの身体の前で腕が交差した状態から投げ技をかけようとするオルガレーノより先に、ナワーブが掴まれた腕を自分の方に引き寄せた。
つんのめって前屈みになり、背中を晒した彼女に向かって、ナワーブはすかさず右膝蹴りを繰り出す。
しかしオルガレーノも護衛として、体を張って実戦を積んできた経験がある。
引っ張られた勢いのまま、膝蹴りが届くよりも早く跳び込み前転の要領でナワーブの脇を通り越し一回転。
勢いを活かして立ち上がると、再びお互い相対する体制となった。
「やっぱりナワーブは強いね…今度はこっちから行くよ!!」
体制を立て直すと、今度はオルガレーノが攻勢に出る。
左足で踏み出し、ナワーブの側面に周りながら脇腹目掛けて素早く右フック。
ナワーブは屈んで躱した勢いのまま右足で足払いを仕掛けるが、オルガレーノは大きめのバックステップで躱す。
そのまま距離をとると見せかけて、右足を軸に半回転して後ろ回し蹴りをお見舞いした。
「あっぶね!」
並大抵の者なら不意を突かれて顔面に一撃食らっているだろうが、そこは幾度と死線をくぐってきたナワーブだ。
右前腕でいなして勢いを殺した足の膝裏を掴む。
そして前方に踏み出してオルガレーノの脚の間に自身の左足を差し込み、そのまま軸足を刈った。
「!!っしまっーーーうっわぁ!」
両足が宙に浮いてバランスを崩したオルガレーノは、自分の足を掴むナワーブ諸共背中側に倒れ込んだ。
「おい、大丈ー「っ隙あり!」
「うおっ!?」
ナワーブが背中に手を添えたため頭は打たなかったものの、衝撃はあったはずだ。
倒れたオルガレーノを気遣い声をかけたが、言い切るより早く喉元に2本の腕が伸びてきた。
「ったく、油断も隙もねぇな…」
襟締めを試みたのであろう両手をすんでのところで掴んでやれやれと溜息を付けば、手首を掴まれた本人は悔しそうにナワーブを睨めつけた。
「まだ勝負は、ついてない!」
「相変わらず往生際が悪ぃな…で、まだ粘るのか?」
「くっ…うう」
負けを認めたがらないオルガレーノに、駄目押しとばかりに掴んだ手首を片手でまとめ上げ、もう片方の手を手刀の形にして首に添える。
暗に「実戦ならお前の命はないぞ」と示せば、手首の拘束を解こうともがくのを辞め、ようやく大人しくなった。
「降参、するか?」
「…降参……なんてしない!!」
オルガレーノは力が緩んだほんの一瞬の隙に手首の拘束を外すと、米噛みめがけて手刀を打った。
ちゃっかりナワーブの胴体に足を巻き付けてホールドし、仰け反って避けられないよう対策している。
ナワーブは離れられず、まともに手刀を食らう羽目になった。
「痛ってぇっ!!おーまーえーなー…」
結果から言うと、この悪足掻きは非常に不味い手であった。
ナワーブが怯んだ隙にすぐ離れられれば良かったものの、オルガレーノの足は未だにナワーブの胴体に巻き付けられたままである。
「ナ、ナワーブ…さん?」
ナワーブのただならぬ雰囲気に非常事態を悟り、思わず敬語で話しかけてみたが時すでに遅し。
「…お前には1度、戦いで負けたらどうなるか、身をもって教えておくべきみたいだな」
ニヤリと口角を吊り上げると、オルガレーノの手首を再び頭上にまとめ上げ、その首元に顔を埋めた。
「ちょっ、ちょっと!…ふっ、ん!」
ナワーブは静止の声を聞きもしない。
耳の後ろ、項の辺りに鼻先をうずめて深く息を吸われて、むず痒さに息を呑む。
オルガレーノの香りを堪能すると、今度は少し顔の位置を変えて耳元に唇を寄せて小さく口付けた。
チュッ、チュッとリップ音が耳元で響き、いてもたってもいられない気持ちになる。
「待っ…て、ナワ、ブ」
「待たねぇ」
「ふっ、あっ!」
囁きかけられると同時に耳元にぬるりとした生暖かいものが這い回り、オルガレーノは堪らず声を上げた。
耳の襞の一つ一つを尖らせた舌先でゆっくり丁寧になぞりあげ、時折唇では食むように啄まれる。
耳からダイレクトに伝わる濡れた音に、背中がゾクゾクと粟立って身動ぎせずにいられない。
「ごめんって!もうしな「もう遅い、諦めな」
見れば心底楽しそうに、それはもう本当に楽しそうに、まるで獲物のどこからかぶりつくか吟味する猫のように目を輝かせてナワーブは笑った。
ああ、もう二度と彼を怒らせては行けない……オルガレーノは 心の中で虚しく悔いながら、これから起こることを静かに受け入れる覚悟を決めたのであった。
「ナワーブと手合せするの久しぶりだね」
「そうだな。ここのとこお互い入れ違いでゲーム漬けだったしな…今日が楽しみだったぜ」
傭兵のナワーブと護衛のオルガレーノである。
体術を得意とする二人は、空き時間が被る時にこうして手合わせして身体が鈍らないようにしているのだ。
「私もだよ。それじゃあさっそく…」
「「お願いします!!」」
挨拶とともに構えを取る二人。
ナワーブは左半身で右手を顎の前、小指側が前面に見えるよう握り、左手の手刀を胸の前におく、ナイフ使いを想定した徒手拳の構え。
対するオルガレーノは同じく左半身で右手を顎の前、左手は胸の延長線で握る拳法スタイルの構えを取り、双方相半身の立ち位置となる。
しばらく互いに無言の牽制をした後、先に動いたのはナワーブだった 。
「ハァッ!!」
右足で大きく踏み込んだ勢いで左手刀をオルガレーノの米噛み目掛けて打ち込む。
オルガレーノが軽く仰け反り躱すと、その勢いを殺さず、目標を前方に出ていた左手首に修正する。
身体の末端から攻めて着実に戦闘力を削ぐ、実戦的な一手だ。
だがオルガレーノはその動きを読み、狙われた左手を手刀の軌道から逃がすと同時に、右手でナワーブの掴んだ。
「今のを避けるとは、やるなっ!」
躱されたにも関わらず、ナワーブは不敵にニヤリ、と笑う。
互いの身体の前で腕が交差した状態から投げ技をかけようとするオルガレーノより先に、ナワーブが掴まれた腕を自分の方に引き寄せた。
つんのめって前屈みになり、背中を晒した彼女に向かって、ナワーブはすかさず右膝蹴りを繰り出す。
しかしオルガレーノも護衛として、体を張って実戦を積んできた経験がある。
引っ張られた勢いのまま、膝蹴りが届くよりも早く跳び込み前転の要領でナワーブの脇を通り越し一回転。
勢いを活かして立ち上がると、再びお互い相対する体制となった。
「やっぱりナワーブは強いね…今度はこっちから行くよ!!」
体制を立て直すと、今度はオルガレーノが攻勢に出る。
左足で踏み出し、ナワーブの側面に周りながら脇腹目掛けて素早く右フック。
ナワーブは屈んで躱した勢いのまま右足で足払いを仕掛けるが、オルガレーノは大きめのバックステップで躱す。
そのまま距離をとると見せかけて、右足を軸に半回転して後ろ回し蹴りをお見舞いした。
「あっぶね!」
並大抵の者なら不意を突かれて顔面に一撃食らっているだろうが、そこは幾度と死線をくぐってきたナワーブだ。
右前腕でいなして勢いを殺した足の膝裏を掴む。
そして前方に踏み出してオルガレーノの脚の間に自身の左足を差し込み、そのまま軸足を刈った。
「!!っしまっーーーうっわぁ!」
両足が宙に浮いてバランスを崩したオルガレーノは、自分の足を掴むナワーブ諸共背中側に倒れ込んだ。
「おい、大丈ー「っ隙あり!」
「うおっ!?」
ナワーブが背中に手を添えたため頭は打たなかったものの、衝撃はあったはずだ。
倒れたオルガレーノを気遣い声をかけたが、言い切るより早く喉元に2本の腕が伸びてきた。
「ったく、油断も隙もねぇな…」
襟締めを試みたのであろう両手をすんでのところで掴んでやれやれと溜息を付けば、手首を掴まれた本人は悔しそうにナワーブを睨めつけた。
「まだ勝負は、ついてない!」
「相変わらず往生際が悪ぃな…で、まだ粘るのか?」
「くっ…うう」
負けを認めたがらないオルガレーノに、駄目押しとばかりに掴んだ手首を片手でまとめ上げ、もう片方の手を手刀の形にして首に添える。
暗に「実戦ならお前の命はないぞ」と示せば、手首の拘束を解こうともがくのを辞め、ようやく大人しくなった。
「降参、するか?」
「…降参……なんてしない!!」
オルガレーノは力が緩んだほんの一瞬の隙に手首の拘束を外すと、米噛みめがけて手刀を打った。
ちゃっかりナワーブの胴体に足を巻き付けてホールドし、仰け反って避けられないよう対策している。
ナワーブは離れられず、まともに手刀を食らう羽目になった。
「痛ってぇっ!!おーまーえーなー…」
結果から言うと、この悪足掻きは非常に不味い手であった。
ナワーブが怯んだ隙にすぐ離れられれば良かったものの、オルガレーノの足は未だにナワーブの胴体に巻き付けられたままである。
「ナ、ナワーブ…さん?」
ナワーブのただならぬ雰囲気に非常事態を悟り、思わず敬語で話しかけてみたが時すでに遅し。
「…お前には1度、戦いで負けたらどうなるか、身をもって教えておくべきみたいだな」
ニヤリと口角を吊り上げると、オルガレーノの手首を再び頭上にまとめ上げ、その首元に顔を埋めた。
「ちょっ、ちょっと!…ふっ、ん!」
ナワーブは静止の声を聞きもしない。
耳の後ろ、項の辺りに鼻先をうずめて深く息を吸われて、むず痒さに息を呑む。
オルガレーノの香りを堪能すると、今度は少し顔の位置を変えて耳元に唇を寄せて小さく口付けた。
チュッ、チュッとリップ音が耳元で響き、いてもたってもいられない気持ちになる。
「待っ…て、ナワ、ブ」
「待たねぇ」
「ふっ、あっ!」
囁きかけられると同時に耳元にぬるりとした生暖かいものが這い回り、オルガレーノは堪らず声を上げた。
耳の襞の一つ一つを尖らせた舌先でゆっくり丁寧になぞりあげ、時折唇では食むように啄まれる。
耳からダイレクトに伝わる濡れた音に、背中がゾクゾクと粟立って身動ぎせずにいられない。
「ごめんって!もうしな「もう遅い、諦めな」
見れば心底楽しそうに、それはもう本当に楽しそうに、まるで獲物のどこからかぶりつくか吟味する猫のように目を輝かせてナワーブは笑った。
ああ、もう二度と彼を怒らせては行けない……オルガレーノは 心の中で虚しく悔いながら、これから起こることを静かに受け入れる覚悟を決めたのであった。
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